太平洋側は晴れ間の出る所が多いでしょう。
(鈴木)我が群馬県には国事犯87名がやって来ます。
(素彦)ただ働かせるというのではなく働きながら各自の適性に応じた技能を身につけてもらうというのはどうでしょうか?
(権蔵)ですが協力してくれる者がいますかどうか…。
(せい)何の縁もゆかりもない人たちのために…。
どうしてそこまでしようとするんですか?
(美和)私の志やからです。
新しい日本をつくる新しい日本人を育てる。
皆さんは新しい生き方を見つける事ができるんです。
新しい道を切り開いて下さい。
それぞれに未来はあるんです。
それが私たちの願いです。
美和は空き家を借りて女たちのための学びの場を作ろうとしていた。
そのころ楫取は囚人たちの仕事を見て回っていた。
(星野)こちらも助かっています。
皆さん頑張って仕事を覚えてくれています。
そうか。
(中原)養蚕農家で働いとる人たちも一生懸命やっとるようです。
(工藤)きっと県令殿の言葉が胸に響いたんです。
農家の座繰組合の結成も進み揚返場も皆が賛同して進んでいます。
そうか。
人と人との絆が未来をつくる。
そうですよね。
ああ。
そんな手紙が息子さんから?回想久米次郎…。
(久米次郎)「母の気持ちが分かるならあなたには今すぐその家を出ていってほしい」。
それで一度東京に行こうかと思うとるんです。
お姉さんにどう思ってるんか会ってちゃんと聞いてきた方が。
はい。
やけどせっかくここに学び場を作ろうという時やのに…。
なにいいさ。
あとはちゃんとしとくから。
(トメ)美和さん!手伝いに来たよ。
ああご苦労さん。
(キク)私拭き掃除するん。
ありがとうトメさんキクちゃん。
よしやるべ。
(せい)頼んだよ。
アハハハ…みんな楽しみにしてるんさこの学校が出来るんを。
はい。
兄上がなされようとしとった事が一つ一つ形になってきたんですね。
ああ。
そねな時に申し上げにくいんですが一つお願いが。
何じゃ?姉上のお見舞いに行きたいんです。
寿の?東京に療養に行かれてからまだ一度も訪ねとらんので気になっとって。
私も見舞いに行ってやりたいと思うとったところじゃ。
寿も喜ぶじゃろう。
行ってやるとええ。
ありがとうございます。
それと久米次郎の様子も見てきてくれんか?あいつも司法省で働き始めてどうしておるか。
はい。
(テーマ音楽)・「愚かなる吾れのことをも」・「友とめづ人はわがとも友と」・「吾れをも友とめづ人は」・「わがとも友とめでよ人々」・「吾れをも友とめづ人は」・「わがとも友とめでよ人々」・「燃ゆ」そして美和が東京へやって来た。
ごめんください。
はい。
どちら様で?寿の妹の美和です。
姉に会いに…。
久米次郎…。
(久米次郎)何をしに来られたんです?帰って下さい!どれだけ母を苦しめるつもりですか?そねな…。
・
(寿)久米次郎?美和が来とるんですか?
(寿)まさか見舞いに来たというんではありませんよね。
私は群馬をたつ時美和には旦那様の事をお願いしたはずです。
そうなんですが…。
ではどうして?
