パリでの同時多発テロという不幸な事件は、国際社会の結束を促す機運を生ん…
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パリでの同時多発テロという不幸な事件は、国際社会の結束を促す機運を生んだ。国境を越えた暴力に団結して立ち向かう流れを乱してはならない。
ところが、トルコによるロシアの戦闘爆撃機の撃墜が、不穏な空気を漂わせている。両政府は非難の応酬をやめて、冷静に自制すべきである。
欧米各国、日本も、仲介を急ぎ、この事件がシリア問題への国際的な取り組みに水を差すことがないよう努めるべきだ。
両国の主張は食い違う。ロシア機はトルコの領空を侵したのか、警告はあったのか、トルコ機による攻撃は自国領の外だったのか。真相は見えない。
もともと両国間には最近、シリアのアサド政権と戦う少数民族トルクメン人の問題がくすぶっていた。トルコにとっての同胞民族の地域を、ロシアが爆撃していたとされる。
その渦中におきた撃墜をめぐり、ロシアは対抗措置としてシリア側の国境近くに地対空ミサイルを配備するといい、トルコ側も今後の侵犯に「あらゆる措置をとる」としている。
いずれも国内向けにあえて強硬発言をしている面もあろう。だが国際情勢を考えれば、対立はだれの利益にもならない。
ロシアはパリのテロ後、フランスなどとの協調姿勢に転じており、ウクライナ問題をめぐる孤立感がやや和らいでいる。
トルコもこれまで、ウクライナ問題をめぐる対ロ制裁に加わらず、欧米と異なる良好な関係を続けてきた。両政府とも頭を冷やし、穏当に事件の影響を落ち着かせるのが賢明だ。
各国が向き合うべき相手は、過激派組織「イスラム国」(IS)であり、目標はシリア内戦の収束におくべきだ。足並みの乱れはISを利するだけだ。
今回の撃墜事件の背景には、ロシアやトルコなどがそれぞれの思惑で勝手な軍事行動をシリアで進めている問題がある。
IS掃討といいつつ、ロシアはトルクメン人を含む反アサド各派を爆撃し、トルコもクルド人組織への攻撃を加えているという。そうした関係国の利己的な行動が続く限り、偶発的な衝突のおそれはぬぐえない。
事件を機に、トルコを含む米欧中心の有志連合とロシアは、シリアへの介入行動をしっかり調整する作業を急がねばならない。軍事行動の狙いをISに絞るとともに、アサド政権と、内戦を続ける各派に対話の席につくよう説得に動くべきだ。
関係国が互いにいがみ合うようでは、テロ対策でも難民支援でも、希望の光は見えまい。
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