「最近どうも体の調子が悪い」「ダイエットしても効果がない」――。こうした症状に心当たりのある人は、もしかしたら原因は睡眠不足かもしれない。近年の研究で、たった一晩徹夜したり睡眠時間が不足しただけで、感染に対する防御やホルモンの作用など様々な身体の機能が損なわれることがわかってきた。
■免疫やホルモンの働きに大差
例えば肝炎ワクチンの予防接種に対する体の反応を調べた研究により、睡眠不足が免疫系にいかに劇的な影響を及ぼすかが示されている。2003年に行われた実験では、少人数の大学生のグループに午前中に標準的な不活化A型肝炎ワクチンを接種した。彼らの半数はその日の夜に通常どおり睡眠をとることを許されたが、残りの半分は一晩中起きているよう指示された。
4週間後、学生から血液サンプルを採取し、ワクチンに含まれていたウイルスに反応して免疫系が作り出した抗体の量を測定した。抗体濃度が高ければワクチンへの反応が良かったことを示し、将来、病原性ウイルスに感染しても体が保護される可能性が高いことを意味する。睡眠をとったグループは睡眠をとれなかったグループよりも抗体濃度が97%も高かった。
睡眠不足がホルモン機能の低下につながるとの研究結果も出ている。11人の若い健康な男性を対象とした実験で、一晩の睡眠時間を4時間に制限した。この睡眠制限を5日間続けたところ、被験者の血液からブドウ糖を排除する能力(インスリンというホルモンの働き)が40%低下したという。
別の研究では、12人の男性に同様の睡眠制限を2晩課した。この睡眠制限によって、被験者の血中グレリン(食欲を促進するホルモン)量は28%も急上昇した。同時に、レプチンという別のホルモンの量は18%減少した。レプチンは「食べる必要がない」というシグナルを脳に送ることによって食欲を抑制する。予想通り、睡眠を制限された被験者は空腹レベルが平均で23%増加した。
■肥満の原因にも
これら生理学の研究をまとめると、睡眠時間の減少が体重の増加につながり得ると考えられる。この仮説は現在、少なくとも50の別の研究によって裏づけられている。そのいくつかでは、睡眠時間が10時間よりも少ない6~9歳の小児は、十分な睡眠をとっている小児よりも1.5~2.5倍肥満になりやすいことが示されている。成人を対象とした研究でも、睡眠時間が6時間より少ない場合、肥満である可能性が50%増すことが示唆されている。また、睡眠制限と2型糖尿病の発症が関連していることを示す研究もある。
(詳細は25日発売の日経サイエンス2016年1月号に掲載)
睡眠、免疫、健康
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