(久米次郎)私の送った手紙の事ででしょう。
手紙?あの家から出ていってほしいと書いたんです。
どうしてそのような事を…。
当然です。
父上のおそばにおられるべきは母上です。
この人ではありません。
この人がおるから母上は自分はもう無用だなどと。
回想私はもういらんのかもしれませんね。
姉上…。
久米次郎。
美和と2人にしてくれんかね。
久米次郎が言うた事は本当の事です。
この身が情けなかったんです。
旦那様のおそばでお世話をしたいのに動けんこの身が…。
それでふと口をついて出てしもうたんです。
姉上…。
やけど羨む気持ちもないと言えばうそになります。
旦那様は私にはそれは優しくして下さいます。
手紙もよう送って下さって体の事もいっつも気にかけてくれて…。
やけど心配な事やつらいお気持ちは打ち明けては下さらない。
美和あなたには違います。
妻の私に話せん事も美和には話せるんです。
旦那様がお仕事でどれだけご苦労なさっとるか…。
そのお心の内を少しでも分かってくれとる人がそばにおる事は本当にありがたいと思うておるんです。
やから…やけるくらい感謝しとるんです。
姉上…。
兄上は寿姉の事を誰より大事に思うとります。
それはそばにおる私が一番よう分かっとります。
ありがとう。
すぐに戻ってもらいたいんやけど…。
せっかく来たんです。
姉上のお世話もさせてつかぁさい。
はあ…今日は気分がええ。
こねな時は萩の事などよう思い出します。
あの松下村塾の事も。
寅兄に教えてもらいたいと塾生の人たちが毎日大勢やって来て…。
おかげで毎日毎日どれだけ握り飯をこしらえた事か。
美和は今その寅兄様の志を引き継いで群馬に学びの場を作ろうとしとるんですね。
はい。
まずは母親たちの学校を作るつもりです。
子どもを育てるんは母親。
まず母親が学ぶ事こそが大事と寅兄様もよう言うとりましたね。
姉上も病気が治ったらぜひ手伝うて下さい。
もちろんです。
私たち姉妹で母親たちの松下村塾を作りましょう。
はい。
今まで私の生きがいは妻として母として務める事でした。
やけどこれでもう一つ見つかりました。
姉上…。
そのころ群馬では…。
県令殿。
揚返場の建設着々と進んでおります。
そうか。
何よりだ。
(工藤)県令殿!大変です!どうしたんです!?また生糸の価格が暴落しています!何?そのころ世界経済は不況に見舞われ諸外国の物価は低落。
そのため日本の輸出の頼みである生糸の相場も下がっていたのである。
早急に対策をとらねえと。
生糸は今や日本最大の輸出品。
このままでは群馬だけではない日本の経済そのものが危機的な状況に陥る。
なんとか手だてはないんですか?渡米した新井君はどうしとる?弟は今ニューヨークで日本副領事の紹介状を持って生糸商人を訪ね歩いているようです。
新井は有力な生糸商人リチャードソンと交渉をしていた。
そして新井から至急見本となる生糸を送ってほしいとの電報が届いた。
うちで作った生糸です。
これなら大丈夫です。
君の生糸に懸けよう。
(権蔵)失礼します。
私も拝見できますかな?どうぞ。
間違いねえですな。
いい糸だ。
では早速横浜への馬車私が手配致しましょう。
頼みます。
何としてもこの契約を取り付けねえと。
(権蔵)さあどんどん馬車に積み込め!県令様を手伝うなんてねえ。
やっこさんのやる事には賛同できねえ事もあるがこれは別だ。
金もうけのにおいがする。
さあ急げ!
(一同)へい!やれやれ…。
リチャードソンはこの生糸を見てその品質のよさに取り引きしたいと申し出契約がまとまった。
ところがその契約価格よりも市場の生糸の値が高騰し始めたのである。
阿久沢さん随分生糸に高値がついてますな。
何でもヨーロッパでの生産が減って日本の生糸がどんどん買われ始めてるらしいですよ!ここまで値がつり上がるとはな。
売れ!どんどん売りまくれ!
(鈴木)阿久沢様!阿久沢様!阿久沢様!県令殿が待ったをかけました!何だと?どういう事ですかな?売りを待てとは!ここで売りまくりゃあ今までの損失も回収されます。
だがリチャードソンとの契約があります。
新井君の会社を通して大量の注文が来てるんです。
ですがその値が問題です。
今の市場より格段に安い。
契約で決めた金額です。
ですからそんな契約なんか後回しにして今売った方がいいと申し上げてるんです。
そんな事をすれば信用を失います。
(権蔵)何をバカな事を。
今そのもうけが手に入ればどんだけこの群馬が潤うか。
我々は10年後20年後…いや100年後の事を考えねばならんのです。
リチャードソンとの取り引きが成功すれば直輸出が盛んになるでしょう。
そうすればこの群馬の…いや日本の未来が開けるでしょう。
私は県令殿に賛同致します。
私もです。
私もです。
私もです。
私も。
我々も。
私もです。
そのころ美和は安子のもとを訪れていた。
(安子)こうして会うのは久しぶりじゃのう。
はい。
