「アートシーン」です。
長い修理を終えおよそ10年ぶりに俵屋宗達の国宝が公開されています。
まずはその展覧会からです。
去年4月から休館していた静嘉堂文庫美術館がリニューアル工事を終え開館しました。
館所蔵の琳派の名品を中心に関連する作品を紹介する展覧会です。
およそ10年ぶりに公開された…右隻は光源氏がかつての思い人空蝉と坂の関で会う場面。
左隻は「澪標」明石の上との再会を描いています。
源氏は牛車の中明石の上は船の中。
あえて主要な人物を描かずに暗示するという独創的な発想です。
今回修理の過程で屏風の縁裂の下にも絵が描かれている事が分かりその部分を出して表装を新調しました。
左下の木に注目して下さい。
根元の縁裂の下から秋を暗示する3枚の紅葉した葉が見つかりました。
(大橋)今まではそれほどたくさん紅葉した葉っぱが画面上にあったわけではなかったんですけれどももうちょっとその季節感をもってこの作品を見る事が可能となったかなと。
本当に1センチ未満のちょっとの差なんですけれどもそこでもいろいろ宗達が本当に描きたかったところが分かってとても面白いなというふうに思いました。
こちらは尾形光琳の作品。
夏の風物詩鵜飼いです。
柔らかな波の線。
薄墨とほのかな藍色がうねりを表し短く跳ねるような線が俊敏な鵜匠の姿を捉えています。
酒井抱一の「波図屏風」。
月明かりに照らされた勇壮な海です。
この屏風について語った直筆の書簡が残されています。
光琳に私淑していた抱一は光琳が金屏風に描いた波の絵に感銘しこれを手がけたといいます。
光琳の雅な作風に挑戦するかのように銀地に墨で荒々しい波を表現しました。
リニューアルを機会に人気の収蔵品国宝「曜変天目」も展示されています。
宗達の「源氏物語」。
あれもすばらしいですけど抱一の「波図屏風」がとても好きだなと思いましたね。
銀地は抱一の得意技でもあると思うんですけども光琳への思いというのがすごい伝わってくるのがいいなって思いました。
実際見てみたいですよね。
ではその他の展覧会です。
閉塞的な美術界に風穴を開けようと挑み続けた岡本太郎と中村正義。
2人の画家の展覧会です。
岡本太郎の初期の作品…パリでシュルレアリスムなどの前衛芸術を学んだあと見る人の心と体をわしづかみにするような作品を制作するようになります。
襦袢姿の妖艶な舞妓。
中村は「日展」に所属し将来を嘱望される存在でしたがその独創性は旧来の日本画の枠に収まるものではありませんでした。
日展脱退後中村が描いた…にかわの代わりに木工用接着剤を用いたり蛍光塗料を使ったり。
奔放で強烈な表現を極めていきます。
美術界の革新を目指し闘い続けた岡本と中村。
その接点となったのが1975年の「東京展」です。
2人はその実現に力を尽くしました。
無審査無褒賞自由出品の展覧会。
一般人と前衛アーティストが肩を並べます。
会場の外では寺山修司率いる「天井桟敷」が公演を行うなどジャンルを超えた個性が集結しました。
岡本太郎が東京展に出品した…「展覧会は祭りでなければならない」と主張するその言葉どおりエネルギーにあふれる作品です。
2人の情熱の軌跡をたどる展覧会。
日本画家川端龍子の生誕130年を記念する展覧会。
洋画から日本画に転じた龍子。
洋画風の荒いタッチを取り入れるなど新しい日本画を模索しました。
太平洋戦争末期自ら率いる日本画団体青龍社の展覧会に出品した作品。
尾形光琳の屏風に着想を得ながら色の組み合わせや筆のタッチなどに個性が発揮されています。
美人画の巨匠として名高い伊東深水の展覧会が愛知県の名都美術館で開かれています。
手ぬぐいを絞る白い手。
たらいから立ち上る湯気の中に官能的な色香が漂います。
香りを聞く聞香会の様子を描いたもの。
着物の女性たちの中に洋装の女性を描く事で戦後の世相を表現しています。
時代を映す女性の姿を描いた展覧会。
芸術家山口啓介。
自らの時代と真摯に向き合ってきました。
旧約聖書の「ノアの方舟」を原典とした「方舟」。
生命をつなぐ象徴として度々登場します。
福島原発の事故後制作された…4基の建屋に対応させた4つの山。
この方舟が覆いかぶさり事故を終息再生させるという願いが込められています。
たばこと塩の博物館が東京スカイツリーのお膝元に移転開館しました。
江戸時代を中心とする喫煙具とそれを描いた浮世絵を紹介する展覧会です。
円熟期の歌麿が吉原で人気の花魁を描いたもの。
かんざしを直す指先に色気を感じさせます。
右手には朱色の長い煙管。
多くの遊女が愛用したものです。
こちらは花魁が実際に使用していたとされる煙管とたばこ盆。
左は種火を入れる「火入れ」右は吸い殻を入れる「灰落とし」引き出しには刻みたばこを入れます。
火入れにともる炭火のほのかな明かりが粋な夜を演出しました。
大名家で使用されていたと伝わる手の込んだ蒔絵物です。
船首は「灰落とし」屋根の部分が「火入れ」船尾は「たばこ入れ」。
趣向を凝らした作りになっています。
おなじみ…ここにも喫煙具が描かれています。
さてどこでしょう?正解は客引きに荷物を引っ張られている男性の腰元。
こちら携帯用の「たばこ入れ」。
「武士は刀町人はたばこ入れ」と言われるほどセンスを競うこだわりの品でした。
大正昭和にかけ活躍した落語家桂文楽が収集したたばこ入れ。
煙管を入れる蒔絵の筒刻みたばこを入れる袋には輸入物の更紗。
羽子板形の留め具が付いています。
季節や行事に合わせさまざまなたばこ入れが作られました。
粋な文化に触れる展覧会。
「アートシーン」でした。
ではまた次回。
2015/11/29(日) 09:45〜10:00
NHKEテレ1大阪
日曜美術館 アートシーン▽“金銀の系譜−宗達・光琳・抱一をめぐる美の世界−”展[字]
「金銀の系譜−宗達・光琳・抱一をめぐる美の世界−」(静嘉堂文庫美術館 10月31日〜12月23日)ほか、展覧会情報
詳細情報
番組内容
「金銀の系譜−宗達・光琳・抱一をめぐる美の世界−」(静嘉堂文庫美術館 10月31日〜12月23日)ほか、展覧会情報
出演者
【司会】井浦新,伊東敏恵
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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