パリ同時テロ:「一緒に隠れたファン皆殺された」米バンド
毎日新聞 2015年11月28日 21時03分(最終更新 11月28日 21時20分)
「殺人者たちは一緒に楽屋に隠れていた人たち全員を殺した。私の革ジャンの下に隠れていた若い子を除いては」−−。パリ同時多発テロの現場となったバタクラン劇場で、当時公演していた米ロックバンド「イーグルス・オブ・デス・メタル」が、事件後初めてインタビューに応じ、メンバーたちは時に涙を浮かべ、声を震わせながら惨劇を振り返った。米オンラインメディア「バイス」が25日、約26分のインタビュー動画を公開した。
ボーカルのジェシー・ヒューズさんは恋人を捜し、「迷宮のような」廊下から楽屋に飛び込んだ。途中で襲撃犯に鉢合わせしたが逃げ切った。だが楽屋にも襲撃者は踏み込み、共に隠れていたファンたちを撃ち殺した。生き残ったのは革ジャンの下に隠れた「若い子」と自分だけだったという。「多くの人が殺された理由は、友達を残して逃げなかったからだ。多くの人が友達をかばおうとした」
ベースのマット・マクジャンキンスさんは、銃声が聞こえるとベースを手放して舞台袖のカーテンなどに隠れた後、控室に逃げ込んだ。ファンたちと椅子などで入り口をふさぎ、「シャンパンの瓶を(武器代わりに)持った。それしかなかった」。目の前では女性が足から大量に血を流していた。襲撃のせいか漏水が始まり、足首まで水につかった。
当日は現場にいなかった中核メンバー、ジョシュ・オムさんは、犠牲者や遺族への言葉を問われ「ひざまずいて『何でもします』と伝えたい。言い表す言葉がない」と語った。
バンドは発表済みの曲「アイ・ラブ・ユー・オール・ザ・タイム」のカバーを他のミュージシャンたちに呼びかけ、その売り上げ全てを犠牲者への寄付にあてる意向を示した。劇場ではバンドの宣伝担当者も犠牲になった。【八田浩輔】