午後のサスペンス「ゆけむりドクター華岡万里子の温泉事件簿」 2015.11.27



(恵美)キャ〜ッ!!〜絶対に泣き寝入りはしないから!〜いや〜っ!!
(華岡万理子)うわ〜っ!あぁ〜ちっちゃ〜い。
手応えあったのに〜。
〜芽衣起きた〜?急がないと遅れるわよ〜!〜さぁ食べよう。
(芽衣)は〜い!〜
(2人)いただきま〜す。
どれどれ?うん今日もよく漬かってる。
少しはお化粧くらいすれば?東京にいた頃はどんなに忙しくてもお化粧だけはしてたのに。
あの頃はね〜寝不足とストレスでお肌ボロボロで人前にスッピンで出られなかったの。
でも今じゃ芽衣だってお母さんだってお肌ツルツルでしょ?無農薬野菜食べてゆっくり温泉に浸かってるからよかったね〜この村に越してきて。
〜ハンカチ持った?持った。
体操着は?持った!ねぇお母さんあたしのこといくつだと思ってるの?もう5年生なんだからね。
燃えないゴミね。
いってきま〜す!いってらっしゃ〜い。
フフフ。
〜おはようございま〜す!
(桃井)お…おはようございます。

2年前に最愛の夫を亡くしたあと私は東京を離れこの村の診療所で医師として新しい生活を始めました。
病弱だった娘の芽衣も今ではすっかり元気になりここの生活に慣れてきました
(仙吉)こんな高いものはおばちゃんの口に合わないの。
(患者)これはね…。
無理むり…。
おはようございま〜す!
(仙吉)おはようございます!
(仙吉)先生!今日もおきれいですね〜!村長も相変わらずお世辞が上手。
あぁ嬉しい。
いやお世辞じゃないですってば!
(青田富士子)相変わらずスケベだしね〜。
いい歳して!
(仙吉)いい歳関係ないでしょ!きれいなものはきれい。
ねっ!
(赤木)先生!!あのお客さんが露天風呂で…!ちょっと…お願いします!ちょっと…!どうしました?
(樋口)めまいがして…それに動悸も…。
(節子)ゆうべからだるかったそうです。
ちょっといいですか?〜貧血ですね…動けますか?運びましょう。

(咳込む声)ホントにありがとうございました。
大したことなくてよかったです。
(カメラのシャッター音)ちょっとあんた!なんなの!?
(大沢)いやあの…僕は別に…。
あぁ…取材の方?
(大沢)えぇ…先日お電話差し上げました大沢です。
女将の津島節子です。
よろしくお願いいたします。
こちらこそお世話になります。
あの取材って?伝統の湯治場百選ってタイトルで旅行雑誌に体験記事を書くことになりましてね。
じゃあこの宿雑誌に載るんですか!?
(大沢)えぇ。
すごいじゃないですか女将さん!でも本当によろしいんでしょうか?こんなひなびた宿で…。
うちはこのとおり昔ながらの湯治の宿で従業員もここにおります赤木だけ。
食事の支度も布団の上げ下ろしもすべてお客様にお任せなんですが…。
(大沢)それがいいんですよ。
自炊だと料金が安いし近頃じゃ若い人たちの間で1泊2日くらいのプチ湯治が流行ってるんです。
プチ湯治?プチ湯治だとプチ家出だの今の若い人はなんでもかんでもお手軽なのね〜。
あのぅそちらのお二人は?診療所の華岡万里子先生と看護師の富士子さんです。
万里子先生がいてくださるおかげでうちはもう安心してお客様をお迎えすることができるんですよ〜。
なにしろ先生は外科医でありながら温泉療法医の認定を受けてらっしゃるんですから。
温泉療法医?患者さん一人ひとりの症状や体調に合わせて泉質や入浴方法をアドバイスするんです。
へぇ〜温泉療…。
(咳込む声)大丈夫ですか?〜はいいいですよ〜。
喘息は子供の頃から?えぇ長いつきあいです。
死にかけたこともありますよ。
だったら温泉の入りすぎはよくないので気をつけてください。
発作が起きる場合ありますから。
えっ?そうなんですか?症状は人によってそれぞれですけど。
あ…ちょっと待って。
なんですか?それ。
(大沢)ボイスレコーダー。
録音機。
こんなちっちゃいのが!?今どきはなんでも小型化されて便利になりましたよ。
それからこれが…デジカメ…先生も1枚撮っちゃおうかな?
(カメラのシャッター音)O.Tって何?大沢哲也のイニシャル。
ずいぶんかわいいじゃない。
(富士子と万里子の笑い声)商売道具の手帳とボイスレコーダーとデジカメそれにね喘息薬と…吸入器だけは肌身離さず持ち歩いてるんです。
(大沢)寝るときも枕もとに置いて…。
〜あぁ〜いい気持。
いつ来てもいい眺めだなぁ。
この村の取り柄は景色と温泉くらいなもんよ。
仕事の帰りに露天風呂入れるなんて東京じゃ考えられない贅沢。
うん…。
あら?芽衣ちゃんは?さっき診療所から電話したんだけど寄り道かな?〜そんなにどんぐり拾って何するの?内緒!〜
(昭三)300円ね。
ちょっと待ってこれ持っていきな。

