JOBK放送開始90年アンコール 土曜ドラマ 夫婦善哉(1)<全4回> 2015.11.27


南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経。

(トランペット)
(ホイッスル)寄っていかへんか!
(笑い声)
(読経)
(お多福)ゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャ。
ややこしいとこでっしゃろ。
汚れた心を洗いまひょ。
ひゃっ!どうか吉にしたっとくなはれ。
(3人)大吉!ど厚かましゅうてかいらしい女がみ〜んなこの界わいへ集まってきよります。
(蝶子)何や小河童か。
(小河童)小河童言うな。
子どもがこんなとこ来ちゃあかんのに。
あんたかて子どもやろ。
ちゃんとおさい銭入れたんか?うわ〜ど厚かましい!
(3人)ど厚かましい!・「蝶子はただ裏長屋の子」しょうもない。
法善寺の神さんはそない了見の狭いお方やあらへんで。
うん?わては神さんとちゃいまっせ。
貧乏やなくなりますように。
よろしゅうおたの申します。
いや〜おたの申されましても…。
まあよろしわ。
ここは大阪法善寺。
ど厚かましゅうてかいらしい女の味方だっせ。

(子どもたち)わ〜い!おっさん牛蒡揚げてんか。
ただいま〜。
お父ちゃんただいま!
(種吉)おう蝶子お帰り。
手伝うわ!
(種吉)手洗うといでや。
へえ。
(お辰)お帰り。
ただいま。
(河童)店賃払てもらおか。
今月もお前とこが最後や。
おっさん牛蒡まだか?うわ親河童…。
聞いとんのか種吉!へい…。
何してまんねん!材木屋はん人の家の板の間たたいてあんたそれでよろしおまんのか?ここは神さんが宿ったはるとこだっせ!…人の家の板の間て店賃払てから言うてもらおか!
(信一)道理や。
信一!要らん事言うんやない。
蝶子たらいう子か?へえ。
あんたんとこのぼんぼんと同級の。
ふ〜ん。
どないや?うちへ女中奉公に来さしたら。
たまった店賃帳消しにして働きによっては色つけたってもええで。
どや?おっさん牛蒡!どないして店賃払うねん。
店賃の代わりに娘めかけに差し出す親どこにおんねん!めかけやあれへん奉公に出すんや!同じ事や。
うちは河童のおっさんの店なんか行かへん。
そうか。
うちは芸妓はんになる。
(2人)何て?うちも島田に結うてきれいなべべ着て歩きたい。
あのなそんな事でな…。
あの河童が目つけるほどの器量や。
売れっ子になんのと違うやろか。
何を気楽な事言うてんねん。
蝶子ええか。
芸妓ちゅうのはよくよく訳のあるもんがなるもんやねんで。
うちかて大概の訳ありやけどな。
うん。
なる言うたらなる!あかん言うもんはあかん。
うちを芸妓にしてくれんようなそんな薄情な親てあるもんかいな。
けったいな娘はんがあったもんで。
親の反対押し切って蝶子はん学校出たら曾根崎新地のお茶屋さんへ入りおちょぼになりました。
おちょぼいうのんは芸妓はんのいうたら見習い。
お茶屋に住み込みで働きます。
は〜しんど。
もうおなかすいてきた。
(ハナ子)朝御飯塩鰯1匹やったさかいな。
ホンマここのおかあさんはしみったれやわ〜。
(梅乃屋女将)そらえらい悪うおましたな。
おちょぼはちょぼっとのお菜をおちょぼ口でちょぼちょぼ食べるさかいおちょぼいいますねん。
そんなあほな。
口答えしなはんな!すんまへん。
すんまへん。
お洗濯は済みましたんか?まだです。
お日さんは何のために照ってると思てますのんや?そらお日さんないとわてら皆死んでしまいますよって。
洗濯もん乾かすために照ってますのや。
さっさとしなはれ!
(2人)はい〜。

