労働力調査の10月分が発表されました。
失業率が1997年の金融危機~デフレ突入の前の水準に戻ったことは、経済政策の目標をデフレ脱却から別に切り替えるべき時期が来たことを示唆しているように思えます。
- 作者: 脇田成
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/02/12
- メディア: 単行本
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筆者は小泉改革は手術に成功したが、リハビリに失敗した、述べてきました。手術が不良債権処理ならば、リハビリは金融危機対策モードからの脱却にあたります。*1
就業者数は、医療,介護では増加基調が続く一方で、その他の産業では伸び悩んでいます。2012年平均と2014年11月~2015年10月平均を比べると、約100万人の就業者増加の2/3は医療,福祉で生じています。*2
性別では、就業者数増のほぼすべてが女です。
女の55~64歳と35~44歳の就業率上昇が目立ちます。
女の雇用吸収先の医療,福祉ですが、給与は停滞が続いています(←社会保障費が間接的な原資)。
安倍総理大臣は7月26日の「第20回国際女性ビジネス会議」で、
政権発足から2年半、すべての女性が輝く社会の実現を、政権の最重要政策の1つとして言い続けて取り組んでまいりました。
この2年間で、仕事を持って活躍する女性は90万人以上増えました。役員として活躍する女性の数も、これまでの6倍のスピードで増加をしています。国際的にも、こうした日本の変化は高く評価されています。OECDは、先日発表したレポートの中で、女性がより積極的に労働市場に参加をしていることを評価し、日本経済の成長を牽引していると述べています。*3
と述べていましたが、「活躍する輝く女性」が増えたというよりも、「年配の主婦が家計を助けるために福祉部門で非正規労働を始めた」が実態に近いのではないでしょうか。*4
「良い就業者増」とは言い難いことを反映してか、消費も低迷が続いています。
その原因を消費税率引き上げに帰する声が大きいようですが、既に1年半が経過している以上、その他の要因も考慮すべきでしょう。
いい加減、この指摘に耳を傾けるべきと思うのですが。
日本経済の構造変化――長期停滞からなぜ抜け出せないのか (シリーズ 現代経済の展望)
- 作者: 須藤時仁,野村容康
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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経済成長の鍵を握るのは雇用者の所得であり、その所得の伸びが70年代半ば以降低下し続けたため、今日の長期停滞をもたらしたのである。
雇用者所得の増加を抑制してきた主因は、「企業による労働分配率の不当な抑制」、「労働生産性の上昇率が低く、したがって所得の伸びも低い産業による雇用吸収」という構造的要因である。
雇用者所得の増加を抑制してきた二つの構造的要因は、金融政策によっては解決できない。*5