(昭三)さぁ次はどなたかな〜?
(節子)昭三さん。
(昭三)はいまいど〜!お願いしてたビールと日本酒持ってきてくれた?もちろんですよ〜香織ちゃんのお祝いでしょう?私もお相伴にあずかるんだから。
(客)これくださ〜い。
はいはいはい…。
(大沢)あぁ…。
すみません…。
足…どうかなさったんですか?古傷です。
若い頃事故に遭って…。
もしかして…女将さんも訳ありですか?えっ?温泉の効能なんかより他人の訳あり人生のほうがよっぽど興味深いんですよね〜。
(香織)ただいま!
(節子)おかえり。
(杉山)すみません遅くなってしまって…。
えぇえぇ。
首を長くしてお待ちしておりました。
(仙吉)え〜本日は一陽舘の一人娘津島香織さんと未来の県知事杉山貴之君の婚約披露パーティーにお集まりいただき誠にありがとうございます!
(拍手)
(仙吉)こちらにおります香織ちゃんの婚約者杉山貴之君がとうとういよいよ県会議員選挙に出馬することになりました〜!
(拍手)
(仙吉)香織ちゃんとこの村の将来を託せるのはこの人しかおりません!ぜひとも来たる投票日にはこの杉山君に清き1票を清き1票をお願い…。
まずいか?これ以上言ったら…。
杉山さんってステキな方ですね。
えぇ。
もう香織にはもったいないくらいで…。
香織ちゃんがお嫁にいったらこの宿どうするんですか?あたしの目の黒いうちは赤木さんと2人で守っていくつもりなんですけどね。
樋口さんもうお加減よろしいんですか?はいおかげさまで…。
(昭三)どうも女将さん。
(昭三)ホントに本日はおめでとうございます。
(節子)ありがとうございます。
皆さんもご苦労さまです。
あれ?あんたどっかで会ったことあるな。
会ってますよ!昼間あなたから自炊用の食材買ったじゃないですか!あぁっ!お客さんだ。
失礼いたしました〜!昭三さん飲み過ぎですよ。
いいんだよ。
俺東京の人間あんまり好きくねえから!昭三!あんたんとこの家系はみんな血圧高いんだから気をつけないと。
フンッ!いいですよ私はどうせ長生きなんかしたくありませんからね〜だ!おい村長!いってきます…。
5年前に女房に逃げられてからすっかりヤケになって…。
昭三さん結婚してたんですか!?ああ見えても最初はラブラブだったんですよ嫁さんと。
ところが結局「こんな田舎は嫌だ」「東京へ行く」って置き手紙残して。
そんな…こんないい村ないのに〜。
こんばんは〜。
あ桃井さん!遅かったじゃない!
(桃井)すみませんお客様をご案内してきたものですから。
(光代)人殺し!
(桃井)へっ?人殺し!?
(光代)人殺しのくせにどうしてこんなところにいるの!?
(光代)どうして自由でいられるのよ!?
(光代)返しなさい息子を!悠一返してよ〜!!
(桃井)落ち着いてください!
(光代)返しなさいよ〜!!
(光代)人殺しよこの人は!!
(光代)待ちなさい!
(光代)逃がさないわよ!絶対逃がさないから〜!!
(光代)返せ〜!!どっかで見たことあると思ったら赤鬼だ…。
赤鬼!?えぇ。
赤鬼と書いて赤鬼赤鬼吾郎。
リングネームですよ。
(大沢)20年前プロボクサーだったんです。
あの男ねたしか3年前傷害致死事件を起こして執行猶予付きの判決が出てたはずだ…。
こんなところにいたんだ…。

(大沢)すみませ〜ん!どなた?寺田光代さんですよね?亡くなった息子さんのことでお話をお伺いしたいんですが…。
驚いたなぁ。
先生…。
プロのボクサーだったんですって?…お聞きになったんですね?事件のこと。
少しだけ。
怖くないんですか?俺のこと…。
赤木さんのことだもん…よっぽど事情があったんでしょう。
殺すつもりなんかなかったんです。
でも…。

