(従業員)お客様いらっしゃいますでしょうか?田所様。
田所様田所様!お客様開けさせていただきます。
田所様!田所…。
みゆき:銀座の魔力にとりつかれ銀座に飲み込まれた一人の男性が亡くなった。
3年経った今その男性の死は銀座からすっかり忘れ去られている
〜
(ボーイ)いらっしゃいませ。
(甲斐)大垣様どうぞこちらへ。
(大垣)おぉ〜色とりどりでいいねぇ。
(甲斐)ありがとうございます。
(大垣)今日も繁盛してるね。
閑古鳥が鳴いてる店もあるっていうのに立派立派。
ありがとうございます。
これも美しいママさんの営業努力の賜物かな。
ありがとうございますどうぞ。
私は青山みゆき。
銀座並木通りの高級クラブ「カミュ」の雇われママです
(みゆき)いらっしゃいませ。
(宮川)おぉ。
どうぞ。
すみません。
まぁ宮川先生ずいぶんお久しぶり。
ここのところいろいろあってな。
わかってるだろママ。
心配してたんですよ。
先生のお顔を見たらお元気そうなので安心しました。
例のゼネコンの贈収賄疑惑で与党の大物の名前が片っ端からあがってるけど宮川先生大丈夫なんだろうな?
(水谷)ゲームで勝った人ネックレスプレゼントするから。
はいゲームするよ。
(水谷)はいとってとって…。
誰だあれは。
(麗子)水谷俊作さんですよジュエリーデザイナーの。
(大垣)ジュエリーデザイナー?
(麗子)これも水谷さんのデザインなんですよ。
もらったのか?違いますよ買ったんです。
かなりまけてもらいましたけど。
(小松崎)なに言ってんだよそんなバカなことがあるか!どのホステスを選ぼうと私の勝手だろうが!先生ちょっと失礼します。
あぁ。
ずいぶん場違いな騒々しい客だな。
小松崎先生どうなさいましたの?ママこの店はいったいどうなってるんだ?担当をこの娘に替えてくれって言ったらこいつが駄目だって言うんだよ。
(よしえ)カミュのお客様である小松崎さんの係は永久に私ですそれが銀座のルールです。
ママ高いカネ取るだけとっといてホステス一人客の自由にならんのかね?はいそれが銀座の決まりなんです。
せっかく日本一の銀座で遊んでるんだ。
なんとかならんかね?ならんのよごめんなさい。
(マリ)大ベテランのよしえさんが引退すれば話は別ですよね。
まぁ!なんですって!ねえそういう言い方…!マリちゃん替わってくれる?ねぇねぇ…小松崎先生今日はねカミュ祭りなの。
両手に花で姥桜もいるけど…。
楽しんでいただけません?私から…。
…サービスさせていただきますので。
まぁいいかママに任せる。
まぁ嬉しい。
さぁ飲みなおそう。
ご機嫌直って。
よっしゃ乾杯乾杯!
さまざまな欲望が渦巻くこの街では男と女のトラブルそして女同士のトラブルが尽きない
(澪)はっきり言いなさいよ!
(奈緒美)言ってるじゃない!あんたには関係ないでしょ!ちょっと!なんなのよ!ちょっとやめてよ痛いじゃない!うるさい!関係ないでしょ!
(澪)あんた私の大切な客だってわかってて手出したんでしょ!
(奈緒美)こっちからじゃなくてあっちからだって言ってるでしょ!あんたのことより私のことが100倍気に入ったってだけよ!何の騒ぎ?一人は最近「ロワール」に入った娘ですよ。
あんたみたいのがいるからねおかしくなっていくのよ!!
(甲斐)はいはいもういいだろ!怪我をしてもさせても銀座で生きていけなくなるのよ。
その覚悟があるなら続けなさい。
離してよ。
〜
(さち子ママ)泉ママ。
おたくのホステスがうちの娘に喧嘩売ってきたそうね。
どんな教育してるのかしら?
(瞳ママ)歌舞伎町じゃそういう教育もありかもしれないけど銀座じゃいかがなものかしらね。
(泉ママ)まだ詳しい事情聞いてませんので。
つまりこの娘がうちの大事なお客様にちょっかい出して泥棒猫みたいに奪い取ろうとしたってことよね。
私悔しくって。
あなた今笑ったわね。
何がおかしいの?下手な泣き真似に笑っちゃいました。
奈緒美さん。
ロワールのママさん。
こんなことがこの銀座で許されるのかしら?普通なら二人揃って土下座して詫びるわよね。
申し訳ありませんでした。
でも…先に暴力ふるったのはあなたのほうよね?あなた関係ないでしょ黙ってなさいよ。
関係ないといえば瞳ママも関係ないんじゃありませんの?私はさち子ママの親友としてここに来てるの。
あぁ…私は目撃者として公正な意見を申し上げてるだけですわ。
公正な立場だったらこの娘がしでかしたことどれだけ問題があるかおわかりになるわよね?えぇそれはわかります。
だったら余計な口挟むんじゃないわよ!あなたたち最近ちょっと調子づいてるんじゃないかしら。
いい加減にしないといつか痛い目にあうわよ。
さぁ行きましょう。
今日のところはこのくらいで許してあげる。
苦手だわさち子ママと瞳ママ。
さち子ママの「霞」も瞳ママの「リュイ」もこのところ売り上げがかなり厳しいようなんで苛立ってるんでしょ。
だからってそのイライラをこっちにぶつけられてもねえ。
(昌子)そんな根性の悪いママの店行きたかないもんね。
(六兵)そりゃそうだよ売り上げが悪いのは自業自得。
やっぱりママさんはねおふたりのように艶やかでかつかわいくないとね。
うまいこと言うじゃないのよ六兵ちゃんったら。
艶やかでかわいいか…。
ちょっとなにそんなところで引っかかってるのよ。
いや…そういうわけじゃ。
でも災難なのは働いてる女の子たちよね。
そうそこよ!え?災難ってなに?わかんないかなノルマでしょ?
