お前が望むならいつでもこの家を出ていけるようにと。
富岡製糸場を閉鎖…。
私たちもできる事をやりましょう。
時にはちょっと贅沢なお肉を頂きたくなることありますよね。
イッピンリサーチャーは女優の黒谷友香さん。
う〜んおいしそう!でも今回のイッピンはこちらの「ステーキナイフ」。
たゆとう水のような「刃紋」が神秘的なまでの美しさをたたえています。
美しいだけじゃないんです。
(黒谷)切りま〜す。
ス〜っとやっただけでほら。
あっという間に切れちゃうから食べるのが早くなっちゃう。
しかも切りたい時だけよく切れるという優れもの。
上から押し当てるだけでは切れない工夫がされているのでうっかり手を傷つける心配はありません。
安全性にも心を配っています。
これは福井県の「越前打刃物」。
今予約待ちで生産が追いつかないほどの大人気なんです。
丈夫で長もちと評判のナイフもあります。
酷使しても刃こぼれしにくいとプロの料理人も絶賛。
こちらは…スタイリッシュで使い心地も抜群。
そしてもちろん…。
最高の切れ味にさまざまな機能性を兼ね備えた「越前打刃物」。
その魅力に迫ります。
福井県越前市。
700年前から刃物を作り続け今も33の製造会社があります。
黒谷さんまずステーキナイフを開発した工房を訪ねました。
失礼しま〜す。
あこんにちは。
(増谷)こんにちは。
よろしくお願いします。
ご苦労さまです。
自ら「研ぎ」を行う職人でもあります。
わ!すご〜い!えきれ〜!きゃ〜すご〜い!ちょっとごく一部なんですけど。
いろんな形があるんですね。
(増谷)そうですね。
創業62年。
もともと研磨を専門に行っていましたが近年包丁を中心に家庭用からプロ仕様までさまざまな刃物を製造しています。
ステーキナイフは2年前120本以上の試作品を経て完成させました。
きっかけはある日本人シェフからの依頼。
それはよく切れることはもちろん安全に使えるナイフをというものでした。
そしてこのステーキナイフ最大の特徴は…。
実はこの美しい模様が切れ味と密接に結びついているんです。
その不思議な関係を見ていきましょう。
ステーキナイフの素材は鋼。
鉄の一種で炭素を多く含む強い金属。
硬さの異なる2種類の鋼を交互に重ねてなんと70層にしているんです。
これを何度もプレス機にかけて厚さ5ミリの板状になるまで圧縮します。
拡大するとこのとおり。
薄い色は「硬い鋼」。
濃いのが「軟らかい鋼」です。
次に鋼の板をナイフの形状にしていきます。
まず炉で熱してからハンマーで繰り返したたきますがこれが「鍛造」。
たたくことで形をつくり強く鍛える。
だから「打刃物」と言うんです。
繰り返したたくと表面がボコボコに荒れていきますが実はこれがあの神秘的な模様を生み出すんです。
たたいた板の断面を見ると鋼の層の入り組んだ山々が連なっています。
この山を砥石で削っていくと2種類の鋼の層が現れてくるんです。
これが美しい「刃紋」の正体でした。
最後に切れ味を生み出す作業。
砥石で削り刃を付けていきます。
ろくろみたいなの何ですか?これ砥石が回ってます。
回転砥石でこの砥石がすごい!削ると凹凸になるってどういうこと?その作業を見ていきます。
回転する砥石にナイフを軽く当てさらにもう一回。
実はこれで終了なんですが…。
指を当ててですね刃先砥石え全然そんなふうに見えなかったですけど今。
見ていただくと少し白く光ってますよね。
ホントだ。
削る前と比べます。
こちらは…そして…僅かに光っている所が削った部分です。
幅は僅か0.1ミリ。
ここに秘密が隠されています。
硬い鋼と軟らかい鋼が層を成し模様をつくり出しているナイフ。
端を軽く削ると軟らかい層はよく削れますが硬い層はあまり削られません。
こうして複雑な凹凸が現れることになります。
これが切れ味の秘密。
ナイフを引くと凹凸が肉の繊維をしっかりとらえ鋭く切断していくんです。
刃を削る作業にはもうひとつ秘密があるのだと言います。
改めて作業を見ると…。
おや?この部分。
紙一枚分僅かに浮かせています。
一体どうしてなのでしょうか?実際お肉切る部分を最大限に刃を立ててます。
先のこれぐらいの所はそうです。
一番切れるから。
そうです。
増谷さんはナイフの先端と持ち手に近い所は切れないように。
その間は鋭くなるよう研ぎ分けていました。
肉を切るために鋭くしなければならない部分だけを均等に研いでいく。
指先に全神経を集中させて行う匠の技。
これが安全に肉だけを切ることができるステーキナイフの秘密。
さらに増谷さんは先端の形状にも工夫を加えました。
切れ味がよく安心して使えてしかも美しい。
職人の技と思いの詰まったイッピンです。
そして今年。
あ〜すごい!
