最 近 の 無 罪 判 決 ⇒ 痴漢無罪判決
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日本の裁判での無罪率は、00年の地裁判決の場合、0・046%(ただし否認の場合は2〜3%)==⇒無罪判決確定数
「お前が犯人」何度も責め立て=釈放の男性が捜査批判−大阪府営住宅殺人(2015年3月19日配信『時事通信』) 大阪市東淀川区で昨年5月、自治会長だった大仲正文さん=当時(74)=が殺害された事件で、殺人容疑で逮捕され、処分保留で釈放された自治会の鈴木昭・元副会長(69)が19日、同市内で会見し、「証拠がないのに(捜査員から)『お前が犯人だ』と責め立てられ、自供メモを書いてしまった」などと捜査を批判した。会見には伊賀興一弁護士が同席した。 元副会長は昨年5月19日夜、大仲さんの顔面などを鈍器で殴り殺害したとして、先月25日に逮捕されたが、勾留期限の今月18日に釈放された。 元副会長によると、大仲さんとは飲み友だちで親しかったが、事件後の昨年8月ごろから府警に容疑者扱いされ、説明が家族の話と一致しないと、捜査員に「うそをついている。お前が犯人だからだ」と何度も責められた。昨年11月には自暴自棄に陥り、「私が大仲氏を殺害しました」と自筆メモを書いたという。 メモは翌日撤回したが、同じような調べは続き、任意段階で数十回に上った。元副会長は「何回もやられたら(誰でも)負けてしまう。無実の人でも『やった』と言ってしまうことが現実に起こり得ると思い知らされた」と振り返った。 あすへのとびら 再審冬の時代 事実審理を尽くす責任(15年2月22日配信『信濃毎日新聞』−「社説」) 「絶対にやっていない」。捜査段階から裁判まで一貫して無実を主張した。それが通らず刑務所に入った。反省文を書けば仮釈放されたが拒んだ。満期で出所してなお無実を訴え続ける。物的な証拠はない。あるのは「被害者」の証言だけだ。「この人がやった」と。 諏訪市役所の職員だった男性(46)が電車内で財布を置引したとされる事件。男性の再審請求を東京高裁は昨年12月、認めない決定をした。男性は今、異議申し立て中だ。 裁判のやり直しである再審は、確定した判決が間違っている可能性がある人を救済する非常手続きだ。開始するには厳しい要件が定められているが、最高裁は1975年、その門を広げる解釈を示した。疑わしきは被告人の利益にという刑事裁判の鉄則は、再審にも適用される―。「白鳥決定」と呼ばれる。今年で40年になる。 司法はいま、冤罪(えんざい)の訴えに真摯(しんし)に向き合っているだろうか。 <被害者の供述だけ> 2005年5月、JR新宿駅から午後9時発の松本行き最終特急「あずさ」が出発する5分ほど前の出来事だ。前県議とともに国会議員への陳情に行った帰りだった男性は、ホームの売店でお土産を買い、紙袋に入れてもらった。喫煙・自由席車両の窓側の空席でたばこを吸い、指定席を取ってあった隣の禁煙車両に移ろうとした。その時、当時18歳の少年に呼び止められた。「財布を取ったろう」 押し問答になりホームに連れ出された。少年の連れの当時18歳の少女が以下の証言をした。自分がホームで少年と話している時、男性がたばこを吸っていた席の隣席に置いた自分のバッグから財布を取り出し、紙袋に入れるのを窓越しに見た―。男性は現行犯逮捕され、警視庁に引き渡された。 警察は財布の材質から採取困難として指紋を採らなかった。このため裁判は、どちらの言っていることが正しいかが争点に。一審の東京簡裁は、裁判官が現場に足を運んで検証し、少女や少年の証言は信用できないと、無罪を言い渡した。主張が食い違うのに「被害者」側の言い分だけを重視し、裏付けを取らなかった捜査のあり方も批判した。 二審の東京高裁は一転、警察が少女の立ち会いで行った実況見分で、男性がバッグに手を入れるのは見えたとしている点などから少女らの証言は信用できると判断。懲役1年2月の実刑判決を出した。最高裁は弁護側の主張が上告理由に当たらないと門前払いし、有罪が確定。男性は失職した。 再審請求が認められるのは「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見した時」という規定が刑事訴訟法にある。男性は、工学の専門家に実験を依頼し、ホームの少女の位置からはバッグの様子が見えないとする意見書などを新証拠として請求した。東京高裁は「明らかな証拠といえない」と受け付けなかった。 再審のハードルは高い。かつて刑訴法の規定は、真犯人が別にいることを確実に証明した場合と解釈され、「開かずの門」と呼ばれてきた。それを変えた白鳥決定以降、免田、財田川、松山、島田の各事件で最高裁が死刑を確定させた4人の再審が認められ、いずれも無罪になった。開かずの門のまま死刑が執行されていたら取り返しがつかなかった。 しかし、90年代以降、再び新証拠を厳格に評価する傾向が強まり、今は「再審冬の時代」と言われる。そんな裁判所の姿勢が端的に表れた決定がある。 物証がなく「共犯者」とされる人の供述のみで殺人罪などに問われた女性が、懲役10年で服役後も無実を訴える大崎事件。地裁が認めた再審開始を高裁が04年に取り消した。「確定判決の安定を損ない、三審制を事実上崩す」と。 <三審制が問われる> ならば、三審制は冤罪防止に有効に機能しているといえるだろうか。最高裁は原則、事実関係の審理をせず、高裁の判決に憲法違反や判例違反がないかだけを見る。だから、元諏訪市職員は、結論が正反対の2回の判決のうち、片方の事実認定だけで有罪にされたことになる。 まれだが、最高裁も「職権」で事実審理を行う場合がある。例えば、防衛医大教授が電車内の痴漢の罪に問われた事件。一、二審とも有罪だったが、最高裁は「証拠が被害者の供述だけの場合は特に慎重な判断が必要」と事実認定をやり直し、無罪にした。 同様に被害者供述のみで、一審無罪の元諏訪市職員の場合はなおさら、「慎重な判断」のための事実審理が必要だった。 「疑わしきは被告人の利益に」。その鉄則は日本の裁判制度に貫かれているだろうか。 免田さんの年金 早く実現したい権利回復(13年6月5日配信『熊本日日新聞』―「社説」) わが国初の死刑囚再審で無罪となった免田栄さん(87)にようやく年金が支給される見通しとなった。年金支給は、免田さんの国民としての権利が回復したことを意味する。一日も早い法案の成立を望みたい。 免田さんは、人吉市で起きた祈祷師[きとうし]一家殺傷事件で1949年に逮捕され、52年に死刑が確定。6度目の請求で再審開始となり、83年に熊本地裁八代支部で無罪が確定した。 国民年金制度の施行は61年。免田さんは死刑囚として拘置中で、加入手続きや保険料免除申請ができず、社会復帰後も無年金状態が続いていた。国は年金制度のスタートにあたって、国民にあまねく告知したというのが基本的な立場だが、死刑囚だった免田さんに、獄中で年金制度の説明を受けた記憶はない。このため日本弁護士連合会が2002年、「冤罪[えんざい]で加入の機会を不当に奪われた」として、厚生労働相に支給措置を取るよう勧告していた。 加入機会が奪われ、その後受給している例は、北朝鮮による拉致被害者や日本に帰国した中国残留孤児のケースがある。免田さんについて民主党は当初、拉致被害者と同様の扱いを主張したが、「無罪判決後に刑事補償を受けている」と自民党が主張。各党の協議の結果、免田さんが本来納付すべきだった保険料を納めれば、65歳から現在までの年金相当分を国から一括支給、その上で今後の年金を支給することで折り合った。民主党によると、免田さんの保険料は約200万円、特別給付金は約1700万円となり、金額の不利益はないという。 法案は免田さんのほか、島田事件(静岡県)で再審無罪になった赤堀政夫さん(84)が対象。衆院法務委員会を構成する自民、公明、民主、維新、みんなの5党が4日までに合意、早ければ今国会に提出予定だ。 刑事補償は34年余にわたり獄中にいたことへの、いわば過去の償いだ。その後30年にわたって免田さんを無年金状態に置いた国会と法務省、厚労省はその不作為を批判されても仕方なかろう。今回の法案は議員立法だが、本来は内閣の責任において冤罪被害者を救済する法案を提出すべきではなかったか。 免田さんの年金問題は、法治国家としてのわが国の現状を雄弁に物語っている。無年金状態に置かれているという事態が、免田さんが置かれている厳しい現実を浮き彫りにしている。無罪判決は30年前の7月15日。まだまだ過去の事件ではない。 |
あなたが無実の罪で逮捕され…(13年5月19日配信『毎日新聞』―「余録」) あなたが無実の罪で逮捕されたとしよう。裁判で無罪を勝ち取るためには何が必要か。郵便不正事件で逮捕され164日勾留され、無罪となった厚生労働省局長の村木厚子(むらきあつこ)さんは弁護士からこう言われた ▲まず被告にとって「事件のスジ」が良いこと。捜査当局のストーリーに無理があり、立証を崩せそうな手掛かりがあることだ。2番目はタマ(被告のキャラクター)が良いこと。裁判官の心証は重要だ。見るからに人の良いおばさん風の村木さんはこの条件を満たしていた ▲3番目は検事の能力が低いこと。4番目は裁判官が良いこと。もちろん弁護士のやる気や能力も重要だ。これだけ条件がそろえば無罪は確実と思われるだろうが、有罪率99%の日本の刑事司法は甘くない ▲この話、本紙「くらしの明日」の筆者である大熊由紀子(おおくまゆきこ)さんが主宰する「縁(えにし)を結ぶ会」で一昨年村木さんが語ったものだ。毎年、プログラム発表と同時に参加申し込みが殺到する超人気の会で、今年は公職選挙法違反に問われた秋田県鷹巣(たかのす)町(現北秋田〈きたあきた〉市)の元町長、岩川徹(いわかわてつ)さんがえん罪を訴えた ▲村木さんのえん罪事件と似ているのだが、先駆的な高齢者福祉を実現した元町長は刑事裁判の被告席に座らされ続け、最高裁で有罪判決が確定した。会場には政治家や官僚や医療・福祉関係者にまじって検察改革に取り組んでいる検察庁幹部もいて、岩川さんの話を聞いていた ▲村木さんの言う「無罪の条件」はもう一つある。数々の無罪判決を勝ち取った弁護士が挙げたのは「運が良いこと」。どれだけ条件がそろっても、よほど運が良くなければ無罪判決は出ない、ということか。 |
刑事裁判で起訴事実を否認した被告の1審無罪率(一部無罪含む)が07年、過去10年で最高の2・9%に上ったことが08年6月2日、最高裁の集計で分かった。捜査段階の自白調書が証拠とされないケースの増加を示す最高検のデータもあり、各地裁で市民参加の裁判員制度を意識し、証拠評価が厳しくなっていることをうかがわせる。最高裁刑事局の集計によると、全国の地裁が07年、1審判決を言い渡した被告(6万9238人)のうち、公判で起訴事実を否認したのは4984人で、起訴事実のすべてが無罪となったのは97人、一部無罪が48人。このうち、殺人、強盗致傷、放火など裁判員裁判対象事件の否認被告は896人で、一部を含む無罪は19人(2・1%)。 否認被告の無罪率は、98年から02年まで1・2〜1・9%で推移したが、03年以降は2%台となり、06年は2・6%だった。一方、最高検の集計によると、裁判員裁判対象事件の1審で捜査段階の自白調書の任意性(強要や利益誘導などがなく任意に自白したかどうか)が争われ、調書の証拠請求が却下(一部含む)されたのは、05年が119件中3件、07年は70件中10件(08年06年02日配信『共同通信』)。 |
☆ 1審での死刑求刑に対する無罪判決は極めて異例で統計の残っている58年以降では8件。うち、80年代の4件の再審無罪事件以外で具体的に把握しているのは、64年の「名張毒ぶどう酒事件」の津地裁判決だけであるから、佐賀地裁判決は実に41年ぶり(最高裁広報課)で、07年11月28日の広島地裁の無罪判決(高裁も無罪)が3件目。また、07年3月19日の福岡高裁無罪判決(確定)で、死刑求刑の被告が1審・2審とも無罪になったのは、最高裁が統計上把握している78年以降、初めてのこととなる。
☆ 富山県警氷見署が02年に婦女暴行事件などで逮捕し、実刑判決を受けて服役した富山県の男性(当時34歳)が無実だったことが07年1月19日わかった。別の婦女暴行事件などで富山地裁高岡支部において公判中の松江市西川津町、無職の被告(51)が犯行を自供したもので、氷見署は同日、大津被告を婦女暴行などの容疑で再逮捕した。県警によると、同被告は、02年1月中旬、富山県西部で少女を暴行し、3月にも少女にナイフを突きつけて暴行しようとした疑い。氷見署は同年4月15日、当時、氷見市でタクシー運転手をしていた男性を婦女暴行未遂容疑で逮捕し、男性は富山地裁高岡支部で懲役3年の実刑判決を受け、確定した。県警は同日、男性の親族に事情を説明するとともに、謝罪の意を伝えた(富山冤罪事件)。
☆ 「兄を裁判から解放して」 無罪判決の男性妹が会見=選挙運動用ポスターを破ったとして公選法違反罪に問われ、12年2月21日の佐賀地裁判決で無罪を言い渡された佐賀市の知的障害のある男性(59)の50代妹が22日、同市の県弁護士会館で記者会見し、公判が2年以上続いたことなどから「兄をもう裁判から解放してあげて」と述べ、検察側が控訴しないように訴えた。
記者会見は、佐賀地検が判決後に出した「予想外」とするコメントで控訴の可能性があると思った妹が、「どうしても裁判を終わらせたい」と弁護士を通じて開いた。
男性の公判は2009年12月以降23回開かれ、途中から付き添った妹は「兄にとっても私にとってもつらかった。判決で兄が破ったとされたことは納得できないが、処罰されないことが一番」と心情を明かした。その上で、裁判長が男性に「もう佐賀の裁判所に来なくていいですよ」と語り掛けたことを挙げ、「検察は裁判長の言葉を重く受け止めて」と求めた。
会見に付き添った出口聡一郎弁護士は、佐賀地検に控訴断念の申し入れをすることも検討すると述べた。
☆ 東京高裁;オウム真理教元信者の菊地直子被告に逆転無罪判決(15年11月27日)=詳細版
2015年11月27日、オウム真理教による地下鉄サリン事件の2カ月後の1995年5月16日の東京都庁爆発物事件で殺人未遂ほう助罪に問われた教団の元末端信者、菊地直子被告(43)に対する控訴審判決があった。
大島隆明裁判長は「運搬した薬品が人を殺害するための化学物質の原料になると被告が認識していたとは認められず、テロ行為を手助けしたとするには合理的な疑いが残る」「1審判決は、根拠の不十分な推認を重ねたもので、是認できない」と述べ、懲役5年とした1審・東京地裁判決(2014年6月)を破棄し、無罪を言い渡した。
☆ 那覇地裁;飲酒運転の男性無罪 「故意と認めず」(15年11月5日)
沖縄県宜野湾市で酒気を帯びた状態で車を運転したとして、道交法違反罪に問われた同県の20代男性に対する判決があった。
男性は2014年10月6日午後7〜10時ごろ、友人宅で缶ビール4本、泡盛の水割り1杯を飲んだ。翌7日午前9時25分ごろ、宜野湾市で車を運転してタクシーへの追突事故を起こし、警察官の呼気検査で基準値の2.6倍の0・39ミリグラム(基準値は0・15ミリグラム)のアルコールが検出された。
男性側は「飲酒時から10時間以上が経過していた。アルコールが残っていると思わず、故意ではない」と主張。
安原和臣裁判官は、アルコールの検出自体は認定したが、飲んだ量や経過時間のほか、「酒臭さを感じなかった」とする事故被害者らの説明や飲酒から11時間半が経過し、睡眠も約6時間とっていたことなどからから、「アルコールが残っている認識があったと認定できない」と判断。男性は酒気帯びの認識がなかった可能性があると結論付け、無罪を言い渡した。男性は警察での取り調べに、酒気帯びを認識していたと供述したが、判決は「信用性を認めることができない」とした。
弁護人は「珍しい結果と言えるが、真っ当な判決だ。ただ今回は飲酒の症状が全くなかったケースでもあり、一般化できるものではない」と話した。
那覇地検は「上級庁と協議の上で対応したい」とコメントした。
☆ 大阪地裁;ポストカード窃盗に無罪判決 「郵便局が紛失の可能性」(15年10月28日)
郵便局でポストカードを盗んだとして窃盗罪に問われた大阪府内の女性(22)の判決公判があった。
女性(当時19歳)は2012年9月、両替に訪れた大阪市内の郵便局で、陳列棚にあったポストカードセット(530円)を盗んだとして、在宅起訴されていた。
女性は2012年9月、大阪市東淀川区の郵便局ではがきセット一つ(530円相当)を盗んだとして家裁送致され、在宅起訴された。
郵便局側は営業時間後の在庫確認で1セット足りないと判断し、防犯カメラの映像を確認。女性が不審な動きをしていたとして警察に被害届を出した。
公判で、女性は「両替のため郵便局には行ったが、盗んでいない」と否認。検察側は「カウンターに陳列された商品を手に取る女性の姿が、防犯カメラに映っていた」と主張していた。
上岡(かみおか)哲生裁判官は、「郵証拠とされた防犯カメラ映像で女性が棚の商品を手にとったように見えるだけで、盗んだとは言えない」と指摘したうえで、便局側の在庫管理について「以前から実際の在庫数と管理簿が違うのに、十分な調査をせず帳尻を合わせていたことがあった」として、「郵便局側が紛失した可能性も否定できない」と結論付けて無罪(求刑罰金20万円)を言い渡した。
日本郵便近畿支社は「判決内容を把握しておらずコメントできない」としている。
☆ 大阪地裁;強姦事件の再審、男性に無罪判決(15年10月16日)
強姦(ごうかん)罪などで実刑判決が確定して服役中、被害証言がうそと判明して釈放された70歳代男性の再審裁判の判決があった。
男性は、2004、08年に大阪市内で当時10歳代の同じ女性に性的暴行を加えたなどとして強姦、強制わいせつ両罪で起訴された。捜査段階から否認したが、1審・大阪地裁は09年、女性と目撃者の証言などから懲役12年の判決を言い渡し、最高裁で確定した。
しかし、服役中の14年、女性と、目撃者とされた女性の兄が男性の弁護人に対し、被害証言はうそだったと認め、男性は同年9月に再審請求した。大阪地検の再捜査で、「性的被害の痕跡がない」とする診療記録も見つかり、地検は同11月、男性の刑の執行を停止し、釈放した。
男性の勾留と服役は計約6年に及び、2015年8月に始まった再審では、検察側が「無罪判決が相当」と論告し、謝罪していた。
芦高(あしたか)源(みなもと)裁判長は、再審請求後に性的暴行がなかったことを示す診療記録が見つかったことなどから、当時の女性の被害証言や女性の兄の目撃証言は「虚偽供述とみるのが相当」と指摘し、無罪判決を言い渡した。大阪地検は同日、上訴権(控訴する権利)を放棄し、男性の無罪が確定した。
裁判長は判決理由を朗読した後、「身に覚えのない罪で長期間にわたり自由を奪い、計り知れない苦痛を与えたことは誠に残念。(今後は)被告人の言葉に真摯に耳を傾け審理したい」と反省の言葉を述べた。
なお、8月19日の再審の公判で弁護側は、検察が早く受診記録を確認し、裁判所が十分な審理をしていれば「冤罪(えんざい)」を防げた可能性があると主張。捜査・公判を通じて虚偽の被害証言が見逃された原因を明らかにするには、取り調べた検事らの証人尋問が不可欠と訴えたが、芦高源(あしたかみなもと)裁判長は「必要性がない」と退けていた。
大阪地検の北川健太郎次席検事は、「結果として無罪となるべき事件を起訴したことは遺憾。十分な証拠の収集・把握に努め、基本に忠実な捜査を徹底したい」と話した。
☆ 東京地裁;シンドラー元課長に無罪判決 高2死亡事故で(15年9月29日)
東京都港区の公共住宅で2006年6月3日、高校2年生
(当時16)がエレベーターに挟まれて死亡した事故で、業務上過失致死の罪に問われた「シンドラーエレベータ」(東京都江東区)の元課長ら4人の判決があった。高校生は、都立小山台高で野球に情熱を傾けた。事故の直前に2年生でただ一人のレギュラーになったばかりだった。将来は社会科教諭になりたい。そんな夢を抱いていたという。
エレベーターはシンドラー社製で、高校生が降りようとした際に扉が開いたまま上昇。高校生は建物の天井とエレベーターの床に挟まれた。
裁判では、事故原因とされるブレーキ部品の異常摩耗の発生時期が最大の争点となった。
検察側は、シンドラー社が保守点検をしていた04年11月には「異常摩耗が始まっていた」と主張。
最終弁論で弁護側は「エレベーターの保守点検はきちんと行われていた。事故を予想することはできなかった」と主張。製造元のシンドラー社の元保守第2課長の被告(46)は「点検の際に異常はなかった。私たちに全く落ち度はない」と述べた。保守点検会社「エス・イー・シーエレベーター」(東京都台東区)の幹部ら3人も「法的責任はない」と主張した。
杉山慎治裁判長は、検察側の04年11月には「異常摩耗が始まっていた」との主張を科学的根拠がない」として否定。エス社の点検員が最後に点検した事故9日前の06年5月時点にエス社が実施した点検時には異常摩耗は既に始まっていたが、「その兆候を見逃した原因は、エス社の点検員が注意して確認せず、摩耗の兆候に気づかなかった同社の保守管理体制にある」と結論づけ、シンドラー社元保守第2課長の被告(46)については「事故を予想できなかった」として無罪(求刑・禁錮1年6カ月)とした。
一方、事故時に保守業務を担当していたエス社の3人の被告については「事故を予想できた」と判断。同社の会長の被告(72)と社長の被告(56)は禁錮1年6カ月執行猶予3年、元メンテナンス部長の被告(69)は禁錮1年2カ月執行猶予3年とした。3人の被告側は「点検員なら視覚、聴覚など五感の作用で摩耗の有無を判断できる」と主張したが、判決は「五感で足りると軽信し、結果を回避する他の措置を講じることなく漫然と放置した」と退け、会長と社長の両被告については「安全確保に対する意識は低く、厳しい非難に値する」と指摘した。
ただし、判決は量刑理由の中で、事故の一次的な責任について「ブレーキコイルを製造した会社に帰せられるべきであり、これを採用したシンドラー社の問題が大きい」と指摘。エス社の被告らの注意義務違反は「間接的なものに過ぎない」と述べた。3人の弁護側は控訴する方針。
この事故は、国がエレベーターの安全対策を見直すきっかけとなった。検察が鑑定をやり直すなどし、発生から判決までに9年余りを要した。
また、事故をめぐっては、消費者安全調査委員会が14年7月、「新旧の保守管理業者間で情報が十分に共有されていなかった」などとする経過報告を出している。
閉廷後、約80人の支援者を前に高校生の母親は、「メーカーは安全の責任を持つという判決が出てほしかったが、状況証拠が認めてもらえず残念です」と語った。
事故後、励まし合って生きてきた夫は病に倒れ、裁判の結果を見届けることなく亡くなった。ちょうど1年前の2014年9月29日、母親は法廷で意見陳述して訴えた。「息子の人生を、夢を返して、家族の幸せを返して」と。
あれからエレベーターには一度も乗っていないという。12階の自宅まで264段。息子への思いを巡らせながら夏も冬も階段を一歩一歩、上り下りしてきた。
☆ 高松高裁;コンビニ店員に逆転無罪 15歳にたばこ販売で(15年9月15日)
コンビニエンスストア「ローソン」の香川県のフランチャイズ店で2013年、当時15歳の高校生1年生の少年にたばこを販売したとして、未成年者喫煙禁止法違反の罪に問われた男性店員(44)と店舗を運営していた会に対する控訴審判決があった。で、高松高裁は15日、
店員は2013年4月22日に勤務中、タッチパネルで「私は20歳以上です」のボタンを押した少年にたばこ2箱(820円)を販売した。6日後、警察官がたばこを吸う少年を見つけ、少年の証言から店を特定。店員は少年と知りながらたばこを売ったとして在宅起訴された。
半田靖史裁判長は、少年はタッチパネル式の年齢確認システムで「私は20歳以上です」の表示部分を押しており、「店員はレジ操作などで少年を見たと確認できるのは2秒だけで少年の方を詳しく見ていなかったと推認される」と指摘。「少年は約167センチと成人でもおかしくない身長で、黒いジャージー姿で制服も着ていなかったため、未成年とは気付かなかった可能性がある」としたうえで、「未成年者と認識して販売したと認めるには合理的疑いがある」として1審判決のうち店員を有罪とした部分を破棄して無罪とした。また、店舗側については無罪を支持して検察側の控訴を棄却した。
2014年10月の1審・丸亀簡裁判決は、にきびがある少年の容貌などを基に「一見して未成年と分かる」と判断、店員を求刑通り罰金10万円とした。一方、指導や監督責任を問われた店舗側は年齢確認システムの導入などから無罪(求刑罰金10万円)とした。店員と検察側が控訴した。
☆ 横浜地裁;飲酒検知「拒否の事実に疑い残る」…無罪判決(15年9月9日)
警察官が求めた呼気検査を拒んだとして、道交法違反(飲酒検知拒否)に問われた横浜市の男性(39)に対する判決があった。
男性は2014年9月4日夜、同市内でバイクを運転。飲酒検問中だった警察官に求められた呼気検査を拒んだとして、現行犯逮捕された。男性側は公判で「呼気検査は求められず、拒否したこともない」と主張。
鬼沢友直裁判長は、逮捕した警察官の証言なども踏まえ、「検査の要求が相当曖昧な形で行われた可能性を否定できず、男性が拒絶する意思を明確にしたと認定できない」と結論付け「呼気検査拒否の事実があったと認めるには合理的な疑いが残る」として、無罪(求刑・罰金35万円)の判決を言い渡し
横浜地検は「判決内容を精査し、適切に対応したい」としている。
☆ 福岡地裁;「気を失うまで一瞬」運転手に無罪判決(15年8月17日)
タクシーを運転中に持病の薬の副作用で意識を失って、歩道の男性をはねて重傷を負わせたとして自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)に問われた元タクシー運転手の被告(71)に対する判決があった。
被告は2014年10月、福岡市博多区をタクシーで時速約30キロで走行中に意識を喪失。清掃作業をしていた50代男性をはね骨盤骨折などの重傷を負わせた。
争点は、被告がめまいを覚えてから意識喪失までに運転を中止できたかどうかだった。検察側は「意識を失うまでに数秒あり、十分な時間があった」と主張していた。
潮海二郎裁判官は、ドライブレコーダーの記録などから「頭が熱くなり、そのまま気を失った」という被告の供述の信用性を認めたうえで、「体調の異変から気を失うまでの間は一瞬」として、あわせて、これまでに薬による意識障害もなく、予見可能性も認めなかったことから、運転中止は困難だったと判断し無罪(求刑・禁錮1年4月)の判決を言い渡した。
福岡地検は「判決内容を精査し適切に対応したい」とコメントした。
☆ 福岡地裁;工藤会系幹部ら強盗無罪 「被害供述信用できず」(15年8月7日)
借金返済を免れるため男性に暴行したとして、強盗致傷罪などに問われた特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)系組幹部ら3人の裁判員裁判の判決があった。
3人は組員の借金5万円の返済を免れるため、2009年11月、男性を福岡県春日市に呼び出して「山に連れていって殺そうや」と脅迫し、車で山中に連れて行って顔を殴り、重傷を負わせたとして起訴された。被害者らの供述以外に有力な証拠がなく、供述の信用性が争点だった。
松藤和博裁判長は「暴行を受けたという現場や移動経路、手段を被害者は具体的に説明できない。3人以外の暴行によるけがの可能性もある。借金返済を断念させるとの事前の共謀も認定できない」と判断したうえで、「被害者の供述は不自然で信用できない」として強盗致傷罪を認めず、2人を無罪とした。残る1人は暴行罪を認定したが、時効が成立し、裁判を打ち切る免訴とした。
免訴となったのは同会系組幹部の被告(38)。無罪の2人は共謀したとされた同会系組幹部の被告(35)と同組員被告(31)。
☆ 金沢地裁;犯罪の証明がない…「携帯電話詐欺」に無罪判決(15年8月7日)
携帯電話を利用する意思がないのに販売店に契約を申し込んで携帯電話をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた石川県白山市の20歳代女性に対する判決があった。
女性は2013年11月、野々市市や金沢市の家電量販店で、自身が携帯電話を使う意思がなく直ちに解約するのに契約を申し込み、携帯電話計4台をだまし取ったとされる。白山署が任意で捜査し、2014年10月に詐欺容疑で金沢地検に書類送検、同地検が2015年2月に在宅起訴した。
公判で検察側は、「契約は利用者が2年間携帯電話を利用することを前提にしていた」と主張した。
井草健太裁判官は、契約の約款には解約時期を制限する規定などは見当たらないと指摘し、「犯罪の証明がない」と結論づけ、無罪(求刑・懲役10月)の判決を言い渡した。
同地検の尾関利一次席検事は「上級庁と協議の上、適切に対応する」とした。
☆ 東京高裁;東京・江戸川の強盗致傷事件 2審も無罪 「犯人とすり替えた可能性否定できず」(15年7月1日)
東京都江戸川区の住宅に男2人とともに押し入り、現金を奪ったとして強盗致傷罪などに問われた男性被告(33)の控訴審判決があった。
事件は、2009年7月に発生。宅配業者を装って住宅に押し入り、住人の女性の顔を殴って現金約1300万円を奪ったなどとして男性被告を含む3人が起訴された。被告は事件への関与を否定していた。
大島隆明裁判長は「男が被告を犯人とすり替えて供述をした可能性は否定できない」と述べ、無罪とした1審・東京地裁の裁判員裁判の判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
1審判決は、一緒に事件を起こしたとされた男(29)=懲役2年6月確定=の供述は信用できないとした。
☆ 福岡高裁;工藤会系幹部、2審も無罪 建設会社社長銃撃事件で(15年6月29日)=確定
福岡県中間市で2012年、建設会社社長(当時)の男性を銃撃したとして殺人未遂罪などに問われた、ともに特定危険指定暴力団工藤会系組幹部2人の控訴審判決があった。
2人は、2012年1月17日午前5時半ごろ、共謀して中間市の黒瀬建設中間支店前の路上で、男性に拳銃を発砲し、腕や右胸に重傷を負わせたとして起訴された。
検察側は1人に無期懲役、もう1人に懲役20年を求刑していた。
福崎伸一郎裁判長は、いずれも無罪とした2013年11月の1審判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
