COP21:途上国、対策に126兆円 先進国支援額と溝
毎日新聞 2015年11月29日 09時30分
パリで30日から始まる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)を前に途上国が国連に提出した温暖化対策の計画で、対策実施に必要とする資金は少なくとも1兆360億ドル(約126兆円)に達することが、国連環境計画(UNEP)のまとめで分かった。途上国への資金支援は、会議の最大の焦点。2020年までに年1000億ドル(約12兆2000億円)を支援するとしながら実際にはできていない先進国側の姿勢とは大きな隔たりがあり、激しい攻防が展開されそうだ。
COP21では、先進国のみに温室効果ガスの削減義務を課した京都議定書(1997年に採択)に代わり、20年以降に全ての国が参加した新たな枠組みの合意を目指している。
多くの国は既に、自主的な削減目標や被害対策の計画を国連に提出している。UNEPが178カ国・地域について分析したところ、必要な金額を明示しているのは61カ国あり、合計は1兆360億ドルだった。
例えば、インドは高温に強い作物の品種改良や洪水対策などに2060億ドルかかると説明。バングラデシュは災害警報システムの導入や台風に強いビルの建設や再生可能エネルギーの利用拡大で670億ドル、マダガスカルは温暖化に対応した農業技術の導入や飲み水の確保対策などに421億ドルかかるとしている。途上国の半数以上は金額を書いておらず、合計はさらに膨れ上がるとみられる。
一方、先進国から途上国への資金支援を巡っては、20年までに官民合わせて年1000億ドルに引き上げることが09年のCOP15で決まったが、経済協力開発機構(OECD)の試算では14年時点で620億ドルにとどまる。新枠組みが始まる20年以降は、途上国が追加的な支援を求めているのに対し、先進国は「金額を確約できない」との姿勢だ。
途上国の環境対策に詳しい明日香寿川(あすか・じゅせん)・東北大教授(環境政策学)は「途上国の支援要求は、温暖化の被害が顕在化していることへの危機感の表れだ。先進国がどこまで応じられるかが、新枠組みの合意の鍵となる」と話す。
COP21の会期は12月11日まで。開幕日には合意への機運を高めるため約150カ国の首脳が集まり、安倍晋三首相も出席する。【渡辺諒】