(三味線)
(ハナ子)蝶子はんうちらせいだい芸磨いて売れっ子になっておかあさん見返してやりましょいな。
そないしよ!
(三味線と歌声)お目だるうございました。
(矢橋屋)ハハハハハハハ。
(豆千代)ここへ来て矢橋屋さんにご挨拶しなはれ。
へえ。
金八です。
あ金八さん。
金春です。
金春!ホッホホホホホ!こりゃまた粋な名前やな。
ホホホホホ。
へえおねえさんの名前から「金」の字を頂戴しましてそこへ親にもろうた「蝶」の字を取って付けたらどないやと言われましてんけど。
なるほどな。
「金」に「蝶」で「金蝶」。
ホホ!これ面白い名前やがな。
嫌ですわ。
こないな挨拶せんなりませんやろ。
…初めまして。
き…きんちょうしとります。
ハハハハハ!面白い子やななあ!なかなかべっぴんさんやがな。
わしゃな明日も来るで。
えらいもんで蝶子はん金春の名であっという間に売れっ子になりました。
(小河童)蝶子!ヘヘッ。
何や小河童か。
小河童言うな。
相変わらず貧乏くさい顔やのう!ほっといてんか。
わいが今晩行て名指ししたってもええで。
ここは新地や。
河童横丁の小金持ち風情が出入りするとこやおまへん。
何やと!おい!こら待てただ裏!わいを誰や思てけつかんねん!材木屋の跡取りやぞ!小河童。
小河童言うな!おい!聞いてんのか!
(松川)日暮れんのはよなったな。
(鶴田)はよ行って温まろや。

(鼻歌)
(柳吉)なあ僕と…共鳴せえへんか?
(三味線と手拍子)十や!なしや!いくつや!十や!十や!十や十や〜!いやいや〜!いやいや俺の勝ちけん。
かわいいからまっちゃん負け。
負け負け。
維康お前の番や。
(松川)よっ維康柳吉!
(拍手)わいはええわ。
わいはええわい。
え〜?飽きた。
(豆千代)何や維康はん今日はえらいつれないやおまへんか。
(松川)嫁はんとけんかでもしたんちゃいますか。
やかましいわ。
ほなひとつ色問答でもせえへんか?色問答いいますのんは?赤やったら赤い色を3つ重ねんねや。
「赤い赤いが赤いなりけり」てな事言うて。
どないなふうに言うんでっか?「金時が鯛ぶら下げて火事見舞い」てな事言うて。
金時は赤い顔しとる。
で赤い鯛と火事は赤い。
赤い赤いが赤いなりけり。
ふ〜ん。
(豆駒)そら粋なお遊びですなあ。
そやろ。
金春お前の番や。
え!わてだっか?う〜んほな…。
「人参の天ぷら売れず血の海が」。
赤い赤いが赤いなりけり。
な…何やそれ?へえ。
わての家は一銭天ぷら屋ですねん。
お父ちゃんが赤い人参天ぷらにしまっしゃろ。
けどそれが売れんで赤字になりまんねん。
ほしたらお母ちゃんが怒って「このどあほ亭主!家族4人飢え死にさす気か!」ちゅうてどつき回してそこら中血の海で真っ赤っか。
え〜?あきまへんか?おいおいちょいちょい。
ちょい!今のもう一遍もう一遍言うてみ。
(2人)「人参の天ぷら売れず血の海が」。
アハハハハハハハハ。
お前それ傑作やないか。
え?よっしゃ。
賞品や。
え?「美紅水」…。
(ノック)わいや開けえ。
(定吉)若旦さんお帰りやす。
(小声で)大きい声出しな。
こっちまんじゅうや。
すしや。
みんなで食べ。
へえおおきに!大きい声出しな言うてるやろ。
すんまへん。
番頭さんおはようさんでございます。
(一同)おはようさんでございます。
(番頭)へえおはようさんだす。
これ太七!荷の上乗ったらあかん!
(太七)すんまへん!定吉。
へえ。
あ…あ…。
(半兵衛)あのあほ息子が…。
わしが動けんようになったのをええ事にでっち手なずけて好き勝手に遊びくさって…。
そやけどなかなか気が利いてまんな。
すしとまんじゅう…辛党と甘党両方に気ぃ配って。
それがこざかしいちゅうてんねや!
(藤子)お兄さんかてそないすぐお父さんの代わりは務まりまへんやろ。
いとさん。
務まらんでは務まりまへんのよ。
跡継ぎがあれでは身代潰してしまいます。
どくされ息子が…。
どこうろうろしてけつかんねん!釜の下の灰まで己のもんや思たら大間違いやぞ!まいど。
(散髪屋店主)あこらこら。
維康商店の若旦さん。
集金に来ましてんけどな。
へえ。
あ…若旦さん自らでっかいな。
へえ。
恐縮な。
ちょっと今すぐ出しますさかい。
ちょっと待っとくなはれ。
すんまへん。
ごめんやす!襟そりお願いします。
へえ。
維康さんほなこれ。
どないでっか?おやじさんの具合は。
達者でっせ口だけは。
ハハハハハ。
中風はな周りのもんがえろおますわなあ。
ほな。
おおきに。
えらい御苦労さんで。
(戸の開閉の音)へえお待っ遠さ〜ん。
はい。
一遍わいの後ついといで。
え?うまいもん食べさしたるさかい。
御飯食べやったらお店に言うてお花代払うてもらわんと…。
銭ならな…たんまりあんねん。
お店の集金でっしゃろ?ええからついといで。
そやけどよう知らん人についていったらあかんてお父ちゃんが…。
あほ!誰が人さらいやねん。
ついといで。

