日本図書館協会(日図協)は30日、作家村上春樹さんの名前が書かれた図書の貸し出しカードが母校で見つかったと報じた神戸新聞記事について「是認できない」との見解を示した。「図書館利用者の読書記録を同意なしに公表することはプライバシー侵害だ」と指摘している。

 調査報告によると、記事は10月5日付夕刊に掲載。「村上春樹さん 早熟な読書家」の見出しで、兵庫県立神戸高校(神戸市)の倉庫で、校史編さん中の元職員がフランス人作家の全集から貸し出しカードを発見した。紙面に掲載されたカードの写真には、同じ本を借りた村上さん以外の生徒名も写っていた。

 日図協は神戸新聞社と神戸高校に聞き取りを実施。その上で「高校が蔵書を廃棄する際、カードを適切に処分すべきだった。学校図書館は内面の自由を侵されることなく安心して利用できるようにしてほしい」と調査報告で学校側の責任も指摘。

 「図書館の自由に関する宣言」では、「知る自由」を保障するため「図書館は利用者の秘密を守る」とうたっている。

 神戸新聞社の小野秀明編集局次長は「一般の方の名前が載ったことは配慮に欠けたが、世界的作家であり、その文学の形成過程として報道に値するという判断は変わらない」と話している。(共同)