所得税改革を議論する政府の税制調査会は1日、低所得の若者の支援のため、新しい減税策の検討を始めた。財務省は税金をかけない「ゼロ税率」や一定額を納税額から差し引く税額控除といった選択肢を示した。結婚や働くことへの意欲を高め、成長の基盤を強化する狙いがある。所得税改革は増減税が同じになる「税収中立」で実施するため、負担増を誰に求めるかが課題だ。
政府税調は具体的な制度設計の議論に入った。今回の改革は「将来の成長の担い手である若い世代に光を当てる」のが基本方針だ。
ゼロ税率は税率を0%にする手法で、非課税とは異なる。ドイツやフランスが導入している。所得税は所得が増えるにつれて高い税率がかかる「累進税率」が適用されている。日本では195万円までの課税所得には5%の税率がかかっているが、仮に195万円までの課税所得の税率がゼロになれば税がかからなくなる。低所得者への支援として「一つの工夫だ」(佐藤主光一橋大教授)といった意見がでた。
税額控除は一定額を納税額から減らせる仕組みだ。税負担を軽減する制度としては所得控除もあるが、同じ控除額でも所得控除は所得の大きい人ほど税の軽減額が大きくなる。日本は配偶者控除など所得控除の仕組みを採用しているが、フランスやカナダは税額控除の仕組みで税負担を軽減している。1日の議論では複数の委員から税額控除を導入すべきだとの意見がでた。
低所得者への税負担を軽減すれば、誰かに負担増を求めざるを得ない。会長の中里実東大教授は記者会見で「高齢者の中にも豊かな人がいる。年齢だけで輪切りにはしない」と述べ、高齢であれば一律に優遇している現在の税制を改める考えを示した。
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