1審・福岡地裁小倉支部判決は、2人のうち1人について「拳銃発射の時期や弾丸の種類が分からない。犯人とするには疑いが残る」と指摘。別の1人も「犯人とする前提を欠く」として無罪を言い渡した。
福岡高検は7月13日、「上告理由がない」として、上告しないこと明らかにした。これで無罪が確定。
☆ 神戸地裁;重傷交通事故:「信号機に不備」被告無罪+改善求める判決(15年6月10日)
安全確認を怠り、対向車の男性に重傷を負わせる交通事故を起こしたとして自動車運転過失傷害罪に問われた男性被告(47)に対する判決があった。
被告は2013年7月24日午前10時16分ごろ、神戸市東灘区魚崎浜町の市道で、南北の道路から東と南東方向にそれぞれ枝分かれする変形交差点で大型トラックを北向きに運転し、南東に右折。被害に遭った男性の軽貨物乗用車は西向きから南に左折し、出合い頭に衝突、男性は股関節骨折の重傷を負ったという。
事故当時、被告側の信号は青、男性側は赤だが、左折可能の矢印が表示されていた。同様の表示が7秒間続く信号周期だった。
平島正道裁判長は、検察側の「右折直前に進行方向を見て安全を確認する義務がある」との主張を、右折する車の運転手は、東から左折する車の対面信号は赤と考え、左折してくるのを想定していないとして「信号周期に対する信頼を超えた自動車運転上の注意義務を課すのは相当でない」と判断。また、南東の道路の存在が設定の際に見落とされていた可能性にも触れ「双方の走行を同時に可とする交通規制が相当ではないことは明らか」と不備を指摘。「信号機に交通整理の不備があり、事故当事者の刑事責任に転嫁するのは相当でない」と無罪(求刑・禁錮8月)を言い渡した。さらに「本件交差点の信号周期は速やかに改めるべきだ」と関係機関に早期の改善も促した。
兵庫県警交通規制課によると、現在も信号周期は同じという。今後の対応については「コメントできない」としている。
神戸地検の吉池浩嗣(ひろつぐ)次席検事は、「意外な判決で驚いている。判決内容を精査した上、上級庁と控訴の要否について協議したい」とのコメントを出した。
☆ 最高裁第2小法廷;不適切な取り締まりで略式命令破棄し無罪判決(15年6月8日)
2008年11月、埼玉県三郷市の東京外環自動車道で、車両通行帯違反で県警に摘発された男性が、さいたま簡裁から罰金6千円の略式命令を受け、確定した事案で、その後、県警の調査で、県公安委員会による車両通行帯の指定がないまま取り締まっていたことが発覚した事件に対する判決があった
有罪確定後に裁判などの法令違反が見つかった際、検事総長が最高裁へ申し立てる「非常上告」を受けた措置。
小貫芳信裁判長は、埼玉県警の交通違反の取り締まりに不適切な点があったとして、職業不詳の男性(26)に対する道交法違反罪の略式命令を棄却し、無罪判決を言い渡した。罰金が返還される。
☆ 福岡地裁;偽示談書提出、男性に無罪判決 福岡地裁、民事と逆判断(15年4月20日)
交通事故相手の女性が署名したと見せ掛ける示談書を民事訴訟で提出したとして、偽造有印私文書行使と詐欺未遂の罪に問われた無職男性(38)に対する判決があった。
事故は2009年11月、男性が運転するバイクと女性の乗用車が衝突、女性側の保険会社が男性に賠償を求めて民事訴訟を起こした。男性は訴訟で、女性の署名や押印があり「修理費を弁済します」と書かれた偽の示談書を提出したとして起訴された。
平塚浩司裁判官は、検察側の「女性は事故の責任を否定していた。弁護士にも示談書の存在を告げておらず不自然」との主張を、男性とみられる人物が自宅周辺をうろつき、女性が不安を抱いていたと指摘。「執拗な示談交渉を避けるため、署名に応じることはあり得ないとはいえない」と退けたうえで、書面の鑑定で女性の掌紋が確認され、「本人の署名と考えるのが自然」と結論付け、無罪判決(求刑は懲役3年)を言い渡した。
示談書の真偽が争われた民事訴訟では福岡地裁が偽造を認め、男性に支払いを命じる判決が確定しており、逆の判断となった。
福岡地検の長谷透次席検事は「判決を精査し、適切に対応したい」とコメントを出した。
☆ 京都地裁;「受け子の男から運転を頼まれただけ」オレオレ詐欺関与の男性に無罪 「認識に疑い残る」と(15年4月17日)
息子を装って現金を要求する電話をかけ、高齢の女性から1千万円をだまし取ったとして、ほかの人物と共に詐欺罪に問われた大阪市生野区のアルバイト男性(34)に対する判決があった。
男性は2013年7月、氏名不詳者らと共謀、京都市上京区の女性に「金を返さないといけない」などと電話し、受け子の男(23)が喫茶店で1千万円をだまし取ったとして、同年12月に起訴された。
公判で被告は「債権回収の仕事だと思っていた。受け子の男から車の運転を頼まれただけ」と無罪を主張していた。
渡辺一昭裁判官は、「現金を受け取った理由や経緯、受け取り先などの事情を知っていたとは認められず、詐欺の認識があったかどうかについて合理的疑いが残る」と述べ、無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。
☆ 大阪地裁堺支部;保険金詐欺、男性に無罪 「供述の信用性に疑問」(15年4月15日)
知人らと共謀してうその診断書を作り、保険金35万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元保険代理店社員の男性(48)=堺市美原区=に対する判決があった。
2014年4月に逮捕、起訴された男性は、逮捕後の取り調べで「不正請求を知っていた」と自白。翌5月に保釈されたが、公判では「知らなかった」と否認していた。
松本英男裁判官は自白の任意性を認めたが、不正請求と認識した時期について、主犯格の男の供述と矛盾すると指摘。「男性の供述の信用性に疑問がある」と共謀を認めず無罪判決求刑は懲役1年6月を言い渡した。
☆ 東京地裁立川支部;「てんかん発作で心神喪失」万引きで無罪(15年4月14日)
ゲームソフトなどを万引きしたとして窃盗の罪に問われた東京都練馬区の男性(51)に対する判決があった。
男性は2013年9月、東京都武蔵野市の家電量販店でヘッドホンやゲームソフトなど計約4万5千円相当を盗んだとして、起訴された。
裁判では男性の精神鑑定が行われ、鑑定医は男性が「NCSE」と呼ばれる、けいれんを伴わないてんかん発作が続く状態だった可能性が高いと指摘した。
阿部浩巳裁判長は、鑑定結果を「高い信用性がある」と評価し、「被告は当時、けいれんを伴わないてんかん発作による意識障害で、もうろうとした状態だった可能性が高い」と指摘。「被告は当時、行動を制御する能力がないに等しい心神喪失の状態で罪にならない」として、無罪(求刑懲役1年10カ月)を言い渡した。
男性の弁護人の林大悟弁護士は「あまり知られていないNCSEについて適切に判断した画期的な判決だ。有病率も低い珍しい症状で、発作が起きていることもわかりにくい。判決はこれからの先例となり得る」と評価した。
東京地検立川支部の名倉俊一副部長は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対処したい」とした。
☆ 横浜地裁;幼稚園の元園長に無罪判決 神奈川・大和のプール事故(15年3月31日)
神奈川県大和市の幼稚園のプールで2011年7月11日、学校法人西山学園が運営する「大和幼稚園」で、園児(当時3)が水死した事故で、業務上過失致死罪に問われた元園長の被告(67)に対する判決があった。
事故は、直径4メートルあまりのプールで午前11時半すぎに10分ほど、約30人の園児がプール活動をしていた時に起きた。水の深さは約20センチ。プール内で園児が浮かんでいるのを職員が見つけ、病院に運ばれたが死亡が確認された。
検察側は、元園長は教諭らに十分な安全教育や訓練をしていなかったうえ、複数でプール活動を監視させるなど事故を防止するべき義務があったのに元担任教諭=同罪で罰金50万円が確定=1人に担当させた過失があると主張してきた。
一方の弁護側は「現場の責任は個々の教諭が担っており、園児から目を離さないよう日頃から指導していた」と反論。「プールは1人でも全体が把握できる構造で、複数で監視する義務はない」などとして元園長は無罪だと訴えてきた。
近藤宏子裁判長、「安全管理の責務や行動基準を逸脱していたとまでは言えない」として、無罪(求刑罰金100万円)とする判決を言い渡した。
この事故は、暮らしにかかわる事故の原因を調べるために設けられた国の消費者安全調査委員会が報告書を公表した初めてのケースとなった。2914年6月、事故防止への教育が不十分だった可能性などを指摘し、文部科学省などに対応を提言。これを受け、文科省は各都道府県教委に改めてプール活動で子どもから目を離さないことや適切な救護措置を求める通知を出すなどした。
判決後園児の父親は、「残念としか言いようがない」と述べたうえで、「僕が落ち込んでも仕方がない。息子もそれを望んでいないし、終わりではない」と話し、検察に対し「できれば控訴をお願いしたい」と語った。
☆ さいたま地裁;妻子殺害、元夫に無罪=「別人放火の可能性」(15年3月23日)
埼玉県志木市で2008年、自宅に放火し妻子2人を殺害したとして、殺人と現住建造物等放火などの罪に問われた元夫の被告(40)の裁判員裁判の判決があった。
被告は、志木市の木造2階建ての自宅に火をつけて全焼させ、2階で寝ていた妻(当時33)と次女(当時4)を焼死させたとして、火災から約5年後の2013年8月に逮捕された。捜査段階から一貫して関与を否定していた。
公判では、@出火原因は放火かA放火ならば被告によるものか、が争点になった。弁護側は@は漏電の可能性、Aは精神的に不安定だった元妻によるものの可能性を主張していた。
河本雅也裁判長は、漏電などの痕跡がないことから、出火原因を放火と認定。一方、火災当日の朝に撮影された近くの防犯カメラの映像や燃焼実験の結果などから、着火された時間に被告は既に外出しており、被告による放火と考えるのは、不可能または不自然だと指摘。さらに、服用していた睡眠薬などの影響で、死亡した元妻が火を付けた可能性にも言及。また被告が事件当時、不倫相手との再婚のため、妻との離婚を焦っており、妻子を殺害する動機があったという検察側の主張については「元妻は別として、次女を殺害する動機までは認められない」とし、「被告の外出後に、被告以外の者が放火した可能性を否定できない」と結論付け、無罪(求刑無期懲役)を言い渡した。
片山巌・さいたま地検次席検事は、「判決内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対処したい」とは話した。
☆ 京都地裁;強制わいせつ罪被告に無罪、客観的証拠なし(15年3月20日)
電車内で女子高校生の胸を触ったなどとして、強制わいせつの罪に問われた京都府大山崎町の男性会社員(28)に対する判決があった。
男性は2014年5月22日午後7時ごろ、JR山陰線(嵯峨野線)嵯峨嵐山―亀岡間を走行中の電車内で、女子高校生の胸を触るなどしたとして逮捕、起訴された。男性は、公判で無罪を主張していた。
渡辺美紀子裁判官は、女性の証言だけで目撃者がおらず、客観的証拠がないと指摘したうえで、「女性が被害に遭ったかどうか疑いが残る」と判断し、無罪(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。
☆ 青森地裁弘前支部;ミニカー万引父子に無罪判決 青森地裁 無免許運転は実刑(15年3月19日)
ミニカーを万引したとして窃盗罪などに問われた父子の被告2人に対する判決があった。
2人は青森県五所川原市の土木作業員(55)と無職の長男(28)。2人は青森県鶴田町のショッピングセンターで2014年8月、ミニカー17個を盗んだなどとして起訴された。
森大輔裁判官は店の在庫管理が正確でなかった点を挙げ、直接証拠とされた警備員の目撃証言は「客観的裏付けに乏しい」と指摘。「両被告の来店前にミニカーが消失していた可能性を否定できない」とし、窃盗について無罪判決を言い渡した。
無免許運転を繰り返したとする道交法違反罪の成立は認め、作業員に懲役1年4月、長男は懲役1年(求刑は2つの罪を合わせて懲役6年と懲役3年6月)を判決した。だった。
検察側は控訴を断念し、弁護側が4月2日、量刑は重すぎるとして控訴した。
青森地検は「コメントはない」とし、弁護人は「検察は証言を丸のみせず証拠を整理、検証するべきだった」と話した。
☆ 福岡地裁;暴力団組長に無罪判決 「給付金詐取」で(15年3月12日)
国の求職者支援事業を悪用し、失業者らに支給される給付金をだまし取ったとする詐欺罪に問われた指定暴力団道仁会(福岡県久留米市)系暴力団組長(38)の判決があった。
久留米市と佐賀県嬉野市に正規のファイナンシャルプランナー講座を開いたように偽装し、2011年4〜8月、給付金など約1600万円を詐取したとして起訴され、検察側は懲役5年を求刑していた。
野島秀夫裁判長は、無罪を言い渡した。
☆ 大阪高裁;「また殺されます」助け求める110番決め手に…女性刺傷事件で男性に逆転無罪(15年3月10日)
内縁関係にあった女性を刺して負傷させたとして傷害の罪に問われた無職男性(54)の控訴審判決公判があった
男性は2014年3月、大阪市東住吉区の当時の自宅で女性の腹部を包丁で刺し、軽傷を負わせたとして起訴された。
男性は「女性が(女性の)妹と包丁の奪い合いをしていた際、誤って刺さった」と主張していた。
的場純男裁判長は、男性の犯行とする女性の証言と傷の状況が合わないと指摘。また、男性が110番した際、警察に「また殺されます」と助けを求めていたことなどから、男性が刺したとは認定できないと結論付け、懲役1年8月の実刑とした1審・大阪地裁判決を破棄、無罪を言い渡した。
☆ 熊本地裁;事務所譲渡詐欺認めず無罪 「実質経営者」と(15年3月9日)
司法書士事務所の経営権を譲渡すると虚偽を持ち掛け、知人から2500万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた宮崎県都城市の会社員の男性(57)に対する判決があった。
男性は2007年、知人の男性に経営権がないにもかかわらず売却話を持ち掛け、現金を受け取ったとして起訴され、検察側は懲役4年6月を求刑していた。
検察側は「男性は司法書士ではないため事務所の経営者ではない」と主張した。
大門宏一郎裁判官は、事務所の賃貸借契約の連帯保証人になったり、事務所の経営方針や事務員の給与を決めたりするなど、実質的な経営者だったと判断し、無罪判決を言い渡した
男性は判決後、取材に「ほっとした。証明できてよかった」と話した。熊本地検は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とコメントを出した。
☆ 札幌地裁;作業員転落死、現場責任者に無罪 安全帯準備の義務なし(15年3月9日)
札幌市で2011年、高所作業員が転落死した事故をめぐり、安全帯を着用させなかった現場責任者に業務上過失致死罪が成立するかどうかが争われた刑事裁判の判決があった。
男性被告は、2011年10月17日、札幌市中央区のビル屋上の防水工事中に男性作業員=当時(51)=が約10メートルの高さから転落、頭を強く打ち同11月2日に死亡した。被告は転落防止義務を怠ったとして起訴された。
多々良(たたら)周作裁判官は、被告が現場責任者だったとはいえ、元請けなどとの関係では従属的な立場にあったと認定。安全帯を含む現場で使う資材は元請けが用意するもので、現場責任者が準備するものではなかったとして、現場責任者だった札幌市の防水工の男性被告(47)に無罪(求刑は罰金50万円)を言い渡した。
☆ 東京高裁;強姦致傷事件で逆転無罪 裁判員の判決破棄(15年3月6日)
路上で声をかけた女性に乱暴し、けがを負わせたとして、強姦(ごうかん)致傷の罪に問われた男性(41)の控訴審判決があった。
東京地検が2013年12月、女性を乱暴し、約2週間のけがを負わせたとして男性を起訴していた。
八木正一裁判長は、事件の直前に女性が男性にメールアドレスを教えていたことや、通行人に助けを求めなかったことなどを不自然と指摘したうえで、「女性の証言の信用性を認めた1審の判断は合理的と言えない」として、懲役3年6カ月とした1審・東京地裁の裁判員裁判の判決を破棄し、無罪を言い渡した。
男性側は「性的行為について同意があった」と無罪を主張したが、2014年7月の1審判決は「同意はなかった」とする女性の証言を認めて有罪とした。
☆ 名古屋地裁;美濃加茂市長に無罪判決 贈収賄事件で(15年3月5日)
岐阜県美濃加茂市への浄水設備設置をめぐる贈収賄事件で、事前収賄などの罪に問われた市長の藤井浩人市長(30)に対する判決があった。
「全国最年少市長」と話題になった藤井市長は、市議だった2013年3〜4月、設備会社社長の受刑者(44)=贈賄罪や金融機関への詐欺罪で実刑判決が確定=から浄水設備導入に向けて職員に働きかけるよう依頼を受け、見返りに2度にわたって現金計30万円を受け取ったとして、起訴されていた。
社長は当初、藤井市長と2人だけの会食で現金を渡したと供述。しかしその後、同席者も含む3人だったと変更した。
公判では、「市長に現金を渡した」などと認めた社長の証言の信用性が争われた。
検察側は、社長の金融機関の出入金記録や、2人がやりとりしたメールの存在を指摘。社長の証言と一致すると主張していた。一方、藤井市長は「現金を受け取った事実は一切ない」と無罪を主張していた。
鵜飼祐充裁判長は、1回目の現金授受に関する社長の捜査段階での供述の変遷を取り上げ、「強く印象に残るべきことなのに、不自然と言わざるを得ない」とした。さらに社長が捜査段階で2回目の現金授受を先行して自白し、公判で「1回目のことはよく覚えていなかった」と述べた点について、「賄賂を渡すのは非日常。渡したのなら記憶があったはずだ」と疑問を呈した。
また、検察側が証言の支えとした出入金記録については、「賄賂の原資になりうるとしても授受を裏付けるわけではない」と指摘。社長が「なんでも遠慮なくご相談下さい」と送ったメールは、「さまざまな解釈ができる」と分析。賄賂の存在を示すとする検察側の見方を否定した。
そのうえで、「贈賄を認めた業者は、現金授受に関して事実を語ったか疑問だ」として、無罪(求刑懲役1年6カ月、追徴金30万円)の判決を言い渡した。
一方、藤井市長の弁護団が主張していた「供述の誘導」について、鵜飼裁判長は「捜査側と取引をした事実はうかがえない」と判断。社長が「虚偽」の説明をした背景として、当時、多額の詐欺事件の捜査が進められていたことを挙げ、「なるべく軽い処分になるよう、別の重大事件に目を向けさせようと考えた可能性がある」と指摘した。
贈賄罪や金融機関への詐欺罪に問われた社長は別の裁判長が審理した。今年1月に懲役4年の実刑判決が言い渡され、すでに確定している。
鵜飼裁判長は最後に「市政に尽力されることを期待します。頑張って下さい」と藤井市長に語りかけた。
これまでの公判で、愛知県警の取り調べの中で、「こんなはなたれ小僧を選んだ美濃加茂市民の気が知れない」「美濃加茂市を焼け野原にしてやる」などと言われたことを明らかにしていた藤井市長は、判決後、弁護団とともに記者会見し、「市民の方を侮辱するような取り調べをされた。このような点を正して欲しい」「逮捕当初から無実の主張は変わらなかった。しかし、起訴されれば99%有罪になると聞いていたので、ほっとした」と述べた。また、鵜飼裁判長から、判決言い渡し後に言葉を掛けられたことについて「ありがたかった。今後もしっかりと頑張っていきたい」と振り返った。捜査機関には「厳しい取り調べも受け、市民を侮辱するようなことも言われた。泣き寝入りする人もいるだろうと身をもって感じた。二度とないようにしてほしい」と訴えた。
名古屋地検の大図明次席検事は判決後、取材に応じ、「供述だけでなく、資金の流れやメールなどの証拠があった」と述べ、立証は尽くしていたとの見解を示した。判決が、1回目の現金授受に関する中林正善社長の捜査段階の供述のあいまいさを指摘したことに質問が及ぶと、「人の記憶だから、詳細まで覚えているとは限らないと考えている」と答えた。今後、判決内容を検討し、上級庁と協議して対応するという。
なお、藤井市長は大学卒業後、学習塾経営を経て、2000年の市議選でトップ当選。1期目途中で市長選に出馬し、28歳の「全国最年少市長誕生」として脚光を浴びた。藤井市長の逮捕・起訴後に行われた署名活動では、同市の人口約5万5千人のうち、2万人超の18歳以上の市民が市長続投や早期釈放を求めて署名。刑事被告人となった市長を支援するという異例の展開をたどっていた。
無罪判決を受けた藤井浩人市長は、一夜明けた6日午前8時過ぎ、いつもと同じように黄緑のネクタイにスーツ姿で市役所に登庁し、午前8時40分から臨時部長会議に臨み、「市政運営では部長を始め、職員のみなさんにご迷惑をかけたが、大変感謝している。心のもやもやも晴れ、すっきりした。新たに市民のみなさんに堂々と提案できる夢のある政策を、引き続き実現していきたい」とあいさつした。
藤井市長は臨時部長会の後、報道陣の取材に応じ、「(市職員が)これまで真摯(しんし)に対応してくれたことへの感謝の気持ちを述べた」と話し、幹部職員の反応について「(無罪判決で)私以上にほっとしていると感じた」と述べた。
また現在の心境を問われると、「当選した時のことを思い出した。(事件を通して)初登庁のころより市幹部らとの一体感は増している」と市政運営に向けて自信を見せた。午後には市議会全員協議会に出席した。
富山事件賠償 冤罪防止進める教訓に(2015年3月10日配信『信濃毎日新聞』−「社説」) 無実なのに2年余の刑務所暮らしを余儀なくされた。出所後も「前科」が壁になり、職に就けない。周囲の冷たい視線にさらされる。心も病んだ。 富山県で起きた強姦(ごうかん)事件で真犯人が現れ、再審無罪となった男性が被った被害の一部だ。富山地裁はきのう、県警の捜査に違法性があったと認め、県に1966万円の支払いを命じた。 いくら賠償されても一度貼られたレッテルや心の傷はなかなか消えない。冤罪(えんざい)が生み出す被害の大きさを捜査機関や有罪にした裁判所は肝に銘じてほしい。 男性は2002年、強姦容疑などで逮捕された。訴状によると、当初否認したが、富山県警の捜査員が怒鳴ったり、脅したりして心理的に追い詰め、虚偽の自白調書を作成した。公判段階でも、捜査員から「傍聴席で見ているからな」と強く言われていたため、否認できなかった。 一審で懲役3年の実刑判決が確定し、服役した。仮出所後、鳥取県警が強制わいせつ容疑で逮捕した男が富山の事件も自供。富山県警は男性の誤認逮捕を認めた。 男性を最初から犯人と決めつけ、アリバイなどの裏付け捜査や矛盾する証拠の吟味を怠った結果だ。供述を偏重し、誤判した裁判所の責任も大きい。 宿題は、間違った逮捕から間違った判決に至るまでの構造的な原因を解明し、再発防止に生かすことだ。再審の意義でもある。ところが、再審の裁判所は、警察、検察の取り調べや原審の審理のあり方にまったく言及しなかった。 冤罪防止に司法が真摯(しんし)に向き合っているのか疑問がある。 法制審議会は昨年、冤罪の温床になっている取り調べを録音・録画して可視化する法改正要綱を法相に答申した。 警察や検察の言い分を大幅に取り入れた結果、可視化は殺人や強盗致死といった裁判員裁判の対象事件などに限られた。全事件の2〜3%にすぎない。「脅した」(男性)、「記憶がない」(取調官)と水掛け論になった富山の事件も対象の外だ。 しかも、要綱は、容疑者が共犯者らの犯罪の解明に協力すれば起訴を免れる「司法取引」も導入するとしている。虚偽の供述で他人を巻き込む新たな冤罪を生む恐れが指摘されている。 冤罪は司法が犯した罪である。自らの都合を重んじるようでは反省とはいえない。徹底した防止策こそが償いになることを忘れてはならない。 市長無罪判決 検察不信は強まった(2015年3月6日配信『東京新聞』−「社説」) 収賄罪に問われた現職市長に裁判所が無罪を言い渡した。弁護側主張の通り「すべてが作り上げられた犯罪」だったのか。捜査には疑問点が多く、これでは検察不信が強まると言わざるを得ない。 岐阜県美濃加茂市長の藤井浩人被告(30)を無罪とした名古屋地裁の判決理由は「現金授受があったとする贈賄側の証言には合理的な疑いがある」と明快だった。 自らの裁判でも賄賂を渡したと供述し、有罪が確定している設備会社社長の証言を「虚偽の疑いがある」と退けたのである。 贈賄側が有罪を争わぬ一方で収賄側は無罪、という一見分かりにくい裁判の結果は、一体、何を物語るのだろう。 この事件の捜査には、2つの大きな疑問点がある。 一つは、賄賂の額である。 藤井市長は、市長就任前の市議時代に30万円の賄賂を受け取ったとして逮捕、起訴された。 この10年間に現職市長が逮捕された収賄事件を見ると、認定された賄賂額は最低でも100万円、ほとんどは500万円以上である。 逮捕となれば、市政の空転は必至である。有権者が選んだ市長を30万円の収賄で逮捕すること自体が、捜査の常識からは考えにくい判断だとも指摘される。 もう一つは、贈賄を認めた設備会社社長の供述の経緯である。 その社長は、融資詐欺事件の取り調べの中で、藤井市長への贈賄の供述を始めたとされる。 詐欺罪について当初、名古屋地検が起訴したのは2100万円分。その後、藤井市長の弁護団による告発を受け、さらに4000万円分を追起訴したが、不正融資の総額は3億6000万円だったとされる。 弁護団の告発が意図するところは「検察が闇取引し、虚偽の贈賄供述をさせる代わりに、巨額詐欺の捜査を打ち切った疑いがある」ということである。 そのような背景がある社長の供述を除けば、説得力のある証拠は見当たらない。適正な捜査、起訴だったとは、とても言えまい。 厚生労働省局長だった村木厚子さんが巻き込まれた大阪地検の郵便不正事件などで検察不信が強まる一方、近年、汚職事件の摘発は全国的に低調な状態が続いている。全国最年少市長として知名度の高かった藤井市長を狙って勇み足はなかったか。 検察が主張してきた現金授受には疑問が膨らむばかりである。判決を読む限り、控訴はすべきではないだろう。 |
☆ 大阪地裁;「違法検査で正当防衛」警官暴行のイラン人無罪(15年3月5日)
大阪府警西成署員から職務質問を受けた際、署員に暴行したとして公務執行妨害、傷害罪などに問われたイラン国籍の貿易業の男性(44)に対する判決があった。
男性は2014年6月22日未明、大阪市浪速区の路上で、西成署員から職務質問を受け、駐車中の車内の捜索を承諾。しかし、署員が車内にあったかばんの中まで調べようとしたため抵抗すると、署員4人に取り押さえられ、うち1人の腕や指にかみついて軽傷を負わせたという。
男性は公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された後、自宅や車から覚醒剤や大麻などを押収され、覚醒剤取締法違反などにも問われた。
長井秀典裁判長は「暴行は、警察官が承諾なく行った違法な所持品検査への抵抗で、正当防衛にあたる」と述べたうえで、「違法行為に基づく押収物は証拠能力がない」と判断、いずれも無罪(求刑・懲役1年6月)無罪を言い渡した
☆ さいたま地裁;両親殺人放火、長男に無罪 「第三者放火の可能性」指摘(15年3月3日)
埼玉県熊谷市で2011年3月、実家で両親を殺害し放火したとして、殺人と非現住建造物等放火の罪に問われた長男の被告(43)=群馬県太田市=の裁判員裁判の判決があった。
被告は2011年3月10日ごろ、自宅で父の=当時(68)=と母=同(69)=の首を圧迫するなどして殺害し、11日に放火したとして起訴された。
栗原正史裁判長は被告宅の複数箇所から灯油反応が検出されており、放火されたと判断。また、母の甲状軟骨が折れ、ひもで首を圧迫されたような痕があり他殺と認定した。だが、父の急性硬膜下血腫については「何者かの攻撃で生じたとまでは認められず、他殺とは言えない」として、夫婦が健康状態で問題を抱えていたことを踏まえ、「心中であっても十分説明がつく」とした。
さらに窃盗目的の第三者による犯行の可能性などにも言及。被告が事件後連絡が取れなくなり、静岡県内で発見されたことについては「遺体を発見し、犯人と疑われることを恐れ通報しないことも否定できない」とした。そのうえで、「両親が心中した後、被告ではない第三者が放火した可能性が捨てきれない」と指摘。「被告は火災の後、携帯電話を壊すなど不審な行動を取っているが、犯人と強く推認されるとまでは言えない」と述べ、「犯罪の証明がない」として無罪(求刑は無期懲役)を言い渡した。
弁護人は「主張がほとんど裁判所に認められた形になって良かった」と語った。
さいたま地検の片山巌次席検事は、「判決内容を精査検討した上で、上級庁とも協議して適切に対処する」と話した。
☆ 大阪地裁;強姦事件:「無罪の新証拠」 釈放男性の再審決定(15年2月27日)
強姦(ごうかん)・強制わいせつ事件で服役中に無罪の可能性が高いとして釈放された男性について、大阪地裁は27日、再審開始を決定した。
、男性は2004年と08年、当時10代だった女性に大阪市内で複数回性的暴行を加えたなどとして、2件の強姦罪と1件の強制わいせつ罪で起訴された。男性は一貫して否認したが、11年に懲役12年の実刑が確定。昨年11月に大阪地検が刑の執行を停止して釈放するまで、3年半服役した。
登石(といし)郁朗裁判長は、「女性を診察した記録には『体に乱暴された痕跡がない』とする趣旨の記載があり、女性が被害を受けていなかったことを強く裏付けるものと言える。うそをついていたことを認めた女性と目撃者の新たな証言は信用でき、無罪を言い渡すべき明らかな証拠だ」と判断した。今後、開かれる再審公判で男性は無罪になる見通し。
男性の再審請求審で、女性は「強姦やわいせつ行為を受けたと虚偽の供述をした」と証言、目撃者とされる人も「うそをついた」と認めた。地検の再捜査で、性的暴行を受けた痕跡がないとの記載がある診療記録も見つかり、登石裁判長は女性の新証言は信用できると結論付けた。
後藤貞人弁護士は「えん罪は明白で、男性を有罪とした1審、2審ともに事実認定に大きな問題があった。確定判決は『女性がうその被害を言うはずがない』と頭から決めつけ、事実への謙虚さに欠けていた」と話した。
地検の北川健太郎次席検事は「被害証言が虚偽だと裏付ける証拠を当時は把握していなかった。遺憾だ」「刑の執行を停止し、速やかな再審開始がなされるように対応してきた。再審でも引き続き、適正かつ公正に対応したい」と話した。
