(飛行機の音)
(飛行機の音)
(曽根崎裕子)たった今血液検査の結果が出ました。
関西空港で検疫を受けた赤井逸郎という男性です。
(裕子)間違いありません。
アルタイラ出血熱に感染してます。
(裕子)えぇ…はいそうです…。
アルタイラ出血熱です!マールブルグ出血熱やエボラ出血熱と同じ国際指標レベル4に指定されてる感染症です!
(携帯電話)
(榊マリコ)はい。
アルタイラ出血熱!?
(土門薫)2時間前この近くのNシステムで撮影された。
(撮影音)赤井逸郎。
昼間サルギスタン共和国から帰国している。
アルタイラ出血熱が流行している国ね。
うん…。
(土門美貴)彼が感染した病気ってそんなに怖いんですか?致死率100パーセントよ。
え!?そんな怖い国で何してたの?この人!
(木佐貫直巳)医療奉仕活動を数年。
(榊伊知郎)え?って事は彼医者なのか!?えぇ以前京都の病院に。
だから土地勘のある京都に逃げたのかもしれません。
でも何で逃げたの?わかりません。
抗血清とかいうの打たなきゃ死ぬだけなのに。
え?抗血清があるの?あぁ。
だが日本にはない。
WHOを通じて取り寄せてる最中です。
早く彼を見つけないと第二第三の感染者が出るかもね。
まぁアルタイラ出血熱は空気感染はしない。
確かに唾液や血液や精液などによる体液感染だけだそうだが…。
でももし誰かが彼の唾液や血液に接触したら…。
何でもいい。
手掛かりになる遺留品を探してくれ。
ありました!タイヤ痕!
(乾)似てますね…似てますよ!計測!
(パトカーのサイレン)
(木佐貫)ご苦労様です。
これは血痕…?血痕があります!
(裕子)触らないで!触りません。
ただ採取はしないと。
採取?あなたは?京都府警科学捜査研究所の榊マリコです。
あなたは?
(木佐貫)あ…京都感染症研究所の曽根崎先生です。
京都感染研…。
知ってるの?日本屈指の感染症研究施設よ。
赤井をアルタイラ出血熱と診断したのも曽根崎先生だ。
捜査に協力してもらってます。
私にも責任があるから。
盗まれたのは私の車なの。
そうですか。
でも鑑定はこちらに任せてください。
この血痕は採取して赤井さんのかどうかDNA鑑定します。
それはムリよ。
ムリ…?赤井さんの血液関空病院にないんですか?あるわ。
私が採血した。
ならその血液のDNAと照合すれば。
その手の危険な血を扱うには専門の施設が必要なの。
そうか…レベル4実験室。
そう…日本にはうちの研究所にしかない。
では曽根崎先生がそこで分析を?それもムリなの。
は?レベル4実験室は建設当時から使われていない。
地元の反対があって。
じゃあすぐ厚生労働省に使用許可を申請して…!とっくにしてるわ。
でもまだ返事がないの。
とりあえず今回は海外の研究所に鑑定してもらうしかないわね。
…わかりました。
これが赤井さんの逃亡ルートね。
(木佐貫)えぇ。
このマークがNシステムで確認された所です。
現場にあったタイヤ痕曽根崎先生の車と一致したよ。
つまり赤井はここからこの方向に逃げたって事ですね。
美貴ちゃん引き続き市内のNシステムを調べて。
はい!
(小向光子)えNシステムって?自動車ナンバー読み取りシステム。
でも最近のはナンバーだけじゃなくて顔も写るんですよ。
いや〜!顔!ヤバいヤバ〜い!あ!オービスとCCTVセンターも調べましょうか?そうねお願い。
オービスオービス…オービスって聞いた事あるわね。
車の速度違反を調べるカメラだよ。
CCTVセンターは街頭カメラの管理センター。
へ〜美貴ちゃん勉強してんのね。
警察官から科捜研への配属は初めてだからなぁ〜。
日野さんはこのルートにある宿泊記録を調べて。
そん中から逃亡してる彼の筆跡を見つけろって事?泊まってるとしたら偽名を使ってるはず!OK。
至急宿帳のたぐい調べてみる!ねぇ…もし他に感染者が出たらどうなるの?考えただけで恐ろしいわ。
WHOから届く抗血清だけじゃ足りなくなるわ。
(電話)
(光子)マリコさん感染研の曽根崎さん。
至急だって。
え…?
(咳)
(ノック)
(警官)もしもし?どうしました?
(佐久間誠)その後赤井の足取りは?ヤツの友人・知人はすべて当たったんですが…。
病院は!?赤井はいつ倒れてもおかしくない状態だろう!?今のところ赤井が来たという通報はありません。
(ノック)失礼します。
海外での血液鑑定がダメになりました。
え?アメリカのCDCのレベル4実験室は今アフリカのラッサ熱の鑑定で埋まってます。
フランスのジャン・メリュー研究所のレベル4の技官は全員学会でアメリカです。
タイミングが悪すぎるな…。
部長。
このままじゃ鑑定が出来ません!大体危険な感染症患者が逃げてるのになぜ公開捜査しないんですか!?市内の病院には通知はしてある!もっと大々的にマスコミも使って!だからそれはパニックになるから控える。
それに個人のプライバシーもあるそれが上の決定だ。
それならせめてレベル4実験室の使用許可を厚労省に打診してください!それは赤井が逃げた時大阪府警がしたはずでは?さらに!京都府警が動けば警察庁も動くはずです!私は感染を止めて人を助けたいんです!私にはその力があります!レベル4実験室さえ使えれば。
…部長!ハァ〜やるだけやってみる!
