した場合とかもスピーカー置くと邪魔だったりするときはこの電球1個でよかったり。
(アナウンス)「東教授の総回診です」
(五十嵐)天下の名医に切ってもらえるとは!
(佃)VTです!
(財前)くそ!心臓マッサージをするぞ。
(里見)林田さん。
(財前)ガンは全身に転移してる。
お手上げだよ。
(里見)もしこれが特診患者のVIPでも同じようにもうお手上げだと答えたのか?
(財前)除細動器を用意しろ。
絶対に死なせるな!
(又一)わしはあきらめへんで。
(佐枝子)仲よくしていただきたいです。
(財前)どなたでいらっしゃいますか?
(東)失礼じゃないか君。
わたしのお客さまに。
(菊川)いえ東教授。
ご挨拶させてください。
うん。
(菊川)はじめまして。
石川大学の菊川と申します。
申し遅れました。
財前です。
お噂はかねがね伺ってます。
先月号のJCOに掲載されていた食道ガン微小転移に関する論文と血管新生因子に関する論文。
興味深く拝読しました。
ありがとうございます。
そちらのご専門は?
(東)知らんのかね?ああ菊川先生。
どうぞお掛けください。
はい。
(東)菊川先生はね再生医療の第一人者だよ。
シドニーのプリンス・オブ・ウェールズ大学で心筋再生のプロジェクトを成功させたあと石川大学に教授として迎えられてね。
いわば心臓外科の若き権威者だ。
フッフフ。
いや浪速大学はどうも心臓外科が弱くてね。
どうすれば発展させられるかご意見を伺いたくてご足労願ったわけですが。
いっそウチで講座を持っていただけるとありがたいですね。
心臓外科のオーソリティーを招けば第一外科の間口は格段に広がりますから。
ちょっと君。
あっこれは不用意なことを申しました。
それほどの方なら石川大学が手放すはずがありませんね。
(財前)失礼いたします。
(あやの)パパ。
(あやのの父)すいません。
あやの。
向こうでアイス食べようか。
何食べたい?
(竹内)鵜飼教授が早くベッドを空けさせろって言ってました。
(竹内)まあそうは言っても難しいですよね。
製薬会社の人だから下手な嘘は通じないし。
かと言ってあなたはガンで治らないからウチの系列へ移ってくれって言うのも…。
あの早く処理したほうがいいと思います。
鵜飼教授は120周年の行事に追われて決済を急いで…。
患者には関係ないことだ。
(里見)石川大の菊川。
ああ。
心臓外科でプリンス・オブ・ウェールズに留学経験があるらしい。
知ってるか?DCMの心筋再生について確か研究論文を出してたな。
(里見)これだ。
さすがだな。
(里見)実はさっき会ったんだ。
えっ?菊川に?東教授のお嬢さんと一緒だった。
そうか。
でどう思った?
(里見)うん?
(財前)恐らく東教授は彼を後任教授に推薦するつもりだ。
つまり僕を外すための当て馬だよ。
(里見)俺には分からん。
フッ。
相変わらず格好がいいね。
(財前)林田加奈子。
まだ彼女にかかわってるのか?あきらめるにはまだ早い。
君だって何年かすれば鵜飼教授の定年退官にぶつかる。
そのときよそから後任教授を連れてくると言われたら今のように冷静でいられるかな?これ借りてくよ。
(東)単刀直入に申しましょう。
わたしの後任として浪速大学の第一外科教授をあなたにお引き受けいただきたいんですが。
ありがたいお話です。
(東)あっ。
ハハッ。
では…。
ですがこのお話はお断りさせていただきたいと思います。
(東)なぜでしょうか?悪い話だと思いませんがね。
東先生には財前先生という立派な後任者がおられます。
そこに割り込む勇気はありません。
長い間片腕として働いてくれてた助教授を外さなければならないというのはわたしとしては大変苦しい。
苦しいんですが浪速大の外科部門の充実のためには菊川さん。
あなたをぜひわたしの後任教授としてお迎えしたいんですよ。
まあ今すぐねそのご返事を頂戴しようとは言いません。
が今一度考え直してみてはくれませんかね?
