軽減税率の協議難航、何をもめている?
最終更新日:2015年11月29日
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2017年4月の消費税10%引き上げに伴って導入される「軽減税率」の対象品目について、対象を狭くしたい自民党と、広くしたい公明党の協議が平行線をたどっています。いったいなぜ、何についてもめているのでしょうか。私たちの生活に大きく関わる軽減税率について、あらためて解説します。
そもそも軽減税率とは?
生活必需品などに限定して適用される標準より低く抑えた消費税率。低所得者ほど税負担が重くなる逆進性の緩和が目的。
「軽減税率」(時事通信)
対象範囲めぐる協議が難航
消費税の軽減税率をめぐる自民、公明両党の協議がこう着状態に陥っている。協議のレベルを実務者から幹事長に格上げしたものの、導入時の対象範囲を生鮮食品にとどめたい自民党と、加工食品も含めるよう求める公明党が互いに一歩も引かないためだ。
幹事長協議も手詰まり=自公、募る相互不信-軽減税率(時事通信)
軽減税率を適用する対象を広くすると家計負担は軽くなりますが、その分、上の図のように税収が減り社会保障の充実などにマイナスとなるおそれがあります。
当初、自民党内では「精米」に絞るべきとの意見もありましたが公明党に譲歩し、「生鮮食品」への適用は認める方針に転じました。しかし、公明党は「加工食品」も含めるべきとの姿勢を崩しません。自民党は段階的に対象を広げる妥協案も示しましたが公明党は受け入れませんでした。
「大部分の国民は加工食品に頼っている。そういう生活実態から軽減で助かったと安心できるよう、広くすべきだ」(山口公明代表)
軽減税率「加工食品も」=財源、他の増税検討を-山口公明代表(時事通信)
線引きに難しさ
軽減税率の対象に加工食品までふくめると、線引きが難しい商品が多くなります。たとえば、コンビニなどの店内で食べるイートインは「外食」にあたるのか、「加工食品」にあたるのか、といった具合です。
アフロ
財源はどうする?
公明党は1兆円を上回る財源規模での導入を要求してきましたが、自民党は「社会保障と税の一体改革」の枠内で捻出できるという約4000億円にとどめる方針を維持してきました。首相官邸は2000億円を上積みし「6000億円」とするよう指示していますが、新たな財源を確保できる見通しはありません。
自民党内に一致点を探る動きも
生活必需品に適用する消費税の軽減税率について、生鮮食品に加えて加工食品の一部を対象に入れられるかどうか、自民党が検討していることが28日に分かった。
軽減税率、加工食品の一部も=公明との一致点探る-自民(時事通信)
社会保障の財源に支障が出ない形で財源を上積みすることも検討すべきだという意見も出始めていて、両党間の調整の焦点となる見通しです。
自民 軽減税率巡り“財源上積み検討”の意見も(NHK)
意識調査では
対象品目の範囲について聞いたYahoo!ニュースの意識調査では11月28日現在、約12万票が集まっており、「酒を除く飲食料品」が51.5%、「生鮮食品と加工食品」が16.6%、「生鮮食品」が11.8%、「精米のみ」が9.1%となっています。
寄せられた意見
生きていくのに最低限必要なものに軽減税率を課せば良いと思う。具体的には食料品と医療費、水道代など。それと、子育て関係の物品は、少子化対策も兼ねて無税にすればいいと思う。たとえばベビーカーとかおむつとか、粉ミルクとか。税金の計算はレジにちゃんとプログラムを入れておけば、煩雑な事務をする必要はないと思う。税収不足は、役所の無駄遣いをなくすことで解決すればいいと思う。天下りをなくして、無駄な規制をなくして、民間企業のように節約をするべきだと思う。
たとえば食肉の場合。100グラム98円とかの特売肉も100グラム数千円のブランド肉も「生鮮食品」。どちらも非課税や軽減税とするには違和感有る。「高級ブランド食品」は非軽減で良いと思う。(かつての「物品税」や、今も在る「自動車取得税」の発想)かといって、「どんな食品なら税率優遇するか」の線引きは困難。(「日常生活で多用されるもの」とは言っても、嗜好、アレルギーの有無、地域性などがあるから一律線引きも難しい。)
軽減税率自体を疑問視する声も
軽減税率を導入=税率が複数、複雑になることによって発生するコストにもっと目を向けるべき。カネを節約して、本来の目的のために回せる額を増やしたいのなら、仕組みは極力シンプルにして、特定業者や関係組織が群がるような特需、既得権益を作り出さないことが肝要。