(電話をかける音)あ土門さん。
おぅ。
何度か電話ありましたよ?電話?誰から?あ…デスクにメモ貼ってます。
んサンキュ。
(木佐貫)土門さん!おぅ。
左京区の恵馬神社で警官の死体が発見されました!え…?その現場に赤井の車が。
まさか…!?オイ行くぞ。
私も行くわ!その警官が先生と接触していたら感染の可能性がある。
(サイレン)ご苦労様!あ!感染の可能性があるなら死体に近づかない方が…。
アルタイラは体液感染だけよ。
血液なんかに触らなければ大丈夫。
鑑識はご遺体を運び出してからにして。
あ!これですねタイヤの痕って。
これが凶器?土と血でかなり汚れてますけど指紋取れます?ヨードかシアノアクリレートで何とかなるけど…。
けど?この血も感染してる恐れがあるとすると…。
科捜研には持ち込めませんね。
殴られた傷はひとつね…。
警官に職質されて思わず殺したってとこか。
そこまでして何で逃げるのかしら?すぐ解剖に回してくれ。
それはムリよ。
解剖はもちろん血液検査すら出来ない。
チッ…またレベル4実験室か…。
(携帯電話)もしもし曽根崎です。
…え!?そうですか!ありがとうございます!…何かあったんですか?レベル4実験室の使用許可が出た。
なんだか…感慨深いわ。
え?ずっと使えなかったレベル4実験室が使えるなんて。
人を助けたい…。
先生のその言葉がきっとみんなを説得したんです。
私が助けたかったのは…赤井先生よ。
え…?逃亡中の赤井さん!?早く見つけて抗血清を打ってあげたい。
この鑑定も…ホントは赤井先生が殺人犯だなんて信じたくないから。
曽根崎先生…赤井さんとどういう…?彼と同じ病院に勤めてたわ。
え…?あ…そうだったんですか。
5年前赤井先生が何で病院辞めたか聞いた?横領。
奥さんの。
横領…?奥さんが?同じ病院で事務をしてて。
どうして横領なんて?主犯は事務長だった。
じゃあ奥さんは共犯?警察はそう思ったみたいね。
逮捕された事務長もそう言ったし奥さんの口座にお金も振り込まれてたし…でもあれは事務長に利用されただけだったのかもしれない。
奥さんは認めてないんですか?亡くなったわ…。
え?警察の取り調べの後すぐ。
…自殺だった。
それで赤井先生病院に居づらくなって。
だから海外に…。
何もしてあげられなかった。
同僚だったのに。
驚いたわ関空病院から連絡受けた時。
赤井さんがアルタイラ出血熱に感染したと?気が付いたら真っ先に手を上げてた。
警察から協力求められた時。
ずっと気にしてたんですね曽根崎先生は。
(アラーム音)
(光子)どうも。
ただいま!
(光子・美貴)お帰りなさい!どうだった?被害者の警官は。
血液検査の結果ウィルスは出なかったわ。
それから路上にあった血痕まったく別人のものだった!感染の拡大防げたんだ!?良かった…!安心は出来ないわ。
感染者は逃げたままよ。
確かに。
誰かが彼の体液に触れたら一大事だ。
美貴ちゃん赤井さんの車は?今のとこまだ…。
引き続きお願い。
はい!日野さん!宿泊施設のほうは?出ないね赤井の筆跡は。
引き続き調べてみる。
お願いね!で所長は…これを。
やっと指紋が調べられるね。
お願いします。
乾君は?刑事さんたちと…それ。
あぁ…そっか。
じゃあたしも。
ちょっと…!少しは休んだら?これは一刻を争う事だから。
(電話をかける音)現場のタイヤ痕も赤井の車の可能性が高い。
ここからどこへ向かったのか引き続き調べてくれ。
(撮影音)知ってた?曽根崎先生が赤井さんの同僚だったって。
ずっと気にしてたのよ。
奥さんをなくした彼の力になれなかった事を。
奥さん…。
もう5年も経つんだな。
え…?赤井の奥さんを取り調べたのは俺だ。
土門さんが?一昨日赤井の写真を見て驚いたよ。
覚えてたの?赤井さんを。
忘れられんよ…。
気にしてるの?曽根崎先生のように。
あの時の俺は横領事件の捜査をしたんだ。
間違っていたとは思わん。
思わんがな…。
なぜ赤井が自分の命まで賭けて逃げてるのかそれが俺にはわからん。
だが絶対に捕まえなきゃならん。
それも…できればこの手で。
(携帯電話)はい…あ所長。
え…?凶器から赤井さんの指紋が出たわ。
それホントなの…?赤井先生が警官を…。
(ドアの開く音)ハァ…お腹一杯になると眠くなるわよ?食べてないと寝ちゃいそうでね。
糖尿になるわけねぇ…。
(日野)まだなってません!フフフ。
祇園祭は?え?毎年この時期になると祭りのために休み取ってるじゃない?あぁ町内で会所飾ったりちまき売ったりするからね。
それ今年はいいの?も〜旦那から毎日電話来るわよ〜早く手伝えって!フフ…。
フゥ…日野さんはいいわね。
ん?家族が東京にいて。
家族の顔を見ると…口から飛び出しそうになるの。
怖い感染症の患者が逃げてるからだから京都から逃げてって…!光子さん!わかってる!そんな事言わない…言えないわ。
(パソコンの警告音)
(光子)筆順…筆順って書き順の事?うん。
これが1…2…3でこれが4…5ってとこかな。
え?どうしてわかるの!?ん〜例えばここ。
(日野)この線の交差してる部分。
(光子)うん。
まぁこんなふうに途切れてる線は先に書かれた線。
(光子)へ〜!
(パソコンの音)これ…これどこの!?宿泊記録!?え…?ペンションたちばな!書いてあるじゃない!
(電話をかける音)マリコ君!わかった!赤井が泊まってる所がわかったよ!!じゃあお借りします。
土門さん…。
赤井は201号室だ。
お前は来るな。
土門さんもNBCが来るまで待って!NBC…科学テロの専門部隊か。
出動要請した。
こっちに向かってる曽根崎先生も。
冗談じゃない。
赤井は俺が確保する!土門さん!
(パトカーのサイレン)赤井…赤井逸郎だな?赤井!
(赤井逸郎)やっと…来てくれたな…土門さん。
お前俺の事覚えてるのか?何度も…電話した。
じゃあ何度か電話があったっていうのは…。
(うめき声)何だ?大丈夫か?土門さん何してるの!?来るな!
(うめき声)あ?
(うめき声)ん…?グワッ!
(噛みつく音)
(うめき声)土門さん!?
(取り押さえる声)あっ…!
(足音)
(美貴)マリコさん!おに…お兄ちゃんは!?
