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COP21きょう開幕 先進国と途上国の溝埋まるか
11月30日 4時25分

京都議定書以来、18年ぶりとなる地球温暖化対策の新たな枠組みの合意を目指す国連の会議、COP21が日本時間30日、フランスのパリで開幕します。深刻化する温暖化の影響を背景に、およそ150の国と地域の首脳が出席し、合意への期待が高まる一方、先進国と発展途上国の対立は根深く、厳しい交渉が予想されます。
日本時間30日夕方、パリで始まるCOP21は途上国を含むすべての国が参加する2020年以降の温暖化対策の枠組み作りを目指すもので、合意すれば、先進国だけに温室効果ガスの排出削減を義務づけた京都議定書以来、18年ぶりの枠組みとなります。
初日は、安倍総理大臣をはじめ、アメリカのオバマ大統領や中国の習近平国家主席など、およそ150の国と地域の首脳が出席し、深刻化する温暖化の影響や各国の取り組みなどについて演説する予定です。COPに各国の首脳が集まるのは6年ぶりのことで、合意への期待が高まっています。
一方で、事前の交渉では先進国と途上国とで温暖化対策を担う責任に差をつけるのかや、途上国の排出削減や温暖化による被害に対し、先進国がどこまで資金支援を行うかなどについて対立が続いています。
29日には実務者レベルの作業部会が予定を前倒しして始まりましたが、先進国と途上国の対立は根深く、2週間にわたる会議では厳しい交渉が予想されます。

温暖化対策の歴史的転換点となるか

COP21で各国はすべての国が参加する2020年以降の温暖化対策の枠組み作りを目指しています。

温室効果ガスの排出削減を進める初めての枠組みとなった京都議定書は基準とした1990年の時点で、世界で排出される二酸化炭素のおよそ6割を先進国が占めていたことから、排出の削減は先進国だけに義務づけられました。ところが、経済成長を続ける発展途上国からの排出が増加し、2012年の時点では途上国の排出量が全体の6割を占めるまでになっています。
各国は排出削減に向けた新たな枠組みの合意を目指してきましたが、排出が増えている途上国にも削減を求めたい先進国と、これまで大量に排出してきた先進国の負担を求める途上国とが激しく対立し、全会一致が求められるCOPの会議では、毎年厳しい交渉が続いていました。世界各地で熱波や洪水など、温暖化の影響とみられる深刻な自然災害が広がるなか、削減に後ろ向きだった途上国を含めた180か国以上がCOP21に先だって温室効果ガスの削減目標を提出し、合意に向けた機運は高まっています。
新たな枠組みが合意されれば、京都議定書以来18年ぶりのことで、世界各国が協調して温暖化対策に取り組む歴史的な転換点となります。

各国の温室効果ガス削減目標は

すべての国が参加する温暖化対策の新たな枠組みの合意を目指して、これまでに世界の排出量の9割を超える180か国以上が、温室効果ガスの削減目標を国連に提出しています。

温暖化の最大の責任は、これまで温室効果ガスを大量に排出してきた先進国にあるとして、削減に後ろ向きだった中国やインドなどの新興国や発展途上国が初めて目標を提出して排出削減の意思を示したことは、枠組みの合意に向けた大きな前進だと期待が高まっています。

主な国では、世界全体の温室効果ガスの排出量の22.2%を占める最大の排出国、中国はGDP=国内総生産当たりの二酸化炭素の排出量を2030年までに2005年と比べて60%から65%削減するとしています。経済成長でGDPが大きくなれば、排出量も増えることになりますが、一方で、二酸化炭素の排出の総量を2030年ごろまでに、できるだけ早く減少に転じさせるという目標も盛り込まれています。

排出全体の13.8%と中国に次いで多いアメリカは、2025年に2005年と比べて26%から28%削減するとしました。

10.2%の排出を占めるEU=ヨーロッパ連合は2030年までに1990年と比べて少なくとも40%削減するとしています。

国別では世界で3番目に多い5.8%の排出を占めるインドは、2030年までに2005年と比べてGDP当たりの排出量を33%から35%削減するとしています。

国別で7番目、2.8%の排出を占める日本は2030年までに2013年と比べて26%削減する目標を提出しています。

これらの削減目標は、各国が自国の状況を踏まえて、みずから決めたもので、基準となる年や比較する指標も国ごとに異なっています。

国連の事務局は提出された削減目標を各国が達成したとしても、世界の平均気温の上昇を産業革命の前と比べて2度未満に抑えるという目標は実現できないとする試算結果をまとめています。このため、国連の気候変動枠組条約のフィゲレス事務局長は、COP21で合意を目指す新たな枠組みでは、各国の削減目標を高めるため、目標を5年ごとに検証する仕組み作りが重要だとしています。

専門家が注目するポイント

温暖化対策の国際交渉が専門で、名古屋大学大学院の高村ゆかり教授は今回の会議の意義について、「温暖化の影響が疑われる自然災害や異常気象が世界的に続いており、排出を削減する早期の対策が求められている。COP21で合意すれば、先進国だけでなく排出量が増えている発展途上国も含めた、より実効的な枠組みができる点が非常に画期的だ」と話しています。
そのうえで、新たな枠組み作りに向けては各国が提出した温室効果ガスの削減目標に法的な拘束力を持たせるのか、気温上昇を2度未満に抑えるという国際目標に向けて各国の目標を引き上げる仕組みをどのように作るのか、それに資金が乏しい途上国の対策への資金援助をどのように行うかという3つをポイントを挙げています。
また、合意の見通しについて、「パリの同時テロ事件で開催が危ぶまれたにもかかわらず、アメリカや中国など100か国以上の首脳が集まるのは、必ず合意しなければならないという意思の表れだ。こうした政治的な意思が合意文書を作成する作業にも反映されると思う」と述べました。

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