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【社説】

安保法を問う 条約なき盟約の危うさ

 オーストラリアは日本にとって重要な友好国である。しかし、日米のような安全保障条約を結ばないまま、防衛協力を強化して「準同盟国」と位置付ける手法には、危うさを感じざるを得ない。

 日本とオーストラリアとの外務・防衛閣僚会議、いわゆる2プラス2が二十二日、シドニーで開かれた。日豪2プラス2は第一次安倍内閣の二〇〇七年に始まり、今回で六回目。九月に豪首相が、安倍晋三首相と個人的な信頼関係を築いたアボット氏からターンブル氏に交代した後、初めてだ。

 会議後に発表した共同コミュニケには、両国の「特別な戦略的パートナーシップ」や「二国間の安全保障・防衛協力を新たな段階に引き上げる」などの言葉が並ぶ。

 また、自衛隊と豪軍が共同運用や訓練を円滑に行うための「訪問部隊地位協定」の締結を急ぐことや、豪州の次期潜水艦共同開発に日本が参加する用意のあることを表明したことも明記された。

 憲法違反と指摘される安全保障関連法の成立を強行し、集団的自衛権を行使する対象国として、米国に加えてオーストラリアをも想定している安倍政権としては、自衛隊と豪軍の防衛協力をさらに進める腹づもりなのだろう。

 日豪は、日米や米豪に次ぐ、準同盟国という位置付けだ。

 日豪両国は自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配、市場経済という「共通の価値」で結ばれた友好国である。経済的関係も深い。アジア・太平洋地域を中心に国際社会の平和と安全にともに責任を有することに異論はない。

 しかし、中国の海洋進出という国際情勢の変化はあるにせよ、日豪間で軍事的関係を強化することに性急すぎないか。そもそも、安全保障における日豪の関係は日米とは決定的に違う。

 日米間の防衛協力は、その是非は別にして、国権の最高機関である国会が承認した安保条約を根拠とするが、日豪にはそれがない。

 安保関連法により、自衛隊は豪軍を含む外国軍を守るために集団的自衛権を行使できるようになったが、安保条約を結ぶに至っていない国を守るための自衛権発動が妥当なのだろうか。

 二国間の防衛協力の根幹をなす安保条約を結ばず、国会での論議を回避する一方、国会の承認を必要としない外交約束を根拠に自衛隊と他国軍との軍事協力を既成事実化してしまう。そうした政府の手法自体の是非が問われている。

 

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