(ドアの開く音)赤井先生は間に合わなかった…。
土門さんは!?残念だけど…。
感染したんですか!?アルタイラ出血熱に!そんな…!?そうか…感染したか。
「心配いらない。
さっき抗血清が届いたわ」「今曽根崎先生が準備してる」皮肉だな…赤井に使われるはずだった抗血清が。
もっと早く気付くべきだった…。
「そうだな。
俺の不注意だ」「何…?ねぇどういう事!?」赤井は俺に感染させるために逃げていたんだ。
「そんな…どうして!?」復讐。
5年前ヤツの妻を逮捕した俺に。
そんなの逆恨みよ!でもだとすると赤井さんが復讐を決意したのはアルタイラ出血熱に感染してから?だろうな。
だから病院から逃げた。
自分の命を捨て危険なウイルスを俺にうつすために。
酷い…!これから抗血清を投与します。
「お願いします」
(米倉助教授)あ〜こりゃあかんわ。
アルタイラ出血熱うんぬんの前に末期癌や。
転移しまくりや。
肺癌のレベル4っちゅうとこやな。
って事は多少自覚症状はあったはずですよね?ん〜そりゃそうやろな。
大体この人これお医者さんやったんやろ?アルタイラ出血熱の前に末期がんだった…。
そうなるな。
この様子では。
つまり彼が復讐を決意したのはアルタイラ出血熱に感染した時じゃなく末期癌を悟ってから…。
え…?っちゅう事はアルタイラ出血熱は…!?向こうで自ら感染した。
なんでそんなアホな事を…?もちろん土門さんに感染させるため。
どうせ末期癌死んでもよかったっちゅう事か。
(木佐貫)これ赤井の服に付着していました。
鑑定をお願いします。
わかった。
土門さんは!?抗血清投与の後は安静にしてる。
もう大丈夫!あぁよかった…!安心するのは早いわよ。
このルートに感染者がいないかどうか確かめないと。
彼がいたペンションから調べてみる!僕も行きます!
(光子)いってらっしゃい!気をつけてね…!
(乾)マリコさん…!マリコさん!使用済みね…中にあるのは血かな?
(乾)もしかしたら赤井の血じゃ?可能性はあるわね。
すぐに京都感染研に送って!はい!こっちは人間の毛髪だったがこっちは違った。
…ネズミ!?この表皮の模様はネズミだ。
それも小型で繁殖力の強いハツカネズミの可能性が高い。
何でネズミの毛が赤井の服に…?まぁそれはわからんが1本や2本じゃなかった。
もしかしたら…。
ん?赤井のいたホテルで見つかった注射器ですね。
ここに残ってた血はやっぱり赤井さんのだった。
彼は逃亡中にこれで自分の血を抜きネズミに注射した可能性がある。
え…?ちょっと待って。
何でそんな事するの?多分ウイルスを使った無差別テロ。
テロ…!?ちょっと…それ考えすぎなんじゃないかな?彼はすぐに土門さんに復讐せず京都市内に潜伏していた。
そしてこの注射器さらにネズミの毛…。
え…でも…。
(電話)いや奥さんの自殺を逆恨みした彼が土門さんに復讐するのはまぁ百歩譲ってわかるにしてもさ。
そうですよ。
京都市民に感染が広がるようなテロを仕掛ける動機なんて彼にはないはずです。
(光子)え!?あの…曽根崎先生から。
どうした?土門さんに抗血清が効かないって…。
抗血清投与後の土門刑事の血液よ。
抗体には反応してるようだけど。
でも…ウイルスだけにマーキングするとウイルスは死んでない。
調べたら赤井先生の体内でウイルスの形が変わってた。
まさか…ウイルスの突然変異。
(裕子)しかも似てるのよこのウイルスの形。
インフルエンザに…。
インフルエンザって…。
もしかしたらインフルエンザ型に変異したのかも。
じゃあ空気感染の可能性が…?初めての症例だから断言は出来ないけど…。
アルタイラ出血熱が空気感染…。
最悪の事態ね。
すぐに捜査本部に伝えて。
先生赤井さんは逃亡中ネズミに自分の血を注射した可能性があるんです!なんですって!?しかもそれを京都市内に放った可能性が…。
それって空気感染するアルタイラ出血熱のネズミが今京都中を走り回ってるって事?それで対策は?それは我々警察が考えます。
先生は土門さんを…。
わかるでしょ?突然変異したアルタイラウイルスに効く抗血清は今のところ存在しないのよ!赤井さんの血液から血清を分離して作る事は出来ませんか?それは私も考えた。
でも可能性はゼロに等しいの。
でもゼロじゃない!気持ちはわかるけど冷静になって。
私は冷静ですお願いします。
それより今は感染の拡大を防ぐ対策を…。
お願いします!曽根崎先生。
お願いします。
先生にしか出来ないです。
わかったわやってみる。
赤井から…感染したのは俺だけか?「今のとこ感染者の報告はない」そうか…よかった。
これで死ぬのは俺1人で済む。
「死なせないわ」あなたを死なせたりはしない。
(すすり泣き)「なら…とっとと仕事に戻れ」「ここで油を売ってる暇はないだろ?」「お前もだ」「希望してやっと手に入れた科捜研の仕事だろ?」でも…。
必ず助けるから。
行け。
慰めはいらん。
慰めじゃない。
約束よ。
京都を中心にアルタイラウイルスが空気感染を起こした場合の感染範囲とスピードを計算しました。
(乾)24時間後そして一週間後…。
あっという間です。
信じられません。
見つけましょ。
赤井さんの放した感染ネズミ。
見つけるってどうやって?たぶんこのルートにいるはず。
この範囲から何匹かのハツカネズミ探す気?手掛かりは赤井さんが乗ってた車。
記者会見をしない!?これが公になれば日本中は大パニックになるぞ。
感染者が出たあとではさらにパニックになります。
感染者が出たら自衛隊の医療援助部隊が出張る。
自衛隊には鳥インフルエンザ程度の防疫能力しかないはずです。
だがパニックを抑える力にはなる。
そんな事のために…。
厚労省と警察庁の決定だ!感染ネズミの捜索に戻ります。
何人必要だ?…え?捜査員の数だ。
出来るだけ人員を割く。
お願いします。
京都中を走り回っている感染ネズミか…。
いました!そこ!2匹…いや3匹!
(米倉)どや?感染ネズミは。
今のとこまだ…。
(ドアの開く音)赤井さんの血液から抗血清は無理だったわやっぱり…。
他に方法は?曽根崎先生もう一度やってもらえませんか?榊さん…。
お願いします。
もう一度だけ赤井さんの血から…。
何度やっても同じよ。
わかるわよね?あなたなら…。
残念だわ期待に添えなくて。
待ってください。
感染症から自然回復した人の血漿からワクチンを作った例がありましたよね?ええ…でも今回は無理。
アルタイラ出血熱から自然回復した人なんてこれまで1人もいない。
じゃあ土門さんは…?
(ため息)あった…!間違いない私の車よ。
(乾)車は消毒済みです。
感染ネズミは?いなかった。
一体どこに…?曽根崎先生私物の確認お願いします。
はい。
私はもう一度車の立ち寄り先を調べます。
それはこっちでやる。
土門さんのそばにいてあげて。
いえやらせてください。
美貴ちゃん。
お兄ちゃんに言われました。
私の居場所はここだって。
お兄ちゃんのそばでただ泣いてるだけじゃ科捜研の人間じゃないって…。
だから私にやらせてください。
よし我々も調べよう。
車の土からこんなもんが検出された。
蚊の死骸に蚊の卵?ええそれがなぜか異常な割合で入ってて…。
あっ…!なんです?赤井先生は自分の体内でアルタイラウイルスが突然変異した事を知らないはずよね?ええでしょうね。
つまり体液感染のままだと思ってる。
あ…。
そう。
体液感染のウイルスを最も効率よく広めるには…。
蚊による感染。
なるほどマラリアと一緒だ。
じゃあ赤井は蚊がたくさんいるところに感染ネズミを放った?
