与野党と政府は韓中自由貿易協定(FTA)議会承認案を処理する条件として、企業から毎年1500億ウォン(約160億円)の寄付金を受け取り、FTAで被害を受ける農漁村への支援基金を創設することで合意した。韓中FTAで利益を受ける輸出企業に「自発的に」寄付金を支払わせる形だ。政府は寄付を促すために税額控除をはじめとする租税優遇策を適用するほか、共生成長指数の算定時に加算点を与えることを決めた。韓中FTAをめぐって、野党は輸出企業から税金を徴収する「貿易利得共有税」を主張してきた。しかし、違憲論争が起きたため、形式だけ「税金」から「寄付」に変え、体裁を整えた。それでも事実上企業に強制的に寄付を求める「準租税」で農漁村に支援を行うという点は貿易利得共有税と何ら変わりがない。
創設した基金は中小企業支援事業を行う大・中小企業協力財団の基金と統合され、農漁村からの特産物購入、集落整備事業、子どもの学費支援などに使う予定だ。趣旨はもっともらしいが、問題は政界、政府がまたも「企業いじめ」のカードを切った点だ。
与野党は寄付には強制性はなく、企業が自発的な判断に従って応じるものだとしているが、誰もそんな言葉は信用しない。政府が政策目標を掲げ、寄付を促せば、それを拒否する企業はない。年間1500億ウォンという徴収目標も主に大企業に半ば強制的に割り当てられるのは明らかだ。青年希望ファンドと創造経済革新センター事業に続き、準租税項目がまた一つ加わった格好だ。
どんな企業が寄付をすべきで、それをどんな農漁村に支援すべきかも不明確だ。FTAで恩恵を受ける企業に寄付を求めるとしているが、どの企業がFTAでどれだけ追加的な利益を上げているか算定するのは不可能だ。企業規模や財界の序列に従って、寄付額が割り当てられる可能性が高い。青年希望ファンドの場合、サムスン電子の李健熙(イ・ゴンヒ)会長が200億ウォン(約21億円)、鄭夢九(チョン・モング)現代自動車会長が150億ウォン、崔泰源(チェ・テウォン)SK会長が100億ウォンというように寄付額が決められた。韓中FTAで農漁民がどんな被害を受けるかを把握するのも困難だ。過去の農漁村補助金のように、競争力のない分野に無駄金を使う結果になりはしないか心配だ。
農漁村支援は政府が財政資金で行うのが原則だ。韓中FTAで輸出が伸びれば、輸出企業の営業利益が増え、それだけ法人税収も増加することになる。それを使って支援を行うのが当然だ。財源が必要になるたびに企業をいじめるのは開発連帯式の古い手法だ。経済界から「企業は自販機にような存在だ」という皮肉が聞かれるのもそのためだ。