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「これ以上ひどくなることはない」と言ったゴーンCEO

日産自動車 「ITの現場は台所みたいなものです」

2015/12/01
谷島宣之=日経BPビジョナリー経営研究所研究員、中村建助=日経コンピュータ」 (筆者執筆記事一覧
出典:日経ビジネスオンライン 2015年3月16日
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
行徳セルソ・日産自動車 アライアンスグローバルVP 常務執行役員 CIO グローバルコーポレートIS/IT担当(右)と日高信彦・ガートナー ジャパン 代表取締役社長(写真:的野弘路、以下同)

 「まあ、やってみればいい。これ以上ひどくなることはないだろうから、期待するだけでいいよね」。

 日産自動車がIT(情報技術)の改革に乗り出した時、カルロス・ゴーンCEO(最高経営責任者)はこう言ったという。「ITに“報連相”がない」と批判されたIT部門は徹底した見える化と標準化に取り組み、ビジネスとITの連携を進めた。『電気自動車、北海道よりノルウェーの方が“高燃費”』に続き、日産自動車のCIO(最高情報責任者)である行徳セルソ常務執行役員とITリサーチ大手、ガートナー ジャパンの日高信彦社長の革新的経営問答を紹介する。

(構成は谷島 宣之=日経BPビジョナリー経営研究所研究員、中村 建助=日経コンピュータ編集長)

日高:私どもガートナーは今、ITが大きく変化する時期だと見ています。ビジネス自体のデジタル化が進んでいく。その中で大きく2つの流儀を身に付け、それぞれを大事にして、きっちりやっていくことが必要だと考えています。

 1つはこれから来るデジタルの世界への備えです。当然、ウェブ系の技術を使い、ビジネスに密着した形になっていく。この部分にどう取り組んでいくのか。その点は先に伺いました。

 もう1つは今まで使ってきて今も持っているシステムの刷新。レガシーシステムと呼んだりしますが、やはり大事です。今もきちっと動いているシステムがある。ただし昔のまま置いておけば新しい仕組みは載ってこないし、レガシーシステムがビジネスの足を引っ張ることもある。ここをどう変えていくのか。

 こうした二つの流儀について日産の秘訣というか、どう乗り越えてこられたか、その辺りをお聞かせ下さい。

行徳:我々ITの部門は10年近く、中期計画を立て、実行してきています。その中にビジネスへの貢献やもともとあったシステムをどう変えたかというご質問のテーマが入っていますので、中期計画についてお話ししたいと思います。

 今、我々は「VITESSE」と呼ぶ中期計画に取り組んでいます。2011年から始めたものです。その前に「BEST」と呼ぶ計画を、私が日産に来た2004年から考えて、2005年から6年間やりました。

日高:VITESSEとはフランス語で速さという意味でしたね。

行徳:はい。ITに関する3つの戦略の頭文字を並べたものにもなっています。VIはバリューイノベーション、TESはテクノロジーシンプリフィケーション、SEはサービスエクセレンスです。

 ビジネスが必要としているバリューやイノベーションにITとして貢献する。一番重要なことですからVITESSEの取り組みのかなりの部分がこれに当たります。

 そのためにはテクノロジーをなるべくシンプルにしていき、さらにシステムを開発したり運用したりするサービスを改善していく。こういう戦略ですね。

日高:1つ前の中期計画であったBEST、最初のBはビジネスアラインメントの略でした。当時からビジネスに貢献するITを意識されていたわけですね。

行徳:VITESSEの一番いい点は「日産パワー88」という全社の中期経営計画と、準備とスタートの時期が一緒だということです。業務というか、ビジネスですね。それがどういうことを目指しているかをしっかり把握し、基本的に100%ビジネスに合わせて、バリューイノベーションの計画を立てることができました。

 たとえば製品のトレーサビリティー確保、モデル別の利益管理といったビジネスのテーマを受けて、関連するITプロジェクトを複数企画し、順次実施してきています。ビジネスとITの共通テーマをスタートの時から掲げられるようになったのは本当に大きいことです。

 BESTの時はちょっとイレギュラーで、日産全体の中期経営計画とBESTの時期が微妙にずれていました。それからビジネスアライメントといってもRTB(Run the business)コスト、つまりシステムを動かして維持する費用の削減が主でしたね。

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