Amazon.co.jp: 【半額】早川書房創立70周年記念 国内作家作品キャンペーン(12/3まで): Kindleストア
Kindleが始まった頃、早川書房といえば、セールの常連だったのだが、いつしかあまりセールをしなくなった。それが、早川書房70周年記念ということで、国内作家作品が半額になるという大型セールが始まった。中でも人気作である『機龍警察』は価格が高い単行本が多く、一気に読むのなら今回の半額セールは非常にお勧めだ。セールは12月3日までだが、月末まで20%ポイント還元のセールもあるため、買うのなら11月30日までがよい。
近未来、テロや紛争によって、近接戦闘兵器である機甲兵装というパワードスーツが普及した世界。日本でも、機甲兵装による犯罪が増加、それに対抗するための特設された警視庁特捜部SIPDの活躍を描く。SPIDのメンバーは、傭兵、元テロリスト、元ロシア警察官という癖のある3人で、SIPDを設立した人間も、外務相の官僚で非常に癖のある人物。
警察にロボットが導入されて……というと、どうしても『パトレイバー』を連想する人も多いだろうが、機甲兵装という存在がSF度合いの中心で、それ以外は警察小説のテイストが強い。なので、警察小説に二足歩行兵器が出てくる作品というのが正しい解説だろう。
日本を舞台にテロが起こるフィクションというのは数多いが、単に派手なテロを起こすだけで、テロリストの描写が浅く、おざなりのものが多い。しかし、『機龍警察』はテロが起きる背景にまでしっかり踏み込んだ数少ない作品であり、そのような作品に関心がある向きにも、ぜひ読んで欲しい。『パイナップルARMY』や『MASTERキートン』といった漫画が好きだった人にも勧めたい。
シリーズ第一作に徹底加筆をしたもの。特別企画も多数収録されているが、これを読むのは他の作品も読んでからの方がいいだろう。本作だけを読むと、それほど評価される作品なのか?と思う人もいるかも知れない。月村了衛氏はアニメ『ノワール』や『神秘の世界エルハザード』などの脚本も書いていた元脚本家であることから、「アニメっぽい」という感想も多いる。実際、自分は第一作だけ読んだ時点では「ラノベっぽいなー」と思った。しかし、本作はあくまで序章であり、この後の長編二作を準備するためのプロローグなのだ。
なお、Kindleでは第一作の文庫版は絶版となっているため、どのように加筆されたかをKindle版で比較するのは今からではできなくなってしまっている。
SPIDの隊員で、元IRFのテロリストであるライザの過去を描く。ライザがなぜテロリストをやめることになったのか、そしてなぜテロリストと反対側の警察に入ることになったのかが明かされる。『機龍警察』を読むなら、この『自爆条項』までは読んで欲しいところだ。
ロシアの元警察官のユーリを中心に、ロシアンマフィアの機甲兵装にまつわる武器取引を描く。ユーリの警察への強い思いと、スパイ小説のように情報が錯綜する展開が読みどころだ。
チェチェン紛争で家族を失った女性だけのテロ組織『黒い未亡人」が日本に潜入する。未成年の少女に自爆テロをさせる『黒い未亡人」は理解に苦しむが、あまり知られていないチェチェンの事情が丁寧に説明され、テロを起こす側の論理が深く描かれる。テロが身近になってしまった今、同時代性が非常に高いタイトルである。
『機龍警察』の短編集。登場人物の私生活などファンサービスなど、長編を読んだあとの息抜きに向いている。今後の展開や設定を匂わせる作品も。
『機龍警察』以外にも、伊藤計劃や小川一水、冲方丁といった作家のタイトルもセール中だ。
最後に、読んで面白かった『know』(野崎まど)と『ヨハネスブルグの天使たち』(宮内悠介)を紹介しておく。
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