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外部被ばく線量差なし 高校生ら英誌に論文

論文を執筆した福島高スーパーサイエンス部のメンバーら

◎「福島の現状正しく理解を」

 東京電力福島第1原発事故が起きた福島県と、他県や外国のそれぞれの高校生が受ける外部被ばく線量について、福島高(福島市)の生徒が中心となって比較検討した研究論文が、放射線防護に関する国際的な専門誌に掲載された。被ばく線量の差はほとんどなく、生徒たちは「福島の現状を科学的に正しく理解してもらう素材になってほしい」と期待する。

 執筆したのはスーパーサイエンス(SS)部放射線班の小野寺悠さん(18)、鈴木諒君(18)、斉藤美緑さん(17)、安斎彩季さん(16)、藤原祐哉君(17)の5人。原尚志教諭(57)が指導した。
 1時間ごとに積算線量を把握できる線量計「Dシャトル」を活用。福島高を含め県内の6校と横浜、神戸両市などの6校に加え、フランス、ポーランド、ベラルーシの14校の生徒と教諭に参加してもらい、線量の比較、分析を試みた。海外の高校は、事故後に交流が始まったフランス人科学者が紹介してくれた。
 参加者は2週間、線量計を身に付け、行動記録も提出。解析の結果、外部被ばく線量はほぼ差がなく、年換算で1ミリシーベルト程度であることが分かった。県内各校では、放射性セシウムの影響はあるものの、土壌に含まれる自然放射線量が低いため、結果的に他地域と線量はほとんど変わらない−と結論付けた。
 助言を行った東大大学院の早野龍五教授(物理学)が英訳。協力者を含め233人の共著論文として、英国の専門誌「ジャーナル オブ ラジオロジカル プロテクション」に投稿し、27日のオンライン版に掲載された。
 小野寺さんは「放射線は社会的な問題もはらんでいて、どう向き合えばいいか悩むこともあった」と振り返った。
 斉藤さんは「今も福島では放射線の不安を抱えている人も多い。研究成果を通じ、考えが変わったり、頑張ろうと思う人が出てきたりすればうれしい」と語った。


関連ページ: 福島 社会

2015年11月29日日曜日

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