(テーマ音楽)
今日は町を旅する前に作家よしもとばななさんの言葉から。
東京・下北沢についてのエッセーです
向こうに見えるのは新宿の高層ビル。
その手前電車でおよそ10分下北沢です
下北沢ってほんと久しぶりに来ましたけど若者の町。
やっぱり若者の町って…。
年配の人多いね。
こぢんまりとした町だからね。
あぁ…これ商店街は昔と同じだ。
あれあれ?振り返るとすごいよあれ。
巨大なクレーンだ。
ねえ。
今下北沢では小田急線を地下に移す工事とともに再開発が進められ大きくその姿を変えようとしています
ちょっとした日用雑貨とか…。
戦後の闇市から始まったと言われる「駅前食品市場」。
立ち退きが進んでいました
あったあった!
かつてはおよそ40軒あった店も今は6軒ほど
お宅も長いんですか?ここは。
ここはもう長いですね。
40年ぐらい。
ここ歩けない時代知ってますか?いやいや…。
人ごった返して?ごった返して。
人が多くて?人が多くて。
いつまでやるんですか?ここ。
あと1年か1年半ぐらいじゃないかな。
2年ぐらいかもしれない。
だからそれまでは我々はやってますけれども。
町で目につくのが楽器を持った若者たち
路上ライブをする人も
下北沢は音楽の町とも呼ばれています
駅の周りにはおよそ15のライブハウスがひしめきます
この3月に29年の歴史を閉じようとしているライブハウスがありました
あっここか。
へえ…。
やってるのかね。
「OPEN」って書いてある。
ごめんください。
(山田)はい。
どうも。
まだやってないでしょうね。
時間がちょっと早いかな。
ライブハウス「屋根裏」の店長…
ライブはこちらですか?
(山田)そうですそうです。
そちらがホールになりますね。
150人が入れる人気のライブハウス
どういう方々がここでは?基本的にはロックでまあ…何でしょうね熱いバンドたちがこのステージでライブを繰り広げてきたという場所ですね。
3月末に行われる閉店ライブのリハーサルです
ここは若手ミュージシャンの登竜門と言われてきました。
怒髪天や神聖かまってちゃんなど若者に人気のバンドが数多く巣立っていきました
その歴史を記したものが残されていました
これはオーディションした時の…。
うちに出るためのオーディションを受けた時ので僕たちが見てどんなバンドだったって合否どうだっていうのをここにひと言ずつ…。
へ〜厳しいのもあるね。
(山田)ありますあります。
「ぐだぐだ。
1人1人まったく弾けてない」。
山田さんは夢を追いプロを目指そうという若者たちを後押ししてきました
山田さんは二十歳の時プロのミュージシャンを目指して神戸から上京。
しかし5年間活動したもののバンドは解散してしまいます。
そんな時に誘われたのがこのライブハウス。
「裏方として音楽に関わりたい」と10年間ここで働いてきました
閉店の知らせを聞いたミュージシャンたちが次々とやって来て別れを惜しみます
それは人柄ですよ完全に。
この人の。
(山田)ハハハッとんでもございません。
こっちが何かこれやりたいとかってアクション起こした時に応えてくれるからねこのライブハウスは。
できん事はできんって言う。
そうそうそう。
できない事はできないけどその範囲で「じゃこういう事しようよああいう事しようよ」って協力してくれるところがあったんで。
すごいよくしてくれてお世話になりましたよ。
いやぁもう残念ですねやっぱりねさみしいですし。
まあ残していきたかった残ってほしかった場所ですし。
もちろん僕にとってはねず〜っといる場所ですから。
ぐっとくる事もありましたし涙する事ももちろんありましたし…。
自分にないものを発信してくれる人たちもいっぱいいるので一つ一つ刺激になりましたね自分にとっても。
多くの人に愛されたライブハウス。
閉店までは残り僅かです
ライブハウスや劇場が軒を連ねる駅の近くに長年若者たちが慕ってきた店があります
35年営業を続ける焼き鳥屋さんです
豪快に塩をふるパフォーマンス。
店のあるじ…
100まで生きてて塩ふってたらかっこいいよね。
…っていうかおとうさん塩ふらなくなったら速攻で老けると思う。
塩をふらなくなったら即老けて…。
じゃあ引退させてくれないって事じゃん。
もちろん。
(笑い声)おかあさんすいません。
は〜いお待たせしました。
妻の千代子さん62歳。
夫と共に店を切り盛りしてきました
店には昔から演劇や音楽活動をする若者たちが訪れてきました
最近増えているのが久しぶりに店にやって来るかつての若者たちです
もうね学生の時だから三十数年ぶり。
(千代子)お〜すばらしい!三十数年。
ほんとは渋谷で飲もうと思ってたんですけどたまには下北来ようかって。
あら!それは最高ですね。
この日訪れていたのはシステム機器の会社で働く50代の男性。
大学時代よくこの店に来ていたといいます
そのころの自分があの時こんな事を考えながらこの町にいたんだなというような事を思い出させられて。
そういうとこが何となくキュンとするっていうかああそういう時代の自分がここにいたんだなというふうに思う場所ですね。
喜んで下さる方の笑顔が私たちのこの…何て言うのかな喜びでもあったのでね。
すごくここの場があってよかったな。
ほんとにこうお店が存続して頑張ってこられてよかったなっていう思いが…。
下北沢に昔ながらの味を残す店があると聞いて訪ねました
入ってみようか。
いらっしゃいませ。
こんにちは。
ここパン屋さんですよね?はいパン屋です。
いやカフェかと思って。
アハハ!食べられるの?頂けます。
パン屋を営む…
そうですねうちでしたら今こちらのコッペパンとか。
コッペパン?