(二人)そう!銀座の女なんていうと派手で豪華に暮らしてるって思われるけど実際は大違いよ…。
(二人)ねぇ!店の売り上げが伸びなければ同伴などのノルマも厳しくなる。
売り掛け金の回収もせっつかれるだろうし女の子たちは相当まいってるはずですよ。
取っ組み合いの喧嘩してもさ大切な客は取られたくないっていう気持わかるねぇ。
大変だね。
バカみたい。
大丈夫?だいぶ酔ってるみたいだよ。
たかがホステスだかがクラブ。
たかが銀座じゃないの。
そんな必死にならなきゃやっていけないようなら辞めればいいじゃない。
奈緒美さん。
あなた今日自分がどれだけ皆さんに迷惑かけたのかわかってないの?私別に悪いことしたって思ってないもの。
あなた銀座のルールを侵したのよ。
まだわからないの!銀座のルールって大げさ。
カネ持ってるバカでスケベな男たちをその気にさせてカネをふんだくるそれが私たちの仕事でしょ。
きれいごと言ってどうするって感じなんですけど。
あなたそれ本気で言ってるの?酔うと本音しか言えなくなっちゃうんですよね。
でも私たちの仕事ってそれだけじゃないと思うんだけどな。
何があるっていうんですか?それはあなたがこの仕事を好きにならないとわからないわ。
じゃあ一生わからないってことだ。
だったらこの仕事辞めなさい。
あなたはまだ若い。
好きになれそうな仕事見つけなさい。
それってクビってことですか?そうよ。
わかりましたじゃあ辞めます。
どうもお世話になりました。
これ忘れ物よこれ!いい気なもんだね本当に帰っちゃったよ!今の若い娘ってみんなああなのかね?あれじゃ務まらないわよ!銀座のホステスは…。
でもキラキラしたいい目をしてると思ったんだけど。
〜雇ってください!うちで?はいみゆきママの下で働きたいと思いました。
ホステスの仕事好きになれないんじゃなかったの?仕事ってのは好き嫌い言ってたらしようがないんですよね。
私が言ってるのはそういう意味じゃないんだけど。
雇っていただけますよね?泉ママの店をああいう形で辞めたあなたをそう簡単に雇うわけにはいかないのよ。
それが銀座のルール。
はいこれ。
あっ!どうもすみません。
携帯電話はホステスにとって大事な商売道具よ。
これ忘れるようじゃ辞めたほうがいいかもね。
(奈緒美)あっ泉ママ?奈緒美ですゆうべはごめんなさい。
私みゆきママのお店で働くことになりました。
問題があるようだったら直接二人で話してください。
もしもし。
みゆきママ?あの娘がとんでもない迷惑かけちゃってるみたいね。
ごめんなさい。
いいえ。
開いた口がふさがらないって感じ。
どうしましょう?そうね…もしよかったら働かせてあげて悪い娘じゃないから。
教育のしがいがありそうね。
よろしくお願いします。
はいじゃあまた。
OKでしょう?まずその言葉遣いからなんとかしなさい私は泉ママより厳しいわよ!
(奈緒美)は〜い。
伸ばさない。
奈緒美さんです。
奈緒美ですよろしくお願いします。
見ない顔だね。
(美樹)今日からなのよね。
はい。
ちょっと甲斐さん。
はい。
新しい若い女の子もいいけどママはまだ?申し訳ありません今しばらくお待ちください。
あんたも銀座じゃ名のとおった黒服だろう。
それにしちゃお粗末な対応だな。
申し訳ありません。
おいおまえ代わってこいよ。
そういうわけには…。
水谷様。
今しばらくお待ちください。
あぁもう帰ろうかな。
私呼んできますよ。
(奈緒美)ごめんなさいママあちらのお客さまがママが来ないと帰るって無茶言っていますよ。
まぁ…。
あいつかぁ…なんて奴だ。
ここは私が代わりますから行ったほうがいいんじゃないですか?でも…。
こちらのお客さまはとっても寛容そうだから大丈夫ですよね?ママ。
俺は寛容だから行ってやれよ!太っ腹!すぐ戻るわ。
寂しいなぁ〜…。
水谷さん!お待たせしました。
ママ遅いよ。
ごめんなさい。
これちょっと見てよ。
これ全部僕の新作。
えっ!?どの指輪がママに合うかなぁ…。
まぁきれい!あぁ…あの男思い出した!もともと黒服だ3年前までクラブ霞で店長やってた。
(麗子)へぇ〜そうなんですか!?大出世じゃないですか!ちょっとこれなんか1回はめてみてよ。
いえそんな…。
いいからいいからほら。
まぁ…。
ほら合うじゃない!あとこういうのは?そんな…。
もう我慢できん!ちょっとごめんなさい。
大垣ちゃん?似合うんじゃない?すごくきれいだしね。
ちょっと!ママ嫌がってるじゃないかよしなさいよ。
ママ嫌がってるの?いやそんな…。
嫌でも嫌って言えるわけないだろう。
君だってこの世界にいたんだったらそのくらいわかるだろう。
まぁまぁ大垣ちゃん…。
ちょっと静かにしてもらえませんか。
あぁもしもし?さちこママ。
さちこママ?ほら見ろ!お前にはさちこママがいるんだったらみゆきママに手出しするんじゃないよ!まぁまぁ落ち着いて。
いや大丈夫よ。
酔っ払いのタコオヤジに絡まれただけだから。
うん今そっちに向かっているところ10分くらいで着くから。
うんはいはい…。
タコオヤジ?ごめんなさい。
ママああいう奴なんだよ。
今日はカネ払わんからな!大変申し訳ありませんでした。
まぁ申し訳ございません。
これに懲りずにまた遊びにいらしてくださいね。
ママ次第ですよ。
(ボーイ)いらっしゃいませ。
どうかしたのかね?宮川先生…。
(甲斐)お待ちしておりました。
ありがとうございました。
遊び方知らん男のようだな。
(甲斐)さっどうぞ。
(二人)お疲れ様です。
お疲れ様です。
お疲れ様。
〜夜中に人を呼びつけて何の用かしら?昨日の奈緒美って娘カミュに移ったんだって?えぇ。
ちょっといい加減すぎない?そういうのって他の娘たちに示しがつかないのよね。
確かに問題のある行為かもしれないけどあなたにこうやって呼び出されるほどのことかしら?