(女性の悲鳴)嫌よ!おろすなんてできない!あなたの子なのよ!!
(恵美の悲鳴)いや〜っ!!
(ノック)どうしました!?
(ノック)大丈夫ですか!?〜
(赤木)何やってるんだ!?
(悠一)くるな!〜いや〜っ!!〜すぐに救急車を呼んで病院に運んだんですが間に合いませんでした…。
そのこと女将さんは…?ご存じです。
ここに来た日にすべてお話ししました。
事件のことで週刊誌に騒がれて行き場を失ったことも…。
そしたらここで働かないかって言ってくださって…。
でも…もういられません。
出ていくつもり?このままここにいたら女将さんに迷惑かけることになりますから…。
いやでもそれじゃああなたもあのご婦人も永遠に救われないわ。
女手ひとつで苦労して育てあげたのに…。
この世でたった1人っきりの息子だったのに…。
あいつは死人に口なしとばかりに自分に都合のいい証言ばかりして罪を逃れたんです!俺…いったいどうしたら?〜受け止めるしかないんじゃないかなぁ。
あのご婦人の苦しみを…。
〜善人面したあいつの化けの皮を剥いで刑務所にぶち込んでやります!息子の汚名を晴らしてやりたいんです!協力しますよ。
(スイッチを切る音)え…?
(小鳥のさえずり)
(剣道の掛け声)胴!面!もうお帰りですか?
(客)ええ…だってほら…ねぇ…。
お気をつけて。
女将さんあの…お客さん…。
やっぱり赤木さんのことで?
(大沢)おはようございます!大沢さんお帰りになるんですか?いえ…僕はちょっとヤボ用で。
温泉の体験取材がまだ残ってますからね。
あさってには戻ります。
それじゃ。
(節子)いってらっしゃいませ。
申し訳ありません。
俺のせいで。
出ていくなんて言わないでよ。
あなたがいなくちゃこの宿はやっていかれないんだから。
逆ですよ!その男がいるからこの宿はやっていけなくなるんです!潰すくらいなら私に売ってもらえませんか?え?いえね私東京で不動産屋やってるんです。
温泉の権利も込みでそうだなぁ…3,000万円でどうでしょう?…お断りします。
買い手があるうちに手放したほうが利口だと思いますよ。
こんな状況じゃねぇ。
この宿も…赤木さんも女将である私が守ります。
女将さん…。
(雨音)
(落下音)〜順調に回復してますね。
もう温泉に入ってもいいですかね?あはい!ただ長湯には気をつけてくださいよ。
一陽舘大変らしいですね。
じゃ…。
お大事に。
寺田さんっていいましたっけあのご婦人。
今日でもう3日ですよ。
いつまでいるつもりなんでしょう?富士子さん…私赤木さんに余計なこと言っちゃったかも。
え?あのご婦人の苦しみを受け止めろなんて…もし取り返しのつかないことになったらどうしよう。
(桃井)先生!先生大変です!露天風呂で死体が!死体!?どうして…?
(犬丸)おい!警察関係者以外立ち入り禁止だぞ!何やってんだ駐在…誰?この人。
こちら診療所の華岡万里子先生。
警察の委託医としてこの地区内での死体検分をお願いしてるんです。
警察の委託医…。
華岡ですよろしくお願いします。
こちら長野西署の犬丸刑事です。
じゃあ早速見ていただきましょうかね。
はい。
(犬丸)どうせまた心臓発作か何かでしょう。
よくあるんだ。
一杯やって温泉につかってそのままポックリ。
まぁ迷惑な話ですよ。
〜少なくとも急性心不全ではなさそうですね。
だったらなんですか!?溺死のようです。
まぁどっちみち事件性がないっていうことには変わりはないでしょう。
お風呂場で眠りこけてる間に溺死。
これもよくある話ですよ。
遺体最初に発見したのは?俺です。
どうしたの?その痣。
ゆうべちょっと階段から落ちて。
そう…。
昭三さん発見したとき遺体触った?はい。
最初は眠ってるのかと思ったもんで。
〜昭三さん居眠りしてると溺れますよ
(赤木)名前呼んでも返事がないもんでで…肩に手をかけたら…。
初めて息をしてないことに気がついて。
慌てて女将さんのところに。
桃井さんにはあたしが電話をしました。
そうですか。
(犬丸)ハハハッ…先生!刑事ごっこ始めようっていうんですか?いいかげんにしてくださいよ。
死因は溺死なんでしょう?でもどうして溺死したんでしょう?は!?赤木さんが昭三さん発見したとき顔はお湯につかってなかった。
記憶違いじゃないの?いやたしかに顔はお湯につかってませんでした。
それに昭三さんはいつもカラスの行水でした。
それなのに…お風呂で居眠りするなんておかしいわ。
だから一杯ひっかけてたんですよ。
血圧が高かったから脳溢血か何か…。
あぁそれだそれ!先生すぐに診断書を書いてくださいよ。
書けません。
は!?遺体を司法解剖してください。
まさか…これ事件なんですか?いえ…まだそれは。
(光代)殺人事件ですよ。
この男が殺したに決まってます。
この男は人殺しなんだから!人殺し!?いいかげんにしてください!!あたしも人の親です。
子供さんを亡くされたあなたのお気持はお察しします。
でも…でもあんまりです!だいたい3年前の事件ではあなたの息子さんのほうにも…。
申し訳ありませんでした!どうしたら許していただけますか?俺なんでもします!なんでもしますから教えてください。
どうすればいいのか…。
お願いします!だったら…息子を返して。
できないんだったらあんたも死んでちょうだい。
そんな…!この男はね親に捨てられて育ったんですよ。
あんたが死んだってどうせ悲しむような親はいないんだから!〜昭三さん本当に殺されたのかも。
あなたまでどうしてそんな。
だって見ちゃったのよゆうべ。
お前よ…いつまでここにいるんだよ!お前のお陰で客がみんな帰っちまったじゃねえか!こっちは商売上がったりだよ!馬鹿野郎!
(殴る音)あ…!いや俺…。
なんだよ…なんだよその目は。
おぅ殴れよ…殴れよ!殴ってみろよ!殴れねえのか…ハハハッそうだよな。
今度暴力事件を起こしたら…刑務所行きだもんな。
執行猶予が取り消されてよ…ハハッ。
そうならねえうちに早くこっから出てったほうがいいんじゃねえのか?
(香織)まるで鬼みたいな顔してたわあの人。
その話ここだけの話にしといてちょうだい。
どうして?そんなことが寺田さんの耳にでも入ったらまた何を言い出すかわからないじゃない。
火に油を注ぐようなものよ。
解剖して死因がはっきりすれば赤木さんへの疑いは晴れるんだから。
(小鳥のさえずり)
(芽衣)焦げてる焦げてる!
(焼ける音)あぁ…!また何か考え事?
(桃井)はい中ノ沢駐在所。
あ桃井さん?診療所の華岡です。
おはようございます。
どうかなさったんですか?あの…実はつきあっていただきたくて。
こんなお願い急にしてもやっぱり無理ですよね…。
とんでもない私でよろしければぜひ!ごめんなさいね。
解剖なんかにつきあわせちゃって。
いえ…とんでもない。
でもどうして?あぁ私昭三さんの主治医だったし自分の目で死因確かめておきたくて。
桑原さん!
(桑原)やあマリちゃん!ママリちゃん!?
(桑原)久しぶり。
芽衣ちゃん元気?はいお陰さまでもうすっかり。
ああそりゃよかった!あ駐在所の桃井巡査です。
医大の先輩で執刀医の桑原顕介さん。
あ…初めまして。
よろしく。
あの…桑原さんご結婚は?あ?あぁそれがまだ独り身でしてねぇ。
はぁ〜。
そういえばマリちゃんは?え?華岡が亡くなってからもうすぐ6年だろう。
再婚の予定はないの?とんでもない!そんなこと考えたこともないですよ!それよりすみません。
解剖に立ち合わせてほしいなんて出しゃばったお願いしちゃって。
いえいえとんでもない!主治医に立ち会ってもらえればそれだけ正確な状況を把握できるからね。
(犬丸)こっちはいい迷惑ですよ!どんないい腕を持ってるか知らないけど解剖につきあわされるなんて…。
こちらの華岡先生は2年前まで東京の大学病院に勤務して監察医もやっていらっしゃいましてね。
僕なんか足元にも及ばないほど優秀な外科医ですよ。
おまけに美人だしね。

(桑原)よろしくお願いします。
でマリちゃんの所見は?外方から見るかぎり溺死と思われますが窒息死による溢血点もありません。
アルコールを摂取してた可能性もないとは言い切れませんがそれよりも両腕の擦過傷が気になります。
(桑原)うん…風呂の中だと生活反応が判然としないからな。
佐々木さんふだんから血圧が高めでしたから考えられるとすれば脳内出血くらいかと…。
了解。
じゃ始めましょうか。
よろしくお願いします。

(倒れる音)桃井さん!?
(桑原)貧血でしょう。
情けねえなぁ。
(咳込む声)
(吸入音)あ…ごめんなさいね。
先生急に用事ができて休診なんですよ。
いえ…診察じゃなくてちょっとお話を伺えないかと。
あたしに?
(犬丸)脳溢血でしたか?いや病死ではないようです。
(犬丸)じゃあ事故死?その可能性もきわめて低いと思われます。
じゃそれじゃ…!まさか!〜お帰りですか?ええ。
いくら事故でも人ひとり亡くなった宿でゆっくり湯治する気にはなれませんから。
慌てて帰るとあらぬ誤解を招きますよ。
もともとは2週間滞在する予定だったんでしょう?あと1週間残ってるじゃないですか。
そりゃあよかった。
事件が解決するまで関係者の方にはこの宿にとどまっていただきたい。
事件!?解剖の結果昭三さんの気管支に泡沫があったことから生きてるときに水を吸い込んだ…。
つまり直接の死因は溺死でした。
ただ問題なのは溺死した理由です。
血液検査でアルコールが検出されなかったので飲酒による居眠りの可能性はありません。
ふだんからカラスの行水だった昭三さんがお酒も飲まないのにお風呂のなかで眠ってしまったと思えませんしそれに遺体の両腕には露天風呂の縁にぶつかってできたと思われるすり傷がありました。
おそらく第三者と争って抵抗したときにできた傷だと思われます。
まあ要するに亡くなられた佐々木昭三氏は何者かに殺害されたということです。
(犬丸)え〜…赤木さんが遺体を発見したのが昨日の午後3時頃。
解剖の結果佐々木昭三さんの死亡推定時刻は午後1時から3時までの間でした。
その間皆さんはどちらに…?どうぞ。
僕の場合3日前から東京に行っててちょうど昨日の午後2時頃こちらに戻ってきたんですけどね。
宿に着いてから騒ぎが起こるまで自分の部屋で休んでました。
(犬丸)どうぞ。
(樋口)私も自分の部屋にいました。
(犬丸)どうぞ。
(光代)私は…この男が佐々木昭三さんの後を追って露天風呂のほうに行くのを見ました。
(節子)嘘です。
その人は個人的な感情からそんな嘘を…!
(犬丸)お静かに!
(犬丸)赤木さん佐々木さんの遺体を発見する前どちらに?裏の畑にいました。
それを証明してくれる人は?いや…いません。
亡くなった佐々木さんはこの男を村から追い出そうとしていました。
頬にあるその痣も佐々木さんに殴られてできたんです。
(犬丸)事実ですか?確かに村から出て行くように言われました。
殴られたのも事実です。
でもだからって殺してなんかいません。
本当です。
(犬丸)わかりました。
女将さんは大の男を無理やり力ずくで溺死させるなんて無理だとは思いますが…。
皆さんにもお伺いしてますんで一応…。
1人で帳場におりました。
そうですか…。
いやご協力ありがとうございました。
赤木さんにはもう少し詳しくお話をお聞きしたいので署までご同行願えますか?わかりました。

