【コラム】誇らしい歴史、恥ずかしい史料

帝国主義時代の日本と左派が発掘した恥ずかしい史料が山ほどある
これらを取り除かなければ誇らしい歴史は空念仏に終わるだろう

 この本は、「旧李王家邸」のように私たち韓国人が忘れたいと思っていることを思い起こさせた。亡国以降、純宗(朝鮮第27代国王、大韓帝国第2代皇帝)の専属料理人として日本の帝国ホテル初代料理長が赴任したこと。純宗はその専属料理人が作ったフランス料理と日本が送ってくれた優良な乳牛の新鮮な牛乳が好きだったこと。英親王は趣味の蘭栽培が専門家レベルに達していたこと。戦争のさなかでも日本の景勝地で登山やスキーを楽しんでいたこと。伊藤博文が使っていた別荘を譲り受けた代価として、伊藤博文の遺族に当時大金だった12万円を支払ったこと…。この本を読みながら日本の緻密(ちみつ)さに驚いた。植民地時代の朝鮮王族の全体像を書いた「王公族録」、高宗の記録を別に書いた「李太王実録」はもちろん、高宗の実兄の行動を記録した「李熹(イ・ヒ)公実録」、甥(おい)の行動を記録した「李埈(イ・ジュン)公実録」まで編さんしたという。王族が平和に暮らしているから、民も反抗せずにおとなしくしていろという意図だったのだろうか。史料の中には日本が歪曲(わいきょく)・ねつ造した記述もあるだろう。しかし、韓国人が歪曲やねつ造を立証できなければ、その記録は最終的に歴史として残る。

 この本を読んでいて一番胸が痛んだのはそうした点だった。朝鮮が亡びた後だったが、日本は高宗実録や純宗実録を8年かけて製作した。朝鮮の現在はもちろん、過去についても日本帝国史の一環にしようという意図だったのだ。編さんを指揮した人物も日本の学者だった。植民地支配からの解放(日本の終戦)後、韓国人たちは2つの実録を朝鮮王朝実録の一部として認めなかった。日本が書いた歴史を認めたくなかったからだ。そこで著者は主張する。「それならば韓国はなぜ、自ら実録を作らないのか」と。日本がしたこと延々と否定しながら、解放後に新たな史料を発掘して正統性のある実録を作らなかった韓国は理解しがたいということだ。もちろん、1960年代に国史編さん委員会が不十分ながら「高宗時代史」を編さんしたので反論がないわけではない。君主国家でもないのに、過去の王朝の実録編さんが法的に可能なのかという疑問もある。しかし、韓国人でなければ誰も朝鮮王朝実録の空白を埋めてはくれない。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 【コラム】誇らしい歴史、恥ずかしい史料

right

関連ニュース