お元気そうで何よりでございます安子様。
美和もの。
だが群馬は大変じゃろう。
住めば都でございます。
美和がどこででもたくましいのは分かっておる。
(元昭)美和。
興丸様?回想美和が一緒でなければ嫌じゃ!え…今は元昭様でございました。
えっこねぇに大きゅうなられて!今は学習院に通っておる。
そうでございますか。
それは?ああラケットじゃ。
今からテニスをするのでな。
テニス?西洋の羽根つきみたいなものじゃ。
ゆくゆくはテニスを日本に広めたいのじゃと。
美和も後で見に来ればよい。
はい。
元昭様も夢を見つけられたんですね。
毛利家の跡取りがテニスとは…世も変わったものじゃ。
美和。
私は慈善事業を始めた。
慈善事業?何か人の役に立ちたいと思うての。
孤児たちの養育所や暮らしの立ち行かぬ人たちの支援じゃ。
安子様…。
美和を見ていると私も何かせねばと焦るのじゃ。
毛利家の奥方としてのんびり暮らせるのに美和に出会うたおかげでさんざんじゃ。
全くお変わりありませんね。
それは褒めているのか?もちろんでございます。
そして群馬ではリチャードソンからの大量注文が入り生産が追いつかない状況となっていた。
(中原)星野さん。
どうですか?出荷までに間に合いそうですか?無理だ。
注文の数が多すぎる。
県令殿!このまんまでは納期に間に合いません!初めての取り引きだ。
何としても期日までに間に合わせなければ今後の信用に関わる。
揚返場の数を増やし少しでも多く仕上げられるようにするしかない。
急ぎ取りかかってくれ。
(寿)旦那様からの手紙です。
美和がおらんで大丈夫かと書いて送ったんです。
そしたらこねな事が起こっとるとの返事が…。
帰ってきてほしいとは言うてませんがそのお気持ちは分かります。
美和すぐに戻ってあげてつかぁさい。
やけど…。
私は大丈夫。
美和がお世話をしてくれたおかげで胸の痛みも和らぎました。
ありがとう。
姉上…。
どねな事があっても旦那様をしっかりと支えてあげて下さいね。
そして女たちの学びの場を作る事も。
約束です。
はい。
(久米次郎)戻るんですね。
それが母の願いならもう何も言いません。
久米次郎…。
私は戻ります。
群馬では揚返場が急ぎ作られアメリカへ送る生糸の生産に追われていた。
楫取も別の工場から生糸を集めようとしていた。
群馬の…日本の未来が懸かっとるんです!お願いします!ああ。
やってるね〜!おせいさん。
まだまだ人手が足りないんじゃないんかい?はい…。
そうだと思ってみんな連れてきたよ!私たちもできる事はさしてもらいますよ。
私らも手ぇ貸すよ。
皆さん…。
じゃあ始めるよ!
(一同)はい!よしやるべ!私らはあっち行くべ。
(工藤)美和さん!あっ。
私たちもお手伝いします!職員のみんなも手伝ってくれると。
ありがとうございます。
よしやるべ!
(一同)はい!ありがとうございます。
あっおせいさんお願いします。
はいはい。
ご苦労さま。
いや随分きれいな生糸だね。
きれいだいね〜!あっちょ…ちょいと。
旦那様?こんなとこで何を?勝手にやりゃあいい。
わしは知らねえ。
おやおや!私は旦那様が一番乗っかると思ってましたんに。
何?
(せい)これこそまあ飛びっ切しの大博打じゃありませんか!大博打?
(せい)はい。
群馬の未来を懸けた。
(星野)どうでしたか?何軒かは卸してもらえる事になった。
じゃがまだ足りん。
もう納期を遅らせてもらうしか…。
それはできません。
約束を守れない事になってしまう。
じゃがもうどうする事も…。
これをお使い下さい。
これは?知り合いの製糸工場で作った生糸です。
品質も折り紙付きです。
私は目の前でもうけが見える博打が好みですが県令殿はすぐには見えねえ大博打がお好きなようだいな。
そうと分かりゃ私もお手伝い致します。
よろしいですかな?はいもちろんです。
タヌキおやじに違いありませんけどなかなかあれでいい男なんですようちの亭主も。
ええ。
そして大量の生糸が横浜へと送り出された。
横浜からは船便。
あとはニューヨークに無事届くんを待つだけです。
ああ。
兄上。
ではその間に東京へ。
ん?姉上の病状が心配なんです。
じゃがまだここを離れる訳には…。
直輸出がうまくいくか大事な時。
それに囚人たちの事もある。
見て回ってやらねば。
ではそのお役目私にやらしてつかぁさい。
代わりにちゃんと見て回ります。
何かあったらすぐに報告もします。
やからどうか…。
美和さんの言うとおりここは行かれた方がよろしいかと。
そうですよ。
私たちも美和さんと一緒にあとの事はちゃんと面倒見ておきますから。
兄上…。
では頼みます。
(ナツ)はぁ仕事も覚えてくれてさぁうちの亭主よかよっぽど頼りんなるがね。
そうですか。
それに鹿児島のおっ母さんに手紙を書いたって。
私を見て思い出したっつうがね。
きっと喜んでますね。
そのお母上も。
来たよ〜!陣中見舞いだ!おいしそうだいね〜!