(柏手)
(香織)ねぇやっぱり赤木さんが昭三さんを?え?役場に来た人たちが噂してたのよ。
赤木さんが警察の人に連れていかれるのを見たって。
ただ事情を聞かれてるだけよ。
逮捕されたわけじゃないわ。
それより香織…。
赤木さんが昭三さんに殴られたこと寺田さんに話しした?いいえ。
本当に?言ってないわよ。
あたしそんなに意地悪くないわ。
あっそうよねぇ。
じゃあどうして…。
(光代)何なんですか?お話って。
昭三さんの死亡推定時刻赤木さんが裏の畑にいたことご存じだったんじゃないんですか?どういう意味でしょうか?寺田さんこの宿にいらしてからずっと赤木さんのこと監視…。
あっいえ…見てらしたって聞いたもんですから。
だから赤木さんが昭三さんに殴られたことも知ってらしたんですよね?だとしても四六時中見ていたわけじゃありませんからね。
たとえ見ていたとしてもあんな男のためにアリバイを証言する気持はありません。
寺田さん…。
(犬丸)ずいぶんと恨まれたものだなぁ。
3年前の事件のこと警視庁に照合して調べさせてもらったよ。
寺田光代ってあのばあさんに人殺し呼ばわりされたおかげで宿の客はほとんどみんな予定を切り上げて帰っちまったそうじゃないか。
宿の客相手に商売をしていた佐々木昭三にとっては死活問題だ。
あんたに村から出ていってほしいと思うのは当然だな。
(犬丸)けど前科もんで肉親のいないあんたにとってあの宿以外に行く場所がない。
そこで佐々木昭三と再びトラブルになり露天風呂で溺死させた。
元プロボクサーのあんたなら片手だってやれるだろう。
やってません…。
本当にやってないんです!あんた以外佐々木昭三を殺害する動機のある人間はいないんだよ。
(自転車の走行音)女将さん!赤木さんまだ?
(節子)ええ。
おかえりなさい。
桃井さん。
容疑晴れたんですか?いえ証拠不十分ってことで返されただけで…容疑が晴れたわけでは…。
申し訳ありません。
俺のせいで…。
謝る必要はありませんよ。
あなた無実なんだから。
(桃井)それじゃあ私はこれで…。
(節子)それじゃ…。
〜その後何かわかりました?
(大沢)ええおかげさまでね。
何がわかったんです?残念ながらあなたが知っても何の価値もないことです。
どういうこと?僕にもやっと運が向いてきたってことですよ。
ハハッ…。
あぁそれから3年前の事件のことですけどひどい話ですよねぇ…。
エリート医師だったあなたの息子さん…。
医局長のご令嬢との結婚が決まると妊娠3か月だった恋人に中絶を迫り拒否されると殴る蹴るの暴行を加えたあげく包丁まで突きつけた。
どうしました?
(大沢)赤木さんが助けに入らなければ殺人犯になっていたのは息子さんのほうかもしれませんよ。
そんなの嘘よ!あのふしだらな女と赤木の作り話に決まってる!だからあなたに真実を調べてほしいってお願いしたんじゃありませんか!裁判で明らかにされたことは真実でした。
正直僕赤木さんに同情しちゃいましたよ。
フッ…それじゃ。
曲げますよ〜。
腰ひびきますか?
(樋口)いやそうでもないですよ。
だいぶよくなりましたね。
もう着ていいですよ。
ありがとうございま〜す。
この肩の火傷の痕どうなさったんですか?あぁ女房にね煮えたぎったやかん投げつけられたんですよ。
(富士子/万里子)やかん!?どうして?また…。
そりゃほら…。
あぁ…浮気ね。
おかげで罰が当たったんでしょうね。
このざまですよ。
だったら当分治らないほうがいいんじゃないですか?きついねぇもう!
(笑い声)でもねここの温泉は何でも治してくれますよ。
肩の火傷もここで治したんですから。
じゃあ一陽舘には?2度目です。
初めて来たのはたしか5年前だったかなぁ。
5年前?
(樋口)ええ。
おだいじに!どうもありがとうございました。
(扉の開閉音)
(芽衣)こんにちは。
こんにちは〜。
あぁ芽衣ちゃんおかえり。
(芽衣)ただいま。
お母さんは?先生!は〜い!あぁおかえり!どうしたの?見て!!これ。
あららら…。
すぐ手を洗ってきなさい。
あっ目触っちゃ駄目。
どうしたんです?この花毒あるんですよ。
目に入ったら失明しますよ。
えぇっ!?この花源泉の近くに咲いてたけどそんなに危険なんですか?チョウセンアサガオっていってね華岡青洲という医師が日本で初めて麻酔を作るのに使った花なんですどねその薬を作る過程で実験台になった母親は死に妻は失明したっていういわくつきの毒草ですよ。
へぇ〜この花がねぇ…。
ちょちょっと…危ない危ない!!どうしたんですか?顔色悪いですよ。
ええ最近いろんなことがあったから疲れたのかしら?
(読経)
(仙吉)しかしまぁおめえも不憫なやつだよなぁ。
恋女房を寝取られたあげくに最後はよりによって殺されちまうなんて…。
(泣き声)寝取られたってどういうことですか?あっいや…見ちまったらしいんだな。
その…かみさんが男とナニしてる現場。
ナニってまさか…。
そういうこと。
じゃああの奥さんが村出てった理由って…。
昭三のやつあれで案外気のちいせえ男でさ見て見ぬふりをしようとしたんだ。
けどその翌朝かみさんは離婚届と置き手紙を残してドロン。
相手の男性と一緒に?たぶんな…。
あのその男性ってこの村の人ですか?いや一陽舘に泊まってたよそもんらしい。
じゃ湯治のお客さん?ああ。
昭三のやつ居たたまれずにすぐに現場から逃げ出したって言ってたから…男の顔までは確かめられなかったらしいけど。
ただその男の肩口に真新しい火傷の痕があったってそう言ってたな。
火傷の痕?樋口:ああ女房にね…どうかした?あっいえ…。
(富士子/桃井)ええっ!?しっ!声が大きい。
だって昭三さんの奥さんを寝取ったのが湯治客の樋口さんかもしれないだなんて…。
やっぱりありえないか…。
昔一緒に駆け落ちした女性の元ご亭主がいる土地にもう一度湯治しに来るなんて…。
普通の神経ならできませんよ。
僕なら無理だ。
でもあの樋口ってお客さんだったら…。
えっ!?だってほらいかにも女好きって感じだしそれに駆け落ちっていったって男のほうは遊びだったかもしれないでしょ?だとしたら平気で来られるかもね。
5年も経ってるし…。
でも昭三さんにとっては昨日のことのように生々しい記憶だった。
もしかして樋口さんが昭三さんを殺害したと?いやそれはわからないけどももし昭三さんが露天風呂で樋口さんと一緒になったとしたら…。
お互い裸のわけだから当然肩の火傷の痕に気がつきますよね。