(光子)でも…それってどこ?他に土からは木くずが…。
ヒノキスギラワンチークマホガニー…。
建築用の木材だな。
(美貴)あっここ!
(美貴)これはすべて赤井が立ち寄った場所なんですが…。
そこが蚊が大量発生している池?
(美貴)はい。
その工場は?建築廃材のリサイクル事業!建築廃材…。
ここよきっと。
(裕子)全部計算してたのかもしれないわね赤井先生。
え?蚊が活動的になる夏。
京都特有の盆地の風だまり。
そして観光客が多い祇園祭。
確かに蚊を使って感染させるには最も適した場所と時期だけど彼はどうしてそこまで…。
いた!
(乾)なんか動物…!
(乾)この中です。
ネズミに間違いないわね?
(乾)ええ。
何匹?
(乾)たぶん…1匹!この重さ1匹じゃないわ。
(乾)でもこれで見る限りじゃ…生きているのは1匹だけですよ。
もし…それが回復したネズミだったら…。
「お兄ちゃん!」「俺は…生きているのか?」「抗体があなたの体のウイルスを破壊してる写真よ」抗体…?どうやって?「アルタイラ出血熱に感染したネズミの中で1匹だけ奇跡的に回復した個体がいたの」「その血漿から抗血清を作ったの」そうか…ネズミに助けられたか。
「…ったく悪運の強い奴だな」「3日もすればウイルスは全部消滅するわ」「そしたらここ出られるって!」俺の他に感染者は?安心して。
この突然変異したウイルスに空気感染の心配はない。
「そうですかありがとうございました」「お前にも言ったほうがいいかな礼を…」いいわ約束だから。
「え?」あなたを必ず助けるっていう約束。
(笑い声)あなた…B型ね?え?人に何度も抗血清作れって無理言ったり今もみんなで喜んでる時に1人でこんなとこに…。
マイペースね。
だからB型?科学者なのにずいぶん非科学的な事言うんですね。
あら外れた?当たってますけど。
でしょ?わかるのよ私もB型だから。
どうぞ。
やめましたずっと昔に。
私も今日までやめてたのに…。
え?あなたのせいよ。
今頃震えがきた。
ネズミの血漿から抗血清作る大仕事なんて初めて…。
本当にありがとうございました。
よっぽど大切な人なのね。
え?あの刑事さん。
いや…そんな…。
私たちは単に仕事上の…。
彼を救ったのは…あなたよ。
いえ先生のおかげです。
いいえ私は既に諦めてしまっていた。
最後まで諦めなかったあなたの気持ちが彼を救ったの。
そんな…もし先生がいなかったらとても…。
フフッ…あなた独身?え?ええ…。
こんなふうに褒め合うのよねぇ独身の女同士って。
という事は曽根崎先生も?先生はやめて。
裕子でいいわ。
じゃあ私はマリコで。
お互い美人なのに縁遠いみたいね。
今度はお互いの顔を褒め合うんですか?
(笑い声)でもすごい事するわねぇウイルスのテロなんて。
感染が広がる前に対処出来てよかったよ。
はい湯葉とタケノコの辛子味噌和えゴマ風味。
ちょっと!お皿に盛ってっていつも言ってるでしょ!いいってこのままで。
洗いもん増えるからさ。
あ…!美味しい!だろ?ビールに合うんだこれが。
でも…少し変よね。
そうかな?かなりうまいと思うけどな。
じゃなくて感染ネズミ。
箱に入ってたでしょ?食べてる最中にネズミの話はいいよ。
本気でテロを起こす気ならそんな事する?まあネズミを直接放したほうがずーっと効果的だけどね。
もういいってネズミの話は!赤井さんホントにテロを起こす気あったのかしら…。
それは俺もずっと考えていた。
第一赤井がなぜ無差別テロなんか…。
ターゲットは俺だけでよかったはずだ。
それにしても皮肉なもんだな。
え?祇園祭は疫病を治める祭りだろ?そうね。
その最中にあんな感染症に苦しめられて…。
だがそれもなんとか治まった。
神様の御利益かもな。
(子供たち)ちまきどうですかー!ああマリコさん!どうぞどうぞこっち。
入って。
(光子)こっち…ほら可愛いでしょ?あっ座って。
うん。
(美貴)冷たいお茶どうぞ。
あどうも。
美貴ちゃん!?お前何やってんだ!?見に来たついでに手伝ってくれてんのよねー。
ねー。
ねーって…2人して科捜研休んだの?そういうマリコさんだって。
そうそう2人で。
いえ…2人…。
何2人って…。
違うよ。
ん?ん?ん?可愛い浴衣ね〜。
(2人の笑い声)ねえせっかくだから2人で浴衣着てみない?
(2人)え!?
(光子)どうぞどうぞ。
入って入って。
お…。
(美貴)ねっ写真撮ろうよ。
撮ろう撮ろう。
(美貴)入って入って。
いくよ!はいチーズ!
(カメラのシャッター音)
(シャッター音)
(光子)いくよー!
(シャッター音)これは…カブか?そうそううちの御神体。
だから「蕪山」。
へぇ〜。
ああダメ!触っちゃ…!触っちゃダメ。
ほらちゃんと書いてあるでしょ?「お手を触れないでください」って。
はい…。
磨き直してねゆうべやっと戻ってきたんだから〜。
ゆうべ!?そうなのよ業者の手違いでありえないでしょこれ。
でも珍しいな御神体が野菜っていうのも。
そうだね昆虫や魚っていうのは知ってるけど。
(楢崎誠)ちゃんと由来があるんでっせ。
あ会長。
こちら蕪山の保存会長さん。
会長いうてもふだんは豆腐屋ですわ。
こちら副会長さん。
作本です。
おこしやす。
お邪魔しています。
これは蕪翁に基づいた御神体でしてね。
蕪翁?室町時代の歌謡…まっ民間伝承の歌ですな。
どんな歌なんです?