☆ 京都地裁;同居女性殺人で男性に無罪、京都 「自殺の可能性」(15年2月20日)
2012年、同居していた女性の首を絞めて殺害したとして殺人の罪に問われた空手道場経営の被告(64)の裁判員裁判の判決があった。
被告は2012年11月9日夜、滋賀、三重、京都3府県のいずれかの場所で、無職の女性=当時(47)=の首にタオルを巻き付けて絞め、窒息死させたとして起訴されていた。
公判では、自殺しようとする妻を長く見守り介護してきたことに争いはなかったものの、弁護側は「タオルを結んでの自殺」と無罪を主張していた。
後藤裁判長は弁護側の再現実験や法医学者3人が「遺体の痕跡から自殺の可能性を排除できない」とした点を挙げ、首の傷を他殺の根拠とした検察側主張を退け、「自殺の可能性は否定できない」として無罪(求刑懲役7年)を言い渡した。
京都地検の永村俊朗次席は「判決内容を精査し、上級庁と協議の上で適切に対応したい」とコメントした。
被告は「保釈までの1年7カ月間もの長期間の勾留に大変な憤りを感じる。一日も早く無罪が確定し、妻をゆっくり弔いたい」とのコメントを出した。
弁護団は取材に対し「法医学的検討が不十分なまま『見込み』に基づいて起訴にされた」と批判。公判では裁判員1人が遺体写真を見た直後に失神し、補充裁判員と交代したが、「真実発見のために写真提示は必要だった」と述べた。
☆ 大阪高裁;「証言信用できない」 わいせつ致傷事件で逆転無罪(15年2月13日)
強制わいせつ致傷罪に問われ、1審・京都地裁の裁判員裁判で懲役2年(求刑懲役4年)の判決を言い渡された会社員男性(42)=京都市=の控訴審判決があった。
男性は2013年6月3日未明、京都市下京区のバーに来店。閉店時間を過ぎていたため同店勤務の女性が退店を求めたことに憤慨。カウンターを両手でたたき、女性を押し倒して足に約1週間の打撲を負わせたとして起訴された。店内には2人しかおらず、公判では女性の証言の信用性が争点になった。
笹野明義裁判長は、大阪高検が再捜査をもとに、1審で検察側が提出した女性の証言に沿う捜査報告書について、「検察官が警察官から電話で聞き取ったもので、内容が不正確だった」と捜査の誤りを指摘。「被害者とされた女性の証言は信用できない」「女性の傷は日常生活や酔って転んだ際にもできる程度」と判断。1審判決を破棄し、男性に無罪を言い渡した。
男性は女性を威嚇する際に店内のカウンターに手をついたとされていた。しかし、1審判決後に大阪高検が再捜査したところ、カウンターに残っていた男性の掌紋の向きが女性の証言とは異なることが判明。1審では女性の証言に沿う捜査報告書を検察側が証拠提出し、採用されていた。これについて検察側は、控訴審で「遺憾の意を表明する」と述べていた。
1審判決は「女性が被害を捏造(ねつぞう)し、男性を罪に陥れる動機や利益はない」として有罪としたため、無罪を主張した男性が控訴していた。
☆ さいたま地裁;痴漢は「女性が勘違い」と否認の男性に無罪判決(15年2月9日)
電車内で女性に痴漢をしたとして、埼玉県迷惑行為防止条例違反に問われた東京都小平市の会社員の男性(37)に対する判決があった。
男性は2014年3月6日午後11時過ぎ、東武東上線の車内で、20歳代の女性の尻を触ったとして同条例違反容疑で朝霞署に逮捕された。男性は同8日に釈放され、さいたま地検が同年7月に在宅起訴した。
男性は逮捕時から容疑を否認し、公判では「女性が勘違いしている」と主張していた。
仁藤(にとう)佳海(よしみ)裁判官は、尻を触られたとする女性が男性の手をつかんだ時の状況について、「曖昧な部分が残り、他の者が犯行に及んだのではないかという疑問が生じる」と指摘。「被告人が犯行に及んだと断定するには合理的な疑いが残る」と述べ、無罪(求刑・罰金50万円)を言い渡した。た。
同地検の片山巌次席検事は「判決を精査し、上級庁と協議して適切に対処したい」とコメントした。
☆ 大阪地裁堺支部;81歳男性に無罪判決(15年2月6日)
2013年8月11日正午ごろ、堺市内の田んぼで、知人の男性(61)の左あごを殴り、軽い打撲を負わせたとして傷害罪で在宅起訴された堺市の無職男性(81)に対する判決があった。
男性は捜査段階から一貫して「殴っていない」と無罪を主張していた。
男性は隣接する田んぼの境界を巡り知人とトラブルになったことがあり、当時2人きりで会ったことは認めた。しかし、目撃者がおらず、「右の拳で1回殴られた」と訴える被害者の証言の信用性が争点となった。
公判では、弁護側の依頼で被害者の負傷部位の写真を鑑定した法医学者が「拳で殴られた傷とは思えない。金属のような硬い物が当たったと推定できる」と証言。弁護側は「男性を陥れようとした知人の被害申告を捜査機関がうのみにした」と訴えていた。
鈴木喬(たかし)裁判官は、無罪(求刑・罰金30万円)を言い渡した。
☆ 京都地裁;「隣から割り込みが原因」多重事故で運転手無罪(15年1月23日)
京都市山科区内で2013年2月、4人死傷の多重衝突事故を起こしたとして、自動車運転過失致死傷罪に問われた元トラック運転手の男性(40)に対する判決があった。
男性は同月26日、片側2車線の国道1号を大型トラックで走行中、隣の車線から入ってきた中型トラックを避けるため車線変更し、前方の乗用車に追突。乗用車は対向車線に飛び出し、別の車に衝突するなど計6台が絡む事故で1人を死なせ、3人に重軽傷を負わせたとして起訴された。
市川太志裁判長は「中型トラックの進路変更は道路交通法違反で、一般のドライバーが予期し得ない行為」と指摘。「男性が驚いて車線を変えたことは、ごく自然な判断」と述べたうえで、「隣車線の車が進路変更の合図なしに前方に進入したのが事故の原因」と判断」「男性に過失はない」として、無罪(求刑・禁錮1年)を言い渡した。
京都地検は「判決内容を精査し、上級庁とも協議して適切に対応する」とした。
☆ 大阪高裁;クラブ無許可営業、2審も無罪 控訴棄却(15年1月21日)
許可を受けずに客にダンスをさせるクラブを大阪市で営業したとして、風営法違反の罪に問われた元クラブ経営者の被告(52)の控訴審判決があった。
被告は2012年4月、大阪市北区のクラブ「NOON」に音楽機材を設置し、客にダンスをさせ酒を提供したとして逮捕、起訴された。
米山正明裁判長は、無罪とした1審・大阪地裁判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
2014年4月の1審判決は、規制対象について「性風俗の秩序を乱す営業に限られる」と判断。「店に享楽的な雰囲気はなく許可は必要ない」として、無罪(求刑懲役6月、罰金100万円)とした。
☆ 札幌地裁;襲いかかる大柄の夫「余裕なく…」 妻の正当防衛、傷害致死無罪(15年1月16日)
札幌市西区のアパートで2014年8月、夫の左肩を包丁(刃渡り約25センチ)で刺して失血死させたとして、傷害致死の罪に問われた住所不定、無職の被告(48)の裁判員裁の判決があった。
佐伯恒治裁判長は、事件直前の夫婦げんかで激高した夫=当時(48)=から被告が一方的に殴る蹴るの暴力を受け、2回にわたって逃げようとしたが引きずり戻された状況を詳述。夫が身長約180センチ、体重約90キロと大柄だったことも挙げて「包丁以外に攻撃を防ぐ有効な物は手近になく、殴りかかってきた夫を包丁で威嚇して刺すことを回避する時間、心理、距離の余裕もなかった」と述べたうえで、「夫が死亡した結果はあまりに大きいが、反撃のため、とっさに肩を狙って前に出した包丁が不幸にも深く突き刺さってしまったのが実態」と結論づけ、正当防衛の成立を認め、無罪(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。
☆ 千葉地裁;痴漢事件で男性会社員無罪 地裁「女性の説明曖昧」(15年1月14日)
電車内で女性の胸に触ったとして、千葉県迷惑防止条例違反の罪に問われた同県佐倉市の男性会社員(57)に対する判決があった。
男性は2014年4月24日午後6時55分ごろ、京成電鉄の車内で女性の左胸を触ったとして県警に現行犯逮捕された。
井筒径子裁判官は、電車内が満員だったことなどを挙げ「胸を触ったとする男性の右手の状況や表情について女性の説明は曖昧で、その右手が男性のものだったという理由が述べられていない」と指摘。痴漢被害自体はあったと認めたうえで、無罪(求刑懲役4月)の判決を言い渡した。
☆ 名古屋地裁;「捜査違法」男性に無罪 愛知県警、覚せい剤使用疑いで逮捕(15年1月9日)
覚せい剤取締法違反(使用)罪に問われた三重県志摩市の人材派遣業の男性(38)に対する判決があった。
男性は2014年7月、名古屋市中川区で車を運転中、警察に停止して降りるよう求められたが、「体調が悪い」と拒否。薬物中毒の疑いを持った警官らは男性の足を引っ張るなどして車外に出し、両脇を抱えパトカー後部座席に乗せ職務質問した。その後、中川署に向かい、法的手続きをへて男性の強制採尿をしたところ、覚せい剤成分が確認された。男性は逮捕され、少量の覚せい剤を使用したとして起訴された。
山田耕司裁判官は、警官が3人がかりで男性を車から降ろし、パトカーに乗せた行為は、任意捜査の範囲を超えて違法と判断。また、てんかんと診断されていた男性が現場に救急車を呼んだが、警官が車を帰しており、「人道上、看過できない。職務質問で求められる配慮が不足しており、猛省が必要」と強く非難した。その上で、違法な任意同行などに基づいた男性に対する尿鑑定の証拠能力を否定し「犯罪の証明がない」と結論付け、無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。
男性の弁護士は「違法な捜査で得られた証拠は、有罪認定に使うべきではない。捜査当局への警鐘となる判決だ」と評価した。
名古屋地検の大図明次席検事は「判決内容をよく検討し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とコメントした。
☆ 福岡高裁宮崎支部;性犯罪で強制起訴、2審も無罪 準強姦罪の男性(14年12月11日)
ゴルフの教え子で18歳の高校生だった女性に対する準強姦罪に問われ、性犯罪で初めて強制起訴されたゴルフ練習場経営者(64)の控訴審判決があった。
男性は2006年12月、ゴルフ指導を口実に高校生だった女性をホテルに連れ込み、抵抗困難な状態にして性的暴行を加えたとして、鹿児島県警に書類送検された。鹿児島地検は不起訴処分としたが、鹿児島検察審査会が2度にわたり起訴相当と議決。12年12月に恩師の男性の言動に衝撃を受け、女性が拒絶できなかったとして強制起訴された。
男性は一貫して否認した。
岡田信裁判長は、「女性が精神的混乱から抵抗することが著しく困難だったことは明らか。しかし、男性がそれを認識していたとまでは認められない」と判断。抵抗できないことに乗じて暴行する準強姦罪には当たらないとし、無罪とした1審判決を支持し、検察官役の指定弁護士の控訴を棄却した。
3月の鹿児島地裁判決は、女性が信頼していた経営者から突然迫られ、精神的に混乱したと認めた一方、「拒否することが著しく困難な状態だったとは言えない」との判断を示した
☆ 福岡地裁小倉支部;組員の覚醒剤所持は無罪 上着の中「気付かぬ可能性」指摘(14年12月9日)
ジャンパーのポケットに覚醒剤を持っていたとして、覚せい剤取締法違反罪に問われた特定危険指定暴力団工藤会系組員の男性(42)に対する判決があった。
公判で、男性は「ジャンパーは知人からもらった。ポケットに何が入っているか知らなかった」と主張。検察側は「知人の名前を隠し、弁解は信用できない」と反論した。
杉原崇夫裁判官は「譲渡された際、常にポケットの中を確認するとはかぎらない。ジャンパーには厚みがあり、少量であれば気付くのは困難」と判断。「ポケットに覚醒剤があると気付かなかった可能性がある」として、無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。
福岡地検小倉支部は「判決内容を精査し、控訴するかどうか検討する」とコメントした。
☆ 京都地裁;痴漢:無罪判決…女性が触った人物誤認した可能性指摘(14年12月8日)
電車内で女性の右膝などを触ったとして、京都府迷惑行為防止条例違反(痴漢)の罪に問われた40代の銀行員の男性に対する判決があった。
男性は2014年1月9日未明、京都府長岡京市付近を走行中の阪急京都線の車内で、隣席の20歳代女性の右膝や太ももを触ったとして起訴された。女性によると、その場から逃げた男を乗務員と一緒に探し、別の車両で特徴が似た被告男性を見つけたという。
男性は一貫して容疑を否認したが、3月に在宅起訴された。
公判で男性側は「酔って眠っており何があったか思い出せない」と主張。犯行は別人の可能性があり、仮に触ったとしても故意でないと否認していた。
渡辺美紀子裁判官は、女性や目撃者の証言から、太ももに手が触れた時間は約2秒と認定。「寝ていて手を滑らせ、触れた可能性が全くないとは言い切れない」「女性が触った人物を誤認した可能性があると指摘し「男性が犯罪を行ったことに合理的な疑いが残る」と結論付け、無罪(求刑・罰金30万円)を言い渡した。
渡辺裁判官は閉廷前に「1審の裁判官として、(被告の男性に)今までお疲れさまでしたと言いたい」と異例の付言をした。男性は感極まった表情で深々と頭を下げた。
京都地検の永村俊朗次席検事は「上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とのコメントを出した。
☆ 最高裁第3小法廷;発砲2警官、無罪確定へ 奈良、男性死亡の付審判(14年12月2日)
逃走車両への発砲で男性を死亡させたとして殺人と特別公務員暴行陵虐致死の罪に問われ1、2審で無罪となった奈良県警の警察官2人に対する上告審決定があった。
2003年9月、奈良県大和郡山市で警部補と巡査部長(階級はいずれも2審判決当時)が逃走車両に発砲し、2発が助手席の男性=当時(28)=の頭などに命中し、男性は死亡した。
奈良地検がいったん不起訴としたが、遺族の付審判請求が奈良地裁に認められ、付審判では初めて裁判員裁判で審理された。
大谷剛彦裁判長は、検察官役の指定弁護士の上告を棄却する決定をした。これで無罪が確定した。
☆ さいたま地裁;ひき逃げ裁判で無罪判決 「証拠の評価を歪曲」捜査を指摘(14年12月1日)
さいたま市で2013年6月、当時9歳の男児をひき逃げしたとして、自動車運転過失傷害と道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われた埼玉県内の男性(46)に対する判決があった。
男性は同市中央区の県道交差点を乗用車で左折しようとした際、横断歩道を自転車で渡っていた男児に衝突、鎖骨骨折などの重傷を負わせ、逃走したなどとして2013年11月に逮捕された。
埼玉県警は「防犯カメラに男性と同車種で傷がある車が写っている」などとした捜査報告書を作成したが、詳細な解析をしていなかった。
井下田英樹裁判官は「写真にゆがみがあり、車種や傷の有無は判断できない」と指摘。「犯人性を肯定するため証拠の評価を歪曲(わいきょく)し作り出したと批判されても仕方ない」と県警の捜査を批判、無罪判決を言い渡した。
☆ 東京地裁;強盗事件で男性に無罪=共犯者の偽証を指摘(14年11月21日)
東京都江戸川区の民家に押し入り現金を奪ったとして、強盗致傷などの罪に問われた飲食店経営の男性(33)の裁判員裁判の判決があった。
男性は公判で、一貫して「全く身に覚えがない」と主張。「男性と一緒に事件を起こした」として自首した無職の男(28)の証言が信用できるかが争点だった。
杉山慎治裁判長は、「犯行には組織的な関与が疑われる。(暴力団などとの関係から)報復を恐れ、組織に所属しない男性を真犯人とすり替えて供述した可能性がある」と指摘。男性の関与を示す客観証拠もないと結論付け、無罪(求刑懲役10年)を言い渡した。
☆ 大阪地裁;高級クラブ経営の男性に無罪判決 脱税事件で(14年11月10日)
高級クラブのホステスらの給与から天引きした所得税約7900万円を脱税したとして、所得税法違反の罪に問われた男性被告(46)=大阪府在住=に対する判決があった。
男性は大阪・ミナミの高級クラブを営んでいたとされる2009年8月〜11年7月、ホステスら約40人に報酬を払った際に所得税約7900万円を源泉徴収した一方、期限までに税務署に納めなかったとされていた。大阪国税局が告発し、大阪地検が12年7月に起訴していた。
公判で男性は「雇われの立場で、納税義務者ではない」と主張。オーナーママと呼ばれる女性が実質的経営者だったと訴えた。
遠藤邦彦裁判長は、月平均報酬が80万〜100万円だった男性に対し、「オーナーママ」と呼ばれていた女性が約500万円だったと指摘。「ホステスらを雇う最終決定権も女性にあり、男性にはホステスの採用権限がなく、女性が経営者と考えなければ合理的ではない」「給与などの計算を裏方トップとして事実上行っていたにすぎない」とし、源泉徴収義務は女性にあるとの判断。「男性は待遇も特別ではない。黒服(ボーイ)の幹部従業員にすぎなく、経営者でないのは明ら。また、検察官調書に、自身を共同経営者と認める内容が記載されていた点については、「具体性が無く、証拠価値は低い」として、男性に無罪(求刑懲役1年6カ月、罰金2400万円)を言い渡した。
そのうえで、「男性が経営者」とする女性の証言を重視した検察側に対して、「オーナーママが経営者でなければ説明がつかないのに、国税局はママに事情を聴かず、検察も十分な捜査をしなかった」「実質的な経営権限を十分に検討したとはいえない。(男性の)単独犯として捜査を進めた特異な事例で、国税局の強い意向もあったと考えられる」とし、捜査のあり方を批判した。
判決後に大阪市内で記者会見した弁護人の新倉明弁護士は「検察側はまだ供述に頼っている。客観的な証拠を見れば、だれが実質経営者かはわかったはずだ」と話した。
大阪国税局の佐野誠・国税広報広聴室長は「誠に遺憾。控訴は検察が判断する事柄で、国税局の見解を申し述べることは差し控えたい」としている。
◇
〈源泉徴収〉 会社や個人事業者は従業員らに給与や報酬を支払う際、金額に応じて一定の割合を所得税として差し引くことが義務づけられている。原則として、差し引いた分は給与や報酬を支払った月の翌月の10日までに国に納めなければならない。差し引かなければ「源泉徴収漏れ」となり、追徴課税の対象となる。
☆ 福岡地裁小倉支部;生活保護不正受給:中間市職員に一部無罪判決(14年11月10日)
中間市の職員らによる生活保護費不正受給事件で、6件の詐欺罪に問われた市職員の被告(40)=同県直方市、起訴休職中=に対する判決があった。
被告は市福祉事務所職員だった2009年7月、同僚だった元市職員や受給者と共謀し、虚偽の調査書類を上司に提出するなどして市から生活保護費計約494万円を詐取したとして起訴されていた。この事件では7人が起訴され、既に6人の有罪が確定している。
弁護側は、詐欺の故意や元市職員(41)=詐欺罪などで懲役5年確定=らとの共謀はなかったとして無罪主張していた。
中牟田博章裁判長は、3件(計約382万円分)については「共犯者の公判供述について不自然かつ不合理な点があり、被告に詐欺の故意があったと断ずるのは困難」と述べ、無罪とした。他の3件については、生活保護費計約112万円を不正受給させたとして関与を認定。「生活保護制度の根幹を揺るがしかねず、刑事責任は軽くない」として懲役2年、執行猶予4年(求刑・懲役4年)を言い渡した。
☆ 福岡地裁;母死なせた男性に無罪、福岡 「心神喪失で責任なし」(14年10月20日)
母親を殴り死なせたとして、傷害致死の罪に問われた男性被告(39)の裁判員裁判の判決があった。
男性は2014年1月6日午後、福岡県桂川町の自宅で母親=当時(64)=の胸などを複数回殴り、死亡させたとして起訴されていた。
岡部豪裁判長は、「心神耗弱状態であり、責任能力は完全には失われていなかった」との検察側の主張を、「天照大神が自分に犯行をさせたと発言するなど、状況認識能力には明らかに異常がある」と退けたうえで、「精神障害による妄想が影響したと指摘」。「犯行当時、行動を制御する能力は全く無いか、無いに等しい状態だった」と判断。心神喪失で刑事責任能力はなかったとして、無罪(求刑懲役5年)を言い渡した。
☆ 札幌地裁;ひき逃げ事件で無罪判決 負傷の裏付けなし(14年10月17日)
札幌市で2012年、乗用車で子供とぶつかったとして、自動車運転過失致傷や道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われた無職男性(80)に対する判決があった。
事故は2012年11月28日午後に発生。男性が交差点を右折した際、飛び出した当時6歳の男児が運転席側のドア付近にぶつかり、その場に転倒した。
田尻克已裁判長は「事故当日、男児は病院で全身の触診を受けたが、痛がる様子は一切なかった」と指摘したうえで、「母親が病院で説明した事故や負傷の状況は、事実と矛盾する。事故5日後に作成された診断書は、この説明に基づいた可能性を否定できない。本当にけがをしたのか、疑問が残る」と結論付け、負傷を裏付ける証拠がなく、ひき逃げも成立しないと判断、無罪(求刑懲役10月)の判決を言い渡した。
判決後、取材に応じた男性は「無罪が出てうれしい」と話した。
☆ 福岡地裁;領海操業の中国人無罪 GPSに表示なく(14年10月15日)
長崎県・五島列島沖の領海内でサンゴ漁をしたとして外国人漁業規制法違反(領海内操業)の罪に問われた中国籍の男性被告(48)対する判決があった。
男性は5月14日午後7時半ごろ、五島列島沖の領海でサンゴ漁をしたとして、水産庁九州漁業調整事務所(福岡市)に現行犯逮捕された。
丸田顕裁判官は、操業場所は領海内だったと認定したが、検察側の「捜査段階の供述では故意(領海内の操業)を認めていた」との主張を、「供述調書は、GPSの実際の状況と異なり、信用できない。供述を誘導した疑いが拭えない」と指摘。被告の船に搭載されていた衛星利用測位システム(GPS)は領海内と表示していなかったとして「領海内と認識することはできなかった」と判断し、無罪(求刑は懲役8月、罰金100万円)の判決を言い渡した。
☆ 東京高裁;強姦罪に問われた27歳男性に逆転無罪の判決(14年9月19日)
千葉県内で女子中学生に乱暴したとして強姦ごうかん罪に問われた無職男性(27)の控訴審判決があった。
三好幹夫裁判長は、中学生が男性と別れた後もすぐに助けを求めずに公園で眠り込んだことを指摘。さらに、男性が抵抗を妨げる暴行や脅迫を行ったとも認められないとし、「中学生は強い抵抗を示していない」と判断し、懲役4年6月とした1審・千葉地裁判決を破棄し、「合意の上だった可能性が否定できない」として逆転無罪の判決を言い渡した。
☆ 東京高裁;痴漢事件で逆転無罪 「被害者の話に疑い」(14年9月18日)
電車内で女子高校生に痴漢をしたとして、神奈川県迷惑行為防止条例違反の罪に問われた男性会社員(38)=横浜市=の控訴審判決があった。
捜査段階の警察と検察の調書には、高校生は「股間や右太ももの内側を、曲げた指先でなでられた」と供述したと記載されていた。一方、1審の公判に出廷した高校生は「手のひらでなでるように触られ、指先は曲げていなかった」と証言していた。
河合健司裁判長は、「どのように触られたかという被害の核心部分が食い違っており、見過ごせない」と指摘、「高校生の話は変遷しており、信用性に疑いが残る」として、罰金30万円の横浜地裁川崎支部判決を破棄し、無罪を言い渡した。
1審判決は「捜査段階と公判の供述はおおむね一貫していて、信用できる」として有罪としていた。
☆ 横浜地裁;娘にわいせつ疑いの男性に無罪 娘の証言は「信用性に疑い」(14年9月11日)
娘2人の体を触るなどしたとして、強制わいせつなどの罪に問われた横浜市の男性会社員(41)の判決があった。
男性は、2011年11月下旬から12年5月までの間、自宅で寝ていた長女と次女の胸を触るなどのわいせつな行為をしたとして、起訴されていた。客観的な証拠がない中、長女は公判で「2時間半にわたって体を触られた。(途中で)寝ることもあった」などと証言した
田村真裁判長は、「衝撃的な体験であったはずなのに、眠くなるような精神状態は考えにくい」と指摘。次女が証言した犯行時の体勢も「容易に発覚してしまい、不自然さを否めない」とし、2人の証言は「信用性に疑いが残る」。また、次女が被害を申告した時期についても、警察の捜査書類の日付と異なっているとし、「衝撃的な事実を打ち明けた時点を勘違いするとは考えにくく、信用性を損なわせる」と説明。被害を警察に申告した男性の妻は、離婚をめぐって男性と対立しており、「次女が母親の影響を受けて虚偽の供述をしようとした可能性も否定できない」として、「被害者の証言の信用性に疑いが残る」などとして、無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。
閉廷後、男性は「やっていないものはやっていないので、ほっとしている」と話した。
横浜地検の中村周司次席検事は「内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とコメントした。
なお、この裁判では、県警の捜査書類の虚偽記載が発覚したが、田村真裁判長は判決言い渡し後、「公文書の信頼性を著しく損なわせた」と県警の捜査に対し異例の苦言を呈した。約11カ月にわたって勾留された男性は「偽造された文書で逮捕され、納得がいかない」と憤りをあらわにした。
虚偽記載があったのは、鶴見署の男性巡査部長が作成した捜査報告書と、元警察相談員が男性の妻から被害の聞き取りをまとめた警察相談受理処理票。
巡査部長は、捜査報告書の作成日付をさかのぼらせて逮捕状を請求。元相談員は、妻が長女の被害しか申告していなかった時点で、次女の被害も書類に記載した。元相談員は証人尋問で「刑事の経験から、次女にも被害が及んでいると思った」と説明した。
田村裁判長は、こうした証言自体に対し「公文書に対する認識の欠如」と批判。その上で、鶴見署に対し「今回の件を真摯に受け止めてほしい」と求めた。
「(虚偽記載をした捜査員の)証言を聞いても、罪の重さが感じられなかった」。閉廷後、男性は悔しさをにじませた。
鶴見署の岩岡豊副署長は「適正捜査の徹底について指導を強化していく」とコメントした。
☆ 東京高裁;元小学校教諭、東京高裁も無罪判決(14年9月9日)
担任をしていた女児への強制わいせつ罪に問われた元小学校教諭の被告(61)に対する控訴審判決があった。
元教諭は2012年12月、勤務先の東京都葛飾区の公立小で休み時間中、担任をしていた当時6歳の女児2人の下半身を触ったなどとして起訴された。
村瀬均裁判長は、2女児の供述について「母親との会話の中で触られた状況ができあがった可能性があり、具体的な記憶に基づいていない疑いが残る被害を。申告した女児の供述は、真実に反して述べられた可能性がある」と指摘し、改めて信用性を否定。元教諭の捜査段階で自白調書についても「事件当時の教室の状況が欠落しており、虚偽内容が記録された可能性がある」と信用性を否定。無罪とした1審・東京地裁判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
東京地裁は13年12月、2女児の「触られた」とする供述は母親らによる誘導の可能性があるとして無罪とし、「女児の供述を録音・録画して信用性を担保する方法はある」と可視化の活用に言及した。
☆ 東京地裁;道仁会会長ら無罪 ゴルフ場利用詐欺「暴力団隠し」認めず(14年9月4日)=確定
暴力団であることを隠してゴルフをしたとして、詐欺罪に問われた指定暴力団道仁会会長の被告(58)、指定暴力団住吉会幸平一家総長の被告(67)と道仁会系組長の被告(52)の3人に対する判決があった。
3人は2012年12月と13年1月、約款で暴力団関係者の利用を禁じ「暴力団、出入り禁止」の看板が置かれていた沖縄県内のゴルフ場を利用した。
争点は、ゴルフ場に暴力団員であることを自分から申告しなかったことが詐欺罪に当たるかどうかであった。
3人は捜査段階から「身分を隠してだますつもりはなかった」と無罪を主張していた。検察側は「暴力団と告げれば利用を断られると認識していた。自分から暴力団だと申告しなかったことが詐欺に当たる」と主張していた。
斉藤啓昭(ひろあき)裁判長は「詐欺罪の成立は、申し込みの際に暴力団関係者でないと意思表示をしていたかどうかが問題になる」と指摘。「当時、ゴルフ場の暴力団排除は徹底されておらず、利用申込書などに暴力団関係者であるか否かを確認する欄はなかった。利用の申し込みをした際などにゴルフ場側は暴力団関係者かを確認しておらず、3人は虚偽を言って利用したわけではない」「3人は一般客と同様に申し込んだだけだ」と述べ、意図的な身分隠しはなかったと判断し、「詐欺に当たらない」としていずれも無罪(求刑懲役1年)を言い渡した。
東京地検は控訴期限の9月18日までに控訴せず、無罪が確定した。
☆ 大阪地裁;知的障害の長女殺害、介護の母に無罪(14年9月3日)
難病で知的障害の長女(当時29歳)を殺害したとして殺人罪に問われた母親(58)(大阪府吹田市)の裁判員裁判判決があった。
母親は13年10月、自宅の浴槽に長女を沈めて殺害後、池で入水自殺を図ったところを発見され、逮捕、起訴された。精神鑑定でうつ病だったと診断され、責任能力の有無などが争点となっていた。
田口直樹裁判長は、母親にとって介護の負担は大きかったが、夫が休職して介護に協力するなど無理心中するほどの絶望的な状況にはなかったとしたうえで、「「動機の説明は難しく、介護の負担から重いうつ病となり、その影響で突発的に犯行に及んだ犯行時は心神喪失状態で刑事責任能力はなかった」と述べ、無罪(求刑・懲役4年)を言い渡した。
☆ さいたま地裁;知的障害の男性被告に無罪 「心神喪失」(14年8月19日)
さいたま市のJR大宮駅で202年、女子高生のスカート内をのぞきこんだとして、埼玉県迷惑防止条例違反の罪に問われた男性被告(39)の判決公判があった。
男性は、大宮駅の通路で2012年7月5日午後5時15分ごろ、当時17歳の女子高生の後ろからスカート内をのぞきこんだとして起訴されていた。
