銀行員の決算書の見方シリーズの第三弾です。
今回は、貸借対照表の具体的な数字の読み方を解説していきます。
初めての方はこちらを先にご覧ください。
第二弾
貸借対照表は、どこが、どのくらい変わったのか、その比率を見る書類
前回は貸借対照表について色分けを用いて簡単に説明しましたが、今回はもう少し踏み込みたいと思います。
貸借対照表は前回決算期、前々回の決算期と比較してこそ意味のある書類です。可能であれば、決算書を受領しに行く前に、前期の決算書の控えが銀行にあるのであれば、主要な科目だけでも頭に入れてから行くようにしましょう。そうすれば、初見でちょっとした違和感に気づくことができるはずです。慣れてきて、違和感にすぐ気づくことができるようになればもう立派な融資担当者になれるはずです。
それでは、4つの色分けした数字の中身を詳しく見ていきます。
流動資産のポイント
(数字は適当です。すみません。)
流動資産の科目でみるべきポイントは以下の3つです。
「現金預金」これだけで大半が決まる
会社は現金(キャッシュ)がなければ潰れてしまいます。不動産賃貸業等の特殊な業種を除いて、前期との比較で極端に現金預金が少なかった場合は「なぜ現金預金が少ないんだろう」という疑問符を頭に置いて、決算書の次のページにある損益計算書を見るようにしましょう。
一般的には現金預金は月商(売上高÷12)の3ヶ月分あれば安心、といわれていますが、1、2ヶ月分の現預金となっている中小企業も実際にはそれなりに多いです。それは、いざとなれば社長の個人預金を取り崩して資金繰りに充てることができるため、会社に現金預金を置いていないからです。
しかし、通常は現金預金が月商の1ヶ月未満であればかなり資金繰りが窮屈であることが考えられますので、その原因を突き止めなければなりません。可能であれば社長に聞いてみましょう。
受取手形・売掛金は上位3先をとりあえず覚えておく
手形取引は商取引慣行において最近では減少傾向にありますので、売掛金に着目していきます。これも前期決算と比べて金額が増えているのか、減っているのかを見ていきます。
増えているのであれば増収、あるいは回収サイトの長期化が考えられますが、最初のうちは取引先の面前でそこまで分析できません。そこで以下のことを実践してください。
まずは、前回決算期の決算書類のうち「売掛金(未収入金)の内訳書」に書いてある売掛先の上位3先の社名を覚えてください。そして実際に最新の決算書を受領した際に、前期の売掛先と「比較」してみるのです。
売掛金の上位先は、融資先にとって「超お得意様」です。前期と比べて上位先に変化がない場合は「今期も当社との結びつきがかなり強いんだな」と考えられますし、上位先に変動があれば「お得意様が変わったのかな?なぜ変わったのだろう?」と疑問を持つことができます。売掛先の変化に敏感になることで、経営者と目線を合わせることができ、社長との話題にもできると思います。
短期貸付金、仮払金はアウト
短期貸付金の発生には様々な要因がありますが、初心者であればこの項目があっただけでアウトと考えてもらって構わないと思います。貸付金は「会社が誰かに貸している」お金です。銀行から融資を受けているのにも関わらず、誰かにお金を貸すようなことをしている会社は、理由がどうあれ良くないことが多いですし、今後新規の融資を受けにくくなると思って良いと思います。(中小企業がよく利用する信用保証協会付融資の場合に特にこの勘定を嫌います)
なお、「貸付金」と「借入金」は似ていますが、全然違う科目ですので混乱しないようにしましょう。
まとめ
・決算書受領の前に、事前に前回受領した決算書を斜め読みしておき、どこがどれくらい変わったかに敏感になる。
・現金預金の残高に注意する。
・「超お得意様」を覚える。
・「貸付金」はアウト!
次は貸借対照表の見方の最後です。固定資産と負債の部・純資産の部のポイントを書いていきたいと思います。よろしくお願いします。