(せい)けど何にもないところからよくここまでやったいね。
萩の実家にもこねな学びの場があったんです。
母親たちのそねな場所を作りたい。
それが姉と私の夢。
それで奥様の方のお具合は?どうだい?何か知らせてきてるんだろ?それが…。
あんまりよくないんかい?萩から長男夫婦も駆けつけてきとるそうです。
寿…。
こうして…旦那様や息子たちがいてくれて…。
(篤太郎)母上…。
母上…。
篤太郎の事よろしくお願いしますね。
(多賀子)はい。
久米次郎…。
私の事は心配いりません。
父上がちゃんと考えてくれました。
久米次郎には楫取家を継がせるつもりじゃ。
よかった…。
これでもう思い残す事はありません…。
寿?旦那様…。
何じゃ?旦那様と夫婦になれ…。
2人の息子にも恵まれ…。
私は…。
本当に幸せでした…。
寿…?母上…。
母上…。
寿姉…。
やっと出来ました。
約束の学びの場です。
早う見に来てくれんと…。
(寿)美和…。
(風の音)寿姉?
(寿)思うたとおりおやりなさい。
(風の音)
(中原)今電報が…。
え…?奥様が…。
奥様の事伺いました。
何と申し上げてよいんか…。
ここが出来るんを楽しみにしておったんです。
やのに…。
きっと見守って下さいますよ。
美和さんやここで学ぶ女たちをね。
母からこれを預かっておりました。
自分が亡くなったあと父上にお渡しせよと。
(寿)「私が死んだあとは美和を妻に迎えて下さい」。
「美しき花ひらく」。
(一同)「四月頃より…」。
どうぞ。
(一同)「美しき花ひらく」。
「百花の長なり」。
(一同)「百花の長なり」。
「実もまた食ふべし皮また功用あり」。
女中を雇ったらどうかと思うてな。
お前が望むならいつでもこの家を出ていけるようにと。
富岡製糸場を閉鎖…。
私たちもできる事をやりましょう。
前橋市内を流れる利根川。
そのほとりには楫取の呼びかけにより建設された迎賓館臨江閣があります。
この臨江閣に近い楽水園という屋敷を楫取が借り受け寿や美和と暮らしました。
寿は人心が荒いといわれるこの地で少しでも楫取を助けようと仏教の教えを説く説教所を県内に作り人心の安定に一役買ったのです。
しかし病に倒れ東京での治療のかいなく明治14年1月30日寿は43歳の若さで亡くなります
楫取の手紙には愛する妻を失った深い悲しみがつづられています
激動の時代に奔走する夫を支え続けた寿。
寿の死は美和の人生にも大きな変化をもたらす事になるのです
2015/11/28(土) 13:05〜13:50
NHK総合1・神戸
花燃ゆ(47)「姉妹の約束」最期まで夫を思う姉に妹は?[解][字][デ][再]
美和(井上真央)は東京で療養している寿(優香)を訪ねる。寿は、美和にある思いを打ち明ける。一方、楫取は生糸相場の変動による経済危機に直面、事態収拾に駆け回り…!
詳細情報
番組内容
美和(井上真央)と楫取(大沢たかお)の熱意が人々に伝わり、二人の取り組みは少しずつ軌道に乗り出した。そんな中、美和は久米次郎(市川理矩)から手紙を受け取り、東京で療養している寿(優香)を訪ねる。ひん死の寿は美和に心に秘めた思いを吐露し…。一方、楫取は生糸相場の変動による経済危機に直面、必死に駆け回るがそのとき阿久沢(江守徹)は…。そして美和は群馬での一大事を知り、寿の思いを胸に楫取のもとに戻る…!
出演者
【出演】井上真央,大沢たかお,優香,檀ふみ,田中麗奈,大東駿介,相島一之,尾上寛之,堀井新太,細田善彦,宮地雅子,市川理矩,江守徹,三田佳子,【語り】池田秀一
原作・脚本
【脚本】小松江里子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドラマ – 時代劇
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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