(トランペット)
(店員)お待っ遠さん。
うまいもんて…これでっかいな。
そうかてうまいもんて。
そや。
(混ぜる音)ええんでっか?何がや?お父さん寝ついてはりまんねやろ?若旦さんがこないなとこでお店の売り上げで…。
そやから何や?いずれ店ごとわいのもんになんねん。
(混ぜる音)わてぼんぼん嫌いですねん。
いっつも人の事見下して貧乏ばかにして。
(混ぜる音)けど一番嫌なんは…貧乏暮らしや。
(混ぜる音)わて大阪一の芸妓になったりますねん。
(混ぜる音)ここのライスカレーはな…御飯にあんじょうまむしてあるよってうまい。
こないにうまいもんどこ行ったかて食べられへんぜ。
ええとこの若旦さんが何言うたはりますのん。
ホンマのこっちゃ。
(混ぜる音)わいな娘がいてんねん。
今年で4つや。
そうだっか。
かわいいでっしゃろな。
一遍食べさしたりたい思てんねんけどな。
そないに気色悪いもん食べさしたらあかんて嫁がな…。
食べや。
へえ。
どやうまいやろ?うん…。
出雲屋のなまむしん中で一番うまいんはここや。
ふ〜ん。
何しょ酒しょがよう利いとる。
フッ。
今日は生国魂さんのドテ焼きや。
フフ。
明日は日本橋でたこ食べよか。
安うてもうまいもんはうまい。
高うてうまいもんより偉い。
こないなうまいもん食べんと死ぬやつあほやで。

