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哲劇メモ

吉川浩満(@哲学の劇場)の日々の泡

橘玲さん(『「読まなくてもいい本」の読書案内』)

理不尽

先日刊行された橘玲さんのユニークなブックガイドに『理不尽な進化』が紹介されました。ありがとうございます。

  • 橘玲『「読まなくてもいい本」の読書案内──知の最前線を5日間で探検する』筑摩書房、2015/11

「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する (単行本)

「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する (単行本)

友人から知らされたときは、てっきり「読まなくてもいい本」フォルダに放り込まれたかと思いました。しかし。

吉川浩満『理不尽な進化』(朝日出版社)は、グールドとドーキンスの論争を題材に、現代の進化論がどれほど〝スゴい〟かを論じたとても面白い本。(p.111)

ふう、危なかった……。Fさん、お知らせありがとうございました。

以下は橘玲さんのウェブサイトにある同書の紹介。おもしろい。www.tachibana-akira.com

だけど、現物のほうがずっとおもしろいです。こんな具合。

二十世紀半ばからの半世紀で、〝知のビッグバン〟と形容するほかない、とてつもなく大きな変化が起きた。これは従来の「学問」の秩序を組み替えてしまうほどの巨大な潮流で、これからすくなくとも一〇〇年以上(すなわち、ぼくたちが生きているあいだはずっと)、主に「人文科学」「社会科学」と呼ばれてきた分野に甚大な影響を及ぼすことになるだろう。これがどれほどスゴいことかというと、もしかしたら何千年も続いた学問分野(たとえば哲学)が消滅してしまうかもしれないのだ。/この〝ビッグバン〟の原動力になっているのが、複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学などのそれこそ爆発的な進歩だ。/これさえわかれば、知の最先端に効率的に到達する戦略はかんたんだ。/書物を「ビッグバン以前」と「ビッグバン以後」に分類し、ビッグバン以前の本は読書リストから(とりあえず)除外する──これを「知のパラダイム転換」と呼ぶならば、古いパラダイムで書かれた本をがんばって読んでも費用対効果に見合わないのだ。そして最新の「知の見取図」を手に入れたら、古典も含め、自分の興味のある分野を読み進めていけばいい。(pp. 4-5)

一九八〇年代には、NEC(日本電気)が開発したPC-9800が日本ではパソコンの主流で、98(キュウハチ)のOSを専門にするプログラマがたくさんいたけれど、マイクロソフトのWindowsの登場ですべて駆逐され、その知識は無価値になってしまった。哲学や(文系の)心理学は、いまやこれと同じような運命にある。(中略)/大学教員の仕事は〝教養〟という権威を金銭に換えることで、ほとんどの文系の大学は彼らの生活のために存在している。その現実が明らかになるにつれて、風当たりが強くなってきたのは当たり前なのだ。(pp. 317-8)

ぜひご一読を。

「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する (単行本)

「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する (単行本)