「核のごみ」最終処分地 佐賀は方針示さず
共同通信調査 21道府県は事実上拒否
2015年11月29日 10時52分
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定をめぐり、13府県が候補地に選ばれても一切受け入れる考えがないことが28日、共同通信の調査で分かった。8道県も受け入れに否定的で、全体の半数近い21道府県が事実上拒否の姿勢を示した。
【関連記事】
・玄海原発事故想定し防災訓練
・原子力防災訓練、川内再稼働で現実味
・九電、原発敷地内に乾式貯蔵施設検討
「検討する段階にない」など方針を明確にしなかったのが24都府県、「情報収集から始め、受け入れの可否を慎重に検討する」が2県、受け入れに前向きな自治体はなかった。
玄海原発(東松浦郡玄海町)を抱える佐賀県は、最終処分地に選ばれた場合の対応について、「科学的有望地をどのように示していくかも決まっていないということであり、仮定の話に答えることは難しい」と回答した。
選定に関し「不安に感じる点」や「設置すべきと考える地域」「提示方法」などの質問には、具体的な選択肢は選ばず、「最終処分を含めたエネルギー政策は、国が責任を持って決めるべきこと」との趣旨を答えた。
政府は5月、処分地選びを自治体の公募に頼る方式から、国が主導して有望地を提示し自治体に調査の受け入れを求める方式に変更。今後、候補地として適性が高い地域(科学的有望地)を示す方針だが、選定の難しさがあらためて浮き彫りになった形だ。
「一切受け入れない」とした13府県のうち4県は原発立地県。全国最多の原発がある福井県は「発電は引き受けたが、ごみまで引き受ける義務はない」と指摘、石川県は「電力を大量に消費する地域を優先すべきだ」との見解を示した。
2007年に文献調査に全国で初めて応募し、その後撤回した東洋町のある高知県は「受け入れる余地はない」と回答。当時、県議会が東洋町の応募に反対の決議をした隣の徳島県も「方向性は変わらない」と答えた。
「受け入れは難しい」などと回答した8道県では、使用済み核燃料再処理工場がある青森県が「最終処分地にしない確約を国から得ている」と強調。核のごみを地下に埋める「地層処分」の研究施設がある北海道も、道条例を理由に受け入れには否定的な立場だ。
国が前面に立ち責任を持って対応するよう求める声が目立つ半面、不安な点(複数回答可)では10県が「国の押しつけによる立地」を挙げた。「風評被害」「施設の安全性」がもっとも多く20県、「地震や火山などの自然災害」が17県だった。
調査は10月下旬から11月上旬にかけ書面で行い、全都道府県から回答を得た上で担当者に電話で追加取材した。
■核のごみ最終処分
原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムなどを取り出した後に残る廃液を、ガラスと混ぜて管理・処分に適した「ガラス固化体」にする。極めて強い放射線を出すことから高レベル放射性廃棄物と呼ばれる。地下300メートルより深い位置に埋める「地層処分」方式で、約10万年にわたり生活環境から隔離し、放射能を低減させる必要がある。廃棄物は金属製容器に閉じ込め、さらに粘土の緩衝材で覆って、地中に放射性物質が漏れ出さないようにする。国内には約1万8000トンの使用済み核燃料があり、ここから最終的に出る高レベル廃棄物は、既に再処理した分も含めるとガラス固化体換算で2万5000本相当になる。