(笑い声)はっえらい遅なってしもた。
はよ帰らんと。
まだええがな。
そうかて門限が…。
鍵は開いとる。
え?飯炊きのおばはんに閉めるな言うたある。
行こ。
あきまへん。
行こいな!あきまへんて。
ほれ合うた男と女が見つめ合い。
赤い赤いが真っ赤になりけりや。
フフフ。
あほな事言うて。
行こ。
さあそないなつきあいが1年ほど続きましたやろか。
金春喜び。
まだ先の話やけどなあ矢橋屋はんがあんたが一本になる時の旦那になってくれはるて言うてますのやわ。
いずれあんたがこの家を出て自前になる時着物やら帯やらかんざしやら…要するにお金の面倒見てくれはるちゅうこっちゃ。
ハハ…。
(金八)何やその顔。
わてに遠慮せんともっとうれしそうな顔しいな。
あの人…このごろひとっつも来てくれはれへん。
あの人て…維康商店の若旦さんかいな。
お金が底つきはったんやろ。
そやろか。
「金の切れ目は縁の切れ目」や。
変な評判が立たんうちにきっぱりと切れてしもた方があんたのためやで。
しっかりしなはれ!大阪一の芸妓になんねやろ?それともあんたこの道捨ててでも維康はんについていく気ぃか?そのあんたを維康はんは養うていく気ぃあんのんか?は〜。
それも運べ。
へえ。
お兄さん。
お父さんがお呼びです。
「柳吉様。
大分永いこと来て下さらぬゆえしん配しています。
一同…」。
え〜「一同舌をしたいゆえ…」。
舌を?
(小声で)「一度話を」や。
え?「一度話をしたいゆえ」と書いたつもりや。
あっ「一度話を」。
さすがほれたおなごの書く字よう分かってはりますな。
こ…こら若御寮さんえらいすんまへん。
字ぃもまともに書けんような女と何をしとんねや?え!店の集金ちょろまかしてこないな下劣な女に入れ込んで!どないな了見や。
下劣は言い過ぎでっしゃろ。
口答えすな!この!あい!お父さん!情けない。
今度ばかりは打つ殴るの体の自由が利かんのが無念やわい。
若旦さん少々のお茶屋遊びは大店の跡継ぎのたしなみだす。
けどそれはあくまでものれんを守る覚悟あっての上の事。
店の金に手ぇつけておなごと遊び回るてなどだい許されるこっちゃおまへんで!
(園子)もうよろしわ!わて実家へ帰りますよって。
お姉さん落ち着いて下さい。
若旦さんはよ謝んなはれ。
この芸妓とはきっぱり別れると言いなはれ!文子は置いていけ。
これは維康の子やさかいな。
藤子お前が面倒見い。
勝手に決めんなて!柳吉!こんでもうお前はこの家におらいでもええ人間や。
久離切っての勘当や!おう。
あんた…。
おうまあ座りいな。
何で夏の盛りに善哉なんか?何や食いとうなったんや。
どやほれ!似合うか?フフフ。
フフフ高かったやろ。
おおきに。
フフ。
すんまへん。
はい。
わてにも善哉1つ。
は〜い。
ヘヘヘ。
蝶子。
へえ。
駆け落ちせえへんか?へえ。
えっ?いや金の事やったら心配せんでええねん。
今月なまだ集金する金がざっと…400〜500円はある。
そうかて…うちはまだ梅乃屋のお世話になってる身ぃや。
お披露目の時の祝儀やら衣装やら皆おかあさんに前借りしてしもうてる…。
お待っ遠さん!ちょっとすんまへん。
まあ食べえや。
へえ…。
頂きます。
ここの善哉は何で2杯ずつ持ってきよるかお前知っとるか?さあ?何でや思う?一人より夫婦の方がええいう事でっしゃろ?
(汽笛)金春さん三味線のお師匠さんとこにもおりまへん。
河童横丁に戻ってる様子もおまへん。
ええもう。
いちいち戻ってこんでよろし。
見つかるまで捜してきなはれ!
(2人)へえ。
(波の音)なああんた。
うん?わてなこないな日ぃを夢に見た事一遍もあれへんねんで。
フッ。
何やそれ?わては芸妓。
あんたは奥さんも子どももある大店のぼんち。
何で夢に見れましょかいな。
そやさかいこないな事になってびっくりした。
ほんでから…。
うれしかった。
うれしかった。
わてもうほかに何も要らんわ。
あんた?今日も疲れたやろ。
はよ寝ぇや。
へえ。