(政子)遠路はるばるお疲れでございましょう。
どうぞ一息お入れくださいませ。
どうぞ。
まだ話は済んでいないんだよ。
主人からいつも菊川さんのことは伺っておりますのよ。
すばらしい業績をお上げになったとか。
ねえ佐枝子さん。
佐枝子さん。
どうしたの?
(菊川)あっお気遣いなく。
(政子)菊川さんがすてきな方なのでてれてるのかしら。
佐枝子さん。
はい佐枝子さん。
佐枝子さん。
はいはいはい。
(佐枝子)先程はどうも。
いえ。
こちらこそ。
(政子)何をしてるの佐枝子さん。
ほらワインをおつぎして。
菊川さん。
どうぞお掛けになってくださいませ。
ホントに愛想がなくて恥ずかしいですわ。
佐枝子さん。
お取り皿もよろしくね。
菊川さんの奥さまは外国暮らしを経験されてさぞスマートな方でいらっしゃるんでしょうね?妻はおりません。
留学前に離婚しました。
まあさようでしたの。
それは存じませず失礼いたしましたね。
ムダな話が多いんだよ。
(政子)よろしいじゃございませんの。
これから長いおつきあいになるかもしれませんのよ。
ねえ。
あっ佐枝子さん。
佐枝子さんはそこに座って。
ほらほらマツタケお取りして。
〜
(大河内)誰だね?第一内科の里見です。
(大河内)入りなさい。
失礼します。
(里見)研究中すいません。
大河内先生にご相談したいことがあるんですが…。
(テーマソング)
(里見)36歳女性で胃ガンが肝臓と肺に転移しています。
この患者の抗ガン剤耐性マーカーの値を調べていただけないでしょうか?根治が不可能なのは内科の検査で分かっていますがたとえ1か月でも延命の可能性を探りたいのですが。
先生。
(大河内)一つの症例に徹底的に向き合う。
医学の根本姿勢だ。
(大河内)そしてそれこそが現在皆が忘れかけていることにほかならない。
よろしくお願いします。
(財前)ご退院おめでとうございます。
(医局員たち)おめでとうございます。
(五十嵐)財前先生。
あなたは命の恩人だ。
(五十嵐)これを機に全面的に君をサポートさせてほしいと思ってる。
このようなものはお気持ちだけで十分です。
おい。
いやぁわずかだよ。
国立大学の先生におおっぴらなお礼はできんからな。
ありがとうございます。
(一同)ありがとうございます。
(五十嵐)それとは別に第一外科に研究費として寄付をさせていただきたい。
それはありがたいお話です。
1億ぐらいじゃ大したことはできんかもしれんがね。
(柳原)1億!?ありがとうございます。
(五十嵐)いやいや。
これで君の顔も立つだろう。
うん?好きなように使いなさい。
好きなように。
フフフフ。
いえ…。
(五十嵐)ああどうもありがとう。
(金井)ご自愛ください。
(五十嵐)お世話になりました。
(佃)おめでとうございました。
(安西)おめでとうございます。
(五十嵐)ありがとう。
ありがとう。
(柳原)ありがとうございました。
(五十嵐)お世話になりました…。
(竹内)すげえ。
これで決まりだな。
(柳原)何が?
(君子)分かんないの?
(竹内)財前先生の教授昇進だよ。
1億の寄付取ってきた助教授を教授に上げないわけにいかないだろ。
財前先生が教授になるのはとっくに決まってんじゃないの?ダメだこいつ。
教育して。
(君子)あのね普通なら助教授の財前先生がそのまま選ばれるんだけどほら東教授と財前先生って最近ちょっとこれじゃない。
だから東教授がよその大学から後任連れてくるんじゃないかって噂になってるわけ。
そんな!財前先生は誰よりも…。
しっ!ちょっと…。
医学部は理不尽なことがいろいろ起こる所なの。
そう。
面倒くさいこともな。
(君子)内科の患者さん?
