(八卦見)明治39年の6月丙午やのう。
(蝶子)へえ。
ほほう〜あんた八百屋お七やな。
え?八百屋お七え!・「はだか馬にと乗せられて白い襟にて顔隠し」・「わたしゃ十五で丙午」分からへん?はい。
分からんならまあええけど。
あの〜男はんは?明治27年11月。
明治27年ね。
こっちも午やな。
あんた苦労しましたやろ?せいでかいな。
うちの人梅田新道の大店のぼんぼんですねんけどわてのために勘当されましてな。
わては芸妓やめてヤトナになってあの人食べさせてきましてん。
ようよう2人で関東煮屋開きまして割と繁盛したんですけど間の悪い事にうちの人腎臓患いまして。
わてはヤトナに逆戻り。
入院から手術からあげく湯崎温泉の養生の費用まで稼ぎました。
それがどないでっか!うちの人温泉で芸妓揚げて騒いでましてんがな!向こうの言い分いうのんが「お前がそないしてかい性の上にどっかり腰据えて偉そうに物言うのが気に入らん」とこうですわ!わてもう…情けないやら悔しいやら…。
それでも男と女ちゅうもんは分からんもんでんな。
結局2人して大阪へ戻ってきましてん。
あの人は養生せんならんさかいまたわてがヤトナしてるとそないな始末ですねんけどこれからわてらどないなりまっしゃろか?は…あんたようしゃべりまんな。
わてら2人天下晴れて夫婦になれまっしゃろか?…見てみまひょ見てみまひょね。
へえ。
はいはいはい手相でいきまっか?は〜この手相…。
やっぱり認めてもらえまへんのやな。
うちの人のお父さんにわては最後まで…。
いやいやいやお父さんはな…。
フン!何やこんなもん!当たるも八卦当たらぬも八卦!天下晴れて夫婦と認められるまでこれまで以上に気張ります。
おおきに。
かえって元気出ましたわ。
あのね…あのちょっとま…まだ話終わってまへんで。
(草楽)それ何をしてまんねん?
(柳吉)これね滋養剤ですわ。
まだそないなもん飲まななりまへんのか。
それがまた甘すぎてまずいさかいちょっと酒で割らしてもらいまっさ。
週に一遍はね病院で注射も打ってまんねん。
そら大変でんなあ。
へえ慣れたらどっちゅう事おまへんわ。
あんたやおまへんのや。
奥さんが大変言うてまんねん。
甘っ!ホンマ御苦労なこっちゃ。
(金八)金春ちゃんやないかいな。
金八ちゃん!こないな御馳走久しぶりや。
…恥ずかしい話やけど御馳走目の前にしてわて一生懸命頭ん中で金勘定してる。
まだ維康さんといてんのんか?あんたも懲りへんな。
こないなったら意地や。
なああんたなんぞ商売する気はあれへんか?え?1,000円でも2,000円でもあんたの要るだけのお金は無利子の期限なしで貸すよって。
フフ。
あの時誓い合うたやないかいな。
いつかおかあさん見返したろて。
それにはあんたにも出世してもらわな困んで。
フフフ。
おおきに。
「地獄で仏」とはこのこっちゃ。
おおきに。
ハハハハハ。
人を勝手に仏さんにせんといてんか。
食べよう。
腹が減っては戦はでけへんで。
はい。
おおきに。
頂きます。
(お多福)持つべきもんは芸妓仲間。
羽振りのええうちの本妻に納まった金八はんがえらい助け船を出してくれました。
おいしい!「おおきに。
この恩は一生忘れへん」。
そない言うて蝶子はんカフェーを開く事にしました。
ちょっと日本趣味なんやないか?もうちょっとモダンにした方がよかったんちゃうんか?そんなんそこらの安カフェーと同じや。
それにな…。
ほれ。
おおっ!お前これも買うたんか!そうや。
お前はええ友達持っとるなあ!ヘヘヘ。
(レコード)いらっしゃいませ!らっきょさん!またよろしくたのんまっせ。
(らっきょ)そら女将のサービス次第やなあ。
嫌やわマダムって呼んでんかいな。
マダム。
おばはんおばはん!マダムや。
マダム。
マダムって呼んで言うのが分からへんのか!一遍ぐらい呼んでみマダムいうて。
油はねる言うねん!一遍でええから一遍でええから!はよ戻らんかお前!
