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今年流行った言葉に「ルーティン」があります。ルーティンとは「決められた動き。一連の動作」のことです。ラグビーワールドカップで活躍した五郎丸選手がルーティンを一躍有名にしました。メジャーリーグのイチロー選手は17種類のルーティンをおこなっていると言われています。プロスポーツ選手は決められた動きをすることで精神を安定させてパフォーマンスが発揮できるようになるのです。

「29人以下の会社を強くする50の習慣」(明日香出版社)の著者である、金村秀一氏は“社長コンサルタント”という中小企業経営者向けのコンサルタントです。本書に紹介されているメソッドは一般的にも活用可能なものが多いため一部を紹介してみたいと思います。冒頭のルーティンがキーワードです。

●マニュアルのルーティン化

---ルーティンを活かすとはどのようなことですか。

金村秀一(以下、金村) 小さな会社は社長の力量で決まります。そのため社長はどんなときでも心を整えて、常に平常心をもって、変化に対応しなくてはいけません。行動を習慣化すれば平常心を保つことができます。そして100%の力で意思決定をすることができます。

また、社長が習慣を整備することで再現性が高まります。再現性とは社長の特性に影響されることなく誰にでもできることを実践することで同じ結果を生み出すというものです。そのヒントがルーティンにあります。

退職者が発生したとき、多くの会社では引継ぎをすると思います。丁寧な引継ぎをすることで業務がナレッジできると思っていませんか。それは大間違いです。引き継ぐ人は次の新天地のことで頭がいっぱいですから、いまの会社に既に熱意は残っていません。

競合他社に転職するような場合であれば新天地での成果を求められますから情報を持っていかれることもあるでしょう。また、正しい営業状況が報告されるとも限りません。大きな会社であれば、引継ぎが失敗したところで大した影響はないかも知れませんが、小さな会社では死活問題です。

---予想してマニュアルを作成してルーティン化しておくわけですね。

金村 引き継がれる人は業務を知らなければ何がなんだかわかりません。時間が経過して困ったことが発生したときようやく知りたいことがわかります。しかし、その時に前任者は社内にはいません。だから私はマニュアルのルーティン化を推奨しています。

世の中には使えないマニュアルが多いのですが、ページ数が多く電話帳のようなマニュアルを見たことはありませんか。永遠に文章が続いていたら現場で読まれることはありません。読まれるマニュアルとは、仕事の内容、手順、時間、ポイントなどが分かりやすく整理されているものです。さらに写真や図表が効果的に使われて枚数も可能な限り少ないものが効果的です。

マニュアルとは過去の失敗がベースとなってできあがりますから、これを読んで実行すれば誰でも仕事の最低基準はクリアできる内容でなければいけません。そしてマニュアルを機能させ続けるには、引継ぎやその業務の実施直後から、マニュアルをバージョンアップすることです。

実施直後のマニュアル改善という習慣がマニュアルを常に進化させます。実施直後であれば記憶にも記録にも残っています。直後に改善会議を実施して、うまくいった点、改善すべき点をすべて洗い出すことで生きるマニュアルを作成することが可能になるのです。

---ありがとうございました。

●読者への示唆

小さな会社は社長の力量で方向性が左右されることはいうまでもありません。社長の力量とは能力の差ではなく習慣の差です。社員が1万人の会社では社長の意思決定した習慣をダイレクトに伝えて実行することはかなりの困難が生じます。しかし小さな会社であれば社長の意思決定した習慣はダイレクトに反映されるものです。

また、小さな会社において経営資源は酷似しておりそれほど変わるものではありません。良い習慣は経営資源を確固たるものにします。既に大きな会社も創業当時は小さな会社だったはずです。大きく成長させた要因は今回あげたような、良い習慣をルーティンに実行していたからなのかも知れません。

<金村氏著書>

尾藤克之
経営コンサルタント

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