自分の奥さんとドロンした男が樋口さんと知った昭三さんは5年前の事実を確かめたくて…。
トラブルになって殺された。
念のため捜査本部に報告しときます。
でも仮に今の推理が事実だとしてもこれを裏付ける方法があるかどうか…。
目撃者でもいれば別なんですけどね。
目撃者か…。
〜《昭三さんがお風呂にいたときの目撃者は樋口さん?赤木さんは発見者》《光代さんと大沢さん…》〜
(振り子時計の鐘の音)
(杉山)何してるんだ?貴之さんこそ帰ったんじゃなかったの?いやそうなんだけど途中で引き返してきたんだ。
赤木さんのことが気になってさ。
やっぱり僕しばらくここから事務所に通おうかと思って。
もしまたこの宿で何か起こってあなたが事件に巻き込まれるようなことにでもなったら…。
だからよけいに君のそばにいたいんだ。
心配なんだよ。
(香織)貴之さん…。
さぁいこう。
こちらに泊めていただくことおかあさんにお願いしないと。
それが見当たらないのよ。
さっきから捜してるんだけど…。
赤木さ〜ん!おはようございます。
(赤木)おはようございます。
(赤木)どうした?ん?あげる!ありがとう。
いってきます。
いってらっしゃい。
いってらっしゃい。
あの子ね生後3か月くらいからひどい皮膚炎に悩まされて学校も休みがちでどうしてもっと健康な体に産んであげられなかったのかって。
でもよかったですね。
芽衣ちゃんすっかりよくなって。
赤木さんとこの村のおかげよ。
温泉だけじゃなくて水も空気も食べ物もこの村全部があの子を癒やしてくれた。
あたし自身もね。
それに東京いるときよりもずっと長い時間芽衣のそばにいられるし。
芽衣ちゃんは幸せだな。
先生みたいに優しくて強いお母さんがいてくれて。
(笑い声)
(ブレーキの音)先生!はい。
大沢さんが…大沢さんが2階の部屋で!
(サイレン)
(シャッター音)
(犬丸)遺体には窒息した症状が見られる。
ホトケさんには気管支喘息の持病があった。
他に何か不審な点ありましたか?枕もとにあったはずの喘息の吸入器がないんです。
枕もとに吸入器がなかったから発作を起こしたが吸入できずに死亡した。
筋は通ると思いますがね…。
吸入器どこに?いやぁそれは知りませんよ。
あの大沢さんの所持品は?
(鑑識)これで全部です。
やっぱありませんね吸入器。
それにデジカメボイスレコーダー手帳もないわ。
何なんですか?デジカメとかボイスレコーダーって…。
大沢さんのお仕事道具です。
(犬丸)あそういやホトケさんの仕事フリーライターでしたっけ?喘息の吸入器と一緒にいつも持ち歩いてるっておっしゃってました。
それも無くなってるということは…。
誰かが持ち去った?おい!宿の関係者を全員集めろ!
(桃井)はい!あの…私たちがここにこうして集められたということは大沢さんは病死ではなく他殺だったということなんでしょうか?あなた方は?この宿の娘で香織と申します。
村役場に勤めております。
私は香織さんの婚約者で杉山貴之といいます。
杉山さんは今年の県会議員選挙に出馬されるご予定なんですよ。
だから?え?議員だろうが誰だろうが捜査には関係ない。
…ですよね。
大沢哲也さんの遺体を最初に発見したのは寺田さんあなたでしたね。
(光代)ええ。
何時頃どういう状況で発見されましたか?ちょうど朝8時に向かいの部屋で目覚まし時計のアラームが鳴り始めていつまでたっても鳴り止まないものですからどうしたのかと見に行ったら亡くなってらしたんです。
先生いつ頃亡くなったのかわかりますか?恐らく昨夜22時から24時の間かと思われます。
その時間あなた方はどちらに?私は部屋にいました。
私はお風呂です。
10時くらいに部屋を出て11時過ぎまで。
部屋を出るとき大沢さんは浴衣姿のまま外へ出ていかれましたけど。
外へ?1人で?
(光代)ええ。
赤木さんはどちらに?お俺は…。
私の部屋に一緒におりました。
下手にかばうとあなたも偽証罪に問われることになりますよ。
いえ本当です。
私の部屋で肩を揉んでもらってたんです。
大沢さんはその男の過去についていろいろ調べていました。
佐々木昭三さんが亡くなる2日前この宿の取材を中断して東京へ行ったのもそのためです。
何か人に知られたくない秘密でもつかまれて人を殺したに決まってます!嘘です!寺田さんはまた嘘をついてるんですわ!嘘じゃありません!この男は人殺しじゃないの!いい加減にしてください!アリバイ確認続けます。
あなた方はどちらへ?杉山さんと2人で私の部屋にいました。
残念ながらどなたのアリバイも成立しないということですね。
昭三さんの事件…その後進展はありましたか?現在裏付け捜査中です。
じゃ!…行こうか!女将さん赤木さんをかばってるんでしょうか?桃井さんも女将さんが嘘をついてると?はい!赤木さんを見ていてなんとなく…。
正直な人だからね…赤木さん。
(赤木)女将さん俺やっぱり。
駄目よ!余計なことは考えないで。
あなたは何にも悪くない。
悪いのはこの私なんだから。
(香織)あの夜お母さんは家中どこを捜してもいなかったわ。
赤木さんと自分の部屋にいただなんてお母さんどうして嘘なんか…。
まさかお母さんが大沢さんを?どうしてお母さんが大沢さんを殺さなきゃならないんだ?お大事に。
〜今日はあと1軒山ジイのとこだけです。
あはい。
〜光代:大沢さんはその男の過去についていろいろと調べていました…〜うわぁ!あぁ!あ〜あ〜あ〜…。
さっきから何考えてたんですか?ボーっとして。
いえね寺田さんが気になることを言ってたんですよ。
大沢さんが赤木さんのこといろいろ調べてたみたいだから何か秘密掴んでたんじゃないかって…。
まああの大沢って人はいろいろ調べまわってましたからね。
私のところにも来ましたよ取材だとか言って…。
そうなんですか?ほら先生が昭三の解剖に立ち会った日。
突然診療所にやってきて一陽舘の女将さんが津島の家に嫁ぐ前のことを知らないかって根掘り葉掘り!津島の家に嫁ぐ前?まあ私が知ってることと言ったら昔女将さんが交通事故で大怪我されて同時にその事故で当時の旦那さんを亡くされたってことくらいですけどね。
女将さん再婚であの家に嫁がれたんですか?そう…その事故のリハビリで一陽舘に湯治にきて先代に見初められたんですよ。
何でも身寄りがないとかで東京から身ひとつで来たって話ですけど…。
大沢さんにいまの話…。
ええ…。
湯治場100選の紹介記事に女将のプライベートなんて関係あるんですかね〜ハッ…。

