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人工衛星打ち上げビジネス 現状と展望は
11月24日 5時59分

人工衛星を打ち上げる世界市場の需要は、1年におよそ20回で、ロシアとヨーロッパのロケットが大きなシェアを占めるなか、アメリカのロケットが急速に受注を伸ばし、競争が激しくなっています。
三菱重工業のまとめによりますと、世界の商業衛星の打ち上げ回数は、2010年以降、1年に平均で15回となっています。また、人工衛星を打ち上げる手段がないアジアやアフリカの国や地域が、外国のロケットで行う打ち上げも合わせた衛星打ち上げ市場全体の需要は、1年におよそ20回となっています。
このうち、2010年から2013年までの4年間に行われた商業衛星の打ち上げ、合わせて60回の内訳をみますと、最も多く受注したのはロシアの「プロトン」で、29回と半数近くを占めています。次に多く受注したのがヨーロッパの「アリアン5」で、19回と全体の3分の1近くを占めています。
こうしたなか、世界市場で急成長しているのがアメリカの「ファルコン9」で、去年1年間だけで商業衛星を4回打ち上げ、市場の勢力図を塗り替える勢いです。
人工衛星の1回当たりの打ち上げ費用は、現在70億円から100億円とされていますが、欧米やロシア、それに中国やインドでは、より低価格のロケットの開発が進められ、2020年ごろまでには出そろう見通しで、今後市場での競争が一段と激しさを増しそうです。

三菱重工業の戦略は

三菱重工業は、衛星打ち上げの世界市場で全体の5%から10%に当たる、年間1回から2回の受注を目指しています。しかし、主力の「H2Aロケット」は打ち上げ費用がおよそ100億円とされ、各国のロケットに比べ2割から3割高いとみられていて受注競争で不利な条件になっています。
こうしたなか三菱重工業は、エンジンの性能を高める改良を行って、より遠くまで飛行できるようにすることで、市場での競争力を高めようとしています。これまで「H2Aロケット」を使って高度3万6000キロの軌道を目指す場合、ロケットが送り届けるのは高度300キロ付近までで、その先は人工衛星のエンジンで飛行する必要がありました。今回の改良型では、ロケットが高度3万4000キロまで送り届けるため、人工衛星の燃料を大幅に節約することができ、衛星の寿命を延ばすことができるようになりました。
ただ、2020年ごろには、各国の次世代ロケットの開発が進み、価格競争は一段と激しさを増すものとみられています。こうした競争に備えて、三菱重工業はJAXA=宇宙航空研究開発機構とともに、新型の主力ロケット「H3」の開発を進めています。「H3」は、打ち上げ能力を「H2A」以上に高める一方、自動車や航空機で使われている汎用性の高い部品を採用することで打ち上げコストを削減し、これまでの半分のおよそ50億円に抑えることを目指しています。三菱重工業とJAXAでは、「H3」の1号機を2020年に打ち上げ、厳しい競争の中で受注獲得を目指すことにしています。

衛星打ち上げビジネスを担当する三菱重工業の小笠原宏営業部長は「これまで世界では、日本に商業用の打ち上げを行う会社があること自体認識されていなかったので、今回初めて受注した商業衛星を計画どおりに打ち上げることで、世界に日本の存在をアピールしたい」と話しています。そのうえで、「コストをいかに下げるかが大きな課題になっているが、日本人の丁寧な対応は世界にも評価されると思っており、衛星を打ち上げる企業側の要望に、可能なかぎりの対応を行っていくことで少しでも多くの受注を目指したい」と話しています。

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