(うめき声)奈緒美さん!どうしたの!?やめなさい!!大丈夫ですか!?どうしたの!
(寺中)この女がないきなり人の顔に…!ちょっとこれ護身用じゃないの!わかってますよ!だから使ったんです。
この人「アフター行こう」ってほとんどストーカーなんだもん!ストーカー!?客に向かって何だよ!お客様大変失礼しましたお詫びに何かご馳走させてください!この近くにおいしい寿司屋があるのでそこでぜひ!申し訳ございませんでした!バカヤロウ!行きましょう!お寿司なんてご馳走する必要ないのに!あなたねぇ!お疲れさまです。
ちょっと奈緒美さん!奈緒美ちゃん…。
もう…。
彼女がどうかしたの?あぁなんでもないのよって言いたいけど…もう。
お客様とトラブっちゃって!あぁ…ごめんなさい。
あの娘を押し付けるようなかたちになっちゃって…。
いいのいいの平気平気!まぁ預かった以上ちゃんと教育するわ!ありがとう。
やっぱり頼りになるなぁみゆきママは…。
えっ?見習わなきゃそのたくましさ。
あらやだ!自分がか細いみたいに聞こえるじゃないの。
みゆきママに比べたらか弱いわよ。
まぁ!あっちょっとごめんなさい。
えぇ。
はいもしもしあぁ母さん?どうしたの?うんわかってる明日行くから。
そのときゆっくり話そう。
心配しなくていいから!
(笑い声)はいおやすみなさい。
ごめんなさい!母からだった。
あぁそう。
お母さん八王子の老人ホームにいらっしゃるんでしょう?えぇ…母一人子一人だから本当は一緒に暮らすべきなんでしょうけどこの仕事をしているとなかなかそうもいかなくて…。
なんの用事だったの?大丈夫なの?…うん。
夜中目が覚めて急に心細くなったみたい。
ちょっと呆け始めているし…。
…そう。
母が元気なうちにまた一緒に暮らせるように頑張らなきゃ!
(笑い声)私よりずっとたくましいわよ!やだもう!あら本当じゃない!そんなことないない!
(ノック)
(澪)ママ!澪です!!どうしたんだろう…。
(澪)鍵開いてる…。
(岸)ちょっとどいて。
ママ!いらっしゃいますか!?ママ?お邪魔します。
お邪魔します!
(岸)ママ!ママ?うわっ!あぁ!〜
(サイレン)
(片山)ご苦労さまです。
(野村)おぉご苦労さんガイシャクラブのママさんだって?はい霞のママです本名若林さち子42歳。
第一報は自殺ってことだったが違うのか?はい自殺と見せかけた他殺とみて間違いありません。
(澪)本名はキクチレイコです。
(野村)ご苦労さん…。
首を絞めて殺害してから自殺に見せかけてますね。
ずいぶん雑な偽装だな。
素人目にもはっきりわかる。
(鑑識)死亡推定時刻ですが解剖してみないと断定はできませんが午後1時から2時の間…というところですね。
なんだ?これは。
どこにもバラはないよな?えぇ。
一輪だけ置かれていました。
(野村)犯人が意図的に残したってことか…。
(野村)すみません…ロワールのママさんですね?はい。
銀座署の野村です。
片山です。
クラブ霞のさち子ママが今日の午後殺害されました。
ほんとですか?どうぞ!ママさん亡くなったさち子ママとあまりうまくいってなかったそうですね。
(従業員)おはようございます!おはようございます。
確かに親しくありませんでした。
つかみ合いの喧嘩をするのは親しくなかったというよりかなり険悪な仲だったというべきでしょう。
ゆうべおそくあなた霞の店内でさち子ママと大げんかしたそうじゃないですか。
この街にいられなくしてあげる!痛い…何すんのよ!
(従業員)やめてくださいやめてください!!あなたってどこまで凶暴なの!?喧嘩の原因は?女どうしのつまらないことです。
今日の午後1時から2時の間どちらにいらっしゃいましたか?私が疑われてるんですか?いやそういうわけじゃありませんが念のため。
その時間なら八王子の白桜苑という老人ホームにいました。
(野村)老人ホーム?母が入っているんです。
今日は10時くらいから午後3時くらいまでずっと母のそばにいました。
それを証明できる人は…。
母に聞いてもらえばわかりますけど…。
そうだ…午後1時頃に八王子にいた私にさち子ママから電話がかかってます。
この番号…これさち子ママの自宅の電話番号です。
ちょっとよろしいですか?はい。
午後1時5分この時刻に亡くなったさち子ママが八王子の老人ホームにいたあなたに電話をしてきたというんですね?はい。
どうも。
電話の内容は…。
ゆうべの続きでした。
私と争ったことがよっぽど癪に障ったんでしょう。
恨みつらみを30分くらい一方的に言われました。
さち子ママが殺された!?誰に…どうしてですか?それを調べるためにこうして皆さんからお話を伺ってるんです。
ママさん今日の午後1時から2時頃までどちらにいらっしゃいましたか?
(大垣)おい!ママを疑ってるのか!こちらのママさんとさち子ママの関係あまり芳しくなかったと聞いてますので念のため。
その程度の理由でアリバイを聞くかね!これも仕事ですので。
客商売なんだから変な噂がたったらまずいだろうが!
(甲斐)お気持は感謝しますがここは早めに帰ってもらうのがいちばんです!うん…そうだな。
(甲斐)ママ!今日の1時過ぎでしたら六兵のお二人と家でお昼を食べてました。
六兵?行きつけの焼き鳥屋さんです。
それよりあいつは調べたのか?あいつといいますと?水谷俊作だよジュエリーデザイナーの。
あいつは3年前までクラブ霞で店長やってた。
そしていまだにさち子ママとはいい仲だったんだ調べてみろ。
ちょっと大垣さん。
いいんだよママ。
あんなやつに遠慮しなくたってママの濡れ衣はらすためにはこの刑事さんたちに頑張ってもらわなきゃいけないんだから。
頑張ってくれよ!