松岡幹生裁判官は、「大勢の人がいる前で、四つんばいになり、のぞきこんでいる。常識的判断を欠いた突発的な行動」として、心神喪失状態だった可能性を認め、無罪(求刑罰金15万円)を言い渡した。男性には知的障害がある。
閉廷後、男性の弁護人は「出生時に脳に障害を負い、物事を理解できない。起訴したことが間違いで、当然の判断」と判決を評価した。
☆ 福岡地裁;自動車運転過失傷害、女子大学生に無罪 福岡地裁 「安全確認不十分とまでいえない」(14年8月15日)
福岡市の駐車場出口で2012年、乗用車を運転中、安全確認を怠り、ミニバイクの男性を転倒させ重傷を負わせたとして、自動車運転過失傷害の罪に問われた福岡市中央区の大学生の女性(21)に対する判決があった。
女性は、24年7月13日午後1時ごろ、乗用車で福岡市城南区の駐車場を出て左折する際、安全確認が不十分で左から来たミニバイクの男性を転倒させるなどし、脚に剥離骨折などの重傷を負わせたとして起訴されていた。
大橋弘治裁判官は、「男性が車に気づかず、前方の確認が不十分だった疑いがある」と指摘。女性がどのような運転で駐車場から道路に出ても男性の転倒を回避できなかった可能性があると述べ、「安全確認が不十分だったとまではいえない」として無罪(求刑罰金30万円)を言い渡した。
☆東京地裁;覚醒剤所持の被告に無罪 令状なしに捜索 「無理解が甚だしい」と(14年8月1日)
令状がないのに警察官が持ち物を捜索したのは違法だったとして、覚せい剤取締法違反などに問われた男性(39)対する判決があった。
男性は2013年10月、東京都新宿区で警視庁四谷署の警察官から職務質問を受けた。警察官は捜索差し押さえ令状が出る前に、男性が乗っていた車内のウエットティッシュの箱を勝手に開け、抗議を受けても返さなかった。箱から覚醒剤などが見つかり、男性は現行犯逮捕された。
警察官は公判で「箱の中身を取り出そうとすれば、観念すると思った」と証言した
西山志帆裁判官は「警察官の令状主義への無理解は甚だしい。今後の違法捜査を抑制するために、無罪を言い渡すほかない」と述べ、無罪の判決を言い渡した。検察側は懲役4年を求刑していた。た。弁護人によると、という。
☆ 福岡地裁小倉支部;覚せい剤事件で女性に無罪 「恐怖心から断れず」(14年7月18日)
覚せい剤取締法違反(使用)の罪に問われた福岡県の無職女性(39)に対する判決があった。
女性は2013年9〜10月、福岡県またはその周辺で覚せい剤を使用したとして、同12月に起訴された。女性側は、交際相手の男性と別れ話をするために会った際、男性に覚せい剤を注射されたと主張していた。
中牟田博章裁判長は「(男性への)恐怖心から、意に反する行動ができなかった」と指摘。「注射されることを消極的に受け入れたにすぎない」と述べ、「自らの意思に基づき使用したかどうかに合理的疑いが残る」として無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。
☆ 札幌地裁後;車にあおられ速度超過は「緊急避難で無罪」(14年7月16日)
道交法違反(速度超過)に問われた札幌市の男性会社役員(81)に対する判決があった。
会社役員は2013年5月29日、喜茂別町の国道230号で乗用車を運転中、速度違反自動監視装置(オービス)で法定の最高速度(60キロ)を34キロ上回る94キロで走行したと測定された。会社役員は後続車両にあおられたため、危険を避けるために前方車両を追い越そうと速度超過をしたと主張。
大久保俊策裁判官は、「後続車は被告の車に密着して迫っており、生命の危険が存在していた」ため「速度超過は危険を避けるためにやむを得ずした行為だ」で違法性を免じる「緊急避難」が成立するとして、無罪(求刑・罰金4万円)を言い渡した。
札幌地検の浦田啓一次席検事「予想外の判決だ。上級庁と協議して対応を決めたい」と話した。
☆ 広島地裁;元介護士に無罪判決、 入所者放火殺人事件(14年7月16日)=確定
広島市の介護施設で2012年12月5日夜、介護施設2階個室で寝ていた、寝たきりの入所者の高齢女性の掛け布団にライターで火を付け、全身やけどを負わせて殺害したとして、殺人と建造物等以外放火の罪に問われた元介護福祉士の無職の女性被告(22)に対する裁判員裁判の判決があった。
被告は捜査段階で犯行を自白したが、裁判では否認に転じ、自白の信用性が争点となった。
検察側は取り調べで被告が犯行を自白するシーンを録画したDVDを法廷で再生し、「不自然さは認められず、真の自白」と主張した。弁護側は、目撃者や火を付けたとされるライターが見つからず、放火したことを認めていた捜査段階の自白は不自然で、取り調べで誘導があったとして無罪を主張していた。
伊藤寿裁判長は、検察側が立証の柱とした被告の自白について「信用性に疑いが残る」と述べ、無罪を言い渡した。別に問われた同僚の財布から現金を抜き取った窃盗罪については懲役1年6月、執行猶予3年(求刑は懲役20年)とした。
広島地検の高橋久志次席検事は7月30日、「控訴審で地裁判決を覆す立証は困難と判断した」とのコメントを出し、控訴を断念したと明らかにした。無罪が確定した。
☆ 東京高裁;痴漢容疑で逮捕、中学教諭に逆転無罪(14年7月15日)
路線バスの車内で女子高校生に痴漢行為をしたとして、東京都迷惑防止条例違反の罪に問われた東京都三鷹市立中学校の教諭の被告(30)=起訴休職中=に対する判決があった。
被告は2011年12月22日夜、三鷹市を走行中のバス車内で女子高生(当時17)の尻を触ったとして起訴されたが、「自分のリュックサックが当たったことはあるかもしれないが、触ったことは一切ない」と無罪を訴えてきた。
河合健司裁判長は、弁護側が無罪を示す新証拠として提出した車載カメラの映像から「痴漢をしたとされる時に、被告の左手はつり革をつかんでいた」と認定したうえで、被害者が痴漢を避けるため体勢を変える直前の35秒間、津山教諭の左手はつり革をつかんでいたと判断。「左手で痴漢したと考えるのは無理があり、被害者が勘違いした疑いが残る」として、「13年5月に女子高生の供述を全面的に認め、「被告が携帯電話を右手で操作しながら、左手で尻を触った」として罰金40万円の有罪とした1審・東京地裁立川支部判決は、この種の事案で被害者の証言の信用性を判断する際に求められる慎重さを欠いていると言わざるを得ない」「1審判決の認定は、明らかな事実誤認があり、経験則などに照らして不合理だ」と結論付け、1審を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
被告は判決後の会見で、「痴漢冤罪(えんざい)は誰もが巻き込まれる可能性があり、無実が示されほっとした。支援してくれた生徒たちの前に一日も早く立ちたい」と安堵あんどの表情で語った。
東京高検の青沼隆之・次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とのコメントを出した。
☆ 東京地裁;「捜査報告に虚偽」 覚醒剤事件で東京地裁が無罪判決(14年7月14日)
2013年9月、東京都内の路上で職務質問を受け、所持品を見せることを拒否したため捜索差し押さえ令状に基づく強制捜索を受けた男性に対する判決があった。令状請求の際に提出された捜査報告書には「職務質問で警察官が『覚醒剤』という言葉を出すと(男性が)明らかに興奮した」と記載されていた。
江見健一裁判官は、公判で現場にいた警察官がこの記載の事実関係を否定したことを重視。「覚醒剤所持をうかがわせる事情がないのに令状請求し、約3時間40分も現場に男性を留め置いた」と捜査の違法性を指摘したうえで、警察官がうその捜査報告書を裁判所に提出して捜索令状を請求していたと認定し「重大な違法を含む手続きで集められた証拠は認められない」と男性被告(58)に無罪を言い渡した。検察側は懲役3年6月を求刑していた。
☆ 最高裁第1小法廷;舞鶴高1女生徒殺害、逆転無罪確定へ 最高裁、検察の上告棄却(14年7月8日)
京都府舞鶴市で2008年5月、京都府立東舞鶴高校浮島分校(舞鶴市)1年の女生徒=当時(15)=を殺害したとして、殺人と強制わいせつ致死の罪に問われた無職の被告(65)=別事件で服役中=に対する決定があった。
被告は2008年5月7日、女生徒を乱暴しようとして、頭や顔を鈍器で殴るなどして殺害したとして起訴された。
横田尤(とも)孝(ゆき)裁判長は、「被害者の遺留品の特徴に関する被告の供述が、捜査機関の示唆や誘導によってされた可能性があるとした2審の判断は合理的」とし、検察側の上告を棄却する決定をした。5人の裁判官全員一致の結論。これで、被告を無期懲役とした1審・京都地裁判決を破棄し、逆転無罪とした2審・大阪高裁判決が確定する。
被告は捜査段階から無罪を主張。直接証拠はなく、状況証拠の評価が焦点だった。
1審が有罪の根拠とした「若い女性と被告に似た男が一緒にいるのを見た」とする目撃証言について同小法廷は、男の年齢や目つきについての説明が最終的に被告の特徴に一致するように変遷するなどしており、「証言の信用性を損なう」と指摘した。
遺留品に関する捜査段階の被告の供述については、当初は曖昧だった供述が長時間の取り調べの中で具体的なものに変化しており「取調官の反応を見ながら小刻みに供述した結果、実際の特徴にたどり着いたと見る余地もある」とした。
2011年5月の1審判決は死刑求刑に対し無期懲役を言い渡したが、2012年12月の2審判決は「被告を犯人と認定するに足る証拠はない」と1審を破棄した。
京都地検は「コメントしない」としたが、府警の捜査幹部は「やるべきことは全てやった。結果は厳粛に受け止める」としたものの、その表情には悔しさがにじんだ。
主任弁護人を務めた小坂井久弁護士(大阪弁護士会)は10日、大阪市内で記者会見し、「刑事裁判の原則にのっとった極めて的確な判断。思ったよりも結果が出るのが早く、検察側の上告が無理筋だったことを表しているのではないか」と述べた。また、小坂井弁護士によると、10日午後3時すぎ、大阪拘置所で中受刑者と面会したが、時折笑顔をみせ、「無実が証明されてほっとしている。犯人扱いした警察と検察に強い憤りを感じている」と話したという。
被害者の母親(44)は11日、「犯人が被告ではないのなら真犯人を捜してほしい。真相が明らかになるまで捜査機関は責任をもって対応してほしい」とのコメントを発表した。遺族代理人の細川治弁護士(43)が記者会見で明らかにした。母親は小杉さんの携帯電話を解約せずに持っているといい、細川弁護士は「思いを口にすることはないが、察するにあまりある」と語ったうえで「捜査の問題点を検証してもらわないと、遺族は気持ちにどう整理をつけたらいいのかわからない」と述べた。
☆ 大阪地裁岸和田支部;ドア指紋「犯罪の証明なし」窃盗被告に無罪判決(14年7月8日)
大阪府泉大津市のコンビニエンスストアで2012年6月6日午前2時半頃、店員がレジを開けたすきに1万円を盗んだとして窃盗罪に問われた男性被告(23)に対する判決があった。
検察側は、店のドアから採取された男性の指紋などを証拠に起訴した。弁護側は、事件5日前に男性が店のドアに触れる様子を映した防犯カメラの映像などを根拠に無罪を主張、これに対して検察側は事件前の店員の清掃で5日前の指紋は消えたと主張した。男性は逮捕から10カ月も勾留された。
渡辺央子(ひさこ)裁判官は、レインコートのフードをかぶり、マスク姿の犯人が逃走時に付けたとするドアの指紋を検討。防犯カメラの映像では、犯人はドアを左右に押し広げて逃走したが、右側ドアで採取された指紋は男性の左中指のものであったことから、「犯人が左手で右側ドアをつかむのは不自然」と指摘した。また防犯カメラに、事件5日前に男性が同じ部分を触る映像があったことから、「指紋は犯人が逃走した際に残したものとは認められず、犯罪の証明はない」と述べ、無罪(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。
判決後男性は会見で、「歌手として芸能事務所に所属していたが、逮捕で解雇された。300日も勾留され、孤独で苦しかった。家族と友人がいたから頑張れた」と長かった勾留生活を振り返ったうえで、「警察と検察は一度でいいから謝ってほしい」と訴えた。弁護人は無罪の決め手となった証拠を当初提出しなかった検察側の対応を「証拠隠しだ」と批判した。
☆ 東京地裁;脱税事件で弁護士無罪 「個人の利益隠し」否定(14年5月21日)
不動産取引で得た個人の利益を隠して8億円余りを脱税したとして、所得税法違反罪に問われた弁護士の被告(72)と、元妻で公認会計士の被告(63)に対する判決があった。
鹿野伸二裁判長は、それぞれの取引について契約内容を検討し「購入原資を各法人が出すなどしており、不動産売買や賃貸取引の主体はそれぞれの法人だ。利益は平被告のものではない」と判断し、いずれも無罪判決を言い渡した。
多数の法人名義で行われた不動産取引が、弁護士の被告の実質的な個人事業といえるかどうかが争点になっていた。求刑は弁護士の被告が懲役3年6月、罰金2億5千万円、公認会計士の被告が懲役2年だった。
☆ 札幌地裁;「ダイビングは自己責任」 事故の女性元ガイドに無罪(14年5月15日)
ダイビング中の事故を防げず客に障害を負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われた元ダイビング店経営者でガイドとして引率していた女性被告(53)=札幌市=に対する判決があった。
被告は2009年4月20日、沖縄県座間味村の海で女性客を引率中、注意を払う義務を怠って先に進んだ結果、客がパニック状態に陥って溺れたのに気付かず、低酸素脳症や急性肺水腫などの傷害(女性は腕などに障害が残った)を負わせたとして起訴されていた。
弁護側は「ダイビングは自己責任のスポーツ。被告は適切に客の状態を観察しており、事故は防げなかった」と無罪を主張していた。
田尻克已裁判長は、無罪(求刑・罰金30万円)の判決を言い渡した。だった。
捜査を担当した那覇地検は被告を不起訴処分としたが、那覇検察審査会が不起訴不当を議決。再捜査して12年7月に在宅起訴した。その後、那覇地裁が被告の住所を管轄する札幌地裁への移送を決めていた。
☆ 宮崎地裁;再婚隠し扶養手当受けた中国人女性無罪 「故意とはいえない」(14年5月9日)
再婚したことを申告せず、母子家庭に支給される児童扶養手当をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた中国籍の女性被告(54)の判決があった。
女性は平2000年に離婚し、01年、離婚を理由に長女の児童扶養手当を申請した。03年に元の夫と復縁し、受給資格を失ったにもかかわらず、11年度分まで手当を受け取っていた。
竹内大明裁判長は、女性は再婚で受給資格がなくなることを知っており、宮崎市役所を訪れて市職員に片言の日本語で再婚したと告げたが、職員の対応が曖昧だった可能性があると指摘。「女性はそのまま手当をもらい続けても良いと思った。故意にだましたとは言えない」と判断、無罪を言い渡した。
宮崎地検は「控訴するかどうかは決まっていない。検討する」としている。女性の弁護士は「裁判所がきちんと事実を見てくれた結果だ」と評価した。
☆ 大阪高裁;長男殺害事件で父親に逆転無罪(14年4月30日)=確定
大阪府岬町で2008年、当時5カ月の長男を暴行し殺害したとして、殺人罪に問われた父親の岬町の元病院事務員の被告(36)に対する控訴審判決があった。
検察側は、被告が長男と2人きりでいた08年2月16日夜、自宅1階の居間で長男の頭に暴行し、殺害したと主張。弁護側は1審段階から「暴行はしていない。死亡したのは約3週間前のけがの影響だ」と無罪を主張していた。
横田信之裁判長は「当日の対応などに不審で不自然な点はあるが、長男の死亡の原因となった頭のけがが被告と2人きりになる前からあった可能性が否定できず、犯罪の証明ができていない」と述べ、「当時、長男と一緒にいたのは被告だけだ」として懲役15年とした1審・大阪地裁判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
被告の弁護士は、記者会見で「司法解剖を行った法医学者の鑑定がずさんで死因を間違えたにもかかわらず、それに基づく見込み捜査が行われた。検察も最初の起訴の間違いに気付き、起訴内容を変更しているが、自分たちに都合のよい証言をする証人を呼び、裁判を継続した」と批判した。
一方、大阪高等検察庁の野々上尚次席検事は「判決内容を十分に精査し、適切に対処したい」としている。
☆ 大阪地裁;ダンス「クラブ」:無許可の元経営者に無罪判決 「性風俗を乱す風俗営業とは認められず、許可は不要」(14年4月25日)=地検控訴⇒判決全文⇒詳細
客にダンスをさせる「クラブ」を無許可で営業したとして、風営法違反の罪に問われたクラブ「NOON(ヌーン)」(大阪市北区)の元経営者の被告(51)に対する判決があった。
被告は2012年4月、無許可でヌーンを営業、ダンスフロアで客に踊らせ、酒類を提供したとして起訴されたが、「風俗営業でなく、許可は不要」と一貫して無罪を主張した。弁護側は「風営法のクラブ規制は表現の自由を侵害し、憲法違反だ」と訴えた。
斎藤正人裁判長は、まず、風営法の規制対象となる「ダンス営業」について、「性風俗の乱れにつながる恐れが実質的に認められる営業に限られる。踊り方や客の密集度などを総合判断すべきだ」との基準を示したうえで、ヌーンでは客同士の距離は30センチ程度に近付くことはあったが、密着する状況ではなかったと指摘。「客の踊りは、音楽にあわせステップを踏み、手や首を動かすのが大半だった。激しいものでも腰をひねるなどした程度で、単に盛り上がっていたに過ぎない」と解釈した。また、「店内ではわいせつな行為を招く演出もなく、享楽的な雰囲気はなかった」として、風俗営業ではないと結論付け「実質的に、性風俗を乱す営業だったとは認められない」と述べ、風営法の許可は不要と判断し、無罪(求刑・懲役6月、罰金100万円)を言い渡した。
風営法の規制については「公共の利益を保護するため必要な措置で、表現の自由が制約されてもやむを得ない」として、憲法に反しないとした。
無許可営業のクラブに対する警察の摘発が相次ぐが、クラブは風俗営業ではないとした司法判断は初めて。
警察による相次ぐクラブの摘発に、「若者文化の発信地のクラブが存続できなくなる」と、風営法の改正を求めてきた関係者やミュージシャンから喜びの声が上がった。
弁護団長の西川研一弁護士(大阪弁護士会)は「時代に沿う常識的な判断で、歴史的意義ある判決。もはやダンス営業規制は時代遅れだ」と批判した。
国内外で活動し、ヌーンでも演奏経験があるミュージシャンの「PIKA☆」さんは「クラブ関係者が情熱を持って支援した成果だ」と喜んだ。有名人や支援者らもツイッターなどで無罪を喜んだ。「レッツダンス署名推進委員会」の呼びかけ人の一人で、人気ドラマ「あまちゃん」の音楽を手がけた音楽家の大友良英さんは「ヌーンの風営法裁判無罪、まずは良かった。これが法改正に繋(つな)がっていけば」とコメントした。
大阪地検は5月7日、大阪高裁に控訴した。
◇ことば「風俗営業法」=青少年の健全な育成のため、ダンス営業やパチンコ店を風俗営業とし、営業時間や区域を制限している。営業には公安委員会の許可が必要で、無許可の場合、2年以下の懲役か200万円以下の罰金が科せられる。ダンス営業については「設備を設けて客にダンスをさせ、飲食させること」と定義する。
☆ 広島地裁;傷害事件で父親に無罪、広島 5カ月の長男揺さぶり(14年4月21日)
生後5カ月の長男の体を揺さぶり急性硬膜下血腫などの重傷を負わせたとして、傷害罪に問われた広島県呉市の会社員の被告(26)に対する判決があった。
被告は、2012年5月28日に呉市の自宅で長男を抱え上げて激しく揺さぶる暴行を加え、重傷を負わせたとして起訴された。設楽大輔裁判官は「(事件以前に)慢性硬膜下血腫が生じていたという医師の見解から、揺さぶらなくても傷害が起きた可能性がある」と指摘。被告の供述などから「子どもをあやす行為と区別できない行為だった可能性も十分ある」として、暴行と認めず、無罪(求刑懲役6年)の判決を言い渡した。
☆ 最高裁第2小法廷;暴力団員らに逆転無罪 ゴルフ場利用で詐欺罪否定(14年3月28日)
ゴルフ場で暴力団員の身分を明かさずにゴルフをしたとして、詐欺罪に問われた指定暴力団山口組系の組長木脇の文裕被告(48)と元組員の被告(39)の上告審判決があった。
2人は2011年に暴力団員の利用を禁じている宮崎市のゴルフ場を身分を隠して利用した、として起訴された。利用申し込みの際に出した書類には、氏名や住所などを偽りなく記入していた。
千葉勝美裁判長は、書類に暴力団関係者かどうかを確認する欄がなく、誓約書などを書かせることもなかったと指摘。暴力団関係者と申告せずに利用しただけでは、詐欺に当たらないと判断、両被告をいずれも懲役1年6月、執行猶予3年の有罪とした1、2審判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
1審・宮崎地裁は、申し込み自体が暴力団関係者でないとの積極的な意思表示だと評価して詐欺罪の成立を認め、2審・福岡高裁宮崎支部も支持していた。
☆ 大阪高裁;視野狭さく事故 「病気自覚ない」1審無罪支持(14年3月26日)
軽トラックを運転中に歩行者をはねて死亡させたとして、自動車運転過失致死罪に問われた男性(45)の控訴審判決があった。
被告は2011年3月、奈良市内で軽トラックを運転中、道路を渡っていた男性(当時69歳)をはねて死亡させたとして起訴された。
検察側は「病気であっても前方を注視する義務を怠っていた」と主張していた
米山正明裁判長は、被告が病気のため正面周辺の視野がドーナツ状に欠けていた疑いがあると指摘。被告は当時、病気を自覚していなかったとして、「事故を予見し、回避することは困難だった」と結論付け、1審と同様、被告は視野が狭くなる難病「網膜色素変性症」で、被害者が見えなかった可能性があると判断し、無罪(求刑・禁錮1年8月)とした1審・奈良地裁判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
☆ 大阪高裁;元警部補に逆転無罪 大阪高裁、飲酒検出値捏造を否定(14年3月26日)
飲酒検問の際にアルコール検出値を捏造(ねつぞう)したとして、虚偽有印公文書作成・同行使と証拠隠滅罪に問われた大阪府警泉南署の元警部補の被告(59)の控訴審判決があった。
元警部補は2012年3月に逮捕されたが、一貫して否認。取り締まりの際に数値を捏造されたとする同府警元警察官の男性の証言を信用できるかどうかが争点だった。
横田信之裁判長は、取り締まりの際に元警部補が適正に検知器を操作したかどうかについて、「検知器が作動した音を一切聞いていない」と捏造を訴えた男性の証言を「信用性に疑いがある」と指摘。男性の証言などを根拠に有罪を導いた1審判決は不合理だと結論づけ、「検挙された元警察官の証言は信用できない」と判断。懲役1年6カ月の実刑とした1審・大阪地裁判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
☆ 京都地裁;「痴漢」無罪に…「証言は信用できず」(14年3月18日)
京都市の路上で女子中学生の下半身を触ったとして、府迷惑行為防止条例違反に問われた同市内の無職男性(42)に対する判決があった。
男性は13年4月25日、自転車で追い越しざまに背後から女子中学生(当時13歳)の下半身を触ったとして逮捕、起訴されたが、無罪を主張していた。
後藤裁判長は、公判での女子中学生は、犯人から逃げ、離れた場所で姿を確認したと証言を、「視力の良くない被害者が目に涙を浮かべて十数メートル先の犯人の着衣を認識できたとは言い難く、証言は直ちには信用できない」として退けたうえで、「被告を犯人とするには合理的な疑いが残る」と指摘し無罪(求刑・懲役1年)を言い渡した。
地検の永村俊朗次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議して対応したい」とコメントした。
☆ 神戸地裁尼崎支部;痴漢で起訴の男性に無罪、兵庫 「先入観から誤認」(14年3月18日)
兵庫県西宮市の阪急今津線の電車内で13年6月、女性会社員に痴漢をしたとして、県迷惑防止条例違反罪に問われた男性会社員(49)=同県宝塚市=に対する判決があった。
男性は公判では一貫して無罪を主張していた。
小川貴寛裁判官は、当時同じ電車に乗り合わせていた警察官の証言について「立証できるような事実を述べようとしており、作為や犯人と決めつける態度が感じられる」と指摘したうえで、「痴漢を目撃したという警察官は、先入観から誤認した疑いが強い」として、無罪(求刑罰金50万円)の判決を言い渡した。
☆ 福岡地裁小倉支部;市職員の「痴漢」無罪…「行為内容確定できず」(14年3月14日)
列車内で女性の体を触ったとして、福岡県迷惑行為防止条例違反に問われた北九州市環境局の男性職員(56)(起訴休職中)に対する判決があった。
男性職員は、2012年8月1日朝、JR日豊線城野〜西小倉駅間を走行中の普通列車内で、女性の胸や尻を触ったとして県警小倉北署が現行犯逮捕、同12月7日に在宅起訴された。逮捕当初から「痴漢はしていない」と否認していた。
検察側は、被害者の証言や「(男性職員と女性が)列車内で不自然に密着していた」との目撃者の話から、「誤認とは考えられない」と主張していた。
大泉一夫裁判長は「痴漢行為の具体的内容を確定することはできない」と述べ、無罪(求刑・懲役4月)を言い渡した。
☆ 山形地裁;死体遺棄・詐欺事件に無罪 「同居父の死、気付かず」(14年3月12日)
同居の父親の遺体を放置し、年金をだまし取ったとして死体遺棄と詐欺の罪に問われた山形市の男性被告(36)に対する判決があった。
男性は2012年9月、同居の父親=当時(66)=が死亡しているのに気付いたのに、遺体が見つかる13年1月まで放置し、父親の年金2カ月分計約19万円をだまし取ったとして起訴されていた。
矢数昌雄裁判長は、「父親は部屋にこもりがちで、被告はおよそ2年間、顔を合わせることはほとんどなく、全く関心を払わない状態が続いていた特異な家族環境だった。生活音がなかったり、郵便物がたまっていたりしても、それで父親の死を認識していたとは言い難い」としたうえで、男性が父親の死亡を認識していた証拠がないと判断し、無罪(求刑は懲役2年6月) を言い渡した。
☆ 大津地裁;被害者の供述に疑い…脅迫で有罪、恐喝は無罪(14年3月10日)
知人から金を脅し取り、また知人の妻から金を脅し取ろうとしたとして、恐喝と恐喝未遂の両罪に問われた滋賀県内の運送業の男(47)のに対する判決があった。
男は2012年1月、守山市内で男のトラックの修理を巡り、男と知人の間で生じたトラブルに関して、知人の妻に「お前のだんなを殺したら、生活していけるのか」などと言って脅迫したといい、検察側は、男が知人に因縁をつけ、100万円を脅し取ったと主張した。
丸山裁判官は、検察側が主張した妻への恐喝について、「被害者(知人)の供述の信用性には合理的な疑いの余地がある」として無罪とした。たうえでとし
恐喝未遂については、丸山徹裁判官は、「大声でまくし立てたに過ぎないと解することができ、恐喝未遂の認定には疑いの余地がある」として、脅迫罪の成立が相当と判断、男に懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
一部無罪の判決内容について、地検は「内容を精査して、上級庁と協議し、適切に対応したい」とコメントした。
☆ 東京地裁;公然わいせつで無罪、東京地裁 「目撃証言信用できず」(14年3月6日)
東京都内の公園で下半身を露出したとして、公然わいせつ罪に問われた都内の自営業の男性(52)に対する判決があった。
男性は12年4月17日深夜、足立区内の公園で下半身を露出したなどとして現行犯逮捕され、起訴された。公判では、「目撃した」と110番した女子高生の証言だけが証拠となっていた。
細田啓介裁判官は、「目撃者は事件直後、詳細に男性の様子を証言したのに、法廷証言はあいまいで、信用性がない」と指摘。「目撃者の証言は信用できない」として無罪(求刑は罰金30万円)を言い渡した。
☆ 大阪地裁堺支部;女性元教諭に無罪判決 小学校で児童はね放置「事故裏付けられない」(14年3月5日)
10年12月22日夕、勤務していた美木多小の駐車場で、乗用車を発進させた際に男児と接触、転倒させて腹などに軽傷を負わせた上、事故の発覚を免れるため、歩けない男児を抱えて約35メートル先の校舎の出入り口まで引きずり置き去りにしたとして、自動車運転過失傷害と保護責任者遺棄の罪に問われた元教諭の被告(56)に対する判決があった。
弁護側は「男児をひいた事実はない」として無罪を主張していた。
杉昌希裁判官は「元教諭の車の傷は、事故時についたかどうかわからない。児童の腹部のけがも、車にひかれたとは裏付けられない」と判断し、無罪(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。
警察の調べに対し、元教諭は男児をひいたことを認めたとされ、堺市教委は翌11年3月、元教諭が書類送検されたことを受けて懲戒免職処分にしていた。元教諭は判決後、「早く職場に復帰したい」と話した。
☆ 大阪地裁;山口組系幹部に一部無罪判決 逃走の手助けなど認めず(14年3月4日)
詐欺や犯人隠避などの罪に問われた指定暴力団山口組の直系組織、一心会会長の被告(53)の判決があった。
小野寺健太裁判官は、被告が2009年、知人用にマンションを借りる際、家賃保証会社などにうその源泉徴収票などを提出し、賃借権を不正に得たと詐欺罪の成立を認定。一方で死体遺棄容疑で逮捕状が出ていた暴力団組員の逃走を手助けしたなどとする起訴内容については、「共謀や犯意が認められない」などとして無罪と判断。懲役1年6カ月執行猶予3年(求刑懲役4年)を言い渡した。
☆ 東京高裁;クレディ・スイス証券元部長、2審も無罪 株式報酬めぐる脱税事件(14年1月31日)=確定
約1億3千万円を脱税したとして所得税法違反罪に問われ、1審・東京地裁で無罪とされたスイス金融大手の日本法人「クレディ・スイス証券」元部長の被告(50)の控訴審判決があった。
元部長は、06、07年の確定申告の際、賞与として得たストックオプション(株式購入権)などを行使して株を取得した際、親会社株の売却益所得を申告せず、約1億3200万円を脱税したとして在宅起訴された。脱税の故意が争点だった。