人気はコッペパン。
どこか懐かしさが漂います
お待たせしました。
わざわざこうやってあっためるわけ?うちでは店内で頂く場合はあっためる形をとってますね。
あぁそう。
丁寧ですね。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
じゃあこれ頂きます。
あ〜ほんのり甘い。
うん。
甘さも甘すぎても僕は駄目なんですよ。
このぐらいだといい。
(中井)結構お客さん懐かしい感じとか素朴という事をよく言って頂く事が多いですね。
あ〜そうなんだ。
我々の世代コッペパンっていうだけで懐かしい。
以前サラリーマンだった中井さんがこの場所に店を構えたのは10年前の事です
かつてここには40年以上続く人気のパン屋がありました
店を営んでいたのは関忠雄さんと妻の雅子さん。
忠雄さんの焼くパンにほれ込んだ中井さんは会社勤めのかたわら店に通いパン作りを教えてもらいました。
しかし4年後忠雄さんが心筋梗塞で突然亡くなったのです
「忠雄さんのパンを絶やしたくない」。
中井さんは雅子さんに頼み込みこの場所で店を開く事にしたのです
何よりもお客さんに喜んでもらえるようなここだから買えるとかほんとに喜んでもらえるようなものが出来たらいいなと。
この場所で自分がもし店開けるならすごい幸せだなというふうには思って。
もう一つ下北沢の味を引き継ぐのがコロッケパン
カリッと揚げた中にふんわりとした食感が残ります
このコロッケ以前は下北沢で80年近く続いた肉屋さんから取り寄せていました。
しかしその店が閉店する事になり詳しくレシピを教えてもらいました
コッペパンにコロッケ。
引き継がれた下北沢の味です
店には関さんの時代からの客が変わらず買いに来ます
このパンとか甘コッペとかやっぱり懐かしいですしね。
懐かしいばっかりじゃないのよおいしいのよ。
本気で思ってます?だっていつも買ってるじゃない。
ほんとに地元の人に助けられて店が続いてるというのはすごく感じてますね。
じゃあ下北の味だ。
そうですね。
そう胸を張って言えるように頑張ります。
3月31日。
ライブハウス屋根裏の最終日
開演の1時間前から行列が出来ていました。
全国からファンが駆けつけました
店長の山田さん。
最後の準備に追われます
機材が今日多くてですね。
階段に行ってもらって…。
必要であれば声かけてもらえば全然。
最後ですけど何かまだあれですよね今日終えないと…。
今日が一番大変な日だから。
あまりセンチメンタルにならないように楽しみたいと思います。
会場は満員の客
今日の事忘れるなよ!まだ下北沢の屋根裏終わってないからな。
最後まで汗かいてくれ。
どうもありがとう!ザ・マスミサイルでした。
(拍手と歓声)ほんまにありがとう。
頑張って。
はい。
しっかりやってな。
全て終わりました。
まだ実感ないですけど。
ゆっくりかみしめたいと思います。
ありがとうございました。
ああ〜!
それぞれの心に刻まれた下北沢屋根裏最後の夜でした
「どうしようもないくらいたくさんのいろんな人がここで泣いて笑って飲んで吐いて夢破れて恋破れてあるいは幸せを見つけて同じようにくりかえしこの道を歩いた。
足跡はきっとひとつも消えていない」
(テーマ音楽)
(テーマ音楽)2015/11/28(土) 05:15〜05:40
NHK総合1・神戸
小さな旅「足あとは消えない〜東京 下北沢〜」[字][再]
東京・下北沢。街には夢や希望を持ち続ける人たちが行き交う。3月に閉店した老舗のライブハウスや夢をかなえたパン屋など、再開発で変わりゆく街で変わらぬ心に出会う旅。
詳細情報
番組内容
東京・下北沢。街に集まるのは、若い人だけではない。年齢を重ねても、夢や希望を持ち続ける人が行き交う。3月に閉店した老舗のライブハウス。最後のライブに集まったのは、かつて夢をこの地に託した人たち。長年、営業を続けてきた焼き鳥屋には、若い頃通った人たちが数十年ぶりに訪れ、昔の気持ちを取り戻して帰っていく。地元で愛されてきたパンを受け継ぎ夢をかなえた人も。再開発で変わる街で、変わらず夢を持つ人に出会う旅
出演者
【語り】国井雅比古
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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