(片山)水谷俊作ですね。
すかした嫌な野郎さ。
あぁ見事なバラですね。
これは俺からみゆきママへのプレゼントだ。
首吊り自殺に見せかけられたさち子ママの遺体の横にも真っ赤なバラが一輪。
(大垣)さち子ママのそばのバラってこれは違うよ。
(大垣)いや違う違う…そんな…。
(水谷)さち子ママがねぇ…驚きました。
驚いてるわりに手作業ずいぶん器用に進みますね。
急ぎの仕事ですから。
昔からつきあいの深い女性の死より仕事のほうが大切ということですか…。
(水谷)刑事さん何をおっしゃりたいんですか?私が殺したとでもお思いですか?そこまでは申しませんけど。
一応今日の午後1時から2時頃どちらにいたのかだけお聞かせいただけますか?ここで一人で作業してましたけど。
(野村)それを証明できる人は?いませんよ…。
事務員の女の子も今日は休みですから。
あなたさち子ママのマンションの部屋の鍵持ってますよね?えぇ。
これです…もう必要ありませんからどうとでもしてください。
〜
(片山)殺されたさち子ママの自宅の電話の発信記録を調べたんですが確かに午後1時過ぎ泉ママの携帯電話に電話をし約30分間話をしています。
泉ママは八王子の老人ホームでその電話を受けてるんだよな。
はいさち子ママからの電話は間違いなく八王子で受信されています。
つまりこの泉ママに犯行は不可能であるということだな。
はい。
死亡推定時刻ですが電話が終わった午後1時35分から2時の間にせばめられます。
おいみゆきママのアリバイどうだ?六兵の夫婦に確認したところみゆきママの証言どおりでした。
彼女にも犯行は不可能ってことか。
(野村)アリバイがはっきりしないのはこの男だけか!
(読経)
(野村)一輪の真っ赤なバラは何だったんだろうな。
(片山)犯人が残した何かのメッセージでしょうか?何を考えてるかさっぱりわからん犯人だ。
下手な偽装で自殺に見せかけているかと思えば意味深にバラなんか置きやがって。
やってることがちぐはぐすぎる。
(瞳ママ)みゆきママ!よくものこのこと来られたわね。
場所柄をわきまえて…。
つまらない喧嘩はよしましょう。
私犯人見つけだすから。
あなたも首を洗っといたほうがいいわよ。
〜ねぇ今回の事件思い出すことない?もしかして3年前の?やっぱりあなたも?首吊り自殺に真っ赤なバラだもの。
偶然と思いたいけどなんか引っかかっちゃって。
それに殺されたのがさち子ママだし…。
(奈緒美)3年前に何かあったんですか?山梨の保険組合の経理部長が保険料3億円を横領して銀座で使ったのよ。
3億円も?えぇ真面目な人だったらしいんだけど…。
週に何度か上京しては真っ赤なバラの花束を手に何軒ものお店をはしごしてお金をばら撒いたのよ。
「バラ男」なんてみんなに笑われてたことも知らずに銀座に足を運んでたの。
タガが外れたっていうのかしら…。
歳とってから知った蜜の味は刺激が強すぎたのね。
カミュやロワールにもそのバラ男はやってきたんですか?えぇ。
ママたちの魅力でますます溺れさせたりして。
そんなことしないわよ。
ねぇ!みゆきママも私も確かに口説かれたわ。
田所:どうぞ
uけ
hってください。
お気持だけ…。
そんなこと言わずにお願いします。
赤いバラの似合う人はこの銀座には多すぎるんです。
多すぎる?でもそのなかでママがいちばん似合うと思うのですでも…上手にお断りした。
どうして!?いいカネづるじゃん。
奈緒美さん!お客様に対してカネづるなんて言い方私絶対許さないわよ。
冗談なのに…。
みゆきママも私もその男性に破滅する男の匂いを感じ取ったの。
だから…銀座に足を踏み入れないでほしいとさえ思った。
でも…さち子ママや瞳ママは違ったのよね…。
(奈緒美)食い物にしたんだ!〜おめでとうございます〜!ママ!プレゼント〜。
私に?まぁ〜きれ〜い。
見て〜!さぁみんな飲んで飲んで…さち子ママと瞳ママはその男性からどんどんお金を吸い取った…。
その男どうなったの?悲しい結末だったわ…。
横領が発覚して…警察が動き出したと同時に宿泊先のホテルで首を吊って亡くなった…。
横領したお金も使い切って何もかも失って死を選ぶしかなかったのかも…。
(笑い声)その男バカすぎない!?笑っちゃう!よしなさい!!今回の事件とそのバラ男…どう関係してるっていうの?もしかしてバラ男の亡霊の復讐?亡霊なんているわけないでしょう?じゃあ誰がやったの?あの男性の関係者とか…家族もいたはずだし…。
そんな男の家族が復讐なんてするわけないじゃん!だって…家族なんてほったらかしてとんでもないことしていた男でしょ?そんな男の家族が復讐なんてするわけないよ。
〜弁解しても無駄よ。
私気づいたの。
あなた…さち子ママ殺したでしょう?会ってお話ししましょう。
これからのこと…。
〜
(サイレン)
(シャッター音)またバラか…。
さち子ママとほぼ同じ手口だな…。
ロープで絞められて殺されてから…ここに吊るされてますね…。
同一犯の犯行でしょうか?あぁ…おそらくな。
しかしわからん!このお粗末な手口から見て自殺に見せかけたいわけでもなさそうだし。
(野村)犯人の狙いはいったい何なんだ?