角田裁判長は、元部長が虚偽書類を作るなど所得隠匿工作を行った形跡がないことを考慮。06年春ごろに過去の不申告が判明すると、税理士を変えて過年度申告しており「税務申告を放置・無視する態度は見られない」と判断したうえで、日本では会社側が源泉徴収する範囲が広く「報酬がすべて源泉徴収されていると考えるのは無理がない面がある」と指摘。元部長が日常的に高額取引に関わり、高額報酬を得ていたことから、数千万円の株式報酬の申告を忘れることもあり得ると認定することが「社会常識に反するとまではいえない」と述べ、「脱税の故意を認めるには合理的疑いが残るとした1審に不合理な点はない」として、1審判決を支持、検察側の控訴を棄却した。
1審判決は、検察側の証拠を「根拠として脆弱(ぜいじゃく)」と指摘、「源泉徴収されていると思い込んでいた」とした被告の供述の信用性を否定できないと判断し、懲役2年、罰金4千万円の求刑に対し無罪としていた。
東京高検は2月14日、「明確な上告理由が見当たらない」として上告の断念と発表した。
無罪が確定した元部長は「なぜ今まで引き返す勇気がなかったのかが残念だが、(裁判所が)無罪を維持したことは司法にとって喜ばしい。国税当局も、国民の人権を侵害しうる強大な権力であることの責任感を自覚してほしい」とコメントした。
☆ 大阪地裁岸和田支部;目撃証言一転、男性無罪 暴行事件(14年1月20日)
大阪府岸和田市で2012年、暴力団関係者を殴ったとして、暴行罪に問われた無職の男性(63)に対する判決があった。
捜査段階で犯行を見たと証言したアルバイト男性が法廷で「うそだった」と発言を翻していた。検察側は「目撃者は他にもいる」と主張した。
渡辺央子裁判官は「被害者の供述は信用できない」と判断し、無罪(求刑・罰金20万円)を言い渡した。
弁護側は「初期の捜査がずさんだった。約1年2カ月もの間、不当に被告を勾留し続けた」として、国に対し損害賠償請求を検討する。
☆ 仙台地裁;重傷負わせたはずの2被告に無罪 「被害男性の証言不自然」(14年1月16日)
飲食店で会社経営の男性(51)とトラブルになり重傷を負わせたとして、傷害罪に問われた福島県喜多方市の男性会社員(44)と仙台市の男性建設作業員(25)の両被告に対する判決があった。
両被告は12年11月、仙台市内の飲食店近くで、男性を殴ったり突き飛ばしたりして、頭蓋骨骨折などを負わせたとして起訴された。
河村俊哉裁判官は「男性は目を強く殴られたと証言しているが、眼鏡が外れて落ちなかったのは不自然」と指摘、証言は信用性に乏しいとした。男性建設作業員が突き倒した事実はあるが「男性の暴行から逃れるため」として正当防衛を認め、ともに無罪(求刑はいずれも懲役1年6月)を言い渡した。
仙台地検の吉田靖次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議のうえ、適切に対応したい」とコメントした。
☆ 仙台高裁秋田;強制わいせつで逆転無罪 「被害者供述は信用できない」(14年1月14日)
携帯電話サイトで知り合った女性に無理やりキスしたなどとして、強制わいせつ罪に問われた秋田県由利本荘市の無職の男性被告(26)に対する控訴審判決があった。
被告は、12年12月20日に秋田市内の駐車場に止めた自動車内で、女性に無理やりキスしたり、胸を触ったりしたとして起訴された。
被告は「相手の承諾があった」などと無罪を主張していたが、1審は男性の供述は信用できないとして有罪としていた。
久我泰博裁判長は、「捜査段階では男性に押さえ付けられたとしていたのに公判では手のひらで顔を振り向かせられたと述べるなど、被害者の供述は大きく変わり信用できない」と指摘。「被害者の同意がなかったとは言えず、罪に問われる行為があったかも疑問」と述べ、懲役10月の1審;秋田地裁判決を破棄し、無罪を言い渡した。
☆ 福岡地裁;痴漢行為の北九州市職員に無罪 「被害女性の話は信用できない」(14年1月14日)
電車内で女性の体を触ったとして、福岡県迷惑行為防止条例違反罪に問われた北九州市環境局の男性職員(56)に対する判決があった。
被告は、2012年8月1日午前、JR日豊線の城野〜西小倉間を走行中の電車内で、女性の体を服の上から触ったとして逮捕、起訴された。
検察側は「男性職員の顔を見たという女性の証言は信用性が高い」とし、弁護側は、職員の両手から被害者の服の繊維が検出されなかったなどとして無罪を主張していた。大泉一夫裁判長は、「女性は犯人から離れることができたのに、犯人に近い場所に立ち続けており不自然。女性の話は信用できない」と指摘した上で「女性が何らかの痴漢被害にあった可能性はあるが、男性職員が犯人だとは言い切れない」と判断し、無罪(求刑は懲役4月)を言い渡した。
約40分間の判決読み上げの際は、椅子に座ったまま体をほとんど動かさずに聞き入った。言い渡しが終わると裁判長に一礼し、しばらく立ち尽くした男性職員は閉廷後、「今までの苦労を思いだし、頭の中が真っ白になった。非常に大きな感激をもらった」と、喜びを語った。
逮捕から判決までの約1年半、男性職員は「何で自分が」という割り切れない感情にさいなまれてきたという。学生時代から電車は通学や通勤で生活の一部だったが、事件後は「(電車に)乗らないといけない時には心拍数が上がる」と打ち明けた。
☆ 東京地裁立川支部;暴行罪の40代男性、再審で無罪 罰金確定後に新証言(13年12月20日)
東京都八王子市の路上で女性を押し倒したとして、暴行罪で罰金刑が確定した40代の男性の再審判決があった。
男性は2010年11月、路上で女性=当時(44)=に暴行したとして罰金20万円の略式命令を受けた。その後「(被害)女性が男性を蹴っていた」とする目撃者の新証言が得られたとして、再審を請求していた。
菊池則明裁判長は「女性の証言は裏付けがない」と指摘、「目撃者は利害関係なく、うそをつく動機がない」とし、「暴行の認定には合理的な疑いが残る」として無罪の判決を言い渡した。
☆ 静岡地裁;暴行などの違法捜査認め無罪判決 覚醒剤使用の男性被告(13年11月22日)
12年8月22日〜9月1日、静岡県内などで覚醒剤入りの水溶液を自分に注射して使用したとして県警に逮捕され、覚せい剤取締法違反(使用)罪で起訴され懲役4年を求刑されていた50代の男性に対する判決があった。
静岡県警静岡南署員は12年9月1日、逮捕状がないのに男性の内妻宅に入り、チェーンカッターで男性の頭を殴った。男性は頭などから出血し、「病院に行きたい。弁護士に連絡を取ってほしい」と訴えたが、署員は取調室に男性をとどめ、弁護士に連絡を取らなかったという。男性は使用は認めていた。
村山浩昭裁判官は、静岡県警の捜査員が家宅捜索を行った際、持っていたチェーンカッターで男性の頭部を殴打したことに加え、逮捕の手続きを取らないまま身柄を長時間拘束したりする違法捜査をしていたと認定し、「違法な身柄拘束で採取した尿などは証拠として認められない」として、無罪判決を言い渡した。
☆ 福岡地裁小倉支部;殺人未遂などの組幹部2人に無罪(13年11月15日)
福岡県中間市で12年1月、北九州市の建設会社「黒瀬建設」の社長(当時)が銃撃されて重傷を負った事件で、殺人未遂などの罪に問われた、いずれも指定暴力団工藤会系組幹部の2人の被告に対する判決があった。
大泉一夫裁判長は、無罪判決を言い渡した。
☆ 大阪地裁;調書の信用性否定し無罪 詐欺罪の男性(13年11月11日)
身分を偽ってスマートフォン(多機能携帯電話)の購入契約をしたとして、詐欺罪に問われた男性(21)に対する判決があった。
蛯原意裁判官は、大阪府警の調書について「取り調べ警察官の見立てが反映され、男性の認識とは異なっているのではないかという強い疑問がある」と作成の経緯を疑問視したうえで、男性が故意に携帯電話をだまし取ったかどうかという認識の部分で調書内容に変遷がある点も問題とし、府警や大阪地検の調書は「信用性が低い」などとして、無罪(求刑は懲役1年6月)を言い渡した。
☆ 福岡地裁;捜査情報漏えい:元福岡県警警部補 収賄は無罪(13年11月8日)
捜査情報を漏らした見返りに暴力団関係者から現金を受け取ったなどとして、収賄、犯人隠避、地方公務員法(守秘義務)違反の罪に問われた福岡県警元警部補の被告(50)の判決公判があった。
被告は福岡・東署薬物銃器対策係長だった昨年3月20日ごろ、梶原被告が関与した恐喝事件で被害届が出された情報などを教えた見返りに、同署駐車場の車内で、梶原、梅崎両被告から10万円を受け取ったとして、起訴された。
被告は初公判で収賄罪について大筋で起訴内容を認めた。しかし、その後「賄賂を受け取ったのは間違いない」としながらも「授受の日時と場所が起訴内容と異なる」と重要部分で供述を変えた。検察側は公判終盤に起訴内容の変更を申し出たが、地裁は許可しなかった。
野島秀夫裁判は、収賄罪については無罪とし、懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役2年6月、追徴金10万円)を言い渡した。「賄賂を渡していない」と一貫して無罪を主張していた贈賄罪に問われた指定暴力団工藤会関係者の2人の被告も無罪(求刑・懲役1年)とした。
企業・市民襲撃などの続発を受けた暴力団取り締まり強化のさなかに発覚した身内の癒着に、県警は信頼回復に向け捜査を急いだが、判決で詰めの甘さを指摘される形となった。
☆ 神戸地裁尼崎支部;安全確認「不可能」=運転手に無罪、5人死傷事故(13年10月28日)
兵庫県西宮市で5人が死傷した交通事故で自動車運転過失致死傷罪に問われた男性(44)の判決があった。
事故は2010年12月に発生。駐車場から国道に出ようと左折した男性の車が、右側から来た車と接触。さらに、その車が対向車2台に衝突し1人が死亡、4人が重軽傷を負った。
飯畑正一郎裁判長は、右側から来た車が制限速度を約20キロ超過しており、男性が一時停止地点で右方向を確認しても目視できる距離になかったと認定。「男性に安全確認を求めると、永久に発進できなくなる」と判断し、「車両の接近に気付くことは不可能で、過失は認められない」と述べ、無罪(求刑禁錮1年4月)を言い渡した。
☆ 千葉地裁;衝突事故、「意識失い過失なし」無呼吸症候群で無罪(13年10月8日)
千葉県長柄町の交差点で車を運転中に乗用車と衝突し、男女6人に重軽傷を負わせたとして自動車運転過失傷害罪に問われた無職の男性被告(63)の判決公判があった。
出口博章裁判官は「事故当時、睡眠時無呼吸症候群(SAS)で、運転中に突発的な意識障害に陥った可能性がある」と指摘したうえで、事故原因について「赤信号で一時停止した後、予兆なくSASに陥り、自動的に動きだし、交差点に進入した可能性がある」と述べ、信号を見ずに漫然と交差点に入ったとする検察側の主張を退け、「過失を認めることはできない」と結論付け、無罪(求刑禁錮1年6月)を言い渡した。
☆ 大阪地裁;傷害致死、被告に無罪 「現場に不在」(13年10月8日)
入院先の大阪市の病院で2011年12月、車いすに火を付け入院患者の男性=当時(62)=を死亡させたとして、傷害致死罪に問われた被告(62)の裁判員裁判の判決があった。
被告は大阪市東成区の病院で、別の病室で患者が座っていた車いすにライターで火を付け、全身やけどのけがを負わせ死亡させたとして、12年7月に起訴された。
被告は無罪を主張。公判では、火災報知機を聞いて駆けつけた看護師が病室の奥に被告がいたと証言した一方、救助に向かった警備員や患者は被告を見ていないと証言した。
大阪地裁は、犯行現場にいた証拠はないとして、無罪(求刑懲役10年)の判決を言い渡した。
☆ 札幌地裁;正当防衛認め無罪=DVDで調書の信用性否定(13年10月7日)
暴れる弟を制止しようとして首を圧迫し死亡させたとして、傷害致死罪に問われた男性被告(35)の裁判員裁判の判決があった。
男性は2012年9月、殴りかかってきた弟ともみ合いとなった際、うつぶせに倒れた弟の背中に馬乗りとなり、首の後ろを手で押さえて顔を床のじゅうたんに押し付け、窒息死させたという
公判で検察側は、捜査段階での男性の供述を基に「被害者が動かなくなった後、約10分にわたって首を押さえ続けたことが窒息死につながった」と主張。弁護側は、弟が馬乗りされてからも抵抗していたことなどから「正当防衛が成立していた」として無罪を訴えていた。
加藤学裁判長は、殴り掛かってくる弟を止めようともみ合いになり、男性が馬乗りになって首を圧迫し窒息死させたとした上で、「被害者の攻撃から身を守るためやむを得ずにした行為」と判断し、正当防衛を認め、無罪(求刑懲役4年)を言い渡した。
「弟が動かなくなった後も約10分間首を押さえ続けた」とする男性の供述調書については、取り調べの様子を記録したDVDの映像から、「検察官の質問に合わせる形で供述を変遷させた可能性が高い」として信用性を認めなかった。
☆ さいたま地裁越谷支部;強制わいせつ、男性に無罪判決 「女児の証言に疑念」(13年10月2日)
自宅で女児にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ罪に問われた埼玉県越谷市消防本部職員(休職中)の男性(59)の判決があった。
男性は2011年7月9日、自宅に遊びに来た女児2人(いずれも当時10)に、マッサージを装ってわいせつな行為をしたとして、12年7月に起訴された。男性は取り調べ段階から一貫して否認していた。
梶直穂裁判官は、女児2人が1メートルも離れていない場所にいたとしながら、尻などにわいせつ行為をされたとの2女児の証言について、(1)そばにいた女児が互いにわいせつ行為を受けた様子や、抵抗した声などを見聞きしていない(2)マッサージの後も男性宅でテレビを見るなどして過ごしていた――などを挙げ、「供述に不自然な点が存在し、信用性に疑問が残る」と指摘。「女児の証言が唯一の直接証拠で、その証言に疑念が拭えない以上、犯罪の証明がない」とし無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。
男性の弁護人は「当然の判決。検察は男性の主張を全く聞かず、起訴ありきで進めていた」と語った。さいたま地検の千葉雄一郎次席検事は「判決内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対処したい」とコメントした。
☆ 静岡地裁沼津支部;自殺幇助の男性無罪 「故意認められない」(13年10月1日)
交際女性の自殺を手助けしたとして、自殺教唆と幇(ほう)助(じょ)の罪に問われた東京都新宿区の飲食店経営の被告(30)の判決公判があった。
被告は11年、交際していたアルバイト女性=当時(27)=に「一緒に死のうか」と持ち掛け、静岡県熱海市のマンションで練炭に火を付けて女性を放置し、自殺を手助けしたとして起訴された。女性は死亡し、被告は部屋を出て無事だった。
宮本孝文裁判長は、「自殺を唆し、自殺を手伝ったとの被告の故意は認められない」と述べ無罪を言い渡した。18歳未満の少女3人とみだらな行為をしたとして問われた東京都青少年健全育成条例違反などの罪では懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)の有罪判決を言い渡した。
☆ 大阪地裁;女子大生ら2人に無罪 覚せい剤密輸(13年9月27日)
12年8月23日にウガンダからカタール・ドーハ経由で帰国する際、元会社員の女性と共謀して覚せい剤約1・85キロ(末端価格約1・5億円)をコーヒー袋に隠し、関西空港に密輸しようとしたとして、覚せい剤取締法違反と関税法違反の罪に問われた大学生の女性(25)=休学中=と元会社員の女性(24)に対する裁判員裁判の判決があった。
岩倉広修裁判長は「覚せい剤の認識があったと言うには根拠が不十分」と指摘、無罪(大学生の女性に懲役8年と罰金500万円、元会社員の女性に懲役9年と罰金500万円を求刑)を言い渡した。
☆ 神戸地裁;福知山線事故、JR西の歴代3社長に無罪判決(13年9月27日)
兵庫県尼崎市で2005年4月、乗客106人が死亡したJR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴されたJR西日本の井手正敬(まさたか)(78)、南谷(なんやC)昌二郎(72)、垣内剛たけし(69)の元社長3人の判決があった。
重大事故で、鉄道会社の歴代トップに刑事責任を問うた異例の裁判で、井手元社長(社長在任=1992〜97年)、南谷元社長(同=97〜2003年)、垣内元社長(同=03〜06年)が〈1〉事故を予見できたか〈2〉現場となったカーブに自動列車停止装置(ATS)を整備する指示を怠ったか――などが争点になった。
宮崎英一裁判長は、代表取締役とはいえ個人の刑事責任を対象にする以上、(事故が起きると事前に予想できる)予見可能性は具体的な必要がある」と指摘。1996年にカーブの半径を304メートルに半減させたことについて「半径300メートル未満のカーブは珍しいものではない」と指摘。3人がこのカーブに着目して具体的に危険性を認識することはなかったと述べたうえで。事故の直接原因は運転士の大幅な速度超過で、ATSについては〈1〉脱線事故が起きるまでに、大半の鉄道事業者はカーブに自動列車停止装置(ATS)を整備しておらず、事故当時は設置に関する法的義務付けがない〈2〉1997年3月のダイヤ改正についても「経営幹部は具体的な列車ダイヤを検討することはなかった」とし、「被告らが快速列車の増発を認識していたとしても、それだけで脱線の危険性の認識にはつながらない」と結論づけ、検察官役の指定弁護士側が主張した「注意義務違反」を否定し、3人に無罪(求刑・いずれも禁錮3年)を言い渡した。
神戸地検が2度、3人を不起訴(嫌疑不十分)としたが、10年3月に検察審査会が「起訴すべきだ」と議決。指定弁護士は、3人がそれぞれ社長時代に行った(1)96年12月の事故現場カーブの急曲線化工事(2)現場を走る快速電車の本数が増えた97年3月のダイヤ改定などに伴い、事故の危険性を回避するためATSの整備を指示する義務を怠ったとして、強制起訴した。
指定弁護士側は、現場の半径を半減させた工事(1996年)や、工事の完成直前に起きたJR函館線の急カーブでの脱線事故、ダイヤ改正などから事故の危険性を予見できたと主張。3人は「予見は不可能」などと無罪を主張していた。
なお、同裁判長は最後に、「多くの乗客が亡くなり、いまも多くの方が苦しんでいるなか、誰1人として刑事責任を問われないことをおかしいと思うのはもっともなことだ。しかし、企業の責任ではなく、個人の責任を追及する場合は厳格に考えなければならない」と述べた。
全国で強制起訴された8事件のうち、1審無罪は3例目。
JR福知山線脱線事故
2005年4月25日午前9時18分、兵庫県尼崎市のJR福知山線塚口−尼崎間で、快速列車(7両)が制限速度時速70キロのカーブ(半径304メートル)に時速約115キロで進入。一部が脱線し線路脇のマンションに激突した。乗客106人と運転士(当時23歳)が死亡、493人が重軽傷を負った。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現運輸安全委員会)は運転士のブレーキ遅れが主原因と断定。神戸地検は山崎正夫元社長だけを業務上過失致死傷罪で在宅起訴したが無罪が確定。遺族が歴代3社長の起訴を検察審査会に申し立て、2度の議決を経て同罪で強制起訴された。
☆ 横浜地裁;元麻酔医に無罪判決 手術後脳障害 監視義務認めず(13年9月17日)
神奈川県立がんセンター(横浜市旭区)で2008年4月、女性患者の乳がん手術で、全身麻酔をした後に適切な引き継ぎをしないまま退室。麻酔器の管が外れたため約18分間にわたり酸素供給が止まり、患者に高次脳機能障害と手足のまひを負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われた当時の麻酔科医の男性被告(44)に対する判決があった。
検察側は論告で「全身麻酔中の患者を常時監視する注意義務は初歩的なもので、過失は重大だ」と指摘。弁護側は、常時監視は麻酔科学会の指針で、目標にすぎないとして無罪を主張していた。
毛利晴光裁判長は、被告が全身麻酔の患者を常時監視する注意義務を怠った、との検察側主張について「国内の麻酔担当医が常時監視しているとは必ずしも言えない」として退け、「不十分な捜査のまま起訴したという疑問がある」として、無罪判決(求刑罰金50万円)を言い渡した。
☆ 大阪地裁;公務執行妨害で起訴の男性に無罪 「故意なし」(13年8月26日)
関西電力本店(大阪市北区)前の脱原発集会で警察官を転倒させるなどしたとして、傷害と公務執行妨害の罪に問われた男性被告(49)の判決があった。
男性は、12年10月5日夜、集会の警備にあたっていた警察官の腕をつかんで転倒させ、現行犯逮捕しようとした別の警察官を押し倒して負傷させたなどとして起訴された。
石井俊和裁判官は「飲酒して足元がふらついていた男性が警察官の腕をつかみ、偶発的に転倒した可能性がある」と指摘。別の警察官も後ずさった際につまずいた可能性を否定できない、と判断し、「故意とは認められない」と述べ、無罪(求刑懲役2年6カ月)を言い渡した。
☆ 東京高裁;東大准教授に逆転無罪=痴漢証言「裁判官が誘導」(13年7月25日)
電車内で30代の女性会社員の尻を触ったとして、東京都迷惑防止条例違反罪に問われた東京大准教授の男性(46)の控訴審判決があった。
男性は2010年9月、JR総武線の錦糸町〜両国駅間を走行中の電車内で、会社員の女性の尻を触ったとして起訴されていた。一貫して無罪を主張していた。
山崎裁判長は、「満員電車内では被害者と犯人の体勢や位置が変わる可能性があり、初動捜査は特に重要だ」として、被害者の捜査段階からの供述を詳細に検討した。そのうえで、女性は当初「犯人の指をつかんで、振り返ったら男性だった」と証言していたと指摘。1審の裁判官が補充質問で、つかんだ人の指が犯人のものだとした根拠を女性に尋ねた際、「つかんだ指から腕が伸びて肩までつながっているが…」などと、答えを誘導したと判断、「被害者の証言に変遷がある」「女性は裁判官の典型的な誘導尋問の繰り返しに沿って答えを出したに過ぎず、誘導尋問で得た証言を犯人特定理由の中核に据えた1審判決には賛同できない」と述べ、「1審での証言以外に、男性が犯人だと証明できる証拠はない」として、罰金40万円とした1審東京地裁判決を破棄し、無罪を言い渡した。
1審判決は、「犯人の指先をつかみ、手から腕、肩をたどって犯人の顔を確認すると男性だった」とする女性の公判証言を重視し、「女性の証言は具体的で、被告が犯人と十分認定できる」として有罪とした。
☆ 立川簡裁;実は50cc以下 無免許運転に無罪(13年7月19日)
免許で認められた排気量を超えるバイクを運転していた罪に問われた東京・国分寺市の68歳の男性に対する判決があった。
男性は、50cc以下のミニバイクの免許を所持。13年9月、西東京市で50cc超のナンバープレートが付いたバイクで走行中に警察に摘発された。
男性は、略式起訴され、立川簡裁で罰金の略式命令を受けたが、無罪を訴え、正式裁判を申し立てた。男性は罰金の略式命令を受けたが、これを不服として立川簡易裁判所に正式な裁判を申し立てていた。
このバイクは以前の所有者が法定速度30キロの制限を免れるため、書類にうそを記載してナンバーを入手、50ccを超えるバイクに交付される黄色のナンバープレートが付けられていたが、弁護側の測定で排気量が48ccだったことが判明、立川区検察庁は裁判所に対し、無罪を言い渡すよう求めていた。
吉武雅人裁判官は、「バイクが排気量50ccを超えるよう改造された事実はない」と述べたうえで、「実際に運転していたのは免許で認められている排気量のバイクだった」として立川区検の求刑通り男性に無罪を言い渡した。
これについて立川区検察庁は「ナンバーが黄色で書類上の排気量も50ccを超えていたことを基に手続きを進めたものであり、不適正だったとは考えていない」としている。
☆ 東京地裁;裁判員裁判で無罪判決 中国人被告「心神喪失」を認定(13年7月2日)
同居人の男性を殺害しようとしたとして、殺人未遂罪に問われた中国籍の男性被告(28)の裁判員裁判の判決があった。
男性は12年9月、東京・西池袋の寮の自室で同居人の外国人男性=当時(27)=の胸をナイフで刺し、殺害しようとしたとして起訴されていた。
細田啓介裁判長は、精神鑑定医の証言などから「被告が善悪を判断し自身の行動を抑制できる精神状態にあったか、疑問が残る」「統合失調症の圧倒的な影響下で犯行に及んだ疑いが残る」として、男性が刑事責任能力のない「心神喪失」状態だったと認定し、無罪(求刑は懲役5年)を言い渡した。
検察側は「犯行当時やその後の行動は合理的で、一定の責任能力がある」と主張していた。
☆ 大阪地裁;痴漢で起訴の男性無罪 大阪地裁「否定の説明は合理的」(13年6月19日)
JR大和路線の電車内で痴漢をしたとして、大阪府迷惑防止条例違反の罪に問われた大阪府の男性(54)の判決があった。
男性は12年10月17日朝、JR大和路線の久宝寺―天王寺駅間を走行中の電車内で、20代の女性の体を衣服の上から触ったとして起訴された。
長井秀典裁判長は、は「男性の手に女性の衣服の繊維が付着しておらず、目撃者もいない」と指摘したうえで、「男性の『触っていない』という説明に不合理な点はない」とし、無罪(求刑罰金50万円)を言い渡した。
男性は判決後の取材に対して「警察や検察の取り調べで何を言っても『作り話だ』と言われた。無罪と認められて良かった」と話した。
☆ 福岡高裁那覇支部;詐欺罪で強制起訴、2審も無罪(13年6月18日)
上場見込みの薄い未公開株の購入を持ち掛けて現金をだまし取ったとして、詐欺罪で強制起訴された投資会社社長(61)の控訴審があった。
泉秀和裁判長は、指定弁護士の上場する見込みは大きくないのに、社長は株価が上がると偽ったとの主張を、「当時、投資家の間で注目企業と評価されていて、上場に期待を寄せるだけの状況があった。社長が上場すると考えることには根拠があった」として退け、無罪とした1審・那覇地裁判決を支持、検察官役の指定弁護士の控訴を棄却した。
☆ 東京高裁;あたご衝突事故 自衛官2人、2審も無罪(13年6月11日)=確定
海上自衛隊イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故(2008年2月)で、漁船の2人を死亡させたとして業務上過失致死などの罪に問われた、あたごの当直士官だった自衛官2人の控訴審判決があった。
事故は08年2月19日未明、千葉・野島崎沖で発生。清徳丸の吉清(きちせい)治夫さん(当時58歳)と長男哲大(てつひろ)さん(同23歳)が死亡した。
清徳丸のGPS(全地球測位システム)機器が水没してデータを再現できなかったことから、衝突に至る同船の航跡が最大の争点だった。検察側は控訴審で、1審が認定した航跡は衝突の時刻や場所を誤っており、あたご側の衝突回避義務を否定したのは不合理だと主張。弁護側は「検察側が主張する航跡の論理が破綻しているのは明らかだ」として控訴棄却を求めていた。
井上弘通裁判長は、1審が認定した航跡は、速度や衝突角度などの点から「合理性に疑問があり、そのまま採用できない」と指摘したうえで、1審が用いた航跡の特定手法に基づき、最も漁船の動きの変化が多い航跡での過失の有無を検討。漁船が事故直前に右転するまで衝突の恐れはなく、あたごに回避義務はなかったとした1審判決を追認し、検察側の控訴を棄却した。
検察側は、海上衝突予防法に基づき、清徳丸を右方向に見る位置にいたあたご側に衝突回避の義務があったと主張、2人に禁錮2年を求刑した。これに対し、11年5月の1審判決は、清徳丸後方の僚船船長の証言などを基に検察側が作成した清徳丸の航跡の信用性を否定。裁判所があたご側のGPS記録などから独自に航跡を認定して「事故直前、あたご艦首に向かって2度右転した清徳丸に回避義務があった」と判断し、2人に無罪を言い渡した。
判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで弁護団とともに会見した2人は、「何のための控訴審だったのか。検察の立証は的外ればかりだった」「体面の立証に付き合わされ、不服だ。恥を知れと言いたい」と、海上保安庁や検察への憤りをあらわにした。
吉清さんのいとこ、板橋政一さんは「残念の一言」とコメント。上告については「気持ちとしては望む。海の専門家がいない裁判所ではこちらの望む判決は無理としか言えない。検察官が頑張ってくれればありがたい」とした。
なお、刑事裁判とは別に当事者の懲戒などを行う海難審判では、横浜地方海難審判所が09年1月の裁決であたご側に事故の主因があったと認めた。
☆ 東京地裁;ひき逃げは無罪 「人ひいたとの認識困難」(13年6月10日)
東京都荒川区で発生した死亡ひき逃げ事件があった。現場は見通しの良い大通り。被害者の女性は道に横たわっていた。
竹下雄裁判官は、「交通量が多く横断が禁止されている道路で、路上の障害物を人と認識するのは困難だった。人をひいたと判断しなかったとしても不自然ではない」と指摘、「当時の現場の状況では、車で人をひいたと思っていなかった可能性がある」として、台東区の之被告(65)の道交法違反(ひき逃げ)について無罪を言い渡した。
自動車運転過失致死については有罪と認め、禁錮2年、執行猶予4年(求刑懲役3年)とした。
☆ 札幌高裁;覚醒剤使用で逆転無罪 札幌高裁、採尿ミス認定(13年6月4日)
覚せい剤取締法違反(使用)罪と窃盗罪に問われたトラック運転手の被告(42)の控訴審判決があった。
警察が被告の尿を検査した際、紙コップにトイレットペーパーの切れ端のような異物が入ったままになっており、鑑定で検出された覚醒剤について、被告が使用したものかどうかが争われた。
山本哲一裁判長は「警察官は異物に気が付いたのに採尿のやり直しを怠った。異物に覚醒剤が含まれていたり、その異物を警察官が紙コップに入れたりした可能性も払拭できない。被告の覚醒剤使用を認定するには合理的な疑いが残る」と結論付け、懲役2年6月とした1審・札幌地裁判決を破棄、覚せい剤取締法違反罪を無罪とし、窃盗罪のみで懲役1年を言い渡した。
☆ 松山地裁西条支部;廃棄物不法投棄事件・社長ら2人に無罪判決(13年5月30日)