(竹内)また里見先生が突っ張ってんだよな。
(鵜飼)いい話じゃないか財前君。
一番に鵜飼教授にご報告したいと思いまして。
(鵜飼)これでまた君の評判も上がるよ。
あのそのことなのですがせん越ですが基金にしてはどうでしょう?基金?医学部創立120周年の記念式典がございますね。
その120周年の研究基金とするのです。
そうすれば内外の評判も呼べますし何より医学部長として記念式典を取りしきる鵜飼教授のお顔も立つのではないかと。
この機に乗じて僕に恩を売るつもりかね?はい。
東教授はよそから後任教授を立てる準備を着々と進めておられるようです。
僕としてはもはや鵜飼教授におすがりするしかありません。
君はおかしな男だな。
強引に事を突き進めるかと思えばこうやって平気で弱みを見せる。
したたかというのは君のようなのを言うんだろうね。
めっそうもございません。
捨て身になるしか策がないだけです。
ハハハ。
君に身を捨ててもらってもねえ。
しかし…うん。
記念基金というのは悪い発想ではないね。
乗ってやってもいいよ。
ただし東教授には了解を得ないことには進められない。
君からの提案だと話してもかまわないかね?結構でございます。
君は僕に先に話を持ってきた。
すなわち東教授に対する宣戦布告ということになるよ。
はい。
そこまで覚悟を決めてるんならそうさせてもらおう。
だが見返りを要求されても困るからね。
まあ教授選の選考委員を僕の派閥で固めることぐらいならできないこともないが。
それでどうだね?ありがとうございます。
よろしくお願いいたします!
(佃)先生先生。
聞きましたよ。
例の寄付金120周年の記念研究基金になるんですって?もう感激しましたよ!君たちがもらうわけじゃないぞ。
(安西)でも興奮しますよ。
要するに五十嵐さんは財前先生の腕に1億円を支払ったわけですから。
記念式典絡みで雑用が増えるかもしれんが頼むぞ。
光栄です。
雑用なら任せてください。
なっ。
(医局員たち)はい。
(柳原)僕も一生懸命やります。
財前先生に教授になっていただきたいですから。
(佃)お前ねそういうことはね…。
フフッ。
いいさ。
いろいろ噂が飛び交ってみんなが心配してくれてることは分かってる。
だから僕も頑張ってるんだ。
君たちとずっと一緒に働きたいからな。
(一同)はい。
(安西)もしもし。
はい。
あの財前先生。
(財前)うん?病理の大河内教授がお呼びですが。
大河内先生?
(ノック)入りなさい。
失礼いたします。
(財前)驚いたな。
君もいたのか。
(大河内)困るかね?いいえ。
基礎講座でともに大河内先生に教わったころを思い出します。
なあ財前。
忙しいとこ悪いが大河内先生に林田加奈子の病理検査をお願いしたんだ。
(大河内)病理学的検査の結果腫瘍は抗ガン剤への耐性を示している。
抗ガン剤による治療は困難と言わざるをえない。
オペで胃の主病巣だけでも取って出血だけでも止めることはできないだろうか?成功すればわずかだが延命の可能性はある。
無意味だと言ったろう。
確かに里見君の言うとおりにすればさしあたっての延命の可能性はありますが2、3か月がいいところです。
絶対に根治はありえません。
それなら確実に助かる患者がオペの順番を待っているのですからそちらを優先したいと思います。
それは正論だが大学病院というところは正論に傾きすぎてきたところもあろう。
大河内先生。
里見君は8年前のことが忘れられないだけなのです。
先生も覚えておられるでしょう。
彼の奥さんの父親が…。
おい財前。
関係ない。
そんな私的なことで患者に入れ込んだりはしない。
なら林田加奈子について議論する余地はございません。
里見君。
失礼させてもらうよ。
(里見)おいちょっと待ってくれ。
(財前)悪いが僕の患者が120周年の記念に1億の研究費を寄付してくれて何かと立て込んでいるんだ。
大河内先生。
失礼いたします。
(又一)ようやったようやった。
ありがとうございます。
失礼いたします。
ヘヘヘヘヘ。
あんたもやっと政治が分かってきたやないかい。
えっ。
日ごろお義父さんに仕込まれてますから。
アハハ!憎たらしいことぬかしてよってから。
もう。
もうふさふさやな。
えっ。
(岩田)早い早い早い。
何が何が?笑うのはまだ先や。
ああそうでっか。
えらいすんまへん。
(岩田)鵜飼君に取り入ったということは東に勝負を仕掛けたということや。
もう絶対あとへは引けん。
これで負けたらそれこそ地の果てに飛ばされる。
崖っぷちやで。
はい。
(又一)ハハハハ。
そないビビらしなはんな。
鵜飼医学部長がついてくれたんやから教授選挙の票は固いでっしゃろ。
教授選は選挙よりその前に行われる選考会が大事なんやないかいな。
選考会。
よろしか?ええ。
教授選の投票は誰に入れてもええというわけやない。
まず選考会で教授候補者が選ばれてその候補に対して投票が行われるんやないか。
つまりあれでっか総理大臣になるにはその前の総裁選の候補に選ばれんならんと同じやちゅうことでっか?