(片山)被害者の瞳ママこと神崎瞳44歳は昨夜0時30分頃自宅を出ていますがそれ以降の足取りはつかめておりません。
死亡推定時刻は深夜2時から3時の間と思われます。
関係者のアリバイはどうだ?特にみゆきママと泉ママ…瞳ママともうまくいってなかったんだろう?はい。
その二人のアリバイですがいずれも自宅で一人で寝ていたということです。
証人はいません。
(刑事)水谷俊作も同じです。
水谷には瞳ママを殺す動機は見当たらないからな…。
さち子ママも瞳ママも銀座での評判はよくないですね。
客からもホステスからも。
(刑事)どんなふうによくないんだ?カネに汚いし店の売り上げが伸び悩んでたということもあってホステスたちに過酷なノルマを課していたようです。
(野村)二人を恨んでいる人間は銀座にうようよいるってことか…。
それから鑑識から一つ報告が来てました。
なんだ?ガイシャは殺される直前顔に催涙スプレーをかけられたようです。
催涙スプレー?じゃああの…二つの殺人事件の容疑がママにかけられてるっていうのか?そうみたいです。
あぁそうか…。
それでいつもより客が少ないってわけか…。
ママが立て続けに二人も殺されて銀座に来るお客様自体減ってますから…。
ママ…元気出してよ。
俺ママ信じてるんだから。
ねっ!あっ…。
あっ…ちょっとごめんなさい。
あの…お話でしたら先ほどこちらの刑事さんに…。
いや…用があるのはママさんじゃなくて…奈緒美さんというホステスさんなんですけど。
〜あなた…客の顔に催涙スプレーを吹きかけたことがあるそうじゃないですか。
目撃者が大勢いましたよ。
えぇ。
これ…かけましたよ。
いや…確かにその事実はありますがお客様とはもう話がついています。
何ら問題はないはずです。
いや…そんなことは問題にしていないんです。
殺された瞳ママの顔に同じようなスプレーがかけられていたことが問題なんです。
あなた…さち子ママの店の娘ともめてさち子ママや瞳ママにずいぶん責められたそうですね?それで私が殺したっていうの!?そんなわけないでしょう!だいたいこんなスプレーどこにでもあるじゃない!泉ママに「持ってたほうがいい」って言われて持ってただけよ!私も持ってますけど?私もスタンガン。
(里菜)私もスタンガン持ってる。
物騒な世の中ですからね…護身用のために持ってるだけですわ。
あぁ…なるほど…。
(咳払い)それで…ゆうべの2時から3時の間どちらにいらっしゃいました?そんな時間寝てたに決まってるじゃない!お一人でですか?当たり前でしょう!!刑事さん…いくらなんでもスプレー一つでそこまで疑うなんてちょっと無茶なんじゃないですか?そんな無茶な理由でうちの店の大事な女の子を疑うなんて…。
私も…黙っていられませんわよ。
まぁまぁ…私もこれが仕事ですから…。
どうも…お邪魔しました。
〜
(城ヶ崎)銀座が揺れています。
ママが二人も殺されたのだからしかたありません。
しかし…問題は…。
ママ…あなたに容疑がかけられたということです。
申し訳ございません。
オーナー…お言葉ですがそれは警察の言いがかりです。
ママの身の潔白はこの私が保証します!
(城ヶ崎)そんなことはわかっている!人殺しをするような人間を私は雇いはしない!しかし!人の口に戸は立てられない。
よくない噂がこれ以上流れたら…カミュはおしまいだ!事件の真相を…解明します!素人のお前に何ができる!それはわかりませんが…。
カミュと我々が生き延びるためには…やるしかありません!死に神だ…。
(甲斐)えっ?〜ずいぶんかっこよく言い切ったわね。
ありがとう。
いや…そんな礼を言われるほどのことじゃ…。
いや…ああでも言わなきゃ二人とも帰れませんでしたよ。
えっ?じゃあ何か証拠があって…あんなふうに自信満々に言い切ったわけじゃないの?いやいやだって警察だってお手上げ状態の事件ですよ。
素人の俺に何ができるっていうんですか…。
ねぇ…ちょっとだけ…気になることがあるのよ。
えっ?なんですか?3年前の事件…覚えてない?3年前…?うん…。
甲州市の保険組合の経理部長が自殺した事件。
あぁ…覚えてますよ。
あの事件と今回の事件が何か関係があるんじゃないかと思うの…。
…えっ?〜まさかこんないい天気になるとは。
ほうとうほうとうほうとうだ…。
こっちか。
ママも来ればよかったのに。
あれ?これか?あっこんにちは!そこ空き家だよ。
ここ以前田所正康さんが住んでた家ですよね?そうだよ。
あんたは?俺東京の雑誌社の者です。
へぇ…。
もしかして3年前の事件のこと調べてるんですか?そうなんですよ。
ご主人があんなことにならなければ今でも家族3人なかよく暮らせてたのに。
かわいそうなのは奥さんとお嬢さんでしたよ。
あの事件のあと逃げるようにしてこの家を出ていくしかなくて。
で今どちらにお住まいかわかりませんか?あ…ここか。
あのうつかぬことをお聞きしますが田所和枝さんですか?