(湯音)ああ…。
今朝は大変でしたね。
ええ…。
実は私も6年前に事故で主人を亡くしてるんです。
えぇ?女将さんも最初のご主人…事故で亡くされたんですよね。
ええ…見た目は強面だったけど心根の優しい子供みたいに純粋な人でした。
そうですか。
あの…赤木さんのことなんですけど。
3年前の事件のあと女将さんがここで働くように勧めたとか…。
ええ。
以前からお知り合いだったんですか?20年前赤木さんはボクシングの試合で再起不能の重傷を負って私の宿にリハビリに来たご縁で…。

(鳥のさえずり)
(万里子/仙吉)よいしょ…よいしょ!
(仙吉)よっこらしょっと!…しょ!あぁ〜!あとひと息だ!もういいかな!もう大丈夫だろ!丁寧にね折れないように気をつけてよ!よいしょ!おお見事!ああ!立派な長芋だ!
(桃井)先生!
(桃井)大沢さんの司法解剖の結果が出ましたよ。
あそう!先生が心配してらしたとおり死因は喘息の発作ではありませんでした。
ええ!?原因はまだ特定できてはいませんが…呼吸困難に陥った末最終的には急性心不全で死亡したようです。
急性心不全?〜ちょっとすみません。
ま万里子先生!先生これ!あの芋…家に届けとく!チョウセンアサガオです。
はい調べていただけますか?よろしくお願いいたします。
(芽衣)ただいま!あ!おかえり芽衣ちゃん!おかえり。
ただいまこれ落し物。
あ!ありがとう。
これ!?芽衣これどこで拾ったの?〜ここ。
ここに落ちてたの。
そう…。
大沢さん亡くなった晩ここに来てたのね。
じゃあ10時頃1人で宿を出ていくのを見たっていう寺田さんの証言は本当だったんだ。
じゃ殺されたのも…ここ?でも遺体が発見されたのは宿の部屋ですよ。
もし仮にここで殺されたんだとしたら犯人は大沢さんを殺害後遺体をわざわざ宿まで運び布団に寝かせたことになる。
これいったい何のために?自然死に見せかけようとしたんじゃないかしら?偽造工作ってことですか?大沢さん気管支喘息の持病があったでしょ。
布団の中で死んでれば病死と診断される。
そう思ったんじゃない?だとしたら犯人は大沢さんに喘息の持病があることを知っていた人物か。
(芽衣)ねえ!これ見て!〜この包丁…。
一陽舘のだ。
桃井さん明日お休みでしたよね。
ええ。
お願いしたいことがあるんですけど。
〜礼!
(管理人)先生!一陽舘から電話です!女将さんが倒れたって!〜
(犬丸)ああ先生!女将さんなら上で横になっておられますよ。
何かあったんですか?家宅捜査です。
先生が見つけてくださった例の包丁から指紋が検出されたんですよ。
女将さんのね。
(香織)大丈夫なんでしょうか?心労が祟ったんでしょう。
無理せずに休養すればすぐよくなりますよ。
(犬丸)いやぁ〜大したことがなくてよかった。
横になられたままで結構ですから少しお話を伺えませんか。
お話なら変わりに私が伺いますが…。
先生には関係ないでしょう。
でもあの包丁は私が見つけたんです。
おかげで犯人を逮捕することができそうですよ。
そうでしょうか?あの包丁は犯人を特定する決定的な証拠にはならないと思いますが…。
なぜ?大沢さんの遺体には外傷がありませんでした。
包丁が凶器として使われていないんです。
第一女将さんが大沢さんの遺体を宿まで運べるはずないじゃないですか。
確かに…でも赤木さんなら軽々と運べるんじゃないですかね。
ねえ赤木さん!どうして私と赤木さんが大沢さんを殺さなきゃならないんですか?大沢さんは東京で…赤木さんが起こした障害致死事件について調べていました。
女将さんの過去についても嗅ぎまわっていたそうじゃないですか?あなた方お二人は大沢さんに何か弱みを握られていた。
そこで口封じのために共謀して大沢さんを殺害!病死と見せかけるための偽装工作をしたあと秘密が記録されている取材道具一式を盗み出した。
違いますか!?…違います。
〜主任!見つかりました!
(犬丸)どこに?
(捜査員)庭に停めてあった車の中に。
ただデジカメとボイスレコーダーのデータはすでに消去されています。
(犬丸)だろうな…車の持ち主は?
(杉山)わ私です。
でもどうしてそんなものが…私の車の中にあったのか私にはまったく…。
(犬丸)言い訳は署のほうで聞かせてもらうから!
(香織)お母さんどうしよう!大丈夫。
何かの間違いよ…すぐに戻って来られるから。
でも!大丈夫よ!心配しないで!〜
(樋口)この宿を?ええ。
そりゃ構いませんが…。
何しろ2度も殺人事件が起きてますからね…あまり高値はつきませんよ。
結構です。
はいもしもし華岡診療所です。
どうでした?…あやっぱり。
検査結果は犬丸さんにも?ああそうですか。
ありがとうございます。
(戸が開く音)
(桃井)万里子先生わかりましたよ!ごめんなさいねわざわざ東京まで…。
とんでもない。
先生のためならどこへでも。
え?あいや!あの例の件…先生が予想したとおりだったようです。
ああそう…。
それに大沢哲也も赤木さんが育った養護施設を訪ねていました。
じゃあやっぱり大沢さんも知ってたのね。
ええ!
(節子)万里子先生!
(戸の開く音)あ女将さん!先生助けて!吾郎が吾郎が死んでしまう!〜いったい何があったんですか!?
(赤木)俺が自分で刺しました。
しゃべらないで!診療所へ運ぶから桃井さん手伝って!あはい…。
結構傷深いなぁ。
ラインとりましょう!〜
(赤木)先生…大沢さんを殺したのは俺です。
お願いです…このまま死なせてください。
嫌よ!絶対に助けるわ!どうします?輸血用の血液届くの1時間かかりますよ。
このままオペします。
輸血せずに!?出血を最小限に抑えて短時間でオペするしかないわ。
先生助かるんでしょうか?大丈夫です。
助けます絶対に!〜じゃ始めましょうよろしくお願いします。
正中切開します。
はい。
〜結紮します。
ケリーで引いてください。
はい。
〜さぁ抜きましょう。
出血するから驚かないで。
はい。
〜もうこれ以上出ないわ。
吸引してください。
〜洗浄しましょう。
はい。