(岩田)そう。
(又一)はあはあはあはあ。
(岩田)その選考会で東が出す菊川とやらを退けて五郎君一人に絞り込むことができたらあとの選挙は信任投票だけ。
教授の椅子は見えたも同然やというわけや。
(又一)なるほど。
読めてきました。
(岩田)僕らとしては鵜飼君が固めてくれた選考委員を何としてでもつかまないかん。
肥やしが必要やちゅうことでんな。
一体誰に何ぼ払うたらよろしいんでっか?
(岩田)ええ。
(岩田)選考委員は例年6人や。
ええ。
(岩田)医学部長の鵜飼病院長の則内前任者の東。
(又一)ハハハ。
デコピーン。
(岩田)整形外科の野坂産科の葉山辺りが固いと思うが…。
まあいずれ劣らぬ悪顔ばっかりですな。
(岩田)とりあえず1人2本やな。
1人2本でっか。
うん。
ああ。
(財前)あの…。
受け取っていただけるのでしょうか?あほう。
受け取らすんやないかい。
ゴーンと。
ゴーンと。
ヘヘヘ。
パーティー?
(三知代)また鵜飼教授の奥さまから電話があったのよ。
参加しなさいって。
そんなもんほっといていいよ。
俺もパーティーなんかには行かない。
そう言うと思ったけど。
120周年とか言って歴代の教授たちが集まって飲み食いするだけだ。
そう。
じゃやめた。
もし行きたかったら顔出してもいいんだぞ。
えっ?
(里見)いやそれなりに華やかな場所だから君もたまには表に出たいかなと思って。
嫌ねえ。
華やかなパーティーなんてわたし苦手よ。
そうか。
ならいいんだ。
フン!
(里見)うん?わたしたち結婚してもう8年よ。
(里見)おい。
言いたいことがあれば言うし行きたい所があればそう言うわ。
うん。
そうだな。
もういつまでも他人行儀なんだから。
フフッ。
悪かった。
ハハッ。
ごめんごめん。
悪かった悪かった。
ハハハ。
(柳原)お疲れさまでございます。
(鵜飼)120年目を節目として新たな気持ちで更なる150年200年に向かって勇往邁進する覚悟でございます。
今後とも厚いご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
(拍手)
(鵜飼)続きまして研究基金設立に多大なるご協力を頂いた阪陽建設の五十嵐社長にご挨拶を賜りたいと思います。
(拍手)五十嵐でございます。
どうですか皆さん。
わたしのこの顔色。
いいでしょう?お元気そう!
(五十嵐)ありがとうございます。
とても大病されたと思えまへん!
(五十嵐)ええ私がここにこうして立っていられるのは第一外科の財前助教授のおかげです。
みなさん。
この若き食道外科の権威にぜひぜひ盛大なる拍手を!
(拍手)
(五十嵐)財前先生。
どうぞお立ちください。
(五十嵐)何かぜひひと言ご挨拶を。
いやそうご遠慮なさらずに。
五郎君立って。
挨拶せなあかんよ。
あなたの基金なんですから!
(拍手)〜〜
(演奏)
(典江)何…!?
