自民党が1955年の結党から60年の節目を迎えた。

 3年前の政権復帰以来、安倍自民党は国政選挙に3連勝中だ。安倍氏は先の総裁選で無投票再選し、党は一枚岩の結束を保っているように見える。

 内実はどうだろう。朝日新聞が実施した党員調査では、歴代で最も評価する総裁は19%を集めた安倍氏だった。

 一方で、党員の意見が党運営や政策に十分反映されているか聞いたところ、54%が「されていない」と答えた。

 こう答えた人の中では、安保関連法の議論は「つくされていない」が71%、憲法改正を「急ぐ必要はない」が65%に上る。最も評価する総裁では田中角栄氏の方が多くなる。

 歴史を振り返ると、党の性格は大きく二分される。93年に党分裂で下野するまでの「55年体制」の時代と、その後の小選挙区制の時代と――。

 55年体制下では、結党時に掲げた「国民政党」の色あいが濃かった。多様な意見をくみ上げることで国民合意を形成し、社会党とはよくも悪くもある種の共存関係を築いた。

 一方、衆院の小選挙区と政党助成導入後の90年代後半から、資金配分や選挙の公認などの権限が党執行部に集中した。派閥間での権力闘争の矛先は、小選挙区でのライバル民主党に向けられるようになった。

 第1次政権での中途退陣と野党転落をへた安倍氏は、右寄りの理念と力で党内を抑えつつ、民主党やそれを支える労組などを激しく攻撃する敵対姿勢を先鋭化させている。

 国民の分断へのおそれも感じられない。先の国会での安保法案の強引な進め方も、沖縄の民意に耳を傾けない普天間飛行場の辺野古移設もそうだ。

 田中氏や大平正芳氏らが党を率いた時代は、高度経済成長の果実を分配すればよかった。

 いまは少子高齢化と財政難の下、負担の分かち合いが求められる。国民統合の重要性はいっそう高まっている。

 そんな時代に日本のかじ取りを担う政治のありようとして、安倍自民の姿勢は妥当だろうか。そうとは思えない。

 安全保障や社会保障政策は、政権が代わっても安定して継続することが望ましい。野党と敵対姿勢ばかりでは、政策の幅も狭まらないか。

 「単色」と言われる自民党だが、ひと皮めくれば「それでよいわけがない」という声は議員にもある。多様性を踏まえつつ統合をめざしてこそ、政権党にふさわしい。