(扉が開く音)
(節子)先生…。
大丈夫ですよ手術は成功しました。
あぁ…ありがとうございました。
今はまだ眠ってますから麻酔が醒めるのを待ちましょう。
はい。
女将さんと赤木さん…実の親子だったんですね。
え…?養護施設の園長さんが目撃してたそうです。
園長:あぁ…どうした?大丈夫?はいおいでおいで。
もう大丈夫だからね。
はい泣かないよ〜施設の前に生まれて間もない赤木さんを置いて走り去った女性が大きく片足を引きずってたのを…。
〜女将さんが母親だってこと赤木さんは?知りません。
言えませんでした。
私は…この子を捨てたんです。
それに…。
故意ではなかったにせよ赤木さんは人を殺した。
赤木さんと香織さんは父親が違っても兄妹。
もしその事実を杉山さんが知ったら…。
選挙を目前に控えてる彼は香織さんとの結婚を白紙に戻すかもしれない。
だからどうしても秘密が守りたかった…香織さんのために。
違いますか?そのとおりです。
私は香織のために秘密を守り通そうとしました。
でも…あの男が…。
大沢:秘密を買っていただきたいんですよ。
あなたがこの宿に嫁ぐ以前の大切な秘密を金額は1,000万円。
そんな大金うちにはありません。
もし用意できたとしても一度で済むとは思えなかった。
杉山さんが夢を叶え県会議員になったとき私の秘密にはもっと高額な値が付くに違いないと…。
私がお金を払えなかったら今度は娘の香織がゆすられる。
殺すしかないと思いました。
じゃああの包丁は…。
えぇ…私が宿の調理場から持ち出しました。
あの男を殺すために…。
〜金は用意できましたか?えぇ。
〜ど…どういうつもりだよ?節子:…あっ。
(大沢)人殺し…。
(赤木)ちょっと待ってください!何があったんですか!?
(大沢)人殺し!!
(赤木)ちょっと待ってください!
(赤木)落ち着いて大沢さん!
(大沢)人殺し〜!
(赤木)大沢さん!大丈夫!大沢さん!
(大沢)助けてぇ〜!!落ち着いて…落ち着いて!〜大沢さん。
大沢さん!
(赤木)大沢さん!またやっちまった…。
〜違う…。
違う…。
殺したのはあなたじゃない…。
殺したのは…この私なの…。
私なのよ…
(節子)自分のために我が子を殺人者にしただなんて認めたくはなかった。
だからこの事実をなかったことにしようと…。
大沢さんを吾郎に背負わせて宿の部屋に運びました。
大沢さんには喘息の持病があった。
病死に見せかけられるかもしれない。
解剖されたとしても窒息死なら他殺と証明できないはずだと思って…。
(節子)大沢さん殺害の容疑が杉山さんにかかると…吾郎は自首すると言い出しました。
私が…どういうわけで大沢さんを殺そうとしたのかその理由も聞かずに。
杉山さんに無実の罪をかぶせるわけにはいきません。
俺自首します。
待って。
女将さんはこの事件に関係ありません。
大沢さん殺したのは俺だから!待ってちょうだい!
(節子)私はもう二度とこの子を…吾郎を捨てたくはない。
香織の幸せのために吾郎を見捨てることはできない。
(節子)だから…吾郎を逃亡させることにしたんです。
一陽舘を樋口さんに売ったお金を持たせて…。
樋口さんに一陽舘を?他にまとまったお金を作る方法がありませんでしたから。
吾郎が安全な場所に落ち着くのを待って真犯人は吾郎だったと警察に告白するつもりでした。
時効まで…何が何でも吾郎を守り通す覚悟で…。
それなのに…。
赤木さんなぜ自分で?実は…。
〜行かせない!あんたを自由にさせるくらいならあたしが!
(節子)やめて!!〜あっ!あぁ…どうして…!どうしてこんなことに…!人殺しは…俺だけで十分です…私は取り返しのつかないことをしてしまった。
こんな優しい子を人殺しにしてしまった…。
赤木さんは人殺しなんかじゃありませんよ。
え…?たしかに大沢さんは呼吸困難の末に死亡しました。
ただその原因に問題があるんです。
どういうことなんですか?お帰りですか?
(樋口)はい。
(桃井)事件はまだ解決していませんよ。
解決したも同然でしょう。
犯人はもう身柄を拘束されてるんですから。
いいえ。
犯人なら今私の目の前にいます。
昭三さんを殺したのも大沢さんを殺したのも…樋口さんあなたですね?ハハハハハ…。
どうして私が?5年前昭三さんの奥さんと不倫関係にあった男性の肩口には真新しい火傷の痕があったそうです。
ついさっき犬丸刑事から連絡がありましてね昭三さんの元奥さんあなたのことよ〜く覚えていたそうですよ。
だとしても私が昭三さんを殺したってことにはならないと思いますが?えぇたしかにあなたの犯行を裏付ける証拠はないはずでした。
殺害現場を大沢さんに目撃されてさえいなければ。
口封じのために…あなた大沢さんを殺害した。
証拠は?証拠はあるんですか?最初に大沢さんの死亡を確認したとき瞳孔が異常に開いてたのが気になってました。
なぜ瞳孔が異常に開いてたのか…その原因にもっと早く気づくべきでした。
チョウセンアサガオに含まれる有毒成分が作用したのだと。
大沢さんの死因はチョウセンアサガオの有毒成分を摂取したことによる呼吸困難及び急性心不全でした。
あなたチョウセンアサガオに強い毒性があることを知ってましたよね?そしてその季節はずれのチョウセンアサガオがどこに咲いていたかも。
あの花に毒があることは有名な話なんでしょ?他にも知ってる人間がいたんじゃありませんか?目撃者がいたんですよ。
私は…樋口さんが源泉のそばでアサガオに似た花を摘むのを見ました。
(桃井)待て!!〜うわっ!!〜やぁっ!!〜やぁっ!あぁっ!!〜佐々木昭三殺害から話してもらおうか。
殺すつもりなんかなかったんですよ!でもあの男が…。
おい!お前だったのか…人の女房盗みやがって!!
(樋口)何言ってんだよ!さちこだよさちこ!俺の女房だよ!!それじゃお前!そうだよ!〜
(カメラのシャッター音)その現場を大沢に見られていたわけだ。
えぇ…。
話ってのはいったい何だよ?実は買っていただきたいものがありましてね。
買っていただきたいもの?これなんですがね…〜口封じのためにチョウセンアサガオを飲ませた…。
どうやって飲ませた?あの晩大沢がどこかへ出かけていくのを見て…。