(夫人たちの笑い声)社長。
オレンジジュースでお願いします。
(岩田)本日はおめでとうございます。
(又一)おめでとうさんでございます。
どうも。
ハハハハ。
いやぁ診察を休んで駆けつけさせていただきました。
わたしもね患者の妊婦に今晩だけは陣痛が来んようにともう拝み倒して参りましたやねん。
ハハハハハハハ。
あっ。
ハハハハ。
これはこれは東教授。
もうどないしまひょ。
まあまあいつもウチの婿が財前五郎がお世話になっとります。
ありがとうございます。
ハハハ。
何かと大変ですなあ。
立派な婿さんをお持ちになると。
いえいえ。
もうこれが生きがいですさかい。
ハハハ。
まあ言うたらあれですわ。
あの婿…。
何やあ。
(岩田)どうや?鵜飼君。
せっかくやから財前はんに教授陣を紹介したいんやけど。
(又一)ああああ。
そうですな。
ええ。
(鵜飼)則内院長に葉山教授野坂教授それに今津教授辺りに挨拶しといたらいいのでは?その4人か?予想したとおりやな。
大当たりやがね。
五郎君五郎君。
あとで祝宴やで。
はい。
(政子)皆さま。
ごきげんよろしゅうございます。
(典江)あら東さん。
いらしてたの。
ええ。
もちろんでございます。
(典江)ご無理なさらなくてもよろしかったのに。
まあお着物までお召しになって。
無理など全くいたしておりません。
それに私着物は普段から…。
(杏子)鵜飼会長。
本日はおめでとうございます。
あら財前さん。
いらしてたの。
ああ。
私がお呼びいたしましたのよ。
こういうお祝いの席ですから少しでも多くの方にもり立てていただいたほうがよろしいでしょう?
(政子)もっもちろんですわ。
(杏子)奥さまにそう言っていただけるなんてうれしいです。
すみません。
あのすみません。
里見先生の奥さまはいらしてないんですか?
(加奈子)そう。
やっぱりガンか。
予想はしてたけどショックなものね。
手術で取れますか?本当のこと言ってください。
先生。
わたしは抗ガン剤の営業をしてたのよ。
嘘ついても分かります。
肝臓と肺に転移があるためすべてのガンを手術で取り除くことは不可能です。
じゃあ抗ガン剤は?いっそアルマシトシンはどう?先生。
肝機能の低下が見られアルマシトシンは使えません。
また病理検査の結果を見る限り抗ガン剤の効果はあまり期待できません。
あとどれくらいですか?それは分かりません。
分からない?分からないって何よ?いいかげんなこと言わないでよ。
ホントは分かってるんでしょう?答えなさいよ。
医者ならデータ見ればよく分かるじゃないの。
人の命には数値では測りきれないものがありますから。
気休め言わないでよ。
わたしはよく知ってるのよ。
ガンになった人がどういう死に方するのか!
(加奈子の泣き声)
(加奈子の泣き声)わたし早くに家族を亡くしたの。
だから家族はいません。
仕事ばかりしてきたから恋人もいません。
ライバルはいても友達もいません。
里見先生。
はい。
わたしがそうなったときそばにいてくれますか?せめて信じられる人にみとられて死にたいんです。
最期までわたしがちゃんと診ます。
(加奈子の泣き声)
(今津)もうお帰りですか?
(東)ええ。
(今津)財前君のしゅうとに挨拶されましたよ。
ハハハハハ。
(東)今津先生はこのままでいいんですかな?
