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 口永良部島(くちのえらぶじま、鹿児島県屋久島町)の新岳(しんだけ)の爆発的噴火で、全島民が屋久島などに避難して29日で半年がたった。火山活動が落ち着いたため年内に帰島できる見通しが立ち、住民にも笑顔が戻ってきた。ただ、帰島後の生活再建に不安を感じている人もいる。

 屋久島で29日、避難生活を送る口永良部島の住民約20人と、屋久島の人たち約110人が集まって卓球大会が開かれた。口永良部島・湯向(ゆむぎ)地区の畠喜人(はたけ・よしと)区長(58)が支援への感謝を伝え、口永良部島の復興を願おうと企画した。

 畠さんは「屋久島の人に朝、昼、晩、いつもごちそうを作っていただき、至れり尽くせりだった。恩返しをしたい」と開会あいさつ。畠さんらが口永良部近海で取ったイセエビ約130匹を参加賞として配った。畠さんは「屋久島の人と立派な大会を開けて感激している。いい復興のスタートになる」と話した。

 口永良部島では6月19日を最後に噴火はなく、火山活動も落ち着いたため、気象庁は10月21日、警戒範囲を火口から最大2・5キロの範囲に縮小。居住区域の大半が範囲から外れ、町は年内帰島をめざして復旧作業に着手した。

 今月16日からは職員らが島に常駐し、水道や電気、通信などのライフラインは8割方復旧したという。大きな噴火の際に住民が身を寄せる島西部・番屋ケ峰の一時避難施設の整備など、残る作業は住民の帰島後に進める方針。12月1日には荒木耕治町長が島に渡り、復旧状況を視察する。

 帰島の準備が着々と進む中、住民らには、島に戻った後の生活への期待と不安の両方の思いが広がる。

 島で民宿「がじゅまる」を経営する渡辺森保さん(70)は、なるべく早く営業を再開したいと意気込む。ただ、この半年間は貯金を取り崩して過ごしたため、再開資金が心配の種だ。古くなった調味料などの買い替え、新しい食材の仕入れ、施設の清掃や修繕にも相当な費用がかかる。渡辺さんは「営業再開に向けた資金の支援を、町や県にお願いしたい」と話す。(神崎卓征、屋久島通信員・武田剛)