クロスハーミット(Windows、エンターブレイン)
ジャンル:RTS
さて、今回のレビューはエンターブレインより発売されたRTS、「クロスハーミット」のレビューです。
この作品、パッケージのデザインからして、どこからどうみて『硬派工画堂』な雰囲気を漂わせています。
(実際、キャラクターのデザインは、昔パワードールやシークエンスパラディウムのキャラデザさんが担当してみるみたいです)
ですが、作中で「スピリチュアルソウル2」で流れた効果音が流れる所から判断するに、ゲームの中身の方も「スピチュ」を
作った人たち……言い換えれば工画堂脱藩浪士(工画堂を辞めた旧パワードールスタッフ)が作っているみたいです。
さらに、音楽を担当しているのは硬派な工画堂ファンであれば知らぬ者はいない音楽家、斉藤博人大先生であります。
(斉藤大先生も99年に工画堂を退社しており、工画堂脱藩浪士の仲間になっています)
ここまで来れば、作っているメーカーが違うだけで、本作は「パワードール」を初めとした立派な硬派工画堂作品の仲間、といっても過言ではないでしょう。
少なくとも、昨今の『萌えに堕ちた』工画堂の新作よりはね。
さて、前置きはこのくらいにして、作品本体のレビューに入りたいと思います。
この作品はいわゆるRTS(リアルタイムストラテジー)の仲間ですが、色々と本作独自の要素も盛り込まれています。
その要素のうちの一つが『エンゲージタイム』。これはLvを上げれば上げるほど戦場に
出ている時間が短くなるというシステム。
Lvの低い序盤はこれを気にせずに適当にやっていても何とかやっていけますが、Lvの上がってくる中盤以降はこの
『エンゲージタイム』のおかげで無駄な事をしている余裕はどんどん無くなっていきます。
Lvを最大の50まで上げると、エンゲージタイムは9分。これはRTSではほぼ一瞬。
あっという間に時間切れになってしまいます。
このシステムのおかげで、特に後半のステージは無駄な行動を極力避けるような戦略が求められます。
そして、もう一つの独自要素、それが戦闘の結果に関わらず、先に進む事が出来るというシステム。
つまり、全滅しようが、勝利条件無視してクリアしようが、先に進めるという事です。
(ただし、ラスト面だけはきちんとクリアしないとゲームオーバーになってしまいます)
しかし、より多くの経験値やお金を手に入れたければ、きちんと勝利を収めないといけません。
さらに勝利した時の評価も、プレイ内容によって三段階に分かれています。
常に最高のランク「パーフェクト」で全面クリアしようと思ったらかなり難易度が上がりますし、そもそも『難易度が高くなければクソゲー』
という思想を持ったジャンキーの方々でさえ、全面パーフェクトは達成出来ていないと聞きます。
さらに、「勝てなくても先に進める」システムを搭載したゆえ、終盤の一部ステージにパーフェクトクリアはおろか、
勝利することすら困難きわまるステージがいくつか存在するのも事実。
特に、「沈思の聖堂」「雌雄(通称物見の尖塔)」の難易度は洒落になってはおらず、シュミレーション初心者がクリアするのは
まず不可能、といっても過言では無いでしょう。
(もし『解けた』というシュミレーション初心者の方、貴方はもう立派なシュミレーション中級者です)
これらの独特の要素により、本作は他のRTSにはない、独特の戦略性を発揮してます。
次にストーリー。
ネタバレになりますので詳しい事ははしょりますが、OP、ならびに中盤までのストーリーは斉藤大先生の秀逸な音楽も手伝ってか、
中々良い出来……なのですが。
中盤以降、どんどんストーリーは失速。さらに、雰囲気を出すために盛んに用いられる独特の難しい言い回しも悪い方向に働き、
物語はどんどん意味不明に……
最終的に、放り出した伏線は多数、空気みたいな多数のサブキャラ達の存在等、物語的にはなただよろしくない終わり方をしています。
よって、総合的なストーリーの出来栄えは、決して良いとは言えません。
ただ、斉藤大先生のBGMのおかげで、このストーリー面のまずさがプレイ意欲を殺ぐ、という事はありませんでした(少なくとも私は)。
以上でレビューを終わりますが、この作品、ストーリー面はたしかに誉められたできでは無いですが、それを補って有り余る戦略性
を持っている作品といえます。
但し、難易度はかなり高いので、ヌルゲーマーの方、ならびに怒りっぽい方にはお勧めできかねます。
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