(作本)カブ畑を営んでいた父親に反発して飛び出した息子が都での夢破れて帰ってみると畑は以前のまんまで父親は息子の鎌をきれいに磨いていた。
そんな親が子を思う気持ちを歌うたものです。
へぇ〜いい話ですね。
(三浦ゆかり)あの…小向さん。
(光子)あ三浦さん。
確か…警察に勤めてるって言うてはりましたね?…え?ええ。
ご主人が戻らないんですか?ええ。
ゆうべは会所に泊り込んだはずやな。
うん。
(光子)あ…展示品の見張り三浦さんが当番だったの。
じゃあ三浦さんはゆうべ会所に1人でいたんだな?そう…確か8時前に御神体が届いてで…みんなできれいに拭いて…。
そのあとは三浦さんを残して…みんな帰ったはずや。
うん。
いやそのあと息子さんが…。
あっ!そや。
彼が会所に残った。
ええ親父さんに呼び止められて…。
そのあと会所を訪ねた人は?私が8時半頃夜食を届けに…。
何時頃までいましたか?30分ほど…そやから9時頃まで。
そのあと会所には?いえ私は…。
うん私も。
今朝初めに会所に入ったのは…?ああそれは私。
鍵当番だったから。
でもその時はもう…。
三浦さんはいなかった?うん。
先に帰ったんだと思ってた。
(三浦拓海)母さんちょっとええ?今日仕立屋が検品検尺するのってこれ?そうそう向こうに出しといて。
あそれ私が納品した…。
そうか売れたんや。
あ作本さんはねこういう反物を作ってる人なの。
いや…小さな染織物工場をやってるだけです。
で拓海君はもうすぐここの若旦那よね〜。
いえ…。
えっ?拓海は東京で別の仕事を…。
あ〜…。
ゆうべ会所でお父さんと2人きりになったそうだね?え?ああ…ええ。
どんな話をしたのかな?別に。
ただ仕事の事を少し…。
その時お父さんに何か変わった事は?さあ…。
息子さん東京でどんな仕事してるんですか?
(ゆかり)ようわかりませんのやけどウェブデザイナーとかいうて…。
ほうコンピューター関係ですか?
(光子)でも親孝行よねこうして帰ってきて。
年に一度祇園祭の時だけです。
それでもうちの息子に比べたら…。
ここ潰してビルにせえとか言われとったなぁ。
うんそれでもめてとうとう出てってしもうた。
ここの会所作本さんのおうちなの。
じゃあ祭りの間はどうしてるんですか?工場に寝泊まりですわ。
この佇まい会所にするにはもってこいやもんな。
古いだけや。
そやから息子も寄りつかん。
どっこもそうやで。
うちの娘も豆腐屋潰してコンビニにせえなんて…祭りの手伝いもようせんくせに。
(楢崎)頼むわほんま…。
(パトカーのサイレン)
(携帯電話)はい土門。
(パトカーのサイレン)わかったすぐ向かう。
(警官)ああちょっと。
え?ああご苦労さん。
(木佐貫)土門さん。
…なんです?その格好。
ん?しかもみんなして。
あっ…。
ご苦労さまです。
それより状況説明。
あ…。
先ほど工事関係者から通報があって…。
身元は?今んとこ所持品からは…。
頭の傷は…2つ。
どっちかが致命傷ね。
ねえあそこから落ちた傷とか?あるいは鈍器で殴られた痕だ。
じゃ殺人!?それは解剖してからよ。
(光子)やだ!三浦さん!?
(警官)ああちょっと…!三浦さん!ダメだよ下がりなさい!
(光子)ちょっと…痛いって…!三浦さんて…行方不明の!?死亡推定時刻は昨日の夜8時から10時っちゅうとこだな。
被害者が会所にいたはずの時間だ。
頭の傷は2つ。
両方とも生活反応ありや。
つまり一度殴って死ななかったからもう一度殴った。
殺人だな。
って事は抵抗した可能性があるはずよね?うん。
おい。
これは…。
(祭囃子)
(乾)この頭の傷2つともほぼ同じ形ですね。
凶器はどんなものかしら?この傷!かかってる圧力が微妙に違います。
つまり…こういうものじゃないわね。
ええこういうものなら…。
(乾)こんなふうに一気に圧力がかかります。
じゃあ…。
何してんの?凶器の鑑定を。
これ近いですよ。
つまり凶器は棒状のもの。
ただ傷口に若干凹凸がありますね。
あ…君が死体の爪から検出したこれだけど…。
インディゴインドキシルブドウ糖…。
藍染めの成分だねぇ。
じゃあこれは…藍染めの糸?たぶんね。
でも…この成分だけが不可解なんだよなぁ。
藍染めの成分じゃありませんね。
しかも変性してるんだよこのタンパク質。
変性…構造が変わってるって事ですか?うんまあたぶんなんかの薬品が作用したんだろうけど…。
薬品ってなんですか?さすがにそれは微量すぎてねぇ…。
世界有数の分析装置のあるスプリング8にでも行かないと調べられない。
あ…所長にはまだお願いがあるんですけど。
ん?前代未聞ですよ!祇園祭の最中に会所に警察が入るやなんて!すいません。
ここで殺された可能性があるんで…。
あー!!困ります!その展示品は何百年も続いた世界的な遺産なんやから!えっじゃあルミノールも?そやがな。
そんなもん使わんといてください。
しかしですね会長これは捜査に必要な事で…。
(伊知郎)ちょっとごめんなさいよ。
ああなんですか所長。
いやこういう事もありえるってマリコに頼まれてね。
これは「ポリライト」といってものを傷つけずに潜在指紋や拭き取られた血痕がわかる装置です。
ですからご安心を。
(伊知郎)まずは指紋からいこうか。
(乾)結構ついてますね指紋。
(伊知郎)次は血液反応。
(乾)はい。
(光子)えっとるの?
(乾)出ました!
