こわれたおもちゃを格安で修理する「おもちゃの病院」が広がっている。活動場所やドクターが年々増え、持ち込みも急増している。修理を手作業でこなすボランティアのドクターは、子供から大人まで多くの人に笑顔を届けている。

 19日午後、奈良県生駒市元町1丁目の市民活動推進センター「ららポート」の会場は、こわれて音が出なくなったパトカーのおもちゃや犬のぬいぐるみなどであふれていた。15人のドクターが手分けして次々に修理してゆく。

 先端のプロペラが回り、音が出るはずの子供用の車は、まったく反応がなくなっていた。電子メーカーで回路の設計を手がけてきた中村晋(すすむ)さん(68)は、真剣な表情で電子基板を見つめた。はんだ付けをして配線を直す。電池を入れると音が鳴り、プロペラが回った。生駒市の主婦安井愛さん(31)は「直ったんだー」と声を弾ませた。一緒に来た子供も大喜びで、さっそく乗り回した。部品代の100円を払い、帰っていった。

 主催する「奈良 健やか交流塾おもちゃ病院」(橿原市)は2011年の設立だ。「日本おもちゃ病院協会」の講習を受け、認定された16人が橿原市で活動を始めた。養成講座を年1回程度開き、今ではドクターが103人になった。生駒市のほか奈良市や天理市など計12カ所で月1回、「開院」している。地域のイベントなどにも出向く。昨年までの4年間で約7千件を手がけ、9割を直した。

 おもちゃや機械いじりの好きな人、手先の器用な人たちが集まっている。定年を過ぎた人が8割、現役の人が2割だ。電子機器会社の退職者も加わり、専門知識が必要な修理もこなせるようになった。ドクターの1人は「いろんなおもちゃを見るのも楽しみの一つ。わくわくします」と話す。