養豚場から出た産業廃棄物を不法に捨てたとして廃棄物処理法違反の罪に問われていた四国中央市の養豚業者の社長ら2人に対する判決があった。
廃棄物処理法違反の罪に問われていたのは、四国中央市新宮町の養豚業「エフ・エス・アール」の社長ら2人。2人は、11年2月から3月にかけて、市内新宮町上山の山林に会社が所有する養豚場から出た豚の糞などの廃棄物およそ31トンを不法に捨てたとして起訴された。
検察側は「産業廃棄物の処理費を浮かそうと行った身勝手な行為だ」として社長に懲役2年を求刑したのに対し、社長らは「山林に埋めたのはふん尿などを処理をした堆肥であり、産業廃棄物ではない」などと無罪を主張してした。
仁藤佳海裁判官は「被告人らが購入した山林に栗園を作るため埋めた堆肥について処理をしていなかったとはいえず、公訴事実を認定するに足りる証拠はない」などとして2人と会社に対し無罪判決を言い渡しました
弁護側は「有用な堆肥だと認められなかったのは不満だが、全国の養豚業者が抱える糞尿の再利用問題に対し裁判所が理解を示してくれた」と、松山地検の川越弘毅次席検事は「判決文を読んでおらず、控訴を含め、判決内容を精査、検討した上で、適切に対応したい」などとコメントした。
☆ 東京地裁;覚醒剤隠したイス密輸、イラン人被告に無罪判決(13年5月28日)
タイから2011年、覚醒剤約16・7キロを密輸したとして、覚醒剤取締法違反などに問われたイラン国籍の被告(28)の裁判員裁判の判決があった。
被告は、米国籍の女(43)(覚醒剤取締法違反などで1、2審有罪)ら3人と共謀し、覚醒剤を隠したイスを密輸したとして12年2月に起訴された。
芦沢政治裁判長は、通関手続きをした女と被告が連絡を取った形跡が全くないことなどから、「共謀を認めるには合理的な疑いが残る」と判断し、同法と関税法違反は無罪とし、約6年半の不法在留による入管難民法違反で、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑・懲役23年、罰金1000万円)の判決を言い渡した。
☆ 神戸地裁;通行人襲撃、2人重軽傷も「熱中症で錯乱、心神喪失」で無罪(13年5月28日)
通り掛かった男性2人を殴るなどし重軽傷を負わせたとして、傷害罪に問われた香川県丸亀市の男性(31)に対する判決があった。
男性は12年9月9日夜、神戸港で香川行きのフェリーに乗り遅れて野宿し現金などを盗まれた。2日間食べずに徘徊し同11日夕、神戸市内の公園で突然、通行中の2人に次々と殴り掛かるなどし、重軽傷を負わせたという。
片田真志裁判官は「熱中症による錯乱状態で判断能力が低下する中、被害妄想から自衛本能に基づいて行動した」と結論付け、無罪を言い渡した。
検察側は「空腹や疲労のいら立ちを発散させるためだった」として、完全責任能力の場合は懲役5年、心神耗弱の場合は懲役4年を求刑していた。
当日の気温は28度、湿度は60〜80%。男性は顔が日焼けし、記憶が断片的なことなどから、精神鑑定の際に熱中症と判断された。
☆ 福岡地裁;30代女性に再審無罪 詐欺有罪後、新証拠(13年5月22日)
保育サービスを受けるため、虚偽の勤務証明書を提出したとして詐欺罪で有罪が確定した30代女性=福岡県=の再審の判決があった。
高原正良裁判長、無罪を言い渡した。
10年4月の福岡地裁判決は女性が夫と共謀し、長女を福岡県の保育園に入れる際「勤務日数が月16日以上」との基準を満たすため夫の勤務日数が不足しているにもかかわらず、虚偽の内容を記載した勤務証明書を提出し保育サービスを受けたと認定。懲役1年6月、執行猶予3年とした。
しかし、実際に16日以上働いていたことを示す証拠が新たに見つかり、福岡地裁は11年12月、公判中だった夫への判決で無罪(求刑懲役1年)を言い渡した。
女性は夫の無罪確定を受け、12年3月に再審請求。同地裁は12年12月、再審開始を決定した。
☆ さいたま地裁;衝突事故で会社員に無罪 証言の信用性を否定(13年5月10日)
08年9月、埼玉県川口市で車を運転し、交差点を時速約10キロで左折する際、横断歩道を自転車で渡っていた当時15歳の少年に衝突し、首などに約10日のけがを負わせたとして自動車運転過失傷害などの罪に問われた会社員の男性被告(44)=埼玉県川口市=の判決があった。
田村真裁判長は、現場から逃げたのはホンダ車とした目撃者について「(その理由を)何ら具体的に説明していない」と述べ、当時15歳だった少年の供述も「変遷しており、信用性に疑いがある」「鑑定も信用し難いというほかない」と述べたうえで、別人の車だった疑いを指摘し、無罪(求刑は懲役10月)を言い渡した。
なお、裁判長は朗読後に「検察の証明した証拠は起訴後の捜査で収集されたもので、起訴前の捜査がずさんだった」と批判した。
☆ 横浜地裁;現代書林元社長に無罪 「がんに効く」本で紹介(13年5月10日)
未承認医薬品を「がんに効く」と本で紹介したとして薬事法違反(未承認医薬品の広告禁止)の罪に問われた出版社、現代書林(東京)の元社長の被告(74)と、法人としての同社に対する判決があった。
問題になったのは、カニやエビの甲羅などから抽出されるキトサンを主成分とする錠剤「キトサンコーワ」を紹介する本。
検察は、厚生労働省の認可のない錠剤「キトサンコーワ」の販売元のキトサンコーワ(東京都)と出版契約を結び、「がん細胞が消えた」「ぜんそくの発作が治まった」などの体験談を掲載、病気への効能をうたった上、販売元の連絡先も記載した本を2009〜11年に販売・広告したのは、「未承認医薬品の広告に当たる」などとして起訴していた。
弁護側は「医薬品ではなく健康食品。本も広告とはいえない」と無罪を主張。同社も表現の自由の侵害だと主張した。
争点は、薬事法は国の承認を受けていない医薬品の広告を禁じており、(1)錠剤は未承認医薬品か(2)本の出版が「広告」に当たるかかどうかだった。
毛利晴光裁判長は、「商品単体では医薬品と言えず、本とセット販売しているわけではない」と判断。「本は2002年の出版・発行から、(起訴内容となった)09〜11年の販売・陳列まで、7年以上が経過しており、広告を行ったとは認められない」「キトサンコーワのラベルに病気への効能は記載されておらず、医薬品とはいえない」と認定。薬の取り扱いを規制する薬事法違反には当たらないと述べ、元社長の被告と共犯とされた元編集担当者(60)を無罪求刑は、元社長に罰金50万円、編集者に同30万円、現代書林に同50万円)とした。
なお、この裁判をめぐっては、キトサンコーワ社と同社の社長(67)も起訴され、同地裁で別に公判が進んでいる。
☆ 神戸地裁;「組員の身分隠し口座開設」で無罪、理由は…(13年5月9日)
神戸市内の郵便局で2010年、暴力団組員であることを隠して口座を開設し通帳を詐取したとして詐欺罪に問われた男性組員(33)の判決があった。
ゆうちょ銀行では同年、暴力団組員らとの取引を拒絶すると規約を改定。口座開設申込書の署名押印欄に「反社会的勢力でないことなどを表明・確約した上で申し込む」と記し、裏面に規約についての説明を印刷していた。
組員側は「暴力団は口座を作れないという認識はなかった」と一貫して無罪を主張していた。
小林礼子裁判官は「応対した職員が裏面を示した時間は数秒で、理解しないまま署名した可能性は十分にある」などと述べ、「詐欺の故意があったとするには合理的な疑いが残る」として、無罪を言い渡した。
☆ 福岡地裁小倉支部;「無理やり打たれた疑い」 覚せい剤事件で女性に無罪判決(13年5月8日)
12年8月に知人宅で覚せい剤を使用したとして、覚せい剤取締法違反の罪に問われた住所不定、無職の女性(45)に対する判決があった。
平島正道裁判長は、自ら注射したことを否定する女性の供述を「報復を受ける恐れがあるのに、知人の実名を挙げて打たれたと話しており、虚偽とは考えにくい」と指摘したうえで、自分の意思で注射したと認定できるだけの証拠はないと結論付け、無罪(求刑懲役2年6月)の判決を言い渡した。
☆ 千葉地裁;自動車事故の男性に無罪「過失の立証ない」、捜査批判(13年4月18日)
自動車事故を起こし同乗者らにけがを負わせたとして、自動車運転過失傷害罪に問われた千葉県佐倉市の無職男性(76)の判決があった。
検察側は「事故の原因は前方不注意」と主張していた。
三浦隆昭裁判官は「心臓疾患の影響で気を失っていた可能性がある」と指摘。心臓疾患の影響を訴えた男性の供述が調書に残されていなかった点をあげ「言い分を十分に聴いたのか疑いがある」と捜査手法を批判し「過失による事故と言えるほど立証がない」と無罪(求刑罰金40万円)を言い渡した。
男性は12年3月21日、佐倉市の国道で車を運転中、センターラインをはみ出して対向車に衝突。同乗の女性らに重軽傷を負わせたとして同6月、佐倉区検に略式起訴された。佐倉簡裁が罰金40万円の略式命令を出したが、男性は正式裁判を求めていた。
☆ 高知地裁;高知の元病院長ら3人無罪 恐喝未遂認めず(13年4月18日)
知人の男性会社役員(50)から金を脅し取ろうとしたとして、恐喝未遂罪に問われた高知市長浜の「長浜病院」元院長の被告(55)と被告の知人の暴力団幹部(65)と男性会社員(53)ら3人に対する判決があった。
起訴状などでは、被告らは12年2月、被告らに債務整理の相談を持ちかけた男性を呼び出し、複数の暴力団関係者の前で、後日謝礼などで4千万円を脅し取ろうとしたとされる。
平出喜一裁判長は「被害者の供述に不自然な変遷がある」と指摘し、無罪判決(求刑はそれぞれ懲役3年6月、同3年、同2年6月)を言い渡した。
☆ 横浜地裁;「被害者証言に重大な疑問」傷害の男性被告に無罪(13年4月17日)
知人の少女を金属バットで殴り、けがを負わせたとして、傷害罪に問われた神奈川県藤沢市の男性被告(28)の判決公判があった。
男性は12年5月23日、自宅で当時17歳の少女の太ももを踏み付け、金属バットで数回殴り、10日間のけがを負わせたとして同6月に起訴された。男性は公判で一貫して「やっていない」と否認、弁護側は少女の供述に疑義があると主張していた。
朝山芳史裁判官は、事件当日に診断した医師が少女のあざを確認していないと指摘したうえで、女性が証言した犯行現場は冷蔵庫横の狭い空間で、「バットによる殴打行為は物理的に不合理だ」と述べ、また、暴行を受けたとされる約30分後に、女性が被告や知人と海に出かけ、防波堤から飛び降りて遊んでいた点など、さらに少女が被害届の提出を後悔しているとの内容のメールを男性に送っていたことも挙げ、「証言に重大な疑問があり、被害を裏付けられない」とし無罪(求刑懲役1年6月)を言い渡した。
☆ 長野地裁松本支部;下着窃盗で無罪確定 松本地裁、写真の証拠能力認めず(13年3月19日)=確定
女性の下着を盗んだとして窃盗罪に問われた長野県塩尻市の無職男性(39)を無罪とする判決があった。
男性は12年2月、塩尻市のコインランドリーで女性の下着など3点を盗んだ容疑で県警に逮捕された。容疑を否認したが、地検松本支部は12年11月、窃盗罪で起訴した。
判決は、検察側が証拠として提出した防犯カメラ映像の写真について、同一人物と確定するのは不可能だと指摘、防犯カメラ映像の写真に証拠能力がないとして、無罪を言い渡した。
男性は検察が控訴を断念し、無罪が確定した4月3日に記者会見し、「初めからやっていないと言い続けたのに、警察や検察によって人生をめちゃくちゃにされた。謝ってほしい」と語った。
長野地検の山本幸博次席検事は「(男性に対して)特に言うことはない」と述べ、「捜査段階から適正だったかは検証するが、結果は発表しない」と語った。
「窃盗」証拠映像を公判前に返却、廃棄…無罪 長野県塩尻市のコインランドリーで12年2月、女性の下着を盗んだとして窃盗罪に問われた無職男性(39)の無罪確定に関連し、塩尻署員が、犯人とされる人物が映っていた防犯カメラの映像をディスクに記録したものの、初公判前にコインランドリーの経営会社にディスクを返却、廃棄されていたことが、県警などへの取材でわかった。 県警は証拠品の保全に問題があったとみて調査している。 ディスクが廃棄された結果、検察側が公判で提出出来た、犯人を識別するための証拠は防犯カメラ映像をデジタルカメラで撮影した写真だけとなり、長野地裁松本支部は「犯人とされる人物との同一性を推認させる証拠はない」として、男性に無罪判決を言い渡した。 県警などによると、塩尻署員は下着が盗まれた翌日の12年2月13日、松本市内のコインランドリー経営会社に行き、防犯カメラの録画映像を確認。犯人とされる人物が映っていた場面をカメラで撮影した。この際、映像をディスクに記録して署に持ち帰ったが、約1週間後に同社にディスクを返却したという。 弁護側は公判で、「男性が写真の人物と別人だと映像自体から反証する機会が失われた」と批判。 地裁松本支部は13年3月19日、県警科捜研による鑑定で、画質状態などから、この写真と男性の容疑者写真を詳細に比較することが出来なかったため、「犯人性を示す根拠となり得ない画像」と認定。男性に無罪判決を言い渡し、判決は4月3日に確定した。 無罪確定を受け、県警の佐々木真郎・本部長は4月4日の署長会議で、「証拠品の取り扱いの重要性や厳格な管理について、再度、意識改革を促し、指導を徹底してほしい」と訓示。「捜査幹部は被疑者の供述、犯罪を裏付ける客観証拠、裏付け捜査結果を精査してほしい」と述べた。 県警は一連の捜査の過程について、すでに捜査書類の確認など調査を始めており、ディスクを返却した理由についても、当時の捜査員らから事情を聞く方針(13年4月6日配信『読売新聞』)。 |
☆ 東京地裁;携帯電話詐取で無罪=「首謀者」証言信用できず(13年3月5日)
販売店から携帯電話をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた無職の被告(30)に対する判決があった。
被告は、12年5月に警視庁に逮捕され、2011年8〜9月に男ら=同罪で有罪確定=と共謀し、「会社で使う」などと偽って販売店からプリペイド式携帯電話12台をだまし取ったとして起訴された。男は「闇サイトで知り合った被告に指示された」と証言。被告は「携帯電話の受け渡しを手伝ったことはあるが、だまし取ったものとは知らなかった」と一貫して「関与していない」と無罪を訴えていた。
河村俊哉裁判官は、「被告が首謀者だとする男の証言は信用できない」として、無罪(求刑懲役3年6月)を言い渡した。
☆ 東京地裁;CS証券元部長に無罪判決 脱税事件で(13年3月1日)
約1億3200万円を脱税したとして、所得税法違反の罪に問われたスイス金融大手の日本法人「クレディ・スイス(CS)証券」(東京都港区)の元部長の被告(49)に対する判決があった。
元部長は2006〜07年、会社から報酬として与えられたストックオプション(自社株購入権)などを使い、CS株を取得。売却益などを所得として税務申告せず、2年分の所得約3億4900万円を隠して脱税した罪に問われていた。
東京国税局から告発を受けた東京地検特捜部が11年12月に在宅起訴した。
佐藤弘規裁判長は、検察が証拠とした、専門家に相談して確定申告するよう促した会社からの書面やメールなどは、「源泉徴収されていないとの認識があったことの根拠にならない」と退け、06年分の確定申告について「株式報酬の仕組みは複雑で、それまでも多額の報酬を得ていた」と指摘し、申告額と実際の収入額との差額に気づいていたか疑問が残ると判断。税理士に依頼した07年分申告も「(元部長が)確定申告書記載の額を認識していたか疑問」と述べ、「会社が源泉徴収していると思い込んでおり、故意に脱税したわけではない」などとする元部長の説明は否定できないと判断したうえで、検察が「故意があった」とする根拠は弱いと結論づけ、無罪(求刑懲役2年、罰金4千万円)を言い渡した。
同国税局が強制調査(査察)して告発した事件で、無罪判決が出るのは極めて珍しい。
元部長は判決言い渡し後に記者会見し、「ほっとしている」と述べつつ「無実の者がなぜここまで苦労しなければならないのか」「起訴という結論ありきの捜査だった。検察は過ちを認めてもらいたい」と複雑な思いも口にした。
☆ 宮崎家裁;強制わいせつ疑い少年審判 非行事実なく不処分(13年2月27日)
知人少女の体を触ったとして強制わいせつの疑いで宮崎家裁に送致された宮崎市内の中学校に通う男子生徒=当時14歳未満=に対する少年審判があった。
藤本ちあき裁判官は、「非行事実なし」として、刑事裁判の無罪に当たる不処分の決定をした。
付添人の金丸由宇弁護士によると、同家裁は少年の自白内容について「否認する少年に長時間の事情聴取をして作成されており、内容に具体性が乏しく信用性が高いとはいえない」と指摘したという。
☆ 京都地裁;弟殺人未遂事件の被告無罪 心神喪失認める(13年2月26日)
京都府城陽市で12年2月2日、自宅で弟の右脇腹などを包丁で突き刺そうとするなどしてもみ合いになり、けがを負わせたとして、殺人未遂罪に問われた無職男性(34)の裁判員裁判の判決があった。
小倉哲浩裁判長は、検察側の「被害妄想に完全には支配されてはおらず、心神耗弱にとどまる」との主張を退け、男性が弟に嫌がらせをされているという被害妄想にとらわれていたと指摘したうえで、「動機と犯行の間に飛躍があり、被害妄想が犯行に影響を与えた」と判断、「心神喪失状態だった」として無罪(求刑懲役4年)を言い渡した。
注;心神喪失(しんしんそうしつ)=精神障害などによって自分の行為の結果について判断する能力を全く欠いている状態。心神耗弱より重い症状。刑法上は処罰されない。
判決要旨 1審判決が犯行の経緯・動機について、アスペルガー障害の影響があったことは認められるが重視すべきではないとした点は認められない。被告が被害者の善意の行動を逆に嫌がらせであるなどと受け止め、これが集積して殺したいと思うほど恨むようになり、犯行に至ったという経緯や動機形成の過程には、意思疎通が困難で、相手の状況、感情やその場の雰囲気などを推し量ることができず、すべて字義どおりにとらえ、一度相手に敵意を持つと、これを修正することが困難で、これにこだわってしまうアスペルガー症候群特有の障害が大きく影響していることが認められる。 |
☆ 福岡地裁小倉支部;傷害致死事件、元少年に無罪判決(13年2月22日)
北九州市小倉北区で12年3月、交際相手の女性が住むマンションで、交際相手の長男(当時2)に対し、脇腹を圧迫するなどの暴行を加え、死亡させたとして、傷害致死罪に問われた会社員の元少年(20)に対する裁判員裁判の判決があった。
大泉一夫裁判長は、検察側が主張する時間帯の後に「長男は痛がらずにジュースを飲んだり、小走りしたりした。破裂があったとは考えがたい」と指摘したうえで、「元少年と長男が一緒にいた時間帯に十二指腸破裂が生じたとの検察側の主張には合理的な疑いが残る」として、無罪を言い渡した。
まや、裁判長は判決言い渡し後、法廷で「死亡させる行為を行った可能性はあるが、断定できなかった」とも述べた。
☆ 高知地裁;赤信号無視に無罪判決 「警察官の主張は臆測」(13年2月15日)
赤信号を無視したとして、道路交通法違反の罪に問われた高知市内の女性(33)の判決があった。
女性は2011年4月25日午前10時50分ごろ、高知市小石木町の国道56号交差点で、赤信号に従わずに軽ワゴン車を運転した容疑で高知県警に摘発された。12年6月に同罪で在宅起訴されたが、女性は「黄信号だった」と無罪を主張していた。
向井志穂裁判官は、交差点付近は見通しが悪く、赤信号に変わったのを警察官が確認したのが交差点の停止線から約60メートル離れた地点だった点から、「パトカー内から停止線の位置を確認するのはほぼ不可能」と指摘したうえで、「『停止線を確認した』とする警察官の主張は、事実に反する臆測の可能性が高い」と結論づけ「警察官の目撃証言には合理的疑いがある」として、無罪(求刑罰金9千円)を言い渡した。
高知地検の橋本晋(しん)・次席検事は「判決を十分検討し、控訴するか適切に判断したい」とコメントした。
☆ 東京地裁;覚醒剤密輸で無罪判決…「運び屋」の可能性指摘(13年2月13日)
香港から覚醒剤約1・4キロ・グラムを密輸したとして、覚醒剤取締法違反などに問われた甲府市のアルバイト女性(23)の裁判員裁判の判決があった。
女性は、今回の密輸事件において同法違反などで、1審で有罪(懲役15年、罰金800万円)となった被告(42)(控訴中)と共謀し、2011年8月に渡航先の香港から覚醒剤入りの缶を持ち込んだとして起訴された。
三浦透裁判長は、女性が1審・有罪となった被告から香港への渡航費や報酬10万円を事前に受け取ったり、被告が「シャブ」と口にするのを聞いたりしていたことなどから、「香港行きが密輸に関係していると認識する契機もあった」とする一方、(1)) 1審・有罪となった男が被告以外にも複数の女性に海外渡航を依頼し、缶を持ち帰らせていた(2)被告が香港滞在中、訪れた場所の写真をブログに掲載していた――などと指摘。「被告が知人の男にだまされ、事情を知らずに覚醒剤を持ち込んだ可能性がある」と結論づけ、「缶は現地ですり替えられた」とする女性側の主張も否定できないとしたうえで、「検察が根拠とする間接事実を総合しても、犯罪を認定するには足りない」と結論づけ、「事情を知らずに運び屋に仕立て上げられた可能性が強く推認される」として、無罪(求刑・懲役12年、罰金700万円)の判決を言い渡した。
☆ 高知地裁;不起訴不当の社長が無罪=伐採作業中の死亡事故(13年2月7日)
高知県香美市で2007年5月、伐採作業中の作業員=当時(58)=が機械に頭を挟まれ死亡した事故があり、業務上過失致死罪に問われた木材会社社長の男性(65)の判決公判が7あった。
高知地検は当初、男性を不起訴処分としたが、検察審査会の不起訴不当議決を受けて2012年5月、同罪で起訴した。
平出喜一裁判長は、作業員が機械に近づくことは予想外であったことも否定できない」などと述べ、注意義務違反は認められないと判断し、「事故を予見できなかった疑いが残る」として、無罪(求刑禁錮1年)を言い渡した。
☆ 千葉地裁;覚醒剤密輸でまた無罪、違法認識を否定(13年2月7日)
覚醒剤をスーツケースの底の隙間に隠して密輸したとして、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)などの罪に問われたカナダ在住の電気技工士、関口幸男被告(40)の裁判員裁判があった。
中山大行裁判長は、「一定量を超えると没収されるので隠したと(密輸の依頼人から)説明を受けていた。正規の方法で持ち込めない物と認識していたとはいえるが、違法薬物との認識が間違いないと認めるのは困難」として、無罪(求刑懲役16年、罰金800万円)を言い渡した。
なお、千葉地裁は管内に成田空港があることから覚醒剤密輸事件の起訴が多く、違法性の認識を否定する無罪判決が相次いでいる。
☆ 東京地裁;覚せい剤使用で無罪=逮捕状引き裂きも認めず−捜査批判「再発防止を」(13年2月6日)
覚せい剤取締法違反(使用)と公用文書毀棄(きき)の罪に問われた建築業の男(43)に対する判決があった。
男は2011年、覚せい剤を使用したとして逮捕、起訴されたほか、逮捕時に警視庁の警察官から示された逮捕状を引き裂いて丸め、口にくわえ込んだとして追起訴された。
大西直樹裁判長は、覚せい剤使用について、家宅捜索の際、警察官数人が男性の体をつかんで退室するのを拒み、令状がないまま2時間以上長時間拘束する重大な違法捜査があったと認定したうえで、そうした状態で得られた尿の鑑定書は証拠として採用できないと判断した。また文書毀棄についても、逮捕状の裂け方などから、引き裂く行為はなく、口にくわえ込んだだけだったと認定、違法捜査があったとして覚せい剤の使用を無罪とし、公用文書毀棄罪の起訴内容も一部を認めず、懲役3月(求刑懲役4年)を言い渡した。
さらに同裁判長は、「逮捕手続き書類にうそを記載し、公判でも事実と反する証言をした」と指摘し、「違法の程度は『令状主義』の精神を没却するほど重大だ」と述べ、警察と検察の捜査を厳しく批判し、再発防止を求める異例の付言をした。
この判決で一部無罪となり、釈放された建築業の男性(43)が、2日後に死亡していた。自殺とみられる。 警視庁城東署によると、男性は8日午前、東京都江東区で川に飛び込んだ。自分で飛び込む様子を見た目撃者がいた。男性は勾留中の1月、親族あての手紙で「自殺したい気持ちになる」と書いていたという。 男性を弁護した中尾俊介弁護士は「男性はずっと『真実を明らかにしたい』と話していた。やっと違法捜査と認められたのに、亡くなってしまい残念だ」と話した。死亡により公訴が棄却される。 |
☆ 大阪地裁;両手両足抱えての任意同行は違法 覚醒剤事件一部無罪に(13年2月1日)
12年5月、窃盗事件の関係者として大阪市北区の交番で職務質問を受けた後、連れていかれた大阪府警曽根崎署で覚醒剤約0・15グラムを持っているのが見つかって逮捕され、覚醒剤取締法違反(所持、使用)罪で起訴された無職の女性被告(45)に対する判決があった。
蛯原意(もとい)裁判官は、所持に関し、交番で任意同行を拒んだ被告の両腕と両足を警察官らが抱え上げ、警察車両に押し込んで署に連行した行為を違法と判断。一方、任意の尿検査で判明した使用は有罪とし、懲役1年6カ月執行猶予3年(求刑懲役1年6カ月)を(一部無罪)言い渡した。
☆ 京都地裁;京都遺体:傷害致死は無罪、死体遺棄は有罪判決(13年2月1日)
京都府八幡市で11年8月、スーパー駐車場の車から女性の遺体が見つかった事件で、交際相手に暴行し死なせたなどとして、傷害致死と死体遺棄の罪に問われた岐阜県瑞浪市、無職の被告(24)の裁判員裁判の判決があった。
被告は11年6月、交際中の女性(当時34歳)=同市=をホテル浴室で数回突き倒して頭蓋(ずがい)内出血で死なせ、遺体を約2カ月間、車内に放置した、として起訴された。
公判では、捜査段階における供述調書の任意性などが争われ、弁護側は死体遺棄については認めたものの、女性の解剖医や病歴を調べた医師の証言などを踏まえ、「車から飛び降りた際のけがなどが原因で亡くなった可能性もある」と反論、女性を突き倒したことは認めたが、死亡との因果関係を否定し、傷害致死罪の無罪を主張していた。
また、車内で女子が亡くなったと気付いた際に警察などへ届け出なかったことについて、被告は「行かなくてはいけないと思ったが、突き倒した後だったこともあり、自分のせいかもしれないと思った。覚悟がつかなかった」と述べていた。
市川太志裁判長は、「浴室で暴行し、女性が頭を打った」などとする捜査段階の供述調書について、内容が変遷し、取り調べ時のメモも破棄されていると指摘、信用性に疑問が残ると判断した。そのうえで、「ホテルに入る前、別れ話から女性が走行中の車から飛び降りて頭を打った」とする弁護側の主張を否定する証拠もないと述べ、「暴行以前の負傷が死因の可能性を否定できない」「暴行と死亡との因果関係について合理的な疑いが残り、検察側の立証が不十分」として、傷害致死罪は成立しない」と結論。傷害致死罪を無罪とし、死体遺棄罪だけを有罪と認定、懲役1年6月、執行猶予4年(求刑・懲役7年)を言い渡した。
判決後、裁判員6人全員が記者会見し、男性裁判員(53)が「密室の水掛け論にならないよう、取り調べの全過程を録音・録画すればいい」と語るなど、全員が取り調べの可視化の必要性を説いた。
なお、取り調べメモをめぐっては、07年12月最高裁が証拠開示の対象と判断している。京都府警は「供述調書に同じ内容を転記した場合、紛失防止などの観点からメモは破棄していいと指導している」としている。
☆ 大阪高裁;窃盗逃走車両への発砲 奈良の付審判、2審も警官2人に無罪(13年2月1日)
奈良県大和郡山市で03年、警察官が逃走中の車両に発砲し、助手席の男性=当時(28)=が死亡した事件で、殺人と特別公務員暴行陵虐致死の罪に問われた警部補の萩原基文(36)と巡査部長の東芳弘(36)の両被告に対する控訴審の判決公判があった。
被告らは03年9月、大和郡山市内の国道24号で、窃盗事件で警察の追跡を受けた逃走車両に拳銃を発砲。助手席の男性が頭などに銃弾2発を受けて死亡した。
事件では、男性の遺族から告訴を受けた奈良地検が警察官を不起訴処分としたため、遺族が奈良地裁に対して審判を開くよう求める付審判を請求。地裁は22年4月に付審判決定を出し、弁護士を検察官役に指定して公判が開かれた。
争点は殺意の有無や発砲の正当性で、12年2月の1審判決は「警察官は相手を逮捕しようとしており、殺意はなかった。逃走車両は一般車両に衝突するなど危険な状態で、発砲は正当だった」とした。
森岡安広裁判長は、指定弁護士側の「遮光フィルムで車の内部が見えない状態で発砲しており、死亡しても仕方がないという未必の殺意があった。ほかにも車両を止める手段はあり、発砲は違法」との主張を退け、無罪(求刑懲役6年)を言い渡した裁判員裁判の1審奈良地裁判決を支持し、指定弁護士側の控訴を棄却した。
注;付審判=公務員の職権乱用が疑われる事件で、告訴や告発をした人が検察官の不起訴処分に不服がある場合、審判を開くよう裁判所に請求できる制度。認められると、裁判所が指定した弁護士が検察官役を務める指定弁護士となり、通常通り起訴された刑事裁判と同様に公判が開かれる。最高裁によると、現行の刑事訴訟法が施行された1949年から2012年9月25日までに、2006年6月23日事件発生の栃木県鹿沼署警察官暴行陵虐致死付審判事件(1審・2審無罪)や2009年3月3日事件発生の佐賀県警警察官特別公務員暴行陵虐致傷付審判事件(1審・2審無罪)など付審判決定は計21件あった。
☆ 仙台地裁;賃貸契約の元組員に無罪 仙台地裁「入居条件と認めず」(13年1月30日)
暴力団組員の入居を禁じているマンションの賃貸契約を他人名義で結び、不動産管理会社をだましたとして、詐欺罪に問われた元組員の被告(38)に対する判決があった。
被告は当時組員だった2010年4月、暴力団組員でないことを入居条件とする仙台市のマンションの部屋を借りようと、仙台市の40代の会社役員男性=詐欺罪で有罪判決が確定=と共謀し、男性が入居するとの虚偽の申し込みで不動産管理会社をだまし、賃貸契約を結んだとして起訴された。
渡辺英敬裁判長、「組員でないことが入居の条件だったとは認められない」として無罪(求刑懲役2年)の判決を言い渡した。
☆ 奈良地裁;恐喝事件、男性に無罪判決 奈良地裁、「畏怖」認定せず(13年1月24日)