(乾)ここにも!これだけ広範囲だとたぶん致死量に近いね。
つまり被害者は一昨日の夜8時から10時の間にここで殺害された。
(乾)あっ…。
すいません電気を。
うん。
なんです?この棒。
「振棒」っていってね昔山鉾巡行の時に先頭の人が持って歩いたものなのよ。
(乾)かなりボコボコしてますね。
手で握る部分だから長い間にへこんだのねぇ。
すごいね〜木の棒なのにこんなにへこんでるよ。
これってもしかして…。
あっやっぱぴったりだ!被害者の傷の痕と。
って事はこれが被害者の頭を二度殴った凶器か。
(美貴)お兄ちゃん!裏のリヤカーからルミノール反応。
お願いします外してください。
(一同)はい。
死体はこれで運ばれたって事か。
うん。
(木佐貫)土門さん。
おう。
被害者の家族の事なんですが…。
ん?タンパク質が変性する原因?「藍染めの糸」でも藍染めの成分では変性しないわよ。
ええ他にタンパク質を変性させる原因っていうと?普通に考えたら熱とか圧力とか。
ウイルスとか細菌の可能性は?ウイルスでタンパク質が変性する事はないわ。
そう…。
うちの設備使えば正体を特定出来ると思うけど。
犯人を捜す手掛かりになるかもしれないの。
鑑定お願い出来ない?同じB型独身女のよしみで。
(木佐貫)ここは何代も続いた呉服屋さんで君はそれを継ぐかどうかでもう何年ももめている。
殺されたお父さんと一昨日の夜も。
疑うてるんですか?拓海を…。
近所の人が目撃してるんです。
嘘ですそんな事…!ええよ母さん。
拓海。
ここを継ぐ継がんであいつに勘当されたんが2年前や。
勘当されたのにこうして帰ってるんだ?祇園祭の時だけな。
手伝わな手足りへんの知ってるし。
ずいぶん父親思いだな。
あいつのためやない。
母さんが大変やから。
優しい子なんです。
変な事する子やありません。
本当の事を聞かせてくれるかな?一昨日親父さんと何があったのか…。
あの日はやっと御神体が届いて…それをみんなで飾ってきれいに拭いてそのあとあいつだけが会所に残るはずやったんやけど…。
ほな行こうか?
(三浦正太郎)お疲れさん。
ご苦労はん。
おい拓海。
お前残っとけ。
なんでわしを避けんのや?…は?わしがここにおる時はお前は店。
わしが店に戻るとお前はここ。
祭りの間中ずっとそやないか!いつも人手が足らないとこ手伝ってるだけだよ。
ほななんでうちやのうて友達の家へ泊まっとんのや!?勘当された身やからや!待て!話はまだ終わってへん!離せ!離さんか!
(物音)
(正太郎)あ…。
俺があんたを避けてるんはこうなるから…。
顔を会わすと必ずこうなるからや!今夜はうちに泊まるよ。
あんたがおらんさかいに!待て!断ち間違うた…。
わしは…お前を断ち間違うた!たちまち?何?断ち間違うた…反物の裁断を間違うっていう意味で…。
高価な反物を一発でダメにする。
この業界じゃ取り返しのつかん間違いや。
フッ…俺みたいな失敗作をいうんやろ。
拓海。
で君はそのあとどうしたんだ?どうしたもこうしたも出てったよ!そんな事言われて。
出て行ったのは何時頃だ?知らんよ。
そんな長い事いいひんかったし。
8時半頃私がうちの人に夜食を届けた時にはもう…。
だが…その夜食は食べていなかった。
え?手もつけずに残っていたそうです。
食べられない理由でも…あったんですかね?たとえばもう死んでいたから。
そんな!?で…君は会所を出たあとどうした?だから覚えてへんって…。
私と一緒にいました。
お母さん本当でしょうね?ほんまです。
割烹料理屋さんでご飯食べて…。
そやそんなこんなで夕食が遅うなって…。
この並びの「てっ平」いうお店調べてください。
(乾)こっちが血痕そっちが指紋ですね。
(乾)これなんだろ?これって…もしかして…。
マリコさん。
(伊知郎)あっどうもその節は…。
失礼します。
これ…死体の爪から出たタンパク質だけど…。
変性させたのは主に塩化マグネシウム塩化ナトリウムなんかね。
え?こんな成分が検出出来たの…。
あいや…いやホントすごい微量だったんだからねえ。
ええあの糸くずについていたタンパク質にほんのわずかに含まれていただけよ。
さすが曽根崎先生いい腕してます。
でも一体これが何の成分なのかは…。
海水の成分に近いわね。
「塩化カリウムマンガングルコン…」グルコン?ええここにわずかですけど。
あぁ〜こりゃにがりだな。
にがり?ってお豆腐作る時に使う?うんこりゃにがりだよ間違いない。
ずいぶん自信持って言うね。
最近までにがりダイエットしてたんでね。
古っ!
(日野)本当に効果あるのか一応成分調べたんだよ!効果はなかったようねぇ。
(美貴の笑い声)にがり…どうして被害者の爪に…。
にがり?うんそうかわかった。
どうだ?息子のアリバイは。
店の主人が覚えてました。
あの夜9時頃母親と一緒に来て10時頃までいたそうです。
9時頃に来て10時頃までいたか。
だから一応アリバイは成立です。
父親を殺した息子を母親がかばっていなきゃな。
その母親なんですが…。
うん。
(楢崎)そんな…単なる噂でっせ。
近所の無責任な。
(木佐貫)しかし三浦さんの奥さんとは最近よく2人きりで食事を…。
ゆかりさんには相談を受けてただけです。
家を出てしもうた息子さんの事で。
(木佐貫)本当にそれだけですか?そんな…ゆかりさんと私が不倫やなんて。
それがあの夜三浦さんにバレてもめた。
(楢崎)ええ加減にしてください。
あの…これにがりですか?え?ああ。
お使いのにがりはこれ1種類だけ…?そうですけど…それが?少し頂いてもいいですか?ええですよ。
あと…その前掛け…藍染めですか?と思いますけど…。
被害者の爪から検出したにがりと同じものでした。
は?そんな事わかるんですか?にがりは…塩化マグネシウム塩化ナトリウム塩化カリウムなどで出来てますがその割合はにがりによって異なります。
だからその割合で同じにがりかどうかわかるんですよ。
ちなみにここからも同じにがりが検出されました。
つまりあの夜あなたはここで被害者ともめた。
この前掛けをつけたまま。
服を掴み合うほどでない限り被害者の爪からこの前掛けに付着した成分が出る事はないでしょうねぇ。
さて服を掴み合うほどなぜもめたのでしょう?三浦さんが逆上して…。
逆上…なぜでしょう?私と奥さんの関係を疑うて…。
もちろんそんな事実あらへんけど三浦さん酔うてて…。
それは自供ですか?違う!殺してへん。
三浦さんはあの晩飲んでて話にならへんさかいわしそのままここを出て…。
ここを出たのは何時頃ですか?近くの寿司屋に行ったんが9時半頃やったから…その頃。
9時半まではここにいたんですね?十分殺す時間はありますね。
(楢崎)ちょっと待ってぇな!署に来てもらいましょうか会長。
それは強制ですか?逮捕状を取れば強制になります。
って事はまだ逮捕出来へんのやな。
令状を取るだけの材料はあるんですよ。
逮捕やないんなら失礼します。
不愉快です。
明日一番に令状を持って伺います会長。
会長さん今の話は…!?ちょっと見て!血液指紋か。
そう血でスタンプされた指紋。
被害者か犯人かたぶんそのどちらかが血のついた指でここに触れたのよ。
これで隠れてポリライトの光が当たらなかったのね。
鑑識に調べさせる。
私がやるわ。
どうせ血と指紋の両方調べる事になるし。
すぐに鑑定道具取ってくる。
失礼します。
(物音)誰!?ここで何してるの!?
