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色あせないために

作者:松の慎
いくら想っていても届かない。
あなたの目には、あたしは映っていない。

それでも好きだと想うあたしは、ばかですか。

「きょーう♪一緒にかえろー」
「はいはい」
「ほらっ大輔も!」
「うん」

あたしと夾と大輔、3人で幼馴染み。

「あ、そーだ!あたし家庭科でカップケーキ作ったのwはいっ夾」
「いらねぇよ」
「そんなこと言わないで食べてよー」

そう言ってあたしは無理矢理夾にケーキを渡す。
そしてもう1つを大輔にあげる。

大輔はありがとうって笑って受け取ってくれるのにー。

「じゃあな」

夾が家に入っていく。
そしてあたしも隣の自分の家のドアを開けようとした。

「しのぶ」
「ん?どーしたの大輔」
「あの・・・さ、どうしてしのぶは夾が好きなの?」

だって夾はしのぶのことを好きじゃないって、もう目に見えてるのに。
・・・俺だったらしのぶを幸せにするのに。

「んーそうだなぁ。特に理由なんてないかもw気づいたらもうすっごく好きになってたの」
「でもっ」
「夾があたしのこと好きじゃなくっても」

どうして夾なんだ。
どうして俺じゃないんだ・・・

「明日はどうなるかわからないっしょ?」

そしてしのぶは「じゃあねw」と言って家へ入って行く。
どうしてそんな笑顔でいられる?
叶わないってわかってるのに、どうしてそんなに強くいられるんだよ、しのぶ。

「・・・俺が弱いだけか?」

ただしのぶを好きだと思う。
けど、幸せになってほしいから別に相手は俺じゃなくても良いんだ。

だけど、そんなんで幸せなのか?

*********************************************************

「あっ」

あたしは廊下で外を眺めてる夾の姿を見る。

「夾ー!」
「あーしのぶ」
「なにしてんのー?」
「暇だから外でも眺めてた」

どうせならあたしを見てくれれば良いのに。

「ねー夾」

どうしてあたしじゃだめなの?
どうしてあたしを好きになってくれないの?

「あたし夾のこと好きだよ」
「はいはい」
「じゃなくてっ本気で!」

好きな人には幸せになってほしいと願う。
だけど、好きな人を一番幸せにできるのはあたしって思ってるから。

「・・・俺はお前を好きになることはない」
「どうして?」
「今まで何度も好きだって言われても、しのぶを好きだと思うことはなかった」

あたしが夾を幸せにしたいって思ったから。

「やめとけよ、俺なんか」

ずっとずっと夾だけを見てきた。

「他にも男はたくさんいるだろ」

夾しか考えられないよ。

「それでも・・・あたしは夾が良い」
「しのぶ」
「思われてないってわかってるけどっ・・・・それでも夾を好きだって思うあたしはいけないの?!」

だって、こんなにも好き・・・
好きすぎて思いは溢れるばっかり。

「・・・ばか野郎」

そうして夾はあたしの前から立ち去る。

知ってるよ、夾はあたしのことを好きになんかならないって。
それでも、側で見てるだけなんて嫌だった。
だから気持ちをぶつけたかった。

あたしはブラウスの裾で涙を拭く。
情けないな、失恋した上に泣いちゃって・・・

だけど、それほど夾のこと好きだって証拠だよ。

好きだよ、夾・・・大好き。
どうして振られても振られても想いは募っていくんだろう。
どうして諦められないんだろう。

それでも、あたしは夾を追いかけていた自分が好きだった。
もうそれもいけないことなのかな・・・

**************************************************

「夾、しのぶのこと完璧に振ったんだって?」
「聞いたのか」

泣いてるしのぶに声をかけたら、無理に明るく振る舞いながら「振られちゃったw」って言った。
別に無理することなんかないのに。

だけど、それは俺では癒せないんだ。

「なんでしのぶじゃだめなんだ?」
「お前こそしのぶが好きなんだろ。良いのかよ、そんなこと言って」
「・・・だってしのぶには笑顔でいてもらいたいから」

俺じゃできないんだ。
しのぶは夾といるとき、一番楽しそうにするんだ。

そんなの・・・嫌ってほどわかる。

「俺にはお前が理解できねぇっ・・・普通好きだったら自分のものにしたいって思わねぇの?!」
「しのぶが幸せであるためには俺じゃ無理だから」
「んなのわかんねぇじゃんっ」
「わかるよ」

俺は好きな人のためなら自分を犠牲にできる。
そうなってしまったのは、しのぶが無理だとわかってるのに夾を追い続けるから。

「・・・俺はしのぶを好きにはならない」
「夾・・」
「だけど、あいつは大事な幼馴染みだからあいつになんかあったら助ける。ただそれだけだ」

叶わない恋をして、お互い傷つきあって、そして大人になってゆく。
俺たちにはそれしかできない。

それしか、ない。

きっと今、俺たちは同じことを思い出す。

『しのぶちゃん、どうしたの?』
『・・・大ちゃんも夾ちゃんもいつかしのぶのとこから離れてっちゃうのかなって思って』
『ばーかっ』
『俺らが離れていくわけないよ』
『ほんとに・・・?』
『俺らいつだって一緒だっただろ!それは変わんねぇよっ』
『そうそう』
『じゃあ・・・じゃあずっと3人一緒だねw』

幼い頃交わした約束。
まだ手にとるように覚えてる。

あの頃の自分たちが、色あせることのないようにってずっと願っていた。

「しのぶ、帰んの?」
「・・・」
「シカトすんなよ」

そう言って夾はフッと笑う。

「3人いつだって一緒だって言ったろ」
「・・・覚えてたの」
「たりめーだろ。なぁ大輔」
「もちろん」

あたしの想いが叶うことはないけれど
振り向いてもらうことなんてありえないけど
すぐに夾を諦めるってことも無理だけど・・・

だけどせめて、あの頃交わした約束をいつまでも守っていきたい。

「じゃあ3人でマック行こ☆今日は大輔のおごりねっw」
「はっ俺?!」
「そりゃ名案だな」
「まじかよー!!!」

一番輝いて見えたあの頃のあたしたちが
いつまでもずっと続きますようにと願って

今日も3人で一緒に進む。

        fin

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