奈良市発注の工事現場で知人が起こした車の事故の弁償を求め、市職員らから現金を脅し取ったとして恐喝罪に問われた無職の男性被告(69)に対する判決があった。
男性は10年9月、知人とともに市職員や工事会社支店長に「きちんと被害対応するまでいったん工事を止めるべきだ」と、暗に金銭を要求したとして起訴された。
板野俊哉裁判官は「被害弁償を求めたことは認められるが、職員らがやむなく応じたとは認められない」「職員らは恐喝された認識はないと明言しており、畏怖させたとはいえない」として無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。
☆ 東京高裁;差し戻し審も放火「無罪」 前科立証めぐる事件で控訴棄却(13年1月10日)
空き巣に入ったアパートの部屋に火を付けたとして、現住建造物等放火や窃盗などの罪に問われた無職の義被告(42)の差し戻し控訴審判決公判があった。
岡本被告は09年9月、東京都葛飾区のアパート一室に侵入、現金や食料品を盗むなどした。
被告に11件の放火の前科があり、証拠として採用できるかが争われたが、最高裁は12年9月の上告審判決で、前科の立証を原則として認めないとする初判断を示し、「放火の前科を取り調べなかった1審の手続きは違法」とした2審東京高裁判決を破棄、審理を差し戻していた。
小川正持裁判長は、前科以外の状況証拠を検討し「放火の犯人特定に直接結びつく証拠は見当たらない」と指摘したうえで、「『被告が犯人の可能性はかなり高いが、第三者の可能性も払拭できない』とした1審判断が不合理ととはいえない」と結論付け、「被告を犯人とするには合理的な疑いが残る」として、放火罪の成立を認めず懲役1年6月とした裁判員裁判の1審東京地裁判決を支持、検察側の控訴を棄却した。
☆ 大阪地裁;覚せい剤密輸に無罪 カナダ人女性、共犯を否定(12年12月21日)
覚せい剤密輸事件で実刑が確定した知人の女(36)と共犯関係にあったとして、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)などの罪に問われたカナダ国籍の女性被告(49)の裁判員裁判の判決があった。
知人の女は捜査段階から被告の関与を供述していたが、被告の弁護側は「共謀はなかった」と無罪を主張していた。
判決は、「経由した香港国際空港で被告に突然犯行を持ち掛けられたという知人の女の供述は不自然。被告が共犯者であるという十分な証拠はない」と述べ、無罪判決(求刑は懲役8年、罰金300万円)を言い渡した。
☆ 名古屋地裁;合成麻薬所持事件で無罪判決 検察、アリバイ認める(12年12月19日)
パーティーで合成麻薬MDMAを所持、使用したとして麻薬取締法違反の罪に問われたが、公判中にアリバイが立証され、12年8月3日に釈放、12月5日の第4回公判で検察側が無罪を求める論告をした会社員の男性被告(28)に対する判決があった。
男性は12年4月14日、同県大治町の知人宅で薬物を使用する集会に参加したとして逮捕され、起訴された。
判決は、「男性の携帯電話に残っていた写真から、音楽イベントの会場で友人らと過ごしていたアリバイが裏付けられる」と指摘した上で「犯行現場にいなかった可能性を覆す証拠はなく、犯人と認定することはできない」と述べ、無罪を言い渡した。
名古屋地検の矢野元博次席検事は「無罪となるべき人の身柄を拘束し、大変申し訳ない。今後、客観証拠を確認するよう指導していく」とコメントした。
☆ 東京高裁;覚醒剤使用に逆転無罪 高裁「脅され注射、緊急避難」(12年12月18日)=確定
神奈川県警に覚醒剤密売の情報を調べるよう頼まれて暴力団幹部に接触したら、拳銃で脅されて覚醒剤を自らに注射することになった」。覚醒剤取締法違反の罪に問われ、1審で実刑とされた横浜市の無職男性(50)の控訴審判決があった。
男性は県警に逮捕され、公判で12年1月に覚醒剤を注射したことは認めた。ただ、経緯について「鶴見署の刑事にすし屋で食事をおごられ、密売の情報を探るよう頼まれた」と説明。捜査対象の暴力団幹部に情報を聞いた後に帰ろうとすると「人の腹だけ探っておいておかしくないか」と言われて頭に拳銃を突きつけられ、覚醒剤の注射を強要されたと訴えた。
判決は、警察官との接触状況などを踏まえ、男性の主張について「客観的状況と符合している」として男性の主張を認め、覚醒剤の使用を「生命の危険が切迫し、覚醒剤を注射する以外に方法がなかった」と、結論付け、自らの身を守るためやむを得ない「緊急避難」にあたり、罪にならないと判断、懲役2年8月とした1審横浜地裁判決を破棄、逆転無罪とした。
1審判決は、「依頼していない」とする警察官の証言を認めたうえで、捜査対象者の名前や注射時の状況などを明らかにしなかったことから、注射の強要を「荒唐無稽に思える」と退けていた。男性は公判で、当日は仕事をした後、同県刈谷市で音楽イベントに参加したと主張。検察側は補充捜査で
注;緊急避難=刑法上、急迫した危難を避けるため、やむをえず他人の法益をおかす行為。一定の要件をみたすものは罰せられないが、損害賠償責任がある。
☆ 大阪地裁;恐喝未遂罪に問われた会社員に無罪判決(12年12月14日)
金を貸した女性に返済するよう脅したとして恐喝未遂罪に問われた会社員男性(37)の判決があった。
被告の男性は4月、借金を返済させるため、女性に「売春してでも金を作ってこい」などと言って脅したとして大阪府警に逮捕されたが、捜査段階から否認していた。
判決は、男性らに風俗店の事務所に連れて行かれた、などとする女性の証言について「変遷していて信用性に乏しく、脅迫行為を認定できる証拠はない」と指摘、被害者の証言は信用できない」として無罪(求刑・懲役1年6月)を言い渡した。
☆ 東京高裁;北朝鮮から覚醒剤密輸、元暴力団組長らに逆転無罪(12年12月14日)=確定
北朝鮮から大量の覚醒剤を密輸したとして、覚醒剤取締法違反などの罪に問われた元暴力団組長(65)と韓国籍の被告(65)の控訴審判決があった。
争点は、共謀したとされた暴力団組員(1審無期懲役、病死)による証言の信用性だった。
判決は、控訴審で検察側が開示した組員の上申書などから、組員が説明した証言経過は事実に反すると指摘した上で、「勾留執行停止などで便宜な取り計らいを受けるため、捜査側の意に沿うように虚偽証言をした疑いがある」として信用性を否定、捜査を担当した検事の対応についても、「捜査側と取引できるのではないかという(組員の)期待を助長するものだった」と批判し、「2人の関与を認めた共犯者の供述は信用できない」として、2人を無期懲役、追徴金約9億6100万円などとした1審・東京地裁判決を破棄し、逆転無罪とした。
08年5月の1審判決は、2人が数人の共犯者と共謀して02年、北朝鮮から覚醒剤計約230キロを貨物船で運んで島根県沖の日本海に投下し、密輸したなどと認定。元組長の被告を「大規模な組織的犯行の首謀者」、韓国籍の被告を「北朝鮮との連絡役」だと判断していた。
☆ 大阪高裁;舞鶴高1殺害、被告に逆転無罪 目撃証言の信用性否定 被告釈放(12年12月12日)=詳細版
京都府舞鶴市で2008年5月、府立高校1年生(当時15)を殺したとして、殺人と強制わいせつ致死の罪に問われた無職の被告(64)に対する控訴審判決があった。
被告は08年5月7日未明、舞鶴市の朝来(あせく)川近くで被害者にわいせつ行為をして抵抗され、顔や頭を鈍器で何度も殴って殺したとして09年4月に逮捕され、裁判員制度導入直前の同月末に起訴されたが、逮捕直後から一貫して否認していた。
犯行の目撃証言など直接証拠はなく、検察側は、犯行時間帯に現場近くで被告に似た男性と若い女性を見たとする車の運転手の証言などの間接証拠を立証の柱とした。
控訴審で弁護側は「運転手の証言は捜査員らの誘導や思い込みで変遷し、信用できない。被害者と一緒にいたのは被告以外の男性の疑いがある」と無罪を主張。検察側は「殺害方法の残虐性や遺族の被害感情などを考えれば、無期懲役は著しく軽い」と訴えていた。
判決は、11年5月の1審判決が有罪認定の根拠とした状況証拠(間接証拠)を検討。被告とされる男性が被害者と一緒にいたとの運転手の目撃証言について「男をほんの数秒しか目撃しておらず、事件直後は目つきや髪形が被告と大きく異なっていたが、徐々に被告の特徴と一致する内容に変遷した」「警察官に写真を見せられたことで証言が変遷した可能性が否定できない」と信用性を否定。また被告が捜査段階で、被害者のかばん内にあったポーチなど遺留品の色や形状を供述したことを秘密の暴露ととらえた1審の認定についても、「遺留品の種類は報道されており(被告が述べた)色や形状などは際だった特徴がなく推量で言い当てたとしても不自然ではない」と指摘。さらに「取調官が知っている遺留品の特徴に合致する内容が出るまで供述を求め、被告の供述に影響を与えた可能性は否定できない」と言及したうえで、状況証拠で有罪認定する場合の基準を示した10年4月の最高裁判決(大阪平野母子殺人事件)を踏まえ、被告が「犯人でなければ説明できない事実関係」が含まれていないと判断し、無期懲役(求刑死刑)とした1審・京都地裁判決破棄し、逆転無罪を言い渡した。
無罪判決を受けて、被告は釈放され、午後1時半すぎ、弁護士に付き添われて勾留されていた大阪拘置所から出た。取材に対して、「私は無実です。無実が証明されて誠にありがとうございます」と話すとともに、「犯人にされて警察には恨みがあります」と捜査を批判した。
黒のダウンジャケットにグレーのズボン姿で荷物を両手に持ち、タクシーに乗り込んで拘置所をあとにした。
11年5月の1審判決は、凶器などの物証がない中、〈1〉事件直前、2人の目撃証言と防犯カメラ映像から被告と被害者が一緒にいた〈2〉捜査段階で被告が、公表されていない遺留品の特徴を供述した――などとして被告が犯人と認定。被告側は無罪を、検察側は死刑適用を求めて控訴していた。
舞鶴女子高生殺害事件
京都府舞鶴市の高校1年(当時15歳)が08年5月6日夜、自宅を出たまま行方不明になり、府警が8日朝、自宅から約7キロ離れた同市内の朝来川近くの雑木林で遺体を発見した。顔などを激しく殴打された失血死だった。府警は同年11月、現場近くに住む被告を賽銭(さいせん)や下着の窃盗容疑で逮捕し、09年4月に殺人などの容疑で逮捕。殺人容疑などでの家宅捜索が弁護人の準抗告でいったん延期されるなど、捜査は異例の経緯をたどり、裁判員制度導入(09年5月)前の09年4月京都地検が殺人と強制わいせつ致死の罪で起訴した。
☆ 京都地裁;「心神喪失」認め強盗致傷に無罪、裁判員裁判で初(12年12月7日)
京都市のビデオ店で2010年4月、DVDを盗み、追跡してきた店長をナイフで切りつけ重傷を負わせたとして、強盗致傷罪などに問われた男性(42)の裁判員裁判の判決があった。
判決は、「換金目的で万引し、気付かれて逃走した」として、一定程度の責任能力があるとした検察側の主張を、「妄想下の行動と矛盾せず、責任能力があったと断じる論拠とはならない」と退け、「犯行当時、心神喪失だった」として、無罪判決(求刑懲役5年)を言い渡した。
裁判員裁判の全面無罪判決は12年11月末までに19例。心神喪失で責任能力がないと判断され、無罪となったのは初めて。
☆ 福岡高裁;強姦:28歳男性に逆転無罪 「義足で不可能」(12年10月31日)
女性を車に押し込んで性的暴行を加えたとして強姦(ごうかん)罪に問われた福岡県飯塚市の会社員の被告(28)に対する差し戻し控訴審判決があった。
被告は、飯塚市内に止めた車内の後部座席に当時14歳の少女を押し込んで性的暴行をしたとして、08年3月に起訴された。被告は無罪を主張したが1審・福岡地裁飯塚支部は、検証で、前方の座席位置を最も後ろに(最後部)する設定では、前の座席が邪魔で犯行が不可能だったが、座席位置を約10センチ前にずらすと犯行は可能になったとして、懲役3年6月の有罪判決とした。
福岡高裁は10年7月、「義足を装着しての犯行が可能か検証が必要」として審理を差し戻したが、福岡地裁が12年1月、検証の結果、再び有罪と判断していた。被告は、1審に続いて「義足の被告に少女の証言通りの行動はとれず、少女の証言には信用性がない」と無罪を主張した。
判決は、「義足を装着した被告が車内で事件を起こすことは物理的に不可能」と述べたうえで、「少女はシンナーを吸引して幻覚症状に陥っており、証言に疑いがある」と判断、求刑通り懲役3年6月とした差し戻し審の福岡地裁判決を破棄し、無罪を言い渡した。
なお、差し戻し控訴審は1回目の控訴審と同じ裁判長が担当し、検証結果について再度検討。事件当時の座席位置を、関係者の供述などから、「最後部だった」と認定したうえで、「差し戻し審は座席位置の前提事実を誤った」とし、「位置を変更する前の結果によれば、犯行は不可能」と結論付けた。
☆ 東京地裁;「患者にわいせつ」起訴の医師無罪 医療行為と認定(12年10月31日)
東京都内の病院で診療中に3人の女性患者にわいせつ行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた医師の男性(60)に対する判決があった。
都内で心療内科の病院の院長をしていた医師は、11年2〜4月、医療行為と称して20代の女性3人の胸や陰部をわいせつ目的で触ったとして起訴された。
判決は、医師が女性の体を触ったことは認めたが、「うつや不安を抑えるために処方した薬の副作用を確認するためなどで、わいせつ目的だったとは認められない」と判断したうえで、女性3人のうち、医師の逮捕後に告訴した2人については「診察当時はわいせつ行為と思っておらず、逮捕のニュースを知って思い込んだ可能性がある」などと指摘し、「正当な医療行為だった」と述べ、無罪(求刑懲役4年)を言い渡した。
☆ 広島地裁福山支部;強制わいせつ:「被害供述は虚偽の疑い」 男性に無罪判決(12年10月26日)
女子中学生の体を触ったとして強制わいせつの罪に問われた広島県福山市内の無職男性(42)に対する判決があった。
男性は11年11月13日未明、同市内のカラオケ喫茶休憩室で当時13歳の少女の胸などを触った疑いで12年3月に逮捕された。男性は逮捕後から一貫して容疑を否認していた。
判決は、事件当時の状況に関する少女らの説明が捜査段階と公判段階で変遷している点や、少女の母親らが「被害」を理由に金銭を要求していたことを指摘したうえで、被害に遭ったとされる少女らについて、少女らが「母親の意思をくんで被告を罪に陥れるため、虚偽の供述で金銭を得ようとした疑いが残る」と指摘し、証言の信用性を否定し、無罪(求刑・懲役3年)を言い渡した。
☆ 横浜地裁;「痴漢証言信用できぬ」と自衛官に無罪判決(12年10月19日)=判決全文
電車内で女子中学生に下半身を押しつけたとして神奈川県迷惑行為防止条例違反の罪で起訴された横浜市に住む40代の海上自衛官男性の裁判があった。
男性は11年5月17日、京浜急行線の上大岡駅〜横浜駅間の車内で、14歳だった女子中学生に下半身を押しつけたとして神奈川県警に現行犯逮捕され、否認してきた。
判決は、県警が目撃者や衣服の繊維などの証拠を確保せず、被害者も証人として出廷しなかったため、捜査員の証言しか証拠がないことを問題視。証言も「不自然で誇張しているようにも見え、そのまま信用できない」とし、「痴漢をしたと認めるに足る証拠がない」と結論づけ、無罪判決(求刑罰金50万円)を言い渡した。
☆ 横浜地裁;強姦・監禁:32歳男性に無罪判決(12年9月27日)
当時15歳の少女に対する強姦(ごうかん)、監禁罪に問われた横浜市南区の無職の男性被告(32)に対する判決があった。
被告は、11年7月に「大声を出すと殺す」と少女を脅して自宅に連れ込み暴行した上、衣服を取り上げ逃げられなくしたとして起訴された。逮捕当初から一貫して否認し、弁護側は「同意のもとだった」と無罪主張した。
判決は、脅迫された場所など少女の供述に多くの変遷があり、捜査段階で意図的に事実を隠していたと認定したうえで、一方で「被告の供述は相応の信用性が認められる」と判断、「少女の証言に十分な信用性を認めることができない」と述べ、無罪(求刑・懲役7年)を言い渡した。
☆ 仙台高裁;元少年、2審も無罪 共犯者の証言「疑問残る」 暴力団組員殺害事件(12年9月27日)
1999年に暴力団組員を殺害したとして、殺人罪に問われた元少年(33)の控訴審判決があった。
元少年は99年1月、笹本受刑者らと共謀し、東京都内のアパートで暴力団組員の男性=当時(31)=の頭を鉄パイプで殴るなどして殺害したとして起訴された。
判決は、共犯とされた受刑者(38)=別の事件で無期懲役が確定=の証言について「唯一の直接証拠だが、被告の関与を直接かつ端的に裏付けるものではなく、合理的な疑問が残る」と指摘、「受刑者の証言は信用できる」との検察側の主張を退け、無罪の1審仙台地裁の裁判員裁判判決を支持、検察側の控訴を棄却した。
☆ 大阪地裁堺支部;暴行罪に問われた藤井寺市議に無罪判決 「被害者証言は信用性乏しい」(12年9月26日)=確定
経営する不動産会社の男性従業員を殴ったとして暴行罪に問われた大阪府藤井寺市議の本多穣被告(45)に対する判決公判があった。
本多市議は、大阪府警羽曳野署が11年2月に逮捕。堺区検が略式起訴したが、本多市議が正式裁判を請求し、無罪を主張していた。
判決は、捜査段階の本多市議の供述について「市議選出馬直前の時期だったため、早く済ませるため、取調官に迎合した可能性を否定できない」と指摘、被害者の供述が変遷していることもあげて、「信用性は十分なものとはいえない」と結論づけ、「被害者の証言は信用性が乏しい」などとして無罪(求刑罰金30万円)を言い渡した。
☆ 福岡地裁;詐欺で起訴の元保険会社員に無罪…「故意ない」(12年9月24日)=確定
2008年9〜10月、保険商品の勧誘を装って福岡市内の女性(当時74歳)から計約200万円をだまし取ったとして詐欺罪に問われた元保険会社員の被告(52)に対する判決があった。
判決は、被告が女性の財産問題を解決した謝礼などとして過去に多額の金品を贈られていたことに触れ、「贈与や借金だったという被告の主張は不自然ではない」と指摘したううえで、「保険契約し、金を支払った」とする女性側の主張については、「保険証券が送られてこないことや領収書がないことに疑問を抱いておらず、信用性に疑問が残る」とし、「詐欺の故意は認められず、被害者の証言は信用性がない」として無罪(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。
☆ 東京地裁;痴漢で男性に無罪=「誤認の可能性」(12年9月20日)
電車内で10代の少女に痴漢行為をしたとして、東京都迷惑防止条例違反罪に問われた都内の20代男性の判決があった。
判決は、痴漢に遭ったとする少女の証言は信用できると判断したうえで、「精神的な動揺もあり状況を的確に認識できず、後ろに手を回してつかんだ男性の手を、犯人の手だと誤認した可能性を否定できない」、さらに、男性の手に付着した繊維について、目視による鑑定しか行われなかった点を「捜査、立証上の欠点と言える」と指摘し、無罪(求刑懲役4月)を言い渡した。
☆ 最高裁第2小法廷;障害者取り押さえ死 警官の無罪確定へ(12年9月18日)
佐賀市で2007年、知的障害者=当時(25)=が警察官に取り押さえられ、搬送先の病院で死亡した事件で、特別公務員暴行陵虐致傷罪に問われた佐賀県警巡査部長の被告(32)にたいする上告決定があった。
争点は、取り押さえの際に暴行があったかがどうか。
決定は、検察官役の弁護士の上告を棄却した。これで無罪とした1、2審判決が確定した。
1審・佐賀地裁は、殴ったように見えたとする目撃者の証言は「他の証言と相反し、不自然な部分がある」と信用性を否定し、無罪を言い渡した。2審福岡高裁も「暴行を加えたと認めるには合理的疑いが残る」として1審判決を支持、控訴を棄却していた。
☆ 大阪地裁;覚醒剤使用:「無理やり注射」認定し無罪(12年8月31日)
大阪府内などで11年10月6〜16日に覚醒剤を使用したとして覚せい剤取締法違反(使用)に問われた無職の被告(39)に対する判決があった。被告は、「知人の男の家で無理やり注射された。男が外出したすきに警察に出頭し、男を捕まえてほしいと伝えた」と供述し、無罪を主張していた。
判決は、被告が自ら警察に「覚せい剤を知人男性に注射された」と申告し、尿検査や注射痕の撮影に素直に応じた経緯を重視。「男性がわいせつ行為で快感を得るため覚せい剤を打とうとし、抵抗すると暴力を振るわれる恐れがあり従った」とする被告の供述を信用できると判断し、「自らの意思で覚醒剤を摂取したとは認められない」と指摘し、無罪(求刑・懲役3年6月)を言い渡した。
判決後、被告の弁護人は「警察の捜査怠慢が生み出した冤罪だ」と批判した。
☆ 東京高裁;裁判員で無罪 2審も無罪 確定前に帰国の被告(12年8月28日)
覚(かく)醒(せい)剤約10キロを石像に隠し密輸したとして覚せい剤取締法違反などの罪に問われたラトビア国籍の被告(32)の控訴審判決公判があった。
被告は、10年10月に犯行グループと共謀し、石像に隠した覚醒剤約10キロを南アフリカから発送、日本国内で受け取ったとして起訴された.
判決は、無罪とした1審東京地裁の裁判員裁判判決を支持、検察側の控訴を棄却した。
裁判員裁判で無罪となった外国人の被告が、刑の確定を待たずに強制送還された初めてのケース。日本とラトビアは犯罪人の引き渡し条約を結んでいないため、逆転有罪となった場合にも刑の執行は事実上不可能となり、高裁の判断が注目されていた。
1審は12年3月、ホテルで予定滞在分の代金を支払わず、宿泊を拒否されたことなどについて「覚醒剤の受け取り役として、あまりにも緊張感を欠いている」と指摘したうえで、「事情を知らない荷物の受取人として犯行グループが被告を利用したとすれば、自然かつ合理的に説明できる」として、被告の犯意を認定せず、「石像内の覚醒剤の存在を知っていたとは認められない」として、無罪を言い渡した。検察側は判決を不服として控訴し、裁判所の権限で釈放手続きを停止する「職権発動」で再勾留するよう求めたが、高裁は認めなかった。 被告は同月末に帰国した。
☆ 大阪高裁;大阪の傷害事件で逆転無罪判決(12年8月21日)
飲食店で知人男性を蹴るなどしてけがをさせたとして、傷害罪に問われた大阪市の会社役員の男性(42)と同市の無職男性(43)の控訴審判があった。
2人は06年10月、大阪市平野区の飲食店で、知人男性に氷入れを投げられたことに立腹し、顔を蹴って左目などにけがをさせたとして起訴された。
判決は、「被害男性の証言は変遷しており、問題がある」と指摘したうえで、「けがは靴で蹴ったものではない」とする控訴審で新たに採用した鑑定結果ともそぐわないとし、「証言の信用性を認めた1審判決には明らかな事実の誤認がある」と判断し、それぞれ有罪とした1審・大阪地裁判決を破棄、無罪を言い渡した。
10年9月の大阪地裁判決は「男性の供述は一貫しており、蹴られたこと以外の原因で負傷した可能性はない」と認定、会社役員の男性を懲役2年、執行猶予4年、無職男性を懲役1年6月、執行猶予4年とした。
☆ 東京高裁;強制わいせつで逆転無罪=男性供述「信用性高い」(12年7月25日)
自動車内で当時14歳の少女の胸を無理やり触るなどしたとして、強制わいせつ罪に問われた60代の自営業男性の控訴審判決があった。
男性は2010年12月、東京都江戸川区に停車中の自動車内で、少女の胸や下腹部を無理やり触るなどしたとして逮捕、起訴された。男性は胸を触ったことを認める一方で、「同意の上で、それ以外のわいせつ行為はしていない」と一貫して否認していた。
東京地裁はていた。
判決は、少女が自分の胸の手術痕について「話していない」と供述しているのに、男性が知っていた点を指摘。「少女の供述を前提にすると、客観的事実を合理的に説明できない状況がある」として、男性の供述の方が信用できると判断し、12年2月、少女の証言は核心部分で十分信用できると判断し、懲役1年8月、執行猶予3年とした1審東京地裁判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
☆ 大阪地裁;異例の無罪求刑→即判決 ロッカー荷物横領、立証できず(12年7月10日)
配達中の荷物を宅配ロッカーから持ち去ったとして、業務上横領の罪に問われたアルバイトの男性被告(24)の公判があった。
男性は11年6月、大阪市内のマンションの配達先の住人が不在のため、宅配ロッカーに配達物(車のルームミラー=約5千円相当)を入れた。しかし扉が閉まり切らぬうちに再度開け、ミラーを持ち去ったとして9月9日に大阪府警天王寺署に逮捕され、同29日に大阪地検に起訴された。
検察側は男性の犯行との証明がなくなったとして、論告で無罪を求刑し、男性に謝罪した。
判決は、即日無罪を言い渡した。
荷物が取り出された時刻の記録が重要証拠だったが、公判中の補充捜査で記録は事実と違う可能性があると判明。異例の無罪論告となった。検察官は論告で「33日間身柄を拘束し、誠に申し訳なく思っております。このようなことを二度と起こさない所存です」と頭を下げた。
☆ 奈良地裁;視野狭窄主張の男性無罪、交通死亡事故(12年7月9日)
奈良市で2011年に歩行者をはねて死亡させたとして自動車運転過失致死罪に問われた男性(43)に対する判決があった。
弁護側は、難病「網膜色素変性症」で視野狭窄になっていたのに、病気であることを知らずに運転しており、過失はなかったと主張していた。
判決は、「事故の原因は視野の欠損によるもの」と認め、検察側の「病気でも注意義務はあった」との主張を退け、過失責任を否定し、無罪(求刑禁錮1年8月)を言い渡した。
判決言い渡し後裁判官は「運転免許を更新する際、視野を検査するプロセスが必要かもしれない」との考えも示した。
☆ 東京高裁;女性が痴漢被害を誤解した可能性…2審逆転無罪(12年7月5日)
東急田園都市線の電車内で女性に痴漢行為をしたとして、東京都と神奈川県の迷惑防止条例違反に問われた横浜市の会社員男性(48)に対する控訴審判決があった。
男性は2010年9月、三軒茶屋駅から鷺沼駅にかけての電車内で、20代女性の下半身を触ったとして現行犯逮捕された。部の
判決は、男性が酒に酔い、疲労もあったことを指摘したうえで、「ふらついた男性の手などが女性に触れた可能性がある。意識的に痴漢を行ったとするには合理的な疑いがある」「女性が被害に遭ったと誤解した可能性がある」と述べ、1審・横浜地裁川崎支部の有罪判決を破棄し、逆転無罪の判決を言い渡した。
同支部は、11年12月の同支部判決は「女性の被害供述は具体的で信用できる」として、男性を懲役6月、執行猶予3年とした。
☆ 京都地裁;覚醒剤使用で無罪判決 京都地裁「違法な別件捜査」(12年6月7日)
覚醒剤取締法違反(使用)の罪に問われた京都市の女性(44)に対する判決があった。女性は11年9月、別居中の夫への暴行容疑で京都府警に現行犯逮捕された後、尿検査で覚醒剤の陽性反応が出たとして再逮捕、起訴されていた。
判決は、女性宅の玄関チェーンを切って押し入った夫の顔を女性が平手でたたいたことを正当防衛とみなし、暴行容疑を「違法な別件逮捕」と認定。違法な逮捕後に調べた尿の鑑定結果に証拠能力はなく、覚醒剤を自宅で使ったと認めた女性の供述を裏付ける証拠もほかにないと判断し、「捜査の手続きが違法だった」と判断し、無罪(求刑懲役2年)を言い渡した。
☆ 東京地裁;元法大生活動家ら5被告に無罪 看板損壊で(12年5月31日)
法政大キャンパス出入り口の看板を集団で壊したとして、暴力行為法違反罪に問われた元法大生の中核派系全学連活動家ら5人の男性被告に対する判決がった。5人は2009年2月19日未明、東京都千代田区の法大・市ケ谷キャンパスの3カ所の門に設置された「許可なき者の入構を禁止します」などと記された看板計12枚を引きはがし損壊したとして、同年6月に起訴された。
判決は、防犯ビデオの画像を根拠に5人を含む集団の誰かが壊したことは認めたが、画像の解像度が不十分であることなどから「誰がどのように犯行を行ったかについては認定できない」「5人が壊したと認めるには合理的な疑いが残る」として無罪(求刑懲役1年2月〜1年)の判決を言い渡した。
☆ 大阪地裁;死亡事故で男性に無罪「安全確認不十分とはいえず」(12年5月30日)=控訴審逆転有罪
大阪府池田市で10年10月27日未明、大阪府池田市の国道423号を車で走行中、ダンプカーと接触して転倒したオートバイの男性(43)をひいて死亡させたとして、同年10月に自動車運転過失致死罪で起訴されていた男性被告(47)の判決公判があった。男性は22年
判決は、検察側の「男性は制限速度を守らなかった上に前方の安全確認を怠った」との主張を退け、「制限速度で走行していた可能性は否定できない」と指摘。さらに現場には街灯もなく、男性が事故を予見することは困難だったと判断し、「安全確認が不十分だったとはいえない」として、無罪(求刑禁錮1年)を言い渡した。
☆ 千葉地裁;覚醒剤密輸、裁判員裁判で無罪(12年5月16日)
共犯者に指示をしてメキシコから覚醒剤約2キロをスーツケースなどに隠して成田空港から密輸しようとしたとして覚醒剤取締法違反(営利目的密輸)などに問われたメキシコ国籍の女性(22)の裁判員裁判の判決があった。
女性は11年3月、知人2人に指示をして、覚醒剤約2キロを含む水溶液が入った瓶をスーツケースなどに隠し、成田空港から密輸しようとしたとして起訴された。女性は「2人が日本に覚醒剤を持ち込んだことは知らないし、共謀もしていない」と主張していた。知人2人は同法違反で有罪判決が確定している。
判決は、「女性が共犯者に密輸を持ちかけ、指示したとする直接的な証拠はない」として、無罪(求刑・懲役13年、罰金700万円)を言い渡した。
なお、千葉地裁の裁判員裁判で無罪判決は4件目となった。いずれも成田空港からの覚醒剤の密輸事件。
☆ 東京地裁;「捜査員の証言信用できぬ」 スリ未遂、無罪判決(12年4月19日)
電車内でスリをしようとしたとして窃盗未遂罪に問われた男性(34)に対する判決があった。
男性は11年10月、新宿駅に停車中のJR埼京線の電車内で、立っていた女性のバッグに左手を入れて金品をすろうとしたとして、警視庁捜査3課のスリ専門の捜査員に現行犯逮捕された。男性は一貫して容疑を否認したが、捜査員の証言を根拠に起訴された。
判決は、逮捕前に男性を尾行していた状況についての捜査員の説明が男性のIC乗車券の履歴と食い違っている点などを指摘したうえで、「捜査員の証言には疑問が残る」と結論づけ、無罪(求刑懲役2年6カ月)を言い渡した。