(三味線と歌声)
(拍手)さすが大阪の芸者さんですわ。
ホント恐れ入りました。
ほな御苦労はんでした。
あ?いやいや…。
じゃ失礼致します。
ちょっと待ちぃな。
何やも…もうしまいかいな?当たり前や。
まだ昼にもなってへんねんで。
今頃お父ちゃんら心配してはるやろな。
黙って駆け落ちなんかしてしもて。
普通は黙ってするもんや。
お茶屋のおかあさんにも申し訳ない事してしもた。
今更何を言うとんのや。
なああんた。
うん?いつまでここにおるつもり?お前と2人どこまでもや。
なああんた。
ホンマにわてと生きていくつもりあんのんか?わてはな親兄弟も仕事も捨ててあんたについてきたんやで。
そんなもん分かっとるがな。
ほなわての目ぇ見て言うて。
うん?何をや?蝶子と生きていくて言うて。
フフフしょうもない。
言うて。
わいは…蝶子と…。
(揺れる音)何や!あっあっ!地震や!あかん!あかん!なんと蝶子柳吉の2人関東大震災に巻き込まれてしまいました。
大震災や大震災!えらい駆け落ちしてもたこっちゃ。
おいおい蝶子はまだ見つからんのか?見たら分かりまっしゃろ。
悪い男に売り飛ばされてたらどないすんねん!お姉ちゃんは考えの浅いところがあるさかいな。
人でも雇て捜さしたらどないや!そんなもん雇う金がどこにおまんねん?そやからそんなもんわいが出したるて言うてんねん!なんぼ必要なんや?言えや。
父ちゃん。
蝶子!蝶子!母さんえらいこっちゃ!蝶子!蝶子!お前何や生きとったんか。
蝶子!母ちゃん!あ〜もうどこ行ってたんや!心配して夜も眠れなんだんやで。
堪忍お母ちゃん堪忍や。
この人…わての…ナニや。
梅田新道の化粧問屋のぼんぼんや。
あ…お越しやす。
何やて?東京に?そやねん。
よう生きて帰ってきたこっちゃな。
えらい大変な思いしたんやな。
いやホンマ何とおわびしたらええやら…。
このとおり。
いやいや…。
どうせ蝶子が無理言いましたんやろ。
わて…。
芸妓やめるわ。
この人かて家戻られへんねんもん。
一緒に苦労する。
蝶子お前のええようにしたらええねん。
おおきに。
うん。
ええようにってお茶屋に前借りしてる分はどないすんのや?それは…。
それは私がおやじに無心して払いまっさ。
はっさよか。
いや…。
そんなにしてもろたら困りまんがな。
あんさんのおとっつぁんに都合悪うて顔合わされしまへんがな。
…さよか。
あ〜あの〜一遍こちらの一銭天ぷらちゅうのを食べてみたい思てましてんけどな。
ホンマでっか?へえ。
あっ早速揚げまっさ!あ〜えらいすんまへんな。
いえいえ!
(天ぷらを揚げる音)毎度おおきに!
(千代太郎)ハハハハハ!花見で一杯や〜!
(おきん)あ〜口惜しい!こっちは月見で一杯といきたかったのに!すんまへん。
こんなん持ってはりました?ホンマにもう!おきんさんのお宅はこちらでっしゃろか?どちらさんでっか?梅乃屋に金春という名前で出とりました蝶子といいます。
金春。
聞いた事あるで。
売れっ子らしいやないかいな。
あ〜あ〜ホンマにもう。
突然すんまへん。
こちらにわてのおねえさんのおねえさんのおねえさんが商売してはるて聞きまして。
おねえさんのおねえさんのおねえさんて人を年寄りみたいに。
ハハハハ年寄りやがな。
やかましいな。
向こう行っとき。
わて梅乃屋やめまして。
何や男でもでけたんか?へえ。
何や図星かいな。
あほらし。
うちの人大店の若旦那やったんですけどわてのために勘当されましてん。
あそらあかん!やめときやめとき。
え?ぼんぼんいうやつはな口ではどない言うてたかて家ていう後ろ盾なしに生きていく覚悟あれへんのやさかい。
そないな事おまへん。
はっそないええ男か。
どうでっしゃろ。
女がかい性つけたかてろくな事あれへんで。
まあええわ。
うちはヤトナの斡旋屋やで。
ヤトナいうたら臨時雇いの芸妓もどきや。
けちくさい宴会かて多いで。
かましまへん。
よろしゅうおたの申します。
(宴会で騒ぐ声)おきんはんの言うとおり出張芸妓のヤトナはえらい仕事です。
お決まりの会費で存分楽しむ腹の不粋な客を相手に息のつく間もないほど弾かされ歌わされくたくたになってるところへ「安来節」を踊らされ稼ぎはせいぜい3円50銭。
あとはご祝儀次第いうとこどすわ。

