―元ニューヨーク市警の鑑識官、リンカーン・ライムの活躍を描いた『ボーン・コレクター』('97年)は、150ヵ国で翻訳・出版される世界的なベストセラーになりました。
このたび刊行された『スキン・コレクター』は、四肢麻痺という障害を持ちながら、天才的な頭脳で事件を解き明かしていくライムを主人公とするシリーズの11作目です。個性的な主人公を、どう着想されたのですか。
私が小説を書く目的はただ一つ。読者にエキサイティングで楽しい経験を提供するためです。ですから、実験的な小説や、不快な読後感の作品を書くことは避けています。大切なのは、本を読むことでしか味わえない、ユニークな経験を読者に与えることなのです。
今までにない、まったく新しいヒーローを作り上げたいという思いがありました。当初は、「外から鍵を掛けられた密室で、粘着テープで括られた主人公」を着想しました。物理的に戦うことはできなくとも、頭脳で悪党の裏をかくヒーローを思い付いたのです。
ただ、誘拐にあい拘束されるなど、動けない主人公が謎を解き明かす物語は今までもあった。それなら、下半身不随ならどうか。いや、もっと体が不自由なほうが物語は面白くなる。そう思索を重ねていくうち、首から下が麻痺した科学捜査の天才、リンカーン・ライムが生まれたのです。
―シリーズ第7作に登場して以来、ライムを苦しめてきた宿敵・ウォッチメイカーの死という衝撃的な出来事で、本作は幕を開けます。
私はシャーロック・ホームズが大好きですが、ウォッチメイカーはライムにとってのモリアーティ教授ですね。
読者がある人物を「ヒーロー」であると認識するには、その人が完璧ではないと知らなければなりません。スーパーマンはほとんど完全無欠ですが、クリプトナイトという物質には弱い。もし彼がいかなるものにも影響を受けなければ、見ている人は退屈してしまう。
リンカーン・ライムには、ずる賢いライバルが必要だったのです。ライムに匹敵するほど論理的で賢く、それでいてライムが持っていないアドバンテージを持っている。つまり、まったく道徳心がない悪人―それが、ウォッチメイカーです。「彼をまた出してくれ」という読者からの声が後を絶たないので、今作にも登場させました。
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