(和枝)あなたは?あのう俺東京から来た甲斐と申します。
(和枝)銀座…。
銀座の人間が何の用?帰って!亡くなられた旦那さんのことでちょっとお話を…。
帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!このまま帰ったら殺されちゃうよ…。
そこの男前のおにいさん。
え?大丈夫?あんたさあの人の亡くなったご主人のこと聞きにきたんでしょ?はい。
だと思った。
あの事件があったすぐあといろんな新聞やテレビが取材に来たんだけどいつもあの調子。
よっぽどつらかったんでしょうね。
あの人ねああ見えてももともと小学校の先生やってたのよ。
真面目な先生。
それがさ旦那があんなことしたもんだから仕事を続けてられなくなっちゃってね。
そうだったんですか。
(売店店員)旦那が横領したカネを返すために家も売って今じゃアパートで寂しい一人暮らし。
確かお嬢さんが一人いらっしゃいましたよね?うん大学生の娘さんね。
将来お母さんと同じ教師を目指していたらしいんだけどあの事件のせいで大学を辞めて家も出ていったらしいよ。
おにいさん!もしよかったら桃お土産に買っていってよ。
おにいさんいい男だからど〜んと安くするわよど〜んと。
〜
(奥村)あのすみません。
この娘に見覚えありませんか?この辺りで働いてるはずなんだけど。
知らない。
おじさん銀座に何人ホステスがいると思ってるの?ごめんなさい。
〜あっちょっとすみません。
この娘見かけたことありませんか?えっ…。
あの角曲がったとこに美容院がある。
その店から出てくるのを見たような見ないような…。
どっちですか?自分の目で確かめな。
すみません。
いいえ。
かぁ〜!勝沼のワインはうまいね。
少しは空気読みなさいよ。
重いね。
じゃあ田所さんの家庭は完全に壊れてしまったのね。
はい。
無理もないよね。
旦那が3億円使い込んで自殺しちゃったんじゃ。
あぁ…ねぇねぇその奥さんが旦那さんの復讐をしたっていうふうには考えられない?それはないと思いますよ。
ご主人と銀座への恨みだけで生きているような状態でしたから。
あぁそう…。
いなくなった娘が怪しいんじゃないの?あんたは黙ってなさい。
そう…。
その娘さんのことは何かわかった?いや何も。
土産買いにいっただけだな。
だからあんたは黙ってなさい!ごちそうさま。
おかえりなさい。
何の用だ?部屋で話す。
部屋には入れない。
この前は泊めてくれたじゃない。
あれが最初で最後だ。
また煮込みうどん作ってあげるから。
話があるなら外で聞くよ。
つまんないの…。
何だ話って?抱いて!いや…。
だってこの前何もしてくれなかったじゃない。
ちょっと…。
帰るぞ。
待って!冗談だよ。
こんな時間につまらん冗談につきあってるほど暇じゃないんだ。
今日一日どこ行ってたの?もしかして今回の事件のこと探偵さんみたいに調べてるんじゃないの?何でそんなふうに思うんだ?だってみゆきママが疑われてるんでしょ?甲斐さんみゆきママのためなら何でもしちゃいそうなんだもん。
店長だからな。
それだけとは思えないけど。
話ってそんなことか?甲斐さん犯人誰だと思う?みゆきママってことありえない?どうしてそんなことが気になるんだ?だって…。
この前君が作ってくれた煮込みうどんあれほうとうだよな。
山梨名物の。
今日甲州市と勝沼に行ってきた。
何言ってるのかさっぱりわからない。
心配事や悩み事があるならママか俺に相談するんだ。
な?何のことかわからない!ねぇ奈緒美さんのことなんだけど…。
どうかしたの?ずいぶん変わった娘だなぁと思って。
ママのところにはいつから?半年前かな。
ふらっと「働かせてください」ってやってきたの。
どういう生い立ちなの?それが私何も聞いてないのよ。
出身地も何も話そうとしないのあの娘。
だから雇うべきかどうか迷ったんだけど結局強引に押し切られて雇っちゃった。
そうだったの…。
この仕事には向いてないと思うんだけど不思議な魅力のある娘よね。
えぇ。
(ため息)なんで呼び出されたのか勘のいいあなたならもう察しがついてるでしょ?いや…いいえ。
嘘を突き通そうと思ったらいくつも嘘つかなきゃならないのよ。
何隠してるの?奈緒美さんのことでしょ?はい。
彼女は3年前に自殺した田所正康さんの娘さんだと思われます。
やっぱり…。
どうして隠してたの?いや確証がなかったからですよ。
違うでしょ?彼女とあなたの間に特別な関係があったからなんじゃないの?いやそんな…。
そうやって慌てるところがよけい怪しい。
何もないですよほんとに。
そのへんはそんなに突っ込まないでいてあげるわ。
私が心配なのは一つだけ。
彼女が父親の復讐をしたっていうことはありえない?もしかして奈緒美さんがさち子ママと瞳ママを…。
それは…ないと思います。
どうして?彼女には瞳ママが殺されたときのアリバイがあります。
アリバイ?どんな?あ…俺の部屋にいました。
えっ!?いやあの晩彼女突然酔っ払って俺の部屋に訪ねてきたんです。
甲斐さん…泊めて。
あっ…。
泊めて!いや…その様子からただ事ではないと感じて泊めました。
それで?もちろん何もしてませんよ。
そんなこと聞いてないわよ!どんな話をしたのかって聞いてるの。
あっあの…はい。
彼女酔っ払って母親とうまくいっていない。
電話をしたけどつながらなかった。
銀座が憎い。
銀座に何もかも奪われた。
そんなことを口走ってました。
そう…。
朝になって目が覚めたらほうとうを作ってくれました。
はいどうぞ。
味は自信ないけど山梨の名物ね…。
はい。
おいしかったの?はい。
そう…よかったわね。
でもちょっとだけ…カボチャ硬かったかなぁ。
聞いてないわよそんなことまで!はい?ごちそうさま!え?田所奈歩…それがあなたの本名ね?嫌んなっちゃうな〜。
甲斐さんみゆきママにはなんでもしゃべっちゃうんだ。
強引に聞き出したのよ。
彼あなたをかばってたわ。
あなたのアリバイを証言してた。
だって私何もしてないもの!どうして銀座に来たの?見てみたかったの…。
あのまじめなだけが取り柄の父を狂わせて殺したこの銀座がどんな街なのか…この目で確かめたかったの。
どんな街だった?くだらない街だった。
何もかもぶち壊したくなる街だった!それでこの街に復讐したかったのね。
そうよ!父が死んでから私と母さんがどれだけつらい思いしてきたかわかる!?母さんなんて身も心もボロボロになっちゃったのよ!それでも私は一生懸命に支えようとした!でも母さんの心はすさんでって…私とも喧嘩ばかりするようになって…。