(種吉)むつまじいなあ。
お父ちゃん!何やの?そないなとこから。
表から入ってきてえな。
いや構へんねん。
今酒持ってくるよって。
いやいや構へんねんて。
いやそうかて…。
無理強いすな。
何やの!もうホンマに。
はよ戻らんかいな!・
(女給)マダム!お願いしま〜す!呼んどるがな。
は〜い。
ちょっと待っといてや。
いらっしゃ〜い!どうぞ!はよ突き出し持ってかんかい。
へえ!蝶子はんと柳吉はんのサロン蝶柳。
あ何か手伝いまひょか?あ〜結構です結構です。
あっという間に押しも押されもせぬ店となりました。
(菊代)旅館で仲居の仕事してた事がありますさかい客あしらいはうまい方や思います。
ここ羽振りのええお客さん来はりまっか?けちくさいのんは嫌でっせ。
フフ。
ハハ…。
(田村)菊代ちゃんここ座りいな。
あっちのお客さんに呼ばれてますねん。
ちょっと…ええがな。
チップ弾むさかい。
な。
もうしょうがおまへんなあ。
フフフ。
(おきん)どうもあの菊代いう子だけは身持ちが悪そうやな。
わてもそない思て迷ったんでっけどえらいべっぴんやさかい雇いましてん。
いらっしゃいませ!こんばんは。
いや〜師匠珍しい。
来てくれはったん。
蓄音機があるて聞きましてなええのん持ってきましたんや。
え〜っ?
(レコード三味線)
(草楽)・「三味線の三の糸ほど」・「苦労をさせて」・「いまさら切るとは」・「バチあたり」ハハハハハ。
ハハハハハ。
何やこら。
あんたはんの声やないかいな。
千日前の大阪劇場で10インチ1円の吹き込み料で吹き込んでもらえまんねんがな。
ハハッそら知らんかったな。
一杯やりまひょ。
どうぞ。
そやけどよう来てくれはりましたな。
(桐介)定七。
(定七)へえおはようさん。
ふけとりの注文は済みましたんか?それが…朝から電話がつながりまへんで…。
言い訳しなはんな。
電話があかなんだら足運んだらよろし。
へえ!佐七。
いつまで帳面つけてまんのや。
(佐七)すんまへん。
時間を無駄にするもんは金を無駄にすんのと一緒だす!そないなもんは維康商店には要りまへんで。
(一同)へえすんまへん。
ほな行て参じます。
(一同)お早うお帰りやす。
(藤子)みんな御苦労さんやな。
頂き物のおまんじゅうあるさかい休憩の時食べなはれ。
(番頭)若旦さんはようやってくれてはります。
(せきこみ)少々言いようのきついとこはおますけど皆気ぃ抜かんと働きよりますし。
若御寮さんが気配りのでけるお人でっさかいまあええ具合に回っとりますわ。
(半兵衛)そうか。
あのあほのおった時分とはえらい違いや。
(レコード流行歌)なああんた。
ん…。
一遍文子ちゃんに遊びに来てもらわれへんやろか。
お母さんも亡くならはったいう話やしいつかは3人で暮らしたい思てんねん。
おばはんそれでええのんか?え?前の嫁の子ども育てられんのんか?前の奥さんの子やあれへん。
あんたの子や。
何であんたの子育てられへん事あろかいな。
(文子)お父ちゃん!?おう文子!何してんの?元気しとったか?うん…。
どや?学校の方は。
おもろいか?うん…英語習てんねん。
英語!フフそらまたハイカラやな。
難しいさかい藤子叔母ちゃんに教えてもろてんねん。
あ〜藤子はなお父ちゃんと違て賢いさかいな。
文子。
うん?どないや。
一遍お父ちゃんの店遊びに来えへんか?行けへん。
何でや?お父ちゃんのお仕事がカフェーやなんて学校のお友達に恥ずかしい。
それだけか?お父ちゃんと一緒にいてはる人と会いたない。
うちあの人嫌いや。
お母ちゃんいつも言うてはった。
「悪い女の人にお父ちゃん取られた」て。
そやない。
そやないねん。
悪いのはお父ちゃんや。
あの人の事かばうお父ちゃんはもっと嫌いや!あ…文子!お帰り。
おうただいま。
おきんさんいつもおおきに。
かめへん。
ちょっと客の入り落ちてんのと違うか?分かりまっか?通い詰めてたお客さん何でや知らんしばらくたったら急に来んようになりますねん。
何ででっしゃろ?いらっしゃいませ!