(紙を切る音)増谷さんはステーキナイフの技術を生かしレターオープナーを開発。
スタイリッシュな形は手が刃に触れることなく手紙を開封できるようにとの思いから生まれました。
黒谷さん越前打刃物を象徴するものがあると聞きました。
へぇ〜すごい。
あこの辺が鎌ですね。
ずらりと並ぶ「鎌」。
実は越前打刃物の歴史は「鎌づくり」から始まったと言われています。
なんかいっぱいあるんですね種類って。
そうですね。
伝承では700年前京都の刀鍛冶がこの地に移り住み近隣の農家のために鎌を作りながらその技を広めていったと伝えられています。
やがてさまざまな用途に合わせた鎌を作るようになり明治時代には全国一の生産量を誇ります。
これはワカメを刈り取るための鎌。
水の抵抗を受けないよう細めに作っています。
漆かき用の鎌。
先端の突起で木を傷つけ樹液をとります。
古来漆器づくりが盛んな越前。
漆かき職人は各地に赴いて漆をとりながら鎌の行商も行いました。
こうして越前の鎌は全国に知られていったのです。
こちらはやわらかい草を刈るための「薄鎌」。
ガーデニングが趣味の黒谷さん。
使い心地を試すと…。
すごい!これ見て!見てって…フフフ。
こんな切れ味いいと。
いや〜んこれいいわ。
黒谷さんをメロメロにした鎌。
どうやって作られているんでしょうか。
あいらっしゃった。
こんにちは!
(岡田)こんにちは。
よろしくお願いします。
キャリア50年鎌づくり名人の…今はね鎌作ってるんですね。
自分がこうやってこういうこと出来るとだんだん面白くなって。
うんうん。
何でも…。
これまでに作ってきた鎌は100種類に及ぶと言いますが…。
舞小槌。
岡田さんは昔ながらの方法で鎌を作り続けています。
鎌を形づくるのがこの「舞小槌」。
伝統的な道具でまるで舞い踊るように小槌をふるうことからその名が付いたと言われています。
さぁ岡田さんの「薄鎌」づくりの技を拝見。
こういう材料鉄材をね…。
材料は鉄と鋼を合わせたもの。
まず炉の中に入れ850度まで熱したあと鎌の形を作っていきます。
わ真っ赤か。
(舞小槌でたたく音)わぁ〜。
舞小槌を軽快にふるう岡田さん。
あ形が変わってきた!わすごい。
なんか飴細工みたい。
材料を縦に横にと向きを変えながら舞小槌で打ち徐々に鎌の形に整えていきます。
もうだいぶ形変わりましたね。
これたたくポイントみたいなのがあるんですかそれぞれ…。
どこですか。
えここ?うん。
つまりこれをキュッと曲げたのはここでこれでやったわけね。
う〜んなるほどね。
刃の付け根鎌が急角度で曲がるこの部分を作る力加減が難しいという岡田さん。
鎌の種類ごとに曲げ方は異なります。
「薄鎌」とワカメをとるための「ワカメ刈り鎌」を比べるとこの違い。
こうした微妙な差を舞小槌のたたき方の違いで生み出していくんです。
力を込め目いっぱいたたくのは薄鎌。
たたいた部分は大きくゆがみます。
それをすぐさま平らにならしてまたたたいていきます。
一方ワカメ刈り鎌は軽めのたたき。
細長いので力を入れすぎると折れてしまいかねません。
小槌の舞い方の僅かな違いが用途に応じた形を作り出していたのです。
岡田さんは思いどおりに舞小槌を扱えるようになるまで10年の歳月を要したと言います。
人じゃないとねそういう細かいところは。
そうやねあとは…すごいですよ。
そうですよねぇ。
舞小槌一つでさまざまな形を作り分ける熟練の手さばき。
何百年と受け継がれてきた伝統の姿です。
料理がおいしいと評判の旅館。
厨房を仕切る三好良二さんが20年前から使い続けているのが越前打刃物のキッチンナイフ。
長年愛用するのは切れ味の良さのほかにもうひとつ理由があります。
毎日酷使しても刃こぼれしない。
丈夫さの秘密はどこにあるのでしょうか。
黒谷さんキッチンナイフを作った工房を訪ねました。
あ〜いっぱい。
包丁を中心にハサミや園芸道具などさまざまな刃物を製造しています。
あこれかな?すごいきれい。