(今津)はい?わたしがいるうちはいいんですがこのまま財前君が第一外科の教授になればあなたの第二外科は相当やりにくくなるんじゃないですかね。
(典江)それにしても財前助教授はご立派ねえ。
(喜久子)今回の基金の提案も財前さんご自身がなさったとか。
(昭子)なのに出しゃばらず謙虚でいらっしゃる。
(夫人たち)ねえ。
主人も大層褒めておりましたわよ。
いいえ。
東教授のご指導のおかげです。
(夫人たちの笑い声)
(典江)あら東さん。
どうなさったの?ご主人のまな弟子を少しは褒めて差し上げたら?ホントにもう財前さんはすばらしいわ。
いつもいつも東を立ててくださってもう主人もかわいくって…しょうがないと…。
(典江)ちょっと。
嫌だわ。
だからご無理なさらないでって申し上げましたのに。
あのちょっと失礼…。
失礼いたします。
奥さま。
(ホテル従業員)失礼いたします。
(杏子)大丈夫ですか?はい。
今車を呼びましたから。
お父さまを呼んでこなくていいの?あっ仕事で先に帰りましたので。
そう。
あっじゃあ主人に言ってくるわ。
せっかく医者がたくさんいるんだから。
結構です。
えっ?ここには医師はおりません。
えっ?〜お疲れさまです。
(里見)あの大河内先生。
(里見)林田加奈子を最期まで診たいと思います。
(里見)確かに積極的な治療のできない患者を受け入れるのは大学病院本来の目的から外れることです。
でもホントにこれでいいのかと。
ただやみくもに治すことだけに突き進んできた結果失ってきたものもあるのではないかと。
青いかもしれませんが末期の患者をいかに見送るかということをウチの病院も考える時期に来てるのではないかとそう思うんです。
里見君。
はい。
医療に絶対はない。
だから医者は悩み続けなければならん。
君の苦悩をわたしは支持するよ。
〜はい。
(里見)東さん。
(佐枝子)すみません。
母が…。
(看護師)パーティーで気分が悪くなられたそうです。
(里見)バイタルは?
(看護師)来院時血圧98の46脈拍62でしたが今は血圧126の64…。
東さん。
(政子)はい。
聞こえますか?こちらはね第二外科の今津教授です。
あなたがウチへ来てくださることになればこの今津教授が全面的にフォローしてくれると思いますよ。
どうでしょうね?今日はよい返事をお持ちいただいたと考えてよろしいでしょうか?あーこれ。
(又一)どうぞどうぞ。
もうグーッとやっとってくださいよ。
ハハハハハハ。
(則内)初対面の方にごちそうになるのもねえ?どうなさったの?先生たちいつももっとお飲みになるのに。
そうやろ?
(ケイ子)ええ。
(財前)無理にお誘いしてすみません。
鵜飼教授がいい機会だからお話を伺っておけとおっしゃったので。
(又一)五郎君はあの鵜飼医学部長先生に目掛けてもろうてましてその鵜飼医学部長先生がこのわたしにもこのお三方にはきちんとご挨拶しておくようにておっしゃられましてん。
ええ。
(則内)それじゃあ少しだけ。
(葉山)じゃまあホントに1杯だけ。
マミちゃん。
(マミ)はい。
ミカちゃんカオリちゃん。
こっち来て。
(ミカ・カオリ)はい。
(又一)何してんねん。
はよはよ…。
(ホステスたち)お邪魔いたします。
もし必要なら医局のスタッフも石川大学からお連れくださって結構だ。
しかしそれでは今いるスタッフが黙っていないでしょう。
この際かまいません。
いやあのきれいごとはよしましょう。
はっきり申します。
財前君は確かにメスの切れる男だが優秀な技術屋ではあっても学者ではないんです。
国立大学の教授として一つの教室を預かり若き医学者を育成する器ではないんです。
わたしはねそんな志の低い技術屋よりあなたのような真の学者に第一外科を引き継いでほしいんですよ。
これは去る者にとって最後の願いです。
そこまで腹を割ってお話いただいてありがとうございます。
よく分かりました。
このお話お受けします。
(則内)では。
もうお帰りですか?
(野坂)あした学会なんだよ。
(又一)ああすんまへん。
ハハッ。
これを機会に婿の五郎とお近づきになったってください。
ヘヘヘヘ。
まああのいずれ鵜飼医学部長が浪速大学の学長にならはったときにはお互いもり立てる仲になりまっしゃろう。
学長?
(岩田)ご存じありませんでしたか。
次期学長は鵜飼君でほぼ決まりですわ。
まあせっかくやしちょっとお掛けになりまへんか?
