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【社会】

ハンセン病家族、集団提訴へ 隔離政策、国に謝罪求め

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 ハンセン病元患者の家族が、強制隔離政策で自身も深刻な偏見や差別を受けたのに対策が講じられなかったとして国に謝罪や賠償を求め、熊本地裁に集団提訴する方針を固めたことが三十日、分かった。弁護団によると、家族の被害をめぐる集団訴訟は初めてで、来年二月にも提訴する方針。

 弁護団は、原告の対象を元患者の子どもか、発症時に元患者と同居していた家族とする方針で、現段階で熊本県や鹿児島県などの元患者の子ども八人が提訴の意向を固めている。八人は元患者の家族や遺族でつくる「れんげ草の会」(事務局・熊本市)の会員で、これまで家族の被害問題を話し合ってきた。

 弁護団は今後、全国に募るとしており、原告数は増える見通し。熊本県弁護士会所属で弁護団メンバーの国宗直子弁護士は「元患者の家族に対する国からの謝罪はこれまでなかった。家族への被害も社会的に認めてほしい」と話す。

 鳥取地裁は今年九月、亡くなった母親が患者だった男性遺族一人が起こした訴訟で、時効成立などを理由に請求を棄却する一方、「国は患者の子どもに対する社会の偏見を排除する必要があったのに、相応の措置を取らなかった点で違法だった」との判断を示した。これを機に家族の集団提訴の動きが始まった。

 ハンセン病をめぐっては、二〇〇一年五月の熊本地裁判決が国の隔離政策の違憲性を認定。その後、国は元患者のほか、相続権が確認できた遺族と和解した。遺族には一時金が支給されたが遺族自身の被害に対するものではなかった。

 <ハンセン病> ノルウェーの医師ハンセンが発見した「らい菌」による感染症。皮膚がただれたり体が変形したりして障害が残る恐れはあるが、感染力は極めて弱い。療養所への隔離政策は、1996年の法律廃止まで約90年続いた。元患者らが国家賠償を求めた2001年の熊本地裁判決は、隔離政策を違憲と判断。国は控訴を断念し、各地の訴訟は順次和解が成立し各種の補償制度が整備された。療養所非入所者の遺族が、家族も偏見や差別の被害を受けたと主張した訴訟では、15年9月に鳥取地裁が請求を棄却。遺族側は控訴した。

 

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