(樋口)チョウセンアサガオの絞り汁をポットに入れ…。
(樋口)大沢の部屋のポットと入れ替えました。
喘息の薬を必ずポットの水で飲むと思ったからです。
(樋口)大沢の仕事道具を盗み出して自分の部屋で大沢の帰りをじっと待っていると…。
…はっ!!
(咳込む声)〜うっ…!〜
(樋口)大沢が息絶えるのを見届けてからやつの部屋のポットを戻しました。
(犬丸)大沢の仕事道具を杉山の車の中に隠したのもお前だな?
(樋口)はい。
家宅捜査が入ったので慌てて…。
(ノック)はい。
主任。
杉山貴之釈放だ。
はい。
(カラスの鳴き声)万里子先生から全部聞いた。
ごめんね…。
杉山さんにも本当にご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
どうか…どうか香織のことだけは…。
はい。
私たち3人でしっかり生きていきます。
3人で…?昨日わかったの。
3か月だって。
おめでとう香織さん。
まぁ…。
ありがとう…杉山さんありがとう。
ん…。
気分はどう?どうして死なせてくれなかったんですか?医者だから。
それにやってもいない罪を背負わせたままあなたを死なせるわけにはいかないわ。
え…?大沢さんを殺害したのはあなたじゃない。
樋口さんなの。
あなた大沢さん失神させただけだったのよ。
じゃあ俺…。
あなた人殺しなんかじゃないわ。
それともう1つ…どうしても伝えておかなければいけないことがあるの。
あなた独りぼっちなんかじゃない。
ちゃんと母さんがいたのよ。
え…?この3年ずっとあなたの側にね。
(赤木)3年間ずっと俺の側に…。
ごめんね。
(節子)ごめんなさい。
42年前女将さん最初のご主人亡くされたの。
ご主人…産気づいた女将さんを車で病院に運ぶ途中道に急に飛び出してきた子供を避けようとしてガードレールに…。
女将さん奇跡的に命を取り留め搬送された病院で赤ちゃんを産んだ。
それが赤木さんあなたよ。
でも病院を退院するとき女将さん左足が不自由になってたの。
頼るべき身寄りもいなかった女将さんは産まれたばかりのあなたをたった1人で育てていくなんてできなかった。
だから養護施設の前にあなたを。
許してほしいなんて思わない。
恨まれて当然だもの。
でもね…でもこれだけはずっと伝えたかった。
憎くて捨てたんじゃない。
かわいくてかわいくてしかたがなかった。
それなのに…。
ごめんなさい。
万里子先生…。
なに?やっぱり俺死んじまったのかな?女将さんみたいな人が俺の母親だったらどんなに幸せだろうって一陽舘に来てからずっとそう思ってた。
(赤木)そしたらホントにそうだったなんて夢見てるみたいだ…。
死んでなんかいないわよ。
ほら温かいでしょ。
〜母さん。
本当に母さんなんだね。
吾郎!吾郎…。
〜加藤さん!その後調子どうですか?
(加藤)だいぶよくなりました。
あ〜よかった!また。
ぽんちゃ〜ん!
(村人)こんにちは。
あこんにちは!サトイモ作ったんでね。
あほんとう!?じゃあ貰う。
123…いい?こんなに。
はいはい。
どうもありがと!いつもすみません。
芽衣喜びます。
芽衣宿題終わった?漢字の書き取り終わったら終わり。
うん。
後で遊びに行ってもいい?あ!ちょうどよかった手伝ってよねぇ!手伝ってよ。
終わったら。
え?終わったら!早く早く!よいしょ!はぁ。
はいここ置いて。
はい。
漬けましょう!〜
(桃井)あれ〜?もう野沢菜漬けの季節ですか。
あ〜桃井さんちょうどいいところに来た!
(富士子)はい手伝って!あぁ!!なんだ!この重い石。
ちょっと…腰が!あ〜腰痛い!大丈夫?
(富士子)色男ねぇアハハ…!
(桃井)力ありすぎですよ!あっ!まだあった〜!2015/11/27(金) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
午後のサスペンス「ゆけむりドクター華岡万里子の温泉事件簿」[字][解]

温泉旅館で起きた殺人事件!女将の過去が事件と何か関係が!?

詳細情報
番組内容
湯治宿『桃源』の露天風呂で、移動販売業の村人・佐々木昭三の遺体が見つかる。解剖の結果、死因は溺死。両腕に誰かと争った跡とみられる擦り傷があった。前科のある従業員の赤木が疑われるが、女将の節子は赤木を庇う。数日後、事件の裏を嗅ぎ回っていた大沢も殺される。温泉療法医として『桃源』に勤める万里子は、宿の客・樋口が昭三の元妻の不倫相手だと知る。さらに、節子が再婚で宿に嫁いだという過去も明らかになり…。
出演者
華岡万里子…かたせ梨乃
 青田富士子…三林京子
 寺田光代…佐々木すみ江
 桃井真太郎…寺門ジモン
 佐々木昭三…石立鉄男
 犬丸剛…渡辺哲
 赤木吾郎…遠藤憲一
 大沢哲也…松澤一之
 桑原顕介…倉石功
 津村節子…星由里子   ほか
原作脚本
【脚本】野口ゆかり
監督・演出
【監督】村田忍

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
解説放送あり
サンプリングレート : 48kHz

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