(祭囃子)
(伊知郎)マリコ。
榊。
(祭囃子)よかった…。
マリコわかるか?父さん…。
もう少し発見が遅かったら大事だったんだぞ。
土門さんが見つけてくれなかったら…。
お前の無言の留守電があってな。
気づいてくれたんだ…ありがとう。
礼なら彼女に言え。
お前の命の恩人だ。
裕子さん…。
あ…私に輸血を…?同じB型独身女のよしみでね。
ありがとう。
犯人の顔は見たか?きっと証拠隠滅のためにお前を襲ったんだな。
証拠…。
あ…血液指紋は?残念だがきれいに拭き取られていた。
ルミノールで検出してみてください。
水で拭いたぐらいならそれで浮き出るはずです。
わかったやってみる。
それから私の白衣は?現場で着てた…。
まだこの病院にあるが。
そこに写真が入ってるはずなの。
ここなんだけど…。
たぶん…「重複指紋」よ。
重複指紋?いくつかの指紋が重なったものです。
所長これを採取してください。
それで何がわかるんだ?何もわからないかもしれない。
でももしその中に被害者の指紋があれば…。
(美貴)ひどい…。
絶対犯人を挙げてやる。
電気消して。
はい。
どうです?出ました?血液指紋。
(伊知郎)どうやら薬剤で拭き取られてるようだね。
じゃあ残すは…。
(伊知郎)おう。
(日野)ああ一致した。
(伊知郎)これ楢崎会長。
(光子)はい。
おはようございます!おはよう…。
(美貴)マリコさん!?
(伊知郎)おいおい退院はまだ早いだろう?病院の先生にもそう言われちゃった。
言われちゃったじゃないわよ。
毎日通院するって説得してきたから大丈夫。
ってかそれ大丈夫って言いませんよ。
それより御神体の指紋は?重複指紋。
ああフィルムにしてみた。
それを一人ひとりの指紋に分解したのがこれです。
(光子)全部お祭りの関係者だったわ。
やった!…え?これで犯人落とせるかもしれない。
被害者の指紋?でどうやって?日野さん手伝って。
え…俺?この重複指紋どんな順番でついたか調べるわよ。
そんな事できるの?できるの。
筆跡鑑定の知識さえあればね。
あるけど…。
まずこれとこれだけどこの2つの指紋が重なって…。
この部分ができてる。
例えばここ指紋線の交差してる部分。
こんなふうに指紋線が途切れてるほうが先についた指紋。
筆跡鑑定と同じ理屈ね。
そうペンのインクが指紋の皮脂に変わっただけね。
つまりこの指紋が先についてからこの指紋がついた。
よしこの調子で順番を出していきましょう。
この指紋は間ね。
だな。
この御神体のここについていた指紋を拡大したフィルムがこれです。
これは5人の指紋が重なった重複指紋でした。
(拓海)重複指紋…?そしてこの指紋の重なった順番ですが鑑定の結果1番目は拓海君。
2番目は奥さん。
3番目は会長。
そして4番目は作本さん。
最後は被害者の三浦さん。
この御神体ここにいつ届きましたか?ええ…業者の手違いでかなり遅れて…。
8時前に御神体が届いてでみんなできれいに拭いて…。
つまり被害者がこれに触れるのはその夜だけです。
その夜8時過ぎ君はここで父親と口論になった。
(正太郎の声)断ち間違うた…。
わしはお前を断ち間違うた!離せや!!その後は奥さんあなたがここに夜食を持ってきた。
(ゆかりの声)ちゃんと食べてや。
ああやっと届いたんや。
ああ…!奥さんが帰った後は会長あなたがここで被害者と揉めた。
奥さんとそんなんなるはずないやろ!やかましいや!確かにそやが殺してへん。
ええそれはこの指紋が証明しています。
それはこの指紋が証明しています。
作本さんあなたの指紋が。
いや別に不思議な事はありませんやろ。
私の指紋が御神体についてても。
問題は会長と被害者の間についていたという事です。
つまりあなたは会長が出て行った後そして被害者が死亡する前ここにいたという事ですよ。
だがあなたはその夜ここには来なかったと言った。
その後会所へは?いえ私は。
…私も。
なぜそんな嘘を?作本さんあんた…!あっ勘違いや!勘違い?思い出したあの晩ここに酒を差し入れに来たんや!ではここに来た事は認めるんですね?…けど三浦さんを殺すやなんてそんな…。
ではなぜ私を襲ったんです?ここにあった血液指紋その証拠を消すためだろう?私やない!何の証拠があって。
人と人が接触すれば必ず証拠が残るんですよ。
そう私の爪の中にも。
あの時私は犯人の皮膚のどこかを引っかきました。
思ったとおり私の爪から何者かの皮膚片が出ました。
揉み合った犯人のだろうな。
これがその皮膚のDNA鑑定書です。
どうでしょう。
あなたのDNAを鑑定して疑いを晴らしてみませんか?作本さん!三浦さんが悪いんや…!あの晩突然怒り出して…。
そんな事許されへん!ここはな蕪山の会所やで。
その前に私の家や。
自分の家をどないしようと私の勝手やないか。
ここをビルにしてどないするつもりや!?そうすれば息子が戻ってくるかもしれんのや!何をアホな事を…。
今年の祭りが終わったら私は蕪山も終いにしよう思うてる。
そんな…。
潮時や!そろそろこの祭りも潮時やで三浦さん。
ここが無うなったら…祭りが無うなったら拓海が帰って来ひんようになるんや!!何言うてんのや!!若い人には祭りより新しい仕事や生活のほうが…。
そんな事そんな事させるかい!!ええか祭りの後そないな事言うてみいあんたとの付き合いもこれまでや!仕事も一切回さへんからなっ!!そんな…!それこそ公私混同やないか!!無茶苦茶やないか!!やかましい!話はこれまでや!!ああ…。
出てってくれ。
そんなん…そんなん冗談やない!
(正太郎)あっ…!!