(三味線)草楽はんまいど。
(草楽)維康さん。
一杯引っ掛けに行きまんのんか?何もやる事おまへんさかいな。
よろしおまんなあ働きもんの奥さんで。
小遣い一日1円でっせ。
けちくさい。
ほな。
・「あついあついと思っていても」・「三月もせぬうち秋がくる」あっ金春ちゃんやないかいな!ちょっとすんません。
あの人お客さんやな。
確か山やったはるて。
あんたヤトナになったんやてな。
うん…。
あほ。
あほやなもう!堪忍。
知らんわ。
金八ちゃん。
大阪一の芸妓にはなれなんだけどわては…。
わてはあの人と日本一の夫婦になる。
なにも前の奥さんの後釜に座るつもりやあらへん。
あの人を一人前の男に出世させたら本望や。
(藤子)お兄さんどういうつもりだすか?あの芸妓はんと所帯持ちはったんだすやろ?しゃあないやないか。
お父さん怒るの通り越してあきれたはります。
(せきばらい)文子おるか?お兄さん!何やねん。
おやじが娘に会うのに許可要んのんかいな。
今はわてが親代わりだす。
何があかんねん。
ええ!ほれた女が芸妓やった。
それの何があかんねん。
あかん事おまへん。
そないにそのお人と一緒になりたいんやったら家も娘もきっぱりと諦めなはれ!フッフッ。
お前妹の分際でようそないな殺生な事言うな。
お兄さんは生まれた時からこの維康商店の跡継ぎと決まったお人。
だらしのない生きようがやめられへんのやったらわてかてお父さんとの間取り持つ事なんかでけしまへん!ただいま。
何やええ匂いやな。
何してんの?うん?昆布炊いてんねん。
昆布?上等の昆布をな細かく刻んで山椒の実と一緒に鍋入れて濃い口醤油をたっぷり使てな松炭のとろ火でとろとろ煮詰めんねん。
戎橋の昆布屋あるやろ。
あそこの山椒昆布と同じぐらいうまいんやで。
ホンマに食い道楽やなあんたは。
なあ。
うん?これ見て。
お前これ…。
ちょっとずつしまつしてためたんや。
たった三月でか!あんたにいつまでも貧乏さしたら「そやさかい芸妓みたいなもんは」てお父さんにばかにされまっしゃろ。
いずれ立派になった姿お父さんに見せてやりましょいな。
な!ただいま。
白菜安かったさかい買うてきたわ。
その山椒昆布でけたら刻んで和えて…。
帰るとこよう忘れんかったこっちゃな!そんなん任しときや。
貯金通帳の場所から何から何まで全部頭ん中入っとるわ。
2晩もどこ行ってたんや!痛い!何や!人の貯金帳持ってなんぼ使てきたんや!痛い痛い!何すんねやおばはん!むちゃしなや!誰がおばはんや!誰の事言うてんねや!痛い痛い!やめてえな!二日酔いで頭暴れとんねん!全部使てきよたんか?あ!全部使てきたん!?あ〜っ!あんたちゅう人は!難波新地にはまり込んでしもてな。
難波新地!?心配せんかてええ。
お前の方がええ女や。
あほんだら!痛っ!あほんだら!痛い痛い!あほんだら!堪忍してくれ!堪忍してくれって何や!あかんあかん!痛い痛い!
(ガラスが割れる音)助けてくれ!あれがどないなお金か分かってるやろ!やめ!むちゃしいな!よう1晩で…。
待ちなはれ!2晩や!どっちゃでも一緒や!このくされぼんち!痛い痛い!堪忍や堪忍やて!何や!何や松ぼっくりみたいに丸なって。
松炭といこしたろか!お前なんちゅうえげつない事言うねん…。
あほんだらあほんだら!わてがどないな思いで…。
どないな事したかておやじの勘当は解けへんわい!もうしまいや。
文子にも会われへん。
もう知らん。

