「裏」と「表」のリーダー
リーダーには2つのタイプがあります。
それは、「裏」のリーダーと「表」のリーダーです。
会社で例えると、「裏」のリーダーは、オフィスカーストの上位に位置する社員です。
例えば、「お局様」と揶揄されている社員などは、「裏」のリーダーに当てはまります。
一方、「表」のリーダーは、役職者などリーダーシップを発揮する立場の社員が当てはまります。
組織によってリーダーの選び方はそれぞれでしょうが、私はリーダーを選ぶにあたり、間違ってはいけないポイントがあると考えています。
それは、「裏」のリーダーを「表」のリーダーにすべきではないということです。
私は上司によく叱られます。
「部下ができないのは、上司であるお前が悪いからだ」
確かに一理あります。
あくまで一理です。
叱られながら、「ということはつまり、私ができないのはあなたの責任であり、突き詰めて考えたら社長が一番悪いということですね」といった反論を、頭の中に思い浮かべています。
しかし、上司が私に伝えたいことは、「そんなことではない」というのは十分理解していますので、反省すべきところは反省して、次に活かそうと気持ちを切り換えています。
ただ、どうなのでしょう。
「悪いリーダー」がいたとして、それは誰の責任なのでしょうか。
リーダー本人の責任なのでしょうか。
そんな社員をリーダーにした、上司の責任なのでしょうか。
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リーダーの資質を見極めるには
役職者ともなれば、次のリーダーを育てなくてはなりません。
周りを見渡して、リーダーの資質がある社員を見極めようとした場合、まず目に留まるのは、このような社員です。
・そつなく仕事をこなす。(本気になればもっと仕事をこなしそう)
・他の職員をある程度まとめている。(現場の意見を吸い上げてくれそう)
・上司に対して控えめに接する。(こちらの考えを吸収してくれそう)
・やや積極性に欠ける。(成功体験を積ませれば、積極性が芽生えそう)
仕事はこなせるし、ある程度の人望もある。
上司に対しては控えめで、伸びしろもたっぷりある。
これって、上司から見たら一番美味しそうな部下です。
ポテンシャルを秘めていて、ものすごく魅力的に映ります。
次のリーダーに持って来いの存在です。
しかし、魅力的に映るからこそ注意が必要です。
あなたが見ているのは、「裏」でしょうか「表」でしょうか。
組織には2つの世界があります。
「裏」の世界と、「表」の世界です。
ここをよく見極めなければなりません。
あなたが見ているポイントが裏ならば、いくら魅力的に映ったとしてもリーダーに選出すべきではないです。
なぜなら、「裏」のリーダーは、「表」のリーダーになる資質がないから「裏」止まりなのです。
エピソード①
「裏」を牛耳っているAという社員がいます。
自分の成長や組織の成長に興味がなく、上司や組織の悪口を振りまきます。
上司や組織の悪口ならまだしも、同僚や部下の悪口も振りまくからタチが悪いです。
Aは、仕事はキッチリこなします。
周囲の社員はAに目をつけられたくないので、慕っているフリをします。
「裏」では上司のことをボロクソに言っていますが、「表」では控えめに接します。
これが、人によっては「リーダーの資質」に見えるのでしょう。
「2:6:2の法則」をご存知ですか。
ビジネス系セミナーの、鉄板ネタの一つです。
10人いれば、2人は前向きな人間、2人は後ろ向きな人間、残りの6人は、どっちつかずの人間であるという法則です。
サイレントマジョリティーをどう取り込むか、また啓蒙するか。
あるいは、ノイジーマイノリティにどう対処するか、と言った話には必ず出てきます。
足を引っ張る側の「2」であるAは、組織の成長を止めるノイジーマイノリティです。
業務改善を図ろうとすれば、「上が勝手に業務を変える」「現場の意見を聞いていない」といったお決まりの言葉で、裏側から毎回抵抗してきます。
ある時、Aに提案しました。
「自分たちが思っているように業務を改善して欲しい」
ここが、Aの踏ん張りどころです。
A自身もそれを自覚していました。
「裏」から出てきて、初めて「表」でリーダーシップを発揮しようとしました。
しかし、そのやり方は「表」のリーダーがいつもやっているような方法でした。
つまり、自分が「裏」側でいつも批判の対象にしている方法を、そっくりそのまま実施したのです。
それでも結果がついてきたら良かったのですが、結局企画倒れで終わりました。
普段自分が全否定しているやり方を100%踏襲している自覚もなく、尚且つ失敗したことを失敗と捉えず、無理にやらされたということにして、しばらくは「自分」を保とうとしていたそうです。
このプロジェクトに、私はまったくフォローに入りませんでした。
今となっては、私が反省すべき点だと思います。
Aはサポートに入らなかった私を、「助けてくれなかった」と、裏でボロクソ言っていたようです。
ただ、もし私がサポートにしっかり入っていたとしても、「邪魔された」と、Aは企画倒れを私の責任にするでしょう。
エピソード②
エピソード①で出てきた社員Aは、まだ良い方です。
なぜなら、「表」のリーダーになっていないからです。
しかし、Aとまったく同じ資質を持っている、社員Bが私の同僚にいます。
社員Bが厄介なのは、役職に就いているということです。
嫉妬深く、成長が期待できそうな部下がいれば、自分の身が危険になると感じてターゲットにします。
以前、役職者間でタスク整理した時は、日頃から苦痛に感じているタスクを私が引き受ける話が出ました。
しかし、自分の役割が減るのが怖かったのでしょう。
結局自分でタスクを抱え込んで、今でも「これ嫌いなんだわ」と言っている始末です。
このような感じなので、部下に仕事をおろすことをしません。
「仕事が盗られる」と感じているのでしょう。
部下を育てるのが上司の仕事にもかかわらず、やってることは自らの保身のために部下を潰しているのです。
興味深いのは、AとBは同じ部署だということです。
似た者同士で一致団結したら良いのでしょうが、そうならないのが面白いところです。
互いに嫌い合っているようですが、それはつまり「自分の性格が大嫌い」と言っているのと同じです。
まとめ
このように、「裏」のリーダーを「表」に引っ張り出しても良い結果は得られにくいのです。
では、これは誰の責任なのでしょうか。
もちろん本人の責任もあるでしょう。
ただ、こういう問題は、「本人に資質がなかった」で片付けられがちです。
しかし私は、リーダーに選出した側の責任も大きいと考えています。
リーダー像は一つではありません。
力で引っ張っていくタイプや協調性を重視するタイプ、全て的確に指示するタイプやあくまでも後方支援に回るタイプなど様々です。
私は、どれもリーダーとして重要な要素だと思いますし、一人のリーダーがすべてを備えていなくても、組織の中には複数のリーダーがいるので、それぞれのタイプがリーダーシップを発揮したら良いと考えています。
ただし、「様々なタイプ」の中に、「裏」のリーダーは含まれません。
一見、魅力的に見える社員は注意が必要です。
その魅力が「表」なのか「裏」なのか吟味する視点を持つようにしましょう。
リーダーを選ぶ側にも責任はあるのですから。