(岩田)いや今回この財前君が関西経済協会の実力者である五十嵐社長と鵜飼君を引き合わせたことでわたしら医師会としても学長鵜飼で動きやすうなったんですわ。
(又一)ヘヘヘヘヘ。
(岩田)いやまあそういう意味もあって鵜飼君は財前はんにお三方を紹介したんでしょうなあ。
いや何せこのあといろいろと控えてまっしゃろ。
ハハハ。
岩田はん。
そんなややこしい話はあとにしまひょ。
あーあっ。
則内院長先生。
ヘヘヘヘ。
お嬢さんご婚約お決まりだそうで。
(則内)いやぁそんな。
(又一)おめでとうございます。
いや困ります。
(又一)何を。
お祝い事に遠慮はあきまへんがな。
どうぞ。
(則内)それでは。
(又一)野坂先生。
お坊ちゃん大学の推薦入学お決まりだそうで。
ええ。
(又一)お祝いちゅうことで。
いやちょっと困りますな。
(又一)何を何をおっしゃいますのや。
何をおっしゃいますのや。
葉山先生。
ヘヘヘヘ。
ご結婚23周年だそうですな。
(葉山)ええ。
(又一)23いう数字はええ数字ですわ。
ほんまにめでたい。
ハハハ。
おめでとうございます。
フフフフ。
(野坂)誰にそんなことを聞いたのです?決まってまんがな。
鵜飼医学部長ですわ。
なあ五郎君。
はぁ。
(ケイ子)又一先生。
(又一)はいな。
(ケイ子)お寿司〜!
(又一)来たかいな来たかいな。
(里見)心配ありません。
すぐに帰れますから。
(佐枝子)ありがとうございました。
いえ。
では。
(佐枝子)あの。
里見先生がいてくださってよかったです。
いえ。
パーティーは疲れますから。
(佐枝子)三知代さんにお会いできるかと思っていたんですが。
二人とも好きじゃないんです。
行きたくなければ行かなければいいんですよね。
わたしもパーティーなんて大嫌いです。
でもいつも両親の言うままについて行くばかりで。
結局は親の言いなりなんです。
あっすみません。
里見先生に言うことじゃありませんね。
どうもありがとうございました。
あの。
(佐枝子)はい?家族がそばにいるのは幸せなことだと思います。
余計なこと言ってすいません。
大事にしてあげてください。
では。
〜
(鵜飼)ではこれより第一外科後任教授の選考委員を決めたいと思います。
通常は投票によって決めるのが慣例となっておりますが私としては前任者にあたる東教授に医学部長の僕それに則内院長葉山野坂今津先生の6人でやりたいと思いますがどなたか異論はありますかな?東先生。
何かございますか?ええ…。
(ドアの開く音)
(鵜飼)お珍しいですな。
大河内先生が教授会へお見えになるなんて。
わたしももの申したいのだがよろしいかな?いやはや光栄でございます。
たかだか選考委員の決定について大河内先生からご意見を賜れ…。
「たかだか」とは何だね。
教授選において選考委員の担う責任は重大ではないかね。
失言でした。
わたしは選考委員に立候補することにいたした。
厳正なる教授選挙の遂行のためだ。
〜〜『アメイジング・グレイス』〜〜〜〜〜2015/11/27(金) 14:55〜15:50
関西テレビ1
白い巨塔 #05[再][字]【教授の椅子に座るのは誰か?財前の野望を賭けた戦い!】
「祝宴」
詳細情報
番組内容
東教授(石坂浩二)が自分の後継教授にと白羽の矢を立てた菊川助教授(沢村一樹)と出会った財前五郎(唐沢寿明)は、その様子から東の思惑を読み取った。財前は対抗策として、特診患者からの1億円の寄付を医学部創立120周年記念の基金にすることで鵜飼部長(伊武雅刀)に近づく。また舅の又一(西田敏行)ら医師会グループも、有力教授たちに“実弾攻勢”を始めた。
番組内容2
一方、里見(江口洋介)は、末期ガン患者の加奈子(木村多江)の治療で悩み続けていた。
出演者
唐沢寿明
江口洋介
黒木瞳
矢田亜希子
水野真紀
沢村一樹
片岡孝太郎
伊武雅刀
若村麻由美
西田尚美
野川由美子
池内淳子
伊藤英明
石坂浩二
西田敏行ほか
原作・脚本
【原作】
山崎豊子
【脚本】
井上由美子
監督・演出
【企画】
和田行
【プロデューサー】
高橋萬彦
川上一夫
【演出】
西谷弘
【音楽】
加古隆
「アメイジング・グレイス」ヘイリー
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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