(猫の鳴き声)
(猫の鳴き声)
(春団治)青い空と青い海と松林。
青い青いが青いなりけり。
あんたもどうです?幽霊が!幽霊?柳の下に蚊帳をつり。
(笑い声)
(春団治)何のこってんそりゃあんた。

(足音)なああんた。
うん?うちがもう一遍稼ぐさかいぎょうさんたまったらなんぞ商売でもやろいな。
商売?ほんでそのうち…。
文子ちゃん引き取って一緒に暮らそ。
なああんた。
なんなとお前の好きなようにしたらええがな。
もう。
またそないな気ぃのない事言うて。
飲んだくれ。
たんこぶ作って焼けぼっくい。
赤い赤いが赤いなりけりや。
勘弁してやもう…。
わいはもう赤いの通り越して青うなりけりや。
う〜ん。
や〜もう勘弁してくれ。
あきまへ〜ん。
もうあかんて。
この先まだまだああしてこうしてこうなってそうしてどうしてああなります。
蝶子柳吉2人の道行きどうぞ見届けたっておくなはれ。
はいいらっしゃいませ!お好きな席座っとくなはれ。
竹の子切れてまんねんけどな。
お父ちゃん!お〜文子。
蝶子一遍別れよや。
いとさんの婿にお迎えするお方だす。
えらいこっちゃお母ちゃんが倒れた。
あんたもうどこも行かへん?2015/11/27(金) 00:10〜01:08
NHK総合1・神戸
JOBK放送開始90年アンコール 土曜ドラマ 夫婦善哉(1)<全4回>[解][字]

貧しい家に生まれた蝶子(尾野真千子)は、憧れの芸妓となったのも束の間、大商店の放とう息子柳吉(森山未來)と出会い駆け落ちする。ダメ男とアホな女の流転人生が始まる

詳細情報
番組内容
貧しい一銭天ぷら屋・種吉(火野正平)の娘・蝶子(尾野真千子)は、親の反対を押し切って憧れの芸妓となったのもつかの間、化粧品問屋のぼんぼん・柳吉(森山未來)と出会い、恋に落ちる。放とうざんまいに怒り、父・半兵衛(岸部一徳)は柳吉を勘当。蝶子と柳吉は駆け落ちするが…。柳吉に何度も裏切られ、“踏んだり蹴ったり”の人生だが、蝶子は愛と機転で乗り越えていく。ダメな男とアホな女の笑って泣ける流転人生が始まる。
出演者
【出演】森山未來,尾野真千子,火野正平,岸部一徳,田畑智子,平田満,青木崇高,茂山逸平,桂吉弥,麻生祐未,草刈正雄
原作・脚本
【原作】織田作之助,【脚本】藤本有紀

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

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日本語
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