来季はツール・ド・フランス出場を「予定」映画「パンターニ」公開初日に新城幸也がトークショー 選手の視点でドーピング事情を解説
山岳で圧倒的な速さを発揮した伝説的なロードレーサー、故マルコ・パンターニ(イタリア)の激動の生涯を描いたドキュメンタリー映画「パンターニ/海賊と呼ばれたサイクリスト」が11月28日、新宿シネマカリテ(東京)で公開初日を迎え、レイトショー上映後にプロロードレーサーの新城幸也(チーム ヨーロッパカー)がトークショーを行った。新城は作品の中で描かれていたパンターニの心情や、ドーピング検査の実情などを現役選手の視点から語り、満席となった会場の参加者は熱心に耳を傾けた。
より厳しい現在のドーピング検査
新城はこの日、来場者と共に映画を鑑賞。トークショーの冒頭で「僕が自転車に乗り始めた翌年(2004年)に亡くなったので、実はパンターニのことはよく知らなかった」と前置きしつつ、「けがや病気をしても、自転車にまたがると気持ちが安定する」と語り、大けがから復帰して活躍したパンターニの姿になぞらえて自身の体験や心情を語った。
作品のなかでキーポイントとなったドーピング検査について、新城は現在の自転車競技界の実情を説明。「朝6時から23時まで、トレーニング場所を含め居場所を報告しなければならない。以前、ツール・ド・リムザンで総合優勝した時には、翌日の朝5時に検査官が家に来ました」と、プロとしての苦労も語った。
トークショーの進行役を務めたフォトジャーナリストの飯島美和さんは、「今年のジロ・デ・イタリア取材で泊まったホテルでは、パンターニらが活躍した当時、警察が全ての部屋に盗聴器を仕掛けていたとホテルのオーナーから聞いた。(当時は)それをしゃべると逮捕され、今だから話せる事だと言っていた」と、当時のレース界の一端を語った。
新城は「当時の(ドーピング)事件や競技環境、また現在の厳しいドーピング検査があるからこそ、クリーンな選手が活躍する場ができている」と指摘。結果として現役時代にはドーピング陽性が出なかったパンターニについて、「薬物(使用)について疑われながら、プロの自転車選手を全うしたまじめな選手だったと思う」と述べた。
ランプレ・メリダでのスケジュールを披露
トークショーを終了後には交流の場が設けられ、新城は来場者との握手や写真撮影に応じた。
来季からイタリア唯一のUCIワールドチーム「ランプレ・メリダ」に所属する新城は、2016年のレーススケジュールについて、ツアー・オブ・カタール、ツアー・オブ・オマーン、パリ~ニースへの出場が決まっていると説明。「このままいくと、いいスケジュールで走らせてもらってツール・ド・フランスへ、という予定」と発言した。
新城はきょう29日にイタリアへ渡り、新チームで初めての合宿に臨む。