(一同)いらっしゃいませ!信一!奉公人の身でこないなとこ来て。
小河童に知られたら何言われるか!
(小河童)小河童言うな。
わっ。
ただ裏のど貧乏が生意気にカフェーやっとる言うさかい見に来たったんや。
いらっしゃいませ。
何であんた連れてきよったんやろか?
(信一)最初はなんぞ口実がないとよう来えへんのやろ。
おい。
あんたホンマに蝶子と夫婦になる気あんねやろな。
どちらはんでっか?聞いて驚くな。
わいは河童横丁一の材木屋の主や!お前と同じぼんぼんや。
小河童。
痛っ!やめてんか。
何でやねん。
お前かてはっきりさせてほしいやろ。
ええからやめて!座ってんか。
はよ!声がでかいねんあんたは。
菊代ちゃん。
あんたちょっと来て。
あんたどこ行ってたんや?休憩に行く言うたきり2時間も戻ってけえへんやないかいな。
すんまへん。
今日だけやあらへんで。
これまでかて何べんもあんた…。
(菊代)お客さん初めて見る顔でんな。
菊代いいます。
よろしゅうに。
飲んではります?帰る!来たとこやおまへんか。
やかましいわ。
ど貧乏どもと違てなわいは忙しいねん!支払いは旦はんに付けときまっせ。
おお勝手にせえ。
(戸の開閉の音)あんたソーセージ。
ん。
いらっしゃいませ!いらっしゃいま…。
ちょっとあんた。
こんばんは。
いらっしゃいませ。
はい突き出し。
どうぞ。
文子…。
何や気になったみたいで。
立派なしつらえですね。
よう繁盛してはるみたいやし。
おおきに。
オレンジジュース持ってきてんか。
ああわいがやるわ。
藤子さんはお酒…?いえお構いなく。
2つな。
うんうん。
あんたあれ作ったら?あれって何や?ローストビーフのサンドイッチやがな。
ああうんうん…。
文子ちゃんのお父ちゃんなそないにハイカラなもん作らはんねんで。
すぐでけるからな。
文子ちゃん音楽好きか?うちな蓄音機あんねん。
レコードもぎょうさんあんねんで。
聴こか?うん?聴く?ええか。
フフ。
(戸が開く音)
(一同)いらっしゃいませ!いらっしゃいませ。
田村さん久しぶりやおまへんか。
え?菊代ちゃん…。
何やあんたかいな。
さっき誰とどこ行っとったんや?あんたには関わりのないこっちゃ。
こないだの旅館からほかの男と出てくるとこ見たんじゃ!わいだけやあれへんかったんか?何や今度はこのおっさんたらし込む気ぃか?
(菊代)うっとうしいな。
帰ってんか。
何やと?ちょっと痛っ!何すんねん!キャ〜!大丈夫でっか?何やこら!田村さんやめなはれ!せっかく来てくれたのにえらいとこ見してしもたな。
そっちの勝手口から出れるよって。
気ぃつけて帰りや。
ほなあんたちょいちょい店抜け出すのはなじみの客をくわえ込んでたちゅう訳か。
ちょろいもんでっせ。
頭悪そうな客選んで横座ったらええねんさかい。
なるほど。
通い詰めてはったお客さんらが来んようになる訳や。
外で会うねやったらここへ来る必要あれへんさかいな。
言うときますけどわてだけやおまへんで。
え?あんたらかてわて見習うて一遍や二遍そないな事してるやろ。
なあ!ホンマか?すんまへん!そないせなわてらのお客さんも皆菊代はんに取られてしまいますさかい。
(おきん)その筋に分かったらえらいこっちゃで。
たまたま今日はあのらっきょたらいう新聞記者がおらんで助かったこっちゃ。
あんたら皆クビや。
明日から来んでよろし。
そ…そんな…マダム!金輪際やりまへんさかい!このサロン蝶柳にそないなあさましい了見のもん置いとく訳にいかへん!大層でんなあ。
たかが場末の安カフェーやおまへんか。
場末の安カフェーでもわてには命より大事なもんや!この店持つまでにいろんな人に迷惑かけた。
心配かけた。
助けてもろた。
元はといえば皆わてのわがままや。
わてがうちの人と離れられへんかったさかい。
わてはわてのわがまま通す。
この店捨てる事はわての人生捨てんのと同じ事や。
この店汚すもんはわての人生汚すやっちゃ。
とっとと出ていきなはれ!出ていきなはれ!お父さんお願いがあります。
お兄さんと蝶子さんの事認めてあげて下さい。
何を言いだしますのんや。
維康の家に戻したってくれとは言いません。
お金をあげてくれとも言いません。
ただ…2人を夫婦と認めるとお父さんの言葉をあげてほしいんです。
あ〜あえらいとこ見られてしもたなあ。
よりによって藤子さんと文子ちゃんが来てる時に…。
まだ言うてんのんか。
今更取り繕うたかてどないしようもあれへん。
お父さんの具合どないなん?ようないとは聞いとる。
もう10年は寝ついとるさかいな。
さよか…。
ちょっと…。
何や?どないしたんや?何願うとんねん?わての願いはこの10年ず〜っと一つや。
このままでは嫌や。
このままでは…。
(雷鳴)文子ちゃん…。
お父ちゃん!すぐうちへ来て下さい!な…何やどないしたんや?早う!おじいちゃんの病気が悪いんです。
早う!分かった。
な!すぐ用意するから外で待っとき。
わても。
車呼んで!