☆ 京都地裁;衝突事故回避できぬ可能性、車の女性に無罪判決(12年4月18日)
京都市東山区で09年7月、乗用車の女性が交差点を右折した際、直進してきたオートバイの男性と衝突し、男性に急性硬膜下血腫などの重傷を負わせたとして、自動車運転過失傷害の罪に問われた滋賀県高島市の女性(48)に対する判決があった。
判決は、「女性は注意義務を怠った」と指摘したが、オートバイが渋滞の中、交差点手前で車線変更したとも想定できるとし「視認できなかった可能性もある」と述べたうえで、「注意義務を果たしても、事故を回避できたかについては合理的疑いがある」と無罪(求刑は禁錮1年2月)を言い渡した。
☆ 名古屋地裁;無罪判決:弘道会若頭に…身分隠しゴルフ(12年4月12日)=高裁有罪
暴力団員であることを隠してゴルフ場を利用したなどとして詐欺罪に問われた指定暴力団山口組弘道会ナンバー2の若頭の被告(52)=名古屋市緑区=に対する判決があった。
被告は、10年に約款で暴力団関係者の利用を禁止している長野県内のゴルフ場で、身分を隠して施設を利用したとして起訴された。
判決は、ゴルフ場での詐欺は「暴力団員の利用が禁止されていると知らなかった」として無罪を言い渡した。一方、同時に罪に問われたクレジットカード詐取は有罪とし、懲役10月、執行猶予3年(求刑・懲役1年6月)を言い渡した。
一緒にゴルフ場を利用したとして起訴された元風俗店グループ経営者の被告(54)は既に、ほかの裁判官により、別の罪と合わせて懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を受けている。
☆ 東京地裁;バイク転倒事故で主婦無罪 「義務怠ったとは言えず」(12年3月23日)
10年6月、東京都目黒区の信号のない交差点で、乗用車が脇道から、渋滞中の幹線道路に進入して右折しようとした際、センターライン側を走ってきたオートバイが避けようとして転倒、40代男性が骨折などのけがをさせたのは、安全確認が不十分なまま交差点に進入したためとして、自動車運転過失傷害罪に問われた乗用車を運転していた主婦(46)に対する判決があった。
判決は、検察側の「(1)車を降りて交通状況を確認しなかった(2)周囲の車の運転手に誘導を依頼しなかった」などの点で注意義務を怠ったとの主張を退け、「注意すべき義務を怠ったとまでは言えない」として無罪(求刑罰金30万円)を言い渡した。
弁護人は「常識から見て、検察側の主張は非現実的で、そもそも起訴したことが問題だ」と話した。
☆ 京都簡裁;ETC42回突破の僧侶無罪に(12年3月23日)
10年8月〜11年1月、京都市伏見区の阪神高速京都線の自動料金収受システム(ETC)を大型二輪で計42回、毎回、開閉バーの隙間(すきま)(約1.5メートル)を正しい手続きをせずに通過した(すり抜けた)として道路整備特別措置法違反(高速道路の不正通行)罪に問われた同市左京区聖護院(しょうごいん)東町、真宗大谷派和泉徳寺僧侶の被告(64)に対する判決があった。10年8月には、料金所職員に止められたのに「盆の時期で忙しい」と言い残して走り去った。
11年1月の逮捕後、ETCカードを装置に逆向きに挿入していたことが判明。被告は、公判で「ETC車載器にカードの裏表を逆に挿入し、気付かずに通過した」と主張していた。
判決は、同法は故意犯のみを処罰すると解される」としたうえで、装置の購入から使用まで約2か月間経過していたことから、「カードを入れる向きを誤って思い込んだことは不自然とはいえない」「職員からカードの挿入方法の間違いを指摘されたことはうかがえない」としたうえで、「誤ったカードの挿入方法を正しいと思い込んでいたと言える。故意があったと認定するには合理的な疑いが残る」「750CCバイクと袈裟(けさ)という目立つ姿で運転していたことも故意の無さを示すもの」として認定して、無罪(求刑・罰金200万円)を言い渡した。
☆ 大阪高裁;凜の会元会員に逆転無罪判決 「自白調書信用できず」(12年3月22日)
村木厚子元局長(56)が無罪となった厚生労働省の文書偽造事件で、有印公文書偽造・同行使罪に問われた自称障害者団体「凜の会」元会員の被告(71)の控訴審判決があった。
判決は、「取り調べをした検察官から、態度次第で身柄の拘束期間や保釈金が決まると言われ、自白を誘導された可能性がある」と指摘したうえで、被告が厚労省を訪れる前に別の団体から、証明書交付に必要な書類を発行されていた点を重視し、「捜査段階の自白調書は信用できない」として懲役1年6月、執行猶予3年の1審・大阪地裁判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
なお被告は、村木さんや厚労省元係長(42)=有罪確定、失職=らの共犯として虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた1審で、当初は起訴内容を認め、10年5月に有罪判決を受けた。ところが控訴後に村木さんの無罪が確定し、検察側は村木さんの関与を除いた有印公文書偽造・同行使罪に訴因変更、改めて1審判決通り懲役1年6月、執行猶予3年を言い渡すよう求めていた。
被告は閉廷後に記者会見し、大阪地検特捜部の捜査について、「取り調べで『作った話』をぶつけてきた。強引な取り調べをしても真実は遠ざかる」と厳しく批判した。
☆ 横浜地裁;死亡ひき逃げ 「はねた認識ない」無罪 糖尿低血糖で意識障害(12年3月21日)
横浜市で09年年9月1日夜、車で帰宅中、横浜市中区で、路上駐車の車をよけた際、反対からきた自転車の高校3年生の男子生徒=当時(17)=をはねて逃げたとして、道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われた同市内の男性被告(46)に対する判決があった。高校生は20日後に死亡した。
被告の男性は車の運転中に低血糖症で意識障害となり、公判では、事故に気づかず走り去ったことがひき逃げに当たるかが争点だった。
公判で、検察側が裁判所に紹介した鑑定医が事故当時の被告の状態を「糖尿病に起因する無自覚低血糖症により、著しい意識障害に陥っていた疑いがある」とした。
判決は、この鑑定を採用、検察側の「事故前後、赤信号で停車するなど正常に運転できており、人をはねた認識はあった」との主張を「もうろうとした状態で、事故の報告や救護に思いが至らず、行動を制御する能力を欠いていた疑いが残る」と退けたうえで、弁護側の主張どおり「人をはねた認識はなく、(ひき逃げの)故意は認められない」と判断、「糖尿病による低血糖症で意識障害に陥っていた」と故意や責任能力を認めず、無罪(求刑懲役1年)を言い渡した。
なお、男性は自動車運転過失傷害容疑でも逮捕されたが「事故の記憶がない」と一貫して容疑を否認し、嫌疑不十分で不起訴となっており、事故自体の責任は問われておらず、事故後に救護をしなかった責任だけが争われたケースは異例。
☆ 新潟地裁;検察審査会経て起訴の会社員、裁判員裁判で無罪(12年3月16日)
新潟県阿賀野市で2006年に起きた強盗致死事件で、元少年=受刑中=と共謀して被害者を置き去りにして死なせたとして、保護責任者遺棄致死の罪に問われた同市の会社員の被告(26)の裁判員裁判の判決があった。
被告は、元少年が新潟市の会社員(当時32)を暴行して現金を奪った当時、約4時間にわたって行動をともにしていた。会社員は、は脳挫傷で死亡し、2人が立ち去った現場近くで遺体で発見された。裁判では、救急車を呼ぶなどの救護措置をとらなかった被告の行動が罪に問えるかが争われた。
この事件では、新潟地検がいったん高橋被告を嫌疑不十分で不起訴とした後、被害者の遺族の申し立てを受けて新潟検察審査会が「起訴相当」と議決。地検が改めて捜査して起訴し、裁判員裁判に至った。
判決は、「放置しても死ぬとまでは考えなかった」とする弁護側主張を支持。被害者を心配した高橋被告と元少年が現場に一度戻ったことを認め、「犯行発覚を恐れて置き去りにしたとは思えない」としたうえで、「被告に置き去りにしようとする動機はなく、元少年との共謀は認められない」として、無罪(求刑懲役5年)を言い渡した。
☆ 大阪地裁;車トラブルで男性死亡、正当防衛認め無罪(12年3月16日)
11昨年1月22日深夜、大阪・ミナミでワンボックス車を運転中、前方を歩いていた男性会社員(当時39)らにクラクションを鳴らして追い抜いたところ、男性から「殺すぞ」と怒鳴られてワイパーを壊されるなどしたため、男性から逃げようと加速、運転席側のドアノブをつかんでいた男性を転倒させたうえで、右後輪で頭と胸をひいて死亡なせたとして起訴された元会社役員(44)の裁判員裁判の判決があった。
判決は、前を見て車を走らせた被告が右後方を追いかけてくる男性に気づくのは困難だったと指摘。走行を続けることによって男性を死なせることにつながるという認識はなかったと述べたうえで、「通行トラブルをめぐって男性に怒鳴られた被告が、身の危険を避けようとして車を走らせた」と判断。正当防衛が成立するなどとして傷害致死と自動車運転過失致死の罪について無罪(求刑懲役5年)を言い渡した。
一方、男性が右後輪でひかれた時の衝撃から事故が起きたと認識できたはずだとし、事故を警察に通報する義務を怠ったのは道路交通法違反にあたると認定。罰金5万円を言い渡した。
☆ 大阪地裁;義父の刑務官に逆転無罪 差し戻し審(12年3月15日)
大阪市平野区で02年に起きた母子殺害放火事件で、殺人などの罪に問われ、1審無期懲役、2審死刑の判決をいずれも最高裁が破棄した大阪刑務所刑務官の被告(54)=休職中=の差し戻し審判決公判があった。被告は、02年4月、平野区のマンションで、義理の娘である主婦=当時(28)=とその長男=同(1)=を殺害した後に放火したとして起訴されたが、一貫して無罪を主張。直接証拠はなく、状況証拠による立証の評価が焦点だった。
差し戻し前の1、2審はマンション踊り場の灰皿にあったたばこの吸い殻72本中1本から森刑務官のDNA型が検出されたことを最大の根拠に有罪と認定。しかし最高裁は10年4月、問題の吸い殻が茶色く変色していたことから、事件以前に捨てられた可能性を指摘。さらに状況証拠による有罪認定について「被告が犯人でなければ説明できない事実が含まれる必要がある」と新たな基準を示し、審理を差し戻した。
このため検察側は差し戻し審で、さまざまな条件でたばこを吸う実験を行い、「短時間でも変色はあり得る」との結果を提出。被告の靴の中から採取された犬の毛のDNA型が被害者の飼い犬と同型だとする新証拠とも併せ、「被告が事件当日に現場にいたことは明らかだ」とした。
これに対し、弁護側は喫煙実験を「非科学的」と一蹴するとともに、犬の毛のDNA鑑定についてもその精度や毛の採取・保管過程を問題視。さらに最高裁が差し戻し審で鑑定するよう求めた残る71本の吸い殻を、大阪府警が紛失していたことを「無罪証明の機会が失われた」と批判した。
判決は、「短時間でも変色はあり得る」とした検察側の実験について「科学的知見に基づくとは言い難い」と指摘、被告が被害者方に立ち入ったとする主張を退けた。他の状況証拠も、最高裁が示した「状況証拠で有罪認定するには被告が犯人でなければ説明できない事実が必要」との基準に照らし、いずれも被告を犯人と推認させる事実とは言えな」としたうえで、「被告が事件当日マンションの部屋に立ち入った事実は認められない。マンションに行ったことそのものについても疑いが残る」と指摘し、無罪(求刑死刑)を言い渡した。
なお、無罪の余地があるとして最高裁が死刑を破棄したのは、石川県内で元タクシー運転手が殺害された「山中事件」の判決(1989年)以来21年ぶりで、大阪地裁の判断が注目されていた。
☆ 那覇地裁;強制起訴初判決で無罪 未公開株めぐる詐欺(12年3月14日)
02年4〜5月、上場の見込みが薄い企業の未公開株購入を持ち掛け、沖縄県内の2人から計3600万円をだまし取ったとして、詐欺罪で強制起訴された投資会社社長の被告(60)=沖縄県南城市=の判決があった。
沖縄県警が10年3月に詐欺容疑で被告を逮捕、那覇地検は不起訴とした。被害者の申し立てを受けた那覇検察審査会は、同7月に強制起訴すべきだと議決した。同様の手口で別の男性から1200万円をだまし取ったとする詐欺罪でも強制起訴されたが、起訴後の捜査で時効の成立が判明した。
検察官役の指定弁護士は論告で、03年3月までに上場する可能性がないことを認識していたのに「02年12月までに上場する」と勧誘したと指摘。「専門知識がない人の投資意欲に付け込み悪質だ」と主張したのに対して、被告は、起訴内容を否認。弁護側は最終弁論で「上場可能性は十分あった。詐欺ではない」と反論していた。
判決は、「02年12月までに上場する」と勧誘したと指摘を、「被害者の誤解だった」として退け、無罪(求刑は懲役7年)を言い渡した。時効成立部分は免訴とした。
2009年5月に導入された強制起訴制度による被告への判決は全国で初めて。
☆ 東京地裁;覚醒剤密輸「受け取り役として、あまりに緊張感欠く」ラトビア人に無罪判決(12年3月12日)
覚醒(かくせい)剤約10キロを石像に隠し密輸したとして、覚せい剤取締法違反などの罪に問われたラトビア国籍の無職の被告(32)の裁判員裁判の判決公判があった。
被告は、10年10月に犯行グループと共謀し、石像に隠した覚醒剤約10キロを南アフリカから発送、日本国内で受け取ったとして起訴された。争点は、犯行グループとの共謀の有無や、石像内の覚醒剤を知っていたかどうかであった。
判決は、被告が、宿泊先のホテルで予定滞在分の代金を支払わず、宿泊を拒否されたことなどについて「覚醒剤の受け取り役として、あまりにも緊張感を欠いている」と指摘。犯行グループが「事情を知らない受取人として被告を利用したとすれば、自然かつ合理的に説明できる」と結論付け、「覚醒剤の受け取り役として来日したとするのは、合理的な説明が困難」として、無罪(求刑懲役14年、罰金800万円)を言い渡した。
☆ 名古屋地裁;ひき逃げ事故、トルコ人被告に無罪判決(12年2月29日)
愛知県あま市で11年5月、自転車の40代のパート女性をひき逃げしたとして、自動車運転過失傷害などの罪に問われたトルコ人男性の被告(26)に対する判決があった。被告は、一貫して「車は事故の数日前に元の所有者に返した」と否認していた。
判決は、「検察側が示した状況証拠から、被告が運転していたとは証明できない」として無罪(求刑懲役2年)を言い渡した。
なお、事故とは別の日にダンプカーを無免許で運転したとされる道路交通法違反の罪については、懲役1年執行猶予3年とした。
☆ 奈良地裁;奈良の発砲警官2人に無罪判決 裁判員が正当性を初判断(12年2月28日)
奈良県大和郡山市で03年、警察官が逃走車両に発砲、助手席の男性が死亡した事件の裁判員裁判の判決があった。
検察が不起訴とした事件を付審判決定を経て裁判員が審理した初の裁判。警察官の発砲を殺人罪で審理した例も過去になく、争点は殺意の有無と発砲の正当性だった。
判決は、「殺してもやむを得ないという動機はほとんどなかった」と殺意を否定したうえで、「他に手段がなかった」と警察官職務執行法に抵触しないと判断し、殺人と特別公務員暴行陵虐致死の罪に問われた県警の巡査部長の被告(35)と警部補の文被告(35)に無罪(それぞれ求刑懲役6年)を言い渡した。
☆ 東京地裁;令状なく身体検査」で男性無罪 東京地裁、覚醒剤事件(12年2月27日)
東京周辺で覚醒剤を使ったとして、覚醒剤取締法違反(使用)の罪に問われた男性被告(42)に対する判決があった。男性は11年5月、覚醒剤を使ったとして起訴された。男性は、警視庁新宿署の署員に職務質問されて交番に連れて行かれた後、令状がないまま靴やズボンを脱がされ、身体検査をされた。この後、採尿された結果が起訴の根拠となった。
判決は、この身体検査について「(強制的な捜索や差し押さえは令状が必要だとする)令状主義に反しており、違法だ」と指摘したうえで、検査の違法性を否定した警察官の証言は「信用できない」としたうえで、「採尿結果の鑑定書は証拠にできず、男性は無罪だ」と結論づけ、「捜査の手続きが違法だった」として無罪(求刑・懲役2年6カ月)を言い渡した。
☆ 福岡地裁;詐欺事件で一部無罪判決 供述調書の信用性認めず(12年2月24日)
詐欺と覚せい剤取締法違反の罪に問われた会社員の男(40)の判決があった。
判決は、詐欺の起訴内容1件を「レンタカーを借りる際に、任意の免責補償にも契約して料金を支払った点などを指摘したうえで、「当初からだまし取るつもりだったとする内容の供述調書は、経緯と整合せず、信用性が認められない」と述べ「供述調書は信用性が認められない」として無罪とし、別の詐欺や覚せい剤使用など3件については有罪と認め、懲役4年(求刑懲役5年)を言い渡した。
無罪としたのは、男が08年7月、知人に引き渡すため、返すつもりがないのにレンタカー会社から自動車を借りたとされた詐欺罪。弁護側は「契約当初からだまし取る意思はなかった」と主張していた。
☆ 最高裁第1小法廷;家族3人殺害、無罪確定 死刑求刑事件で(12年2月22日)
借金返済に困り、01年1月17日未明、広島市西区の実家で実母=当時(53)=の首を絞めて殺害。就寝中の長女=同(8)=と次女=同(6)=を放火で焼死させ、3人の死亡保険金など計約7300万円を詐取したなどとして殺人や放火罪などで起訴、死刑を求刑され、1、2審が無罪とした無職の被告(41)に対する上告審決定があった。
被告は、06年5月に別の詐欺事件で逮捕され、放火殺人を自供した。公判では否認に転じ、無罪を主張した。
決定は、最大の争点となった自白の信用性について検討。実妹との接見や手紙などで自白内容を認めている点などを挙げ、「信用性は相当に高いという評価も可能」とした。しかし、▽計約5・5リットルの灯油をまいたと自供したのに、被告の衣服や車内などから油成分を検出した証拠がない▽実母の保険契約について漠然とした認識しかない−との2点の理由から信用性を否定した2審の判断を「論理則、経験則に違反するものではない」と指摘し、無罪判決は妥当と結論付け、検察側の上告を棄却した。これで無罪が確定した。た。
「4人の裁判官全員一致の意見で、横田尤孝裁判官は広島高検検事長時代の事件関与を理由に回避した。
なお、近年では死刑求刑に対して1、2審でいずれも無罪とされたのはこの事件を含め3件あるが、ほかの2件は高裁段階で無罪が確定している。今回は、検察側が上告した唯一のケース。
☆ 名古屋地裁;痴漢で起訴の元男性会社員に無罪 「第三者の犯行の可能性否定できず」(12年2月21日)
名古屋市中区の歩道で女性の尻を触ったとして、愛知県迷惑防止条例違反の罪に問われた元会社員の男性(38)に対する判決があった。
元会社員は11年7月13日午後11時50分ごろ、中区栄3丁目の歩道で、当時19歳の女性の背後からワンピースの裾をめくり、尻を触ったとされていた。女性は犯人の胸ぐらをつかんで携帯電話で110番したが、犯人は立ち去った。女性は現場から早歩きで離れる元会社員を見つけて友人と取り押さえ、警察官に引き渡した。
元会社員は一貫して「女性の近くにいたらいきなり怒鳴られ、絡まれたくないと思い逃げた」などと無罪を主張した。事件の物的証拠はなく、女性は犯人の顔を見ていなかった。
判決は、検察側が女性の衣服に残る微物などを証拠として提出していないことを指摘したうえで、元会社員の犯行を裏付ける客観的証拠がなく「第三者の犯行の可能性は否定できない」と判断し、無罪(求刑罰金50万円)の判決を言い渡した。
☆ 佐賀地裁;知的障害の男性に無罪 佐賀、選挙ポスター破りで(12年2月21日)
佐賀市で2009年8月18日、佐賀市内で衆院選候補者のポスター4枚を破ったとして、公選法違反の罪に問われた知的障害のある無職の男性(59)の判決あった。
検察側は「客観証拠があり、男性の犯行であることは明らか」と主張。男性は初公判でポスターを破ったことを認めたが、弁護側は「被告にはポスターを破ることはできず、責任能力もない」と指摘していた。裁判所は、弁護側の求めに応じて精神鑑定を実施した。
判決は、法廷での供述などから、男性がポスターを破ったとした上で「当時は興奮状態で、行動制御能力を欠いていた」と述べたうえで、責任能力については精神鑑定結果を踏まえ、「犯行時、自己の行動を制御する能力を欠いた状態にあったとの合理的な疑いを払拭(ふっしょく)できない」と指摘、捜査が尽くされていないと批判、また、警察官が作った自白調書については、「(1)一人称形式で捜査官が知識を補充した可能性がある(2)犯罪捜査規範にある取り調べ時の態度の記録が無い(3)捜査メモを破棄している(4)取り調べの録音録画が検討されていない」という問題点を挙げ、「言葉が断片的」「語彙(ごい)が貧弱」など、知的障害者の特性を理解せず作られたなどとして、信用性を否定、さらに、佐賀県警の取り調べについて「知的障害を鑑みて、問答形式の供述録取書を作成すべきだった」と指摘し、「録音・録画も検討すべきだった」とした。そして男性の訴訟能力について、「知的障害があり、訴訟能力はない」とする鑑定結果を証拠採用し、無罪(求刑罰金30万円)を言い渡した。
☆ 福岡地裁;「2枚と2万円」聞き間違い 無職男に一部無罪判決(12年2月16日)
保険代理店にクレームをつけて金銭を要求したなどとして、威力業務妨害と恐喝未遂の罪に問われた無職の男(37)=福岡市西区=の判決があった。
男は11年1月30日、同市東区の保険代理店で、従業員に2時間以上「態度が相手を不愉快にさせる」などと怒鳴って机を蹴り、さらに代理店を出た後に電話で「スタッフの謝罪文と2万円以上でお願いします」などと金銭を要求したとして起訴された。
判決は、男は「電話では『謝罪と反省文2枚以上』と伝えた」との主張に対して、「音が似ている上、電話での会話のため『反省文2枚』の要求を『2万円』と聞き間違えた可能性が十分ある」と指摘、「2万円を要求した事実は認められず、恐喝未遂罪は成立しない」として、恐喝未遂罪を無罪とした。
さらに威力業務妨害事件で代理店に居座った時間も「約40分間」と起訴内容より短く認定し、威力業務妨害罪について、罰金30万円(求刑懲役2年)を言い渡した。
☆ 最高裁第1小法廷;裁判員初の全面無罪判決確定へ 2審の有罪破棄(12年2月13日)=判決全文/関連論説/裁判員裁判無罪例
1審の裁判員裁判で初めて全面無罪判決を受けながら、裁判官だけで審理する控訴審で逆転有罪とされた覚醒剤密輸事件の被告の上告審判決があった。
2009年11月1日、小分けにした覚醒剤入りのチョコレート缶3個をボストンバッグに隠して成田空港に持ち込んだとして逮捕、起訴された会社役員(61)の事件で、「缶は土産として預かっただけ」と主張し、缶の中身が違法な薬物だと認識していたかが争点となった。
判決は、「刑事裁判の控訴審は1審と同じ立場で事件を審理するのではなく、1審に事後的な審査を加えるべきものだ」とした上で、「控訴審が、事実認定に誤りがあるとして1審判決を破棄するためには、経験上、または論理的に不合理であることを具体的に示す必要がある」との初判断を示し、「1審は証拠の評価を誤った」として、懲役10年、罰金600万円とした11年3月の2審・東京高裁判決を破棄し、10年6月、「違法薬物と知っていたとまでは言えない」として無罪とした1審・千葉地裁判決を支持した。これで被告の無罪が確定した。
判決は5人の裁判官の全員一致の意見。白木勇裁判官は補足意見で「裁判員制度では、裁判員のさまざまな視点や感覚が反映されるため、幅を持った事実認定や量刑が許されないと、制度が成り立たない」と述べた。
なお、裁判員らが無罪とした1審判決を高裁が覆したケースについて、最高裁が判断したのは今回が初めて。
<裁判員制度と二審> 刑事訴訟法は二審の審理で、一審の結論に影響するような事実認定の誤りがあれば破棄しなければならないと規定。一審への差し戻しを原則としているが、既に審理が尽くされていると判断すれば自ら判決を言い渡すことができるとしている。2009年からの裁判員制度導入の際も、誤判の可能性は排除できないとして、検察、被告側双方の控訴権は従来通り維持。二審に関する刑訴法の規定も見直されなかった。
☆ 東京地裁立川支部;怪しいが…窃盗事件で男性に無罪「検察の証明不十分」 (12年2月13日)
11年4月、東京都町田市小山ケ丘2丁目の「オートバックス多摩境店」で、発光ダイオード(LED)D電球3個(計8940円相当)を盗んだとして窃盗罪に問われた八王子市の無職男性(51)に対する判決があった。
判決は、「防犯カメラの映像からLEDの箱を持ち去ったとは認定できず、検察側の証明は不十分」と指摘、一方で「被告の行動や弁解は不自然で怪しいと感じられる部分もある。今後、疑われる行動は控えてほしい」として、無罪を言い渡した。求刑は懲役2年6月。
☆ 大阪地裁;覚醒剤所持事件の被告に無罪(12年1月11日)
10年4月、覚醒剤を密売していたとされる大阪の友人の実家で、この友人とともに覚醒剤約1.9グラムを営利目的で所持したとして覚醒剤取締法違反の罪で起訴された取県の無職の男性(23)に対する判決があった。 男性は査段階から「自分のものではない」と無罪を主張していた。
判決は、男性は覚醒剤を買う客を探したことはあったが、密売は友人が取り仕切っていたと認定。友人の実家にあった覚醒剤は「男性が管理していたものではない」と判断し、無罪(求刑懲役3年6カ月、罰金20万円)を言い渡した。
☆ 神戸地裁;福知山線脱線事故:JR西前社長に無罪判決(12年1月11日)=産経電子号外(pdf)
乗客106人が死亡し、多数が負傷した兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故(05年4月)で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長山崎正夫被告(68)に対する判決があった。
山崎前社長はJR西の安全対策を一任された鉄道本部長在任中の96年6月〜98年6月、(1)事故現場カーブを半径600メートルから304メートルに半減させる工事(96年12月)(2)JR函館線のカーブでの貨物列車脱線事故(同)(3)ダイヤ改正に伴う快速列車の増発(97年3月)−−により、現場カーブで事故が起きる危険性を認識したにもかかわらず、自動列車停止装置(ATS)の設置を指示すべき業務上の注意義務を怠り、事故を起こさせたとして起訴された。
争点は、現場カーブの変更当時に事故を予見できたかどうと、鉄道事故を巡り、巨大事業者の経営幹部に刑事罰を科せるかどうかだった。
判決は、カーブの工事について、「同様のカーブはかなりの数存在している」と指摘。ダイヤ改正も「上り快速のダイヤに大幅な余裕を与えるもので、事故の危険性を高める要因とはならない」と判断した。さらに、函館線脱線事故は「閑散区間の長い下りで貨物列車が加速するに任せて転覆した事故で、本件事故とは様相が異なる」として、危険性認識の根拠とは認められないとした。また、ATS設置については「当時、義務づける法令はなく、カーブに整備していたのはJR西を含む一部の鉄道事業者のみだった」と述べ、現場カーブで個別に整備すべきだったとの検察側主張を退けた。証人の供述調書については「被告の過失の有無とは関係がないので、信用性の判断は示さない」と述べた。
そのうえで、判決は、「JR西の曲線での自動列車停止装置(ATS)の在り方などに問題があり、大規模事業者として期待される水準に及ばないところがあるといわざるを得ない」としてJR西の組織としての責任を指摘したが、山崎被告については「個人としての注意義務違反を肯定するほどの予見可能性は認められない」として過失責任を認めなかったとして無罪(求刑・禁錮3年)を言い渡した。
JR西や同業他社の関係者、鉄道専門家ら30人が証人出廷。山崎前社長の元部下に当たる当時の社員らは、カーブの危険認識を認めた捜査段階の供述を法廷で次々に覆し、「カーブの危険を感じたことはない」などと証言した。
検察側は「カーブの工事で転覆限界速度が手前の直線の最高速度(120キロ)を下回り、ブレーキのかけ遅れなどで脱線する客観的危険性が高まった」などと指摘。「万全の対策を講じるべき職責を果たさなかった怠慢型の過失」とした。これに対し、弁護側は「当時はカーブへのATS設置は義務づけられておらず、安全確保は国家資格を持つプロの運転士に路線状況を把握させ、速度を守らせる仕組みだった」などと反論し、無罪を主張していた。
☆ 福岡高裁;取り押さえ死、巡査長に高裁も「無罪」(12年1月10日)
佐賀市で2007年、知的障害者の男性(当時25歳)が警察官に取り押さえられた直後に死亡した問題で、特別公務員暴行陵虐致傷罪に問われた佐賀県警の巡査長の被告(31)に対する審判の控訴審判決があった。巡査長は07年9月25日、佐賀市内の車道で自転車を蛇行運転していた男性を取り押さえようとした際、胸などを数回殴って約1週間のけがを負わせたとされる。男性は取り押さえられた直後に死亡した。この問題を巡っては、男性の遺族の請求を受け、佐賀地裁が付審判開始を決定。巡査長は一貫して無罪を主張していた。
判決は、1審・佐賀地裁判決を支持し、無罪(求刑・懲役1年)を言い渡した。
11年3月の1審判決は、暴行を目撃したとする女性2人の証言について「巡査長は男性を制止するため腕などを何度もつかんでおり、女性らが暴行と見誤った可能性がある」などと認定し、無罪と判断していた。
☆ 福岡地裁小倉支部;「別件逮捕で違法捜査」覚醒剤事件で無罪 福岡(12年1月5日)
覚せい剤取締法違反(使用)の罪に問われた北九州市小倉南区の無職の被告(34)に対する判決あった。被告は11年1月19日早朝、北九州市小倉北区で、正当な理由なくカッターナイフを所持していたとして軽犯罪法違反の疑いで福岡県警に現行犯逮捕され、翌20日、令状による尿検査で覚せい剤の陽性反応が出た。
判決は、軽犯罪法違反容疑での逮捕を「実質的に、令状によらずに覚せい剤使用の疑いで逮捕した別件逮捕で、令状主義の精神を無視した重大な違法がある」と判断した上で、検察側が提出した尿の鑑定書について「証拠として採用することは別件逮捕を助長する恐れがある」として証拠能力を否定、「ほかの証拠がなく犯罪の証明がない」と結論付け、別件逮捕による違法な捜査だったとして無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。