結局私は家を出るしかなかった。
それで銀座に来たの。
それで…身元を隠して働いたのね。
別に隠してないけど!?え?泉ママにさえ何もかも隠してたんでしょ?履歴書は出した。
ちゃんと本籍も山梨って書いたし。
田所奈歩って本名も書いてね。
それだけじゃ私があの田所の娘だってバレないと思ってね。
それが私何も聞いてないのよ。
出身地も何も話そうとしないのあの娘《泉ママは…どうしてあんなウソをついたの?》〜お疲れさま。
あら…どうしたの?ちょっとお話ししたいことがあって…。
じゃあどうぞ。
そうなの?奈緒美ちゃんがあの時の男性の…。
えぇ…。
驚いた…。
ねぇ泉ママ。
ん?奈緒美さんそのこときちんと履歴書に書いて出したそうよ。
そう?私は受け取った覚えがないんだけど。
私奈緒美さんの素性を知ったとき父親の復讐だと思った。
でも彼女の犯行じゃなかった。
ということは誰かが奈緒美さんの犯行に見せかけてあの二人を殺害した可能性もあるってことよね。
奈緒美さんが田所正康の娘と知っている誰かが…。
私だって言いたいの?そう思いたくないけど。
でもどうして私が瞳ママやさち子ママを殺さなきゃいけないの?それはわからないわ。
だけど…。
だけど…何?瞳ママが殺された晩あなた部屋で寝ていたって言ったわよね?えぇそうよ。
ぐっすり寝てたわ。
それが嘘だって言いたいの?そうね…確かにそれを証明できる人間はいないものね。
でもそれを言うならあなただって同じでしょう。
あなたも部屋で一人で寝てたんでしょ?それを誰か証明できるの?電話したのよ。
あの晩ちょうど2時頃事件の話がしたくて私あなたに電話したの。
でも誰も出なかったわ。
私が部屋にいなかったって言いたいの?言ったでしょぐっすり寝てたって。
電話のベルに気づかなかっただけよ。
私もそう思ったわ。
だから警察にも何も言ってない。
あなたを信じてたから。
過去形ね。
じゃあ聞くけど私がどうやってさち子ママを殺したっていうの?あの日私は昼間ずっと八王子の老人ホームにいたのよ。
私がどうやってさち子ママを殺すっていうの?それは…そうよね。
ごめんなさい。
わかってもらえたならいいんだけど。
どうぞ。
〜和泉さん!お客様よ。
(職員)娘さんのお友達ですって。
(みつ)百合子の?はじめまして。
私百合子さんと同じ銀座で働いてる青山みゆきと申します。
どうぞごゆっくり。
これカステラなんですけどよろしかったら…。
どうもありがとうございます。
どうぞ。
でも嬉しいですね…百合子のお友達がこうしてわざわざお越しくださるなんて。
あっどうぞ。
はい。
じゃあ失礼します。
百合子さんからいつもお母さまのこと伺ってました。
恥ずかしい母親だって百合子言ってませんでした?いいえ。
あの子にはずっとつらい思いさせてしまって。
聞いてません?昔の話。
はい。
あの子が中学生の時私刑務所に入ったんです。
亭主がろくでなしで他に女をつくったんです。
ねぇ大根好きでしょ?よくわかってんなぁ。
あなた!こんなところで何してるの!?みつ!あなたね!なんだよお前こんなとこまで来ていい加減にしろ!
(笑い声)
(悲鳴)やめろ!おい!やめろ!
(悲鳴)痛…痛いもう!なによあんた!おい!大丈夫か!?痛い!なにしてんのよあんた!痛い…。
痛い!助けて!大丈夫か!?おい!お母さん!?お母さん!?お母さん!?この子はそのことでずっといじめられてきたんですから。
(みつ)あの…。
どうしました?今の話聞かなかったことにしてください。
もう駄目ですね私この子から口止めされてることすっかり忘れちゃって。
初めてお会いした方にこんなお話ししちゃって。
あの聞かなかったことにしてください。
お願いします。
大丈夫ですよ私百合子さんの友達ですから。
そうですか。
そういえば先週の金曜日百合子さんこちらにいらしてたんですよね?ええ朝から夕方までずっといてくれました。
そういう優しい子なんです。
そうですか。
買い物に行った先からも私のこと気にかけてくれて電話をかけてくれたくらいですから。
買い物?ええ私の身の回りのものを買うためにスーパー行ったんですけど途中で電話をくれたんです。
「何か食べたいものある?」って。
泉ママ:あの日私は昼間ずっと八王子の老人ホームにいたのよその電話…ホームにかかってきたんですか?あの子が置いていった自分の携帯電話です。
もしもし?
(泉ママ)あっ母さん?今スーパーに来てるんだけど何か欲しいものないかな?そうだね…。
なんでもいいよ1sN8なく8@って。
うんほらあそこの店なんだっけな…それから30分くらい話をしました。
そういう優しい子…。
そのことも口止めされてたんですか?大丈夫ですよ心配なさらないでください。
(みつ)この足がこんな痛くなきゃね歩けるんですけど。
あの…。
はい?百合子こんな母親もってますけど優しくてほんとにいい子なんです。
どうかいつまでも友達でいてやってくださいお願いします。
もちろんですよ。
こちらこそよろしくお願いします。
百合子さんねいつもお母さんと一緒に暮らしたいって言ってますよ。
ほんとですか?ええ。
ほんとですか…。
(奥村)奈歩ちゃん。
(奈緒美)奥村さん…。
(奥村)ずっと捜しとったんだよ。
〜それで?話って何?
(奈緒美)田所正康という男覚えていますか?
(水谷)田所?いや。
3年前横領したお金銀座で使い込んで自殺した男です。
あぁあのバラ男か。
水谷さんあなたは当時その田所が出入りしていた霞の店長だったんですよね?ああ。
だったら面識があったはず。
あぁあったよ。
田所が横領したお金3億円のうち2億円の使途がつかめていないということご存じでしたか?そんな話もあったような気もしないでもないが結局銀座にばら撒いたってことで収まったんじゃなかったかな。
銀座じゃ3億円くらいその気になればあっという間に使い切れるからね。
(奈緒美)あなたは田所が自殺した直後にこの事務所を構えたんですよね?まぁそんな時期だったかな。
それは単なる偶然ですか?何が言いたい!?消えた2億円の行方あなた知ってるんじゃないですか?知るわけねえだろ!おいいい加減にしろよお前いったい何なんだ!バカなバラ男田所正康の娘よ!父は自殺じゃなくて殺された可能性もある。
そして誰かにカネを奪われた。
それが誰なのか必ず見つけ出して証拠をつかんでやる!