(女給)はい。
お前はここにおれ。
何で?今は顔出さん方がええ。
今はて…。
もう次はないかも分からんのでっしゃろ!縁起でもない事言いな!万一の事あったらわてらこの先もずっと夫婦になれまへんねんで!わいが枕元で頼んだるさかい。
晴れて夫婦になれるようおやじに。
きっとだっせ。
お父さんがうんと言うたらすぐ知らせとくんなはれ。
飛んでいくさかい。
(女給)車来ました!ほな頼むで。
若旦さん!
(桐介)困りまんなあ。
廃嫡されたお方にこの家の敷居またがれましたら。
(時計の時報)ボンボンボンボンボン。
それから4日がたちました。
いや〜呉服屋せかしたせかした!いつ死んでもおかしない言うさかいに。
そないな事言うてまへん。
言うてたんと同じや。
あないに血相変えて「おきんさんそろいの紋付き3日であつらえてくれるとこあれへんやろか!」。
もう言わんといておくんなはれ。
ハハハハハ。
(戸が開く音)こんにちは!あら菊代ちゃんどないしたんや?どないて。
カフェーに客が来たらあきまへんか?まだ開店前や。
堅い事言わんとちょっと雨宿りさせてえな。
あれからわて客に拾われましてな。
めかけになりましてん。
さよか。
マダム。
わてマダムに尋ねたい事ありますねん。
何や?マダムかてマスターの事略奪しはったんでっしゃろ?略奪て…。
わての旦那詳しおましてな。
梅田新道のぼんぼんやったマスターが売れっ子芸妓やったマダムと出会うて勘当されて奥さんと子ども捨てはって。
なんでもマスターのお父さんが許してくれはれへんそうでんな。
けどもう死にかけてまんねやろ。
死んだらこっちのもんやてマダムそない思てまんねやろ。
どっちがあさましいんでっしゃろな。
先生。
おやじ…。
おやじ。
わいや。
柳吉や。
目開けてえやほら。
おやじ。
番頭…。
へえ。
(半兵衛)後の事頼んだで。
へえ。
桐介…。
へえ。
維康商店はお前にかかっとる。
承知しております。
定七も…桐介の言う事よう聞いてな。
へえ。
何やねんな…。
わいにも何か言うてくれや!そら許してくれとは言わんがな。
そやけど最後にもう一遍わいを息子や思てくれ!おやじから息子に何か言うたってくれや!藤子…。
はい。
文子をしっかり育てえや。
はい。
文子…しっかり勉強してな。
そういう了見か。
ぼん…。
もうええわい!勝手に死にさらせ!このくそおやじ!恨むのは筋違いだっせ!何やねん!お父さんが息子と思てくれはらへんのやおまへん。
あんたさんが!お父さんを父親として死なしてやらへんのだす!父親にしてやらへんのだす!
(桐介)お父さんの無念に比べたらあんたさんの思いなんぞなんぼのもんでっか!あんたさんがお捨てになったんは家だけやおまへん。
お父さんの…お父さんの息子を思う気持ちかわいいと思ういとしいと思う…。
そやさかい厳しせなあかん思う親心。
それをあんたさんは踏みつけにしましたんや。
あんたさんはたった一人の父親いうもんを捨てましたんや!