普通ここがね木ですもんね。
丈夫なキッチンナイフは32年前の発売ながらいまだに売れ続けているというロングセラーなんです。
作るのは職人歴60年の…これは何度ぐらいなんですかこの中は?すごい。
キッチンナイフの刃の材料は鋼。
刃に丈夫さをもたらすのは鍛造作業。
まず熱した材料をベルトハンマーという専用の機械でたたきおおまかに形を整えていきます。
ここで加茂さん。
なんと成形した板を2枚重ね合わせました。
「2枚広げ」という伝統の技です。
2枚重ねるんですか?2枚広げることはですね…
(鋼をたたく音)鋼は熱いうちにたたくと丈夫になりますがそれが難しいんです。
鋼は冷めやすく温度が下がりすぎるとたたいても効果が得にくいからです。
ところが2枚にするとより熱を保てるようになるそう。
そのため1枚よりも長くたたくことができるというんです。
比べると…1枚だとみるみる冷めて色が黒くなりますが2枚広げは赤みを長く保っています。
冷めるまでの時間の差は12秒。
2枚広げは1.5倍も多くたたくことができました。
厚みを比べると2枚広げは薄く引き締まりいっそう鍛えられたことが分かります。
しかし2枚広げは職人にとっては大きな負担です。
重ねた板がズレないよう強い力で固定しながら長い振動時間に耐えなければならないからです。
黒谷さん加茂さんの手を見せてもらいました。
見て見てほら!ほらすご〜い!厚い!刃物づくり一筋60年。
職人の分厚く大きな手です。
鍛造が終わったらナイフの形に整え完成させていきます。
「鉄は熱いうちに打て」。
この言葉を突きつけた伝統の技が丈夫なキッチンナイフを生み出していました。
実は加茂さんの工房は越前の刃物会社が協力して作った共同工房。
鍛冶職人や研ぎ師などさまざまな職人が互いに背中を見せ合いながら共同の設備で刃物づくりを行っています。
33年前値段の安い包丁の普及により越前打刃物が衰退しつつあった時職人たちが集結。
一丸となって新しい製品を開発し危機を乗り越えようとしました。
刃と柄が一体となったキッチンナイフはその最初の製品。
斬新なデザインをどう実現するか。
試行錯誤を経て誕生。
その後も共同工房では様々な刃物を生み出してきました。
近年は若者も増えいっそうの活気にあふれています。
共同工房で13年間腕を磨き続けた…いろんな…そこにいるんでね。
越前打刃物の切れ味に魅了されこの道を選んだ黒崎さんは独り立ちし今年自らの工房を構えました。
黒崎さんのトレードマークは「つちめ」という模様。
ハンマーのたたき跡をあえて残すデザイン。
その独特の表情が海外でも高く評価されています。
刃物は切れて当たり前。
さらにどうしたら使いやすくなるのか。
喜んで手にとってくれるのか。
越前の職人は700年の伝統を担いつつ探求を続けます。
2015/11/29(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「切れる!だけでは物足りない〜福井 越前打刃物〜」[字]
切れ味抜群で、しかも美しいステーキナイフ、刃こぼれしにくい丈夫なキッチンナイフなど、700年の伝統を持つ越前打刃物のイッピンを、女優・黒谷友香がリサーチする。
詳細情報
番組内容
神秘的なまでに美しい刃紋を持ち、しかも切れ味が抜群。さらに安全性にも心を配ったステーキナイフが今、大人気だ。そして、丈夫で刃こぼれしにくいキッチンナイフは30年以上のロングセラーだ。これらは、福井県の「越前打刃物(うちはもの)」のイッピンだ。700年の伝統を受け継ぎつつ、スタイリッシュな製品を生み出し続ける産地の、驚くべきワザと職人の熱いおもいとは?女優・黒谷友香が徹底リサーチする。
出演者
【リポーター】黒谷友香,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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