「佐藤くんは自分の意見を「正論だ」って信じて疑わないよね」
と言われたことを思い出す。
じぶんの意見を曲げないことは、強さだ。
そう思っていたあのときのこと。
先日
ちょっとしたことをきっかけで議論についてググっていたときに、
こんないい意見を見つけることができたんです。
言語力育成協力者会議(第1回)議事要旨−文部科学省の資料から
私は,ディベート教育のポイントは判断を留保することであると考える。つまり,大事なことは,自分が「客観的」だと思い込んでいる判断を一時中止し,肯定もせず,否定もせず,一時的に物事を肯定と否定の両方から「主観的に」捉える。そして,主観的あるいは客観的に物事を見る両方の見方を子どもたちに意識的に使い分けさせ,このプロセスの客観性が言語を使いこなす上で非常に重要である。
これは言語力を教育するための会議で行われた発言。
つまりこれはこういうこと。
正しいと自信があるにせよ、
正しくないと自信がないにせよ、
相手と向き合ったときは、それはいったん置いておく。
「もしかしたら間違っているかも」
「もしかしたら違う見方があるかも」
「もしかしたら足りない部分があるかも」
そうやって見直す心構えが必要。
そして、そういうふうに
ちょっとじぶんを一個高いところから見てみる流れが、
コミュニケーションにおいてはとても大事。
(ただディベートではなく、ディスカッションにおいては、ぼくはこれが大切だと思うのです)
思い出す。
たしか大学2年くらいのとき、ぼくは
「じぶんの意見を曲げないで主張し続けることが強さだ」
と思っていて。
そのとき、学生たちで企画していたイベントのアイディアを持ち寄って話し合うとき、
じぶんではベストだと思っていた意見をぼくは持って行って。
しかし、それが大反対にあう。
「んー。大地さん(著者)、それはちょっと欲張りすぎなアイディアじゃないですか?」
この人は賛成してくれる。
そう思った人までじぶんの意見に賛成してくれなくて
ぼくの頭はなかばカーッとなっていて。
ぼくはそれに対してあーだこーだと繰り返す。
みんながこっちがいいというアイディアに難癖をつける。
あのね、それはさ……
さも、正しいような論理をつけて、なんとかじぶんが正しいことを見せたがる。
結局その会議は結論を出さずに、話があっちこっちにいって。
「また次回に」
そんなふうにおわる。
後日、
なんだかんだで、リーダー的な立ち位置にいたぼくは、意見をごり押しして通した。
「佐藤くんは自分の意見を「正論だ」って信じて疑わないよね」
そう言われたのは、それからしばらくたってから。
夏も終わる日だったと思います。
パーっと飲んで、ほどよく宴の熱も冷めたころ、
仲良しだった先輩になんの話の流れか、そう切り出される。
「何がっすか?」
お酒のせいで、たぶんそれほど怒りもせずに、ダラーンとした気分で聞く。
「なんか、めげるよね」
酔って気だるかったから、あまり深くは聞かず。
「ぼくは徹底的に調べて、自信あるんで意見変えないんすよ。
コロコロ変えるなんて自信のなさのあらわれですよ」
たしかそんなことは言って。
ただ、先輩のその言葉だけは、起きてもまだしっかりこびり付いて。
そんなぼくに
ダメ押しのパンチがくる。
ゼミ中に教授に言われたひとこと。
「ちょっとみなさん、じぶんの意見のこだわり過ぎるのやめましょう」
「ここは議論の場所です。答え合わせの場ではないんでね」
「みなさん」とは言ったけど、なんとなくそれはぼくに言ったのだということに気づいて。
ゼミが終わっても、それは言葉は離れなくて、
うだうだ頭のなかでその言葉を転がしていると、
今までの「こだわってきた」じぶんの姿が浮き上がってきて。
そうか、と。
「佐藤くんは自分の意見を「正論だ」って信じて疑わないよね」
「なんか、めげるよね」
やっと分かった、と。
弱いから正しさをわめく
Ramen @ Poppoyya チャーシュー麺(メンマ多め, 野菜多め)@ぽっぽっ屋 / jetalone
「ぼくは徹底的に調べて、自信あるんで意見変えないんすよ。
コロコロ変えるなんて自信のなさのあらわれですよ」
意見に耳を傾けず、じぶんの意見の正しさだけわめくのは、
何よりも自信がないことのあらわれなんだと、今なら思うのです。
弱いから、それを守るように、正しさをわめく。
変えなくてもいい。多少わがままでもいい。
けど、だれかと向き合ったとき、一度それは置いておけ。
今のじぶんにも、それはうるさく言いたいのです。
「しならない木よりも
しなる竹のほうが実は強い」
そういう言葉を見たことがある。
しなることができるならば、たとえだれかがじぶんを頼りにしてぶら下がっても、折れない。
***
だれかと向き合ったら、じぶんの正しさは一度置いておく。
それが何よりも、しなやかで、つよい。
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