(泣き声)もしもしサロン蝶柳です。
維康です。
おばはんか?・はい。
今な…おやじ死んだ。
さよか…。
そらご愁傷さま。
ほなわてすぐそっち行きまっさ。
紋付きも2人分でけてまんねん。
・そらあかん。
え?お前は葬式に顔出さん方がええ。
お前は来るな。
わては行かん方がええて…。
そらどういう…。
どういうこっちゃ?・あんた?もしもし?
(泣きながら)すまん…蝶子。
・もしもし?聞こえまへんで。
すまん…。
おやじすまん!もしもし?もしもし?・とにかくお前は来るな!
(電話が切れる音)もしもし?もしもし?
(菊代)アッハハハハハハハ!傑作でんなあ。
やっと邪魔もん死んだいうのに葬式にも出させてもらえへん。
人の事見下したような言いようしといてマダムこそご立派なわがままたらいうもん通したあげくが一人の男にも認めてもらえへんやおまへんか。
フフフとんだお笑いぐさでっせ!アハハハハハハハハ!あ〜あ。
ハハハハハ…。
おきんさん…。
えらい手間取らせてしもて悪おましたなあ。
すんまへん。
独りにさせとくんなはれ。
(雨の音)
(小河童)蝶子は?
(らっきょ)何や具合悪い言うて2階で休んどるらしいで。
マスターのおやじさんが亡くならはったんやて。
え?
(戸が開く音)いらっしゃい!マスター戻らはったんでっか!すぐ出る。
紋付きどこや?おい。
おい!おい!何で一人で行くねん。
おい何で蝶子連れていけへんねん。
おい待てや!
(レコードの針がはねる音)
(草楽)・「三の糸ほど」やっぱり夫婦になる気ぃないっちゅう訳かこら!おい!・「苦労をさせて」・「いまさら切るとは」
(小河童)おいおい!おいどこ行くねんおい!・「バチあたり」待てや。
(レコード三味線)
(草楽)・「三味線の」・「三の糸ほど」キャ〜!えらいこっちゃ!医者や!医者呼べ!窓開けえ!窓開けえ!医者!医者呼べ!おばはん!しっかりせえ!おばはん!おばはん!しっかりせんか!
(せきこみ)頂きました!あほ…あほお前!らっきょやめえな!お前向こう行け!はいもう一枚!やめんかい言うてんねん!・「切るとはバチあたり」
(女)この人かいな。
(男)おおえらい美人やろな。
(女)何やな!お待っ遠さん!ほなごゆっくり。
(ため息)
(柳吉の親戚)どうしようもないやっちゃ思てたけどとうとうあないな記事が出るまで…。
(桐介)面目次第もございまへん。
一日も早うこの汚名をそそげますよう一層精出しますよって…。
ああそうしなはれ。
おおきに。
(時計の時報)ボンボン。
(足音)お兄さん…。
文子ちゃんの事引き取らはったら?わてが桐介さん説得しますさかい。
そらかわいそや。
誰が?文子ちゃんが?それとも…蝶子さんが?両方や。
文子にも…おばはんにも…酷や。
(戸が開く音)お父ちゃん…来てくれてたん。
お〜すまん起こしたか?ううん起きてた。
寝られへんのか?寝られへんかったら寝んでええ。
食べとのうやったら食べんでええ。
さ湯ここに置いとくからな。
飲みたかったら飲み。
お父ちゃん…。
ごめんな。
ごめんな。
蝶子二度とこんな事すな。
二度とや。
明くる日種吉はんが維康商店を訪ねましたが…。
柳吉はん葬式のあと姿を消してしもたそうで…。
それっきり戻ってきまへんでした。
いやマダム!起きられるようになったん?へえおかげさんで。
やっぱりなれへんかったようでんな。
そらね午と午とはあきまへんわ。
お父さんやなかったんでんな。
わてらを夫婦と認めてくれへんのはお父さんやのうて…あの人。
あの人がわてと家とをてんびんにかけて最後までわてにおもしを載せてくれへん。
あの時の八卦そない出てましたんやな。
お七はん!当たるも八卦当たらぬも八卦でっせ。
いらっしゃいませ!
(一同)いらっしゃいませ!まっちゃん突き出しでけたで!はよ持っていきや。
は〜い!マダムこっち来て一緒に飲みいや。
何や御馳走してくれんのんか?したるしたる快気祝や快気祝!おおきに。
いらっしゃいませ!
