岩渕⇒高知県の県立高校で行われた生物の授業。
教室の後ろのカメラの映像は遠く離れた分校の生徒が同じ時間に同じ授業を受けているんです。
生字幕放送でお伝えしますこんにちは「くらしきらり解説」です。
ご覧いただいたのはインターネットなどを利用して離れたところで授業を受ける遠隔教育です。
ことしから高校の授業として正式に認められました。
きょうはこの遠隔教育について担当は西川龍一解説委員です。
西川さん、遠隔教育あまり耳慣れませんがどういうものですか。
西川⇒簡単に言うと学校どうしですとか学校や分校をインターネットで結んで離れたところで授業を受けるというようなイメージです。
塾ですとか予備校でサテライト授業、ありますねそういう感じですか。
確かに大手予備校などが有名な講師の授業を離れた教室などで受けられるようなサービスを行っているんですけれど学校教育ですから独自の特徴があります。
学校の授業というのはこれまで通信制を除いて教師と児童や生徒が対面で行うということが原則とされていましたのでこうした授業は認められていませんでした。
文部科学省は今年度から制度を改正しまして全日制と定時制の高校でも36単位まで遠隔教育の授業を認めることになりました。
遠隔教育を導入しました高知県に今月、各地の担当者が集まりまして授業も公開されました。
どんな授業なのか映像でご覧ください。
高知の中心部にある県立追手前高校です。
生物の遠隔授業が行われました。
普通の授業のようですね。
モニターの中にも生徒がいるんですね。
この授業の映像が分校に同時に送られています。
距離はどれくらいですか。
およそ40km離れています。
いの町にあります。
選択科目の生物の授業を分校で受けたのは3人です。
後ろに多くの人がいましたね。
会議に参加した人たちです。
画面には板書をする先生の姿が映っていまして普通の授業と同じように。
生徒があてられたんですね。
そうですね。
今回認められた遠隔教育には2つの条件があります。
同時双方向です。
先ほど見て分かったか思いますが同時双方向で授業が受けられること。
いわゆる生放送のような感じですね。
受信する教室、今回で言うと分校ですけれど、そこにも補助教員を配置するということの2点です。
学校の授業である以上講義を流しっぱなしというわけにはいきません。
生徒が理解しているのか興味を持って受けているのか確認する、先生が分かるということが求められています。
そうした工夫もなされているんです。
どんな工夫ですか。
何か操作しているのが分かりますか。
授業をしている本校の先生の手元にある装置です。
この学校にあるカメラを操作することができるんです。
問題を解いているときにはズームすることができます。
表情が分かりますね。
授業に集中しているか確認することができるんです。
双方の教室には電子黒板があるんですがこれを使うとこんなことができます。
問題を解いていますね。
学習の習熟度を確認するテストを双方の生徒が解いているんですがそれぞれに書き込むと。
両方の黒板に書いたものが映るんですね。
そうすることで先生は分校の生徒の解答もその場で採点をするということができます。
まるで教室で生の授業を受けているようですね。
本来はそういうふうになればいちばんいいわけです。
そもそも、この遠隔教育は少子化が進む中、生徒の多様な教育を受ける機会を確保するということに大きな意義があります。
今回の研究会に参加したのは地図の6県です。
それに北海道の担当者も来なかったんですけれど遠隔会議システムを使って課題などを話し合う研究会議に参加をしました。
これらの自治体には問題があります。
いずれも少子化が進む地方の自治体ですね。
少子化によって学校の統廃合が進んだり先生の数そのものが減らされているという問題です。
参加した自治体以外にも同じ悩みを抱えているところも多いのである意味全国共通の問題とも言えます。
高校になると進路に応じた選択科目が増えます。
同じ理科でも生物や物理や化学、地学などに分かれます。
先生が少ない高校ではそれぞれの専門の先生を配置することができませんので格差が生じてしまいます。
今回、取材した高知県の分校は生物の先生がいないためふだんは化学の先生が生物を担当しています。
遠隔教育は過疎地の教員不足の問題を解決することにもなるわけですね。
ただ実際には遠隔教育はまだまだ多くの課題があることも今回の研究会の中で浮き彫りになりました。
まずは実際に授業を担当した生物の先生の話です。
意識としては、向こうのほうにかなり向きがちになるんですね。
全員でやるということになったらここプラス分校さん全員で授業しているという雰囲気を作りたいですので、そうなるとあんまり向こうばっかりというわけにもいきませんので。
2つの教室を同時に見ますから今までなかった課題が出てくるわけですね。
ハード面とソフト面の課題があるかと思います。
まずはハード面では機材の配置ですとか設定、メンテナンスをどうするのか、専門の教室があればいいんですが地方の高校にはまず、そういう設備はありません。
そのほか例えば分校側の授業の参加者からは教壇の先生が画面からいなくなってしまう。
あるいはモニターを見るためにカメラと違う方向を見ながら呼びかけてくるというときに生徒が戸惑うのではないかということもありました。
また、授業中にトラブルがあった場合ですねネットがつながらなくなってしまうと授業がストップしてしまいます。
ソフト面の課題は何ですか。
機材のトラブルのための人材の確保というのは当然なんですけれど、それに加えまして受信する側の補助教員ですねこちらにも大きな役割があるということです。
授業中の生徒の評価をする人です。
今回行われた授業でも綿密な指導案が作られまして本校と分校の先生どうしがお互いに役割を共有する必要がありました。
場合によっては、会って事前に打ち合わせをすることもあります。
遠隔教育を活用すれば教員を減らせるのではないかという意見もありますけれど、実際には授業を経験してしまうとむしろ人手も手間もより、かかるといった印象です。
さまざまな課題が見えてきましたが、今後どのように進んでいるんでしょうか。
遠隔教育はまだ決まった形はないんです。
今回のような方式のほか例えば教育センターのような拠点から複数の高校に同時に授業を配信する方式を検討している県もあります。
ただ、この方法だと学校どうしのカリキュラムを調整するのが非常に大変なんです。
もう1つ、拠点のシステムがダウンしてしまうとすべての高校で授業ができなくなってしまいます。
そういう問題もあります。
多くの課題はあるものの、高知県の中山間地を抱える地域ですとか、離島を抱える自治体にとっては地理的制約を超えた多様な学びの場を生徒に提供する可能性を秘めた制度であることは確かだと思います。
財政状況は厳しいんですけれど予算的な制約はあるかと思いますが生徒目線でこの授業をどう広めていくのか工夫を重ねてほしいと思います。
西川龍一解説委員でした。
2015/11/27(金) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「課題は何?遠隔教育」[字]
NHK解説委員…西川龍一,【司会】岩渕梢
詳細情報
出演者
【出演】NHK解説委員…西川龍一,【司会】岩渕梢
ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
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