(作本)今でもわからん…何であないに怒らはったんか。
祭りがなくなったら息子が帰ってこなくなる。
被害者はそう言ったんだな?連れて行け。
「断ち間違うた」…。
親父さんの言葉だ。
君を失敗作だと言った。
だが本当にそうか?あれから考えたんだがこうは思えないか?親父さんは自分の事を言ったのかもしれないって。
…え!?君を勘当したのは間違いだった。
それをずっと…ずっと後悔している。
わしはお前を断ち間違うた!だからこそ祭りを終わりにする事はできなかった。
そうは聞こえなかったか?そうや拓海。
きっとそう…。
待ってたのね毎年…勘当したはずの息子を。
そんなん…そんなんアホみたいや…!だったらそう言や良かったやんか。
親父も…。
俺も…。
きっと犯人も被害者も息子に帰ってきて欲しかった。
それだけなのよね。
うん…単純なのに複雑だな親子の問題ってやつは…。
ああ榊さん待ってたんですわ。
え過ぎてます?約束の時間。
いえいえちょっと確認したい事がありまして。
最近大きな感染症にかからはりました?はぁ?いいえ。
いや別に異常はないんやけどね…。
あの何なんでしょう?榊さんの血液に感染症の抗体が。
抗体!?ええ。
(祭囃子)
(裕子)暑いのに悪いわね。
これ吸えるとこここしかなくて。
1日実験室いると吸えなくてね。
レベル4実験室ね。
そうもう入り浸り。
使えるようになったのがうれしくて。
何…?血液の顕微鏡写真。
裕子さんならそれを見てどう思う?どうって…かなり白血球の数が多いわね。
激しい運動でもしたか…この抗体…!?何の抗体だかわかりますね?アルタイラウイルス。
そうですアルタイラ出血熱が完治した証です。
俺の血液にも同じ抗体がありました。
じゃあこれあなたの血液?いいえ。
私の血液です。
どういう事かわかりますね?輸血…。
そうその抗体は先生の血の中にあったもんだ。
抗体は時間経過で消滅する。
だからその大きさと数を見ればいつできた抗体かわかる。
抗体ができたのは14〜15日前。
赤井逸郎が関空病院から逃げ出した後だ。
でもその時まだ日本に抗血清は届いていない。
赤井がサルギスタンから持ち込んだものそうだな?赤井逸郎という男性です。
赤井さんを関空病院から逃がしたのはあなた。
そして検査の時に抜いた赤井さんの血液をネズミに注射したのもあなた。
たぶんその作業の過程であなたは赤井さんの血のついた針を間違って自分に刺してしまった。
それであなたは自分に抗血清を注射した。
あんたの体にある抗体が動かぬ証拠だ。
その注射器を赤井さんのホテルの部屋に隠したのも彼の服にネズミの毛をつけたのもあなたね?赤井をテロの犯人にするために。
CDCやジャン・メリューが今動ける状態じゃない事もあんたなら事前に知る事ができる。
感染の拡大に蚊が使われた可能性がある事を指摘してネズミがいる場所を教えてくれたのもあなた。
あのテロ騒ぎの中俺たちはあんたの手のひらの上でもてあそばれていたというわけか。
さすがだな先生。
ひと月ほど前になるわ。
国際電話があったのよ。
え…?相談されたのよ赤井先生に。
もう余命いくばくもない。
心残りは…あなたへの復讐。
まさかそれでアルタイラ出血熱を彼に…。
すごいわね復讐のエネルギーって。
本当に感染してくるんだもの。
私はそれを少し利用しただけよ。
信じられない。
あなたは科学者なのよ。
だからこそこのままでいいとは思えなかった!チャンスだと思った赤井先生からその話を聞いた時。
レベル4実験室を使うチャンスだと?テロでも起きなきゃ呑気な日本人は目覚めないのよ!!なんて事言うの?じゃあレベル4ウイルスを扱えない日本はどうなるの?危険な研究は今後も外国の研究者に押しつけるの!?大体レベル4実験室が未稼動でウイルスの脅威を乗り越えてきた日本の歴史なんて感染症学的にはほとんど奇跡なのよ!でも奇跡は長くは続かない。
ここ数年でどれだけ新しいウイルスが発見されてると思ってるの!それが…それが土門さんの命を…いいえ日本中の人の命を危険にさらした言い訳なの!?それは誤算だったわ。
まさか赤井先生の体内でウイルスが突然変異するとは。
そうたとえどんな優秀な科学者でもウイルスを思いどおりにする事はできない。
それこそ奇跡的に回復したネズミがいなかったら土門さんは死んでたのよ。
私はただ科学の力で人を助けたいと…。
だから科学の力で人を殺そうとしたの?あなたは科学者じゃない。
ただの犯罪者よ。
…そうね。
でも…レベル4実験室は動き出したわ。
もうすぐ終わりだな祗園祭も。
なんか今年は特に慌しかった。
…いろいろありすぎたな。
ありがとうございました!ああ拓海君!お店のお手伝い?ええ。
東京へはいつ帰るんだ?いえ。
ずっといますこっちに。
ええ?そう決めました。
そうかそうだよな。
母親ひとり残して帰れないよな。
母には見てもらおうと思ってます。
え?今からでも自分に呉服屋の若旦那が務まるのか。
俺が祭りを受け継いでいけるのか。
何でかしら?ん?病気の怖さはなってみないとわからない。
ほんとにそうだな。
親のありがたみは生きているうちはわからない。
お前も大切にしろよ。
え?親父さん所長の事だ。
うん…そうね。
大変だったんだぞお前が病院に運ばれた時取り乱して。
父さんが?うん。
お前の着替えをひとりで用意できなかったほどだ。
そう父さんが…。
え?着替え!?特に下着をしまってある場所がわからなくてなお前の家俺たちみんなで探し回ったんだぞ。
ちょっと…俺たちみんなって?俺とか科捜研の連中とか。
じゃあみんな私の下着見たの!?ちょっと何でそこで黙るのよ?おいどこ行くんだ?父さんに文句言ってくる!こらこら今親を大切にって言ったばっかだろ!ほら怒るななっ?なっ?わかってるって。
2015/11/28(土) 12:00〜14:00
ABCテレビ1
新・科捜研の女3 #1SP[再][字]
舞台は京都府警科学捜査研究所・・・通称“科捜研” 沢口靖子演じる榊マリコが、科学を武器に難事件を解決します!微細証拠から始まるキレの良い科学捜査をお楽しみに!
詳細情報
◇番組内容
京都の祭りに人が死ぬ!!
祇園祭を襲う二つの事件!
致死率100%の細菌テロ!!
マリコが刺された!山鉾町の連続殺人!!
◇出演者
沢口靖子 ゲスト とよた真帆
内藤剛志 寺田 農
加藤たか子 姜 暢雄ほか
斉藤 暁
深浦加奈子
泉 政行
森本亮治
小野武彦
田中 健
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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