(一同)いらっしゃいませ!らっきょさん!あんたわてに同情的な記事書いてくれはったさかいおかげで繁盛してるわ。
そやろそやろ。
もういっそ僕のめかけにならへんか?アッハハハハハ!よろしおますなあ。
ホンマか!フフフ。
お待っ遠さ〜ん!あ〜来た来た来た。
マダムの快気祝すんのや。
乾杯乾杯!乾杯!
(一同)乾杯!はいおおきにおおきに!
(流行歌)ん?あんた…。
何してんねんな。
ん?どこほっつき歩いとったんや!おばはんやめ!小倉行っとったんや!嫌や。
小倉行ってなおばはん小倉で競馬してきたんや。
嫌や。
重い!重い重い…。
競馬?さいな。
小倉…。
小倉て九州の?さいな。
どこにそないな金があったんや?さいな。
その当てもなし。
おばはん怒りなや。
カフェーの権利な…こっそり1,000円で売ってしもたんや。
カフェーて…わてらのカフェー?そや。
サロン蝶柳の権利を?1,000円で?そや。
売った?そや。
あほんだら!あほんだら!あほんだら!何すんねん!おばはん!おばはんおばはん!落ち着けな!待て。
どきや。
え?うん?競馬勝ったんか?1,200円ほどある。
まあ儲けに儲けて3,000円ぐらいにはなってんけどな。
まあ一遍売ってしもたら蝶柳も他人のもんや。
ここらで水商売もやめ時や思てな。
やめ時て勝手に…。
そんでな。
小倉の帰りに別府寄ってん。
そしたらそこで老舗の手ごろなんめっけたんや。
え?そういう事でなおばはん。
別府の土地で化粧品やら剃刀やらの商売やろや。
え!?別府?え…老舗?剃刀?あんた何言うてんの?おばはん…。
別府で暮らそや。
そないな事でける訳ないやろ!文子ちゃんどないすんねんな!不粋な事言うなや。
新しい町で2人で暮らしていこや。
な。
あほんだら!ぼけ!かす!痛い痛い…。
誰が行くか!痛っ!何を眠たい事言うてんねや!痛い痛い…。
勝手に…勝手にカフェーの権利売って九州くんだりへ行て競馬して…。
痛い!なんちゅう事すんねん!何考えてんねん!痛い痛い…。
もう済んだ事はしゃあないやないかい!諦めて行こうや!なあ。
別府ええとこやで。
温泉あんねんで。
この…このくされぼんち!一緒に地獄巡りしようや!地獄やったらさんざん巡っとるわ!またそんな事…。
あほ!あかん!さあえらい事になりました。
あほが2人で九州別府の温泉街に参ります。
蝶子柳吉2人の道行きどうぞ最後までつきおうたっておくなはれ。
さすがは別府日本一の温泉地や。
一緒に都々逸うなりましょ。
(柳吉蝶子)こないなうまいもん食べんと…。
死ぬやつはあほやで。
何があかんのや!お前とわいではほんまもんの夫婦には…なれへん。
2015/11/28(土) 00:10〜01:08
NHK総合1・神戸
JOBK放送開始90年アンコール 土曜ドラマ 夫婦善哉(3)[解][字]
蝶子(尾野真千子)は、親友金八(佐藤江梨子)の援助でカフェーを開き柳吉(森山未來)も厨房で腕を振るう。やがて父(岸部一徳)危篤の知らせ。蝶子に最大の試練が訪れる
詳細情報
番組内容
蝶子(尾野真千子)は、かつての同僚・金八(佐藤江梨子)の援助で、「サロン蝶柳」という名のカフェーを開き、柳吉(森山未來)もちゅう房で料理の腕を振るう。ある日、柳吉の妹・藤子(田畑智子)が娘・文子(青山美郷)を連れて店に現れる。喜ぶ蝶子は文子をもてなすが、女給・菊代(村川絵梨)と客とのトラブルが起こり、最悪の展開に。やがて、柳吉の父・半兵衛(岸部一徳)が危篤との知らせが。蝶子に最大の試練が訪れる。
出演者
【出演】森山未來,尾野真千子,火野正平,岸部一徳,田畑智子,平田満,青木崇高,茂山逸平,桂吉弥,麻生祐未,草刈正雄,村川絵梨
原作・脚本
【原作】織田作之助,【脚本】藤本有紀
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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