(泉ママ)みゆきさんが訪ねてきたのね?うん。
母さんね嬉しくなっちゃってついついいろんなことしゃべっちゃったの。
みゆきさんあんたの友達なんだよね?うん。
(みつ)いい友達もったね。
うん。
また顔見せに来てね。
うん行くよ必ず。
じゃあね。
(奈緒美)あっ!〜
(甲斐)足を踏み外して転げ落ちるとは考えにくい場所ですね。
突き落とされたってことね?ええ。
誰が…。
(奥村)あの田所奈歩ちゃんのお知り合いの方ですか?はい…。
私勝沼警察署の奥村と申します。
私死んだ田所とは幼なじみなんですよ。
だから3年前の事件をずっと気にかけて追い続けてきました。
田所さん自殺じゃなかったんですか?私は自殺とは思ってません。
田所は横領が発覚する前に事業をやる協力者もいるみたいな意味のことを言ってたようです。
そんな人間が自殺なんかするはずがありません!それに使途不明金が2億円もある。
こっちの捜査関係者はどうせ銀座で派手にばら撒いたんだろうと言って捜査を打ち切ったようですが…私にはとてもそうは思えなかった。
じゃあ殺されたっていうんですか?自殺ではなく殺されたんだとしたら…。
あれはどうみても男の犯行です。
絶対に女の力では無理な犯行だ。
私はね事業の話を持ちかけた協力者というのがずっと気にかかっていたんです。
でも勝沼にいる身ではどうにもなりません。
ところが銀座で二人のママが自殺に見せかけられて殺された。
そこへ真赤なバラの花が残されていたと聞いてこれはもしやと思って上京してきたんです。
もうすぐ定年なんでね…これが最後のチャンスだと思って好き勝手やらせてもらってます。
奈歩ちゃんが銀座で働いているという噂を耳にしたんでようやく捜し出して…私は自分の推測を話しました。
3年前から急に羽振りがよくなった男?ああ…絶対にこの銀座にいるはずなんだ。
心当たりないかね?その男が父を殺したかもしれないんですね?ああ。
奈歩ちゃん!彼女はその人物が誰なのか思い当たったはずなんだ。
ママ…。
心当たりあるんですか?ええ。
元霞の店長…。
ジュエリーデザイナー…水谷俊作。
水谷俊作?そいつは今どこにいるんですか?事務所ならわかりますけど。
案内してもらえますか?はい…どうぞ。
もしもしみゆきです。
留守番電話聞きました。
奈緒美ちゃんの容体は?まだ意識が回復しないの。
危険な状態よ。
誰が?どうして?3年前の事件が関係してるの。
どうぞ!はい!水谷俊作が奈緒美ちゃんを殺そうとした…ってことね?確証はないけど…その可能性は高いと思うわ。
ねぇ…私今日…八王子のお母さまのところに行ってきたの。
母から聞いたわ。
私わかってしまったのよ。
何もかも。
あなたさち子ママのマンションから老人ホームに置いてきた自分のケータイに電話をしたでしょ?アリバイ作りのために30分も…。
銀座のクラブのママが大事な商売道具のケータイを手放すはずないもの。
私それでピンときたの。
八王子から都心まで特急あずさを使えば2時間で往復できる。
ねぇお願いだから警察行って…ほんとのこと話して。
そうするつもりよ。
でもその前にやらなきゃいけないことがある。
もしもし?
(電話を切る音)ええっ出かけた?ええついさっき…女の人からお電話があって…。
お出かけですか?ああ。
どちらへ?お台場。
いってらっしゃいませ!奥村さんあの…!え?ありがとうございました!お台場?ええたしか泉ママのマンションもお台場でしたよね?そうよ…私も行くわ!無茶しないようにしてくださ…。
(不通音)もうまったく!〜ちょっとここで待ってて!
(運転手)はい。
〜
(チャイム)あっすみません!あの410号室の泉百合子さんお出かけになられました?10分くらい前に歩いてお出かけになられました。
そうですかありがとうございます。
まだこの辺りにいるはずよ捜して!捜してって言われても誰を…。
だから!〜あの車を追って!あの車ってどの車を追えばいいんですか?あの赤い車よ!赤い車って言われても…。
いいから追って!はいわかりました!〜もしもし甲斐さん?いやあの…甲斐さんは運転中です。
あっ刑事さん?水谷見つけました!お台場です。
私も追跡中です!わかりました!無茶しないように言ってくださいね。
あの…。
(不通音)切れちゃったよ。
えっ?奈緒美ちゃんを殺そうとしたのあなたね。
3年前に田所さんも殺したんでしょ?何を言ってんのかさっぱりわかんねえな。
警察に行って話しましょうか?勝沼の刑事が探ってるみたいだし…。
あんなやつがカネ持ってたってしようがねえからな。
事業を立ち上げるいい話があるって言いくるめて油断させて殺してやったよ。
〜ひどい人ね!あんたに言えんのか?どうしてあんたが警察にも告げずに一人でのこのこやってきたのか考えたんだよ。
(水谷)警察に行けない理由があるんだろ?さち子ママと瞳ママを殺ったのはあんただな?どうだ?ここはひとつ取り引きしないか?お互い何も知らないということにしないか?ん?そうね。
それも悪くないわね。
(スタンガンの音)ううっ!!
(スタンガンの音)ううっううっ!!〜潮風公園です!ええ!〜やめて!!来ないで!この男殺して私も死ぬ!駄目よ!!どうしてこんな…。
どうしてあの二人を殺さなきゃいけなかったの?あの女母のことを罵ったのよ!ずいぶんと偉そうなこと言ってくれるわね。
(さち子ママ)なに?その目つき。
さすが犯罪者の娘は違うわね。
私が何も知らないとでも思ってるの?あなたの母親のこと調べさせてもらったわ。
怖い母親よね。
あなたにもその血が流れているのよね。
あなたのような女銀座のママになる資格はないわよね。
今すぐこの街から出ていきなさいよ。
また歌舞伎町にでも戻るといいわ。
さもないと銀座じゅうにあんたの母親のこと言いふらすわよ。
この街にいられなくしてあげる。
痛い!何するのよ!母を罵り母の過去をネタに私を脅し私が銀座で築き上げてきたものすべてを奪おうとしたあの女が許せなかった。
殺すしかないと思ったの。
次の日に謝りたいと言って彼女の部屋を訪ねた。
八王子から急いで戻って。
言葉でいくら謝ってもらってもしかたないのよね…。
わかる?えぇ…。
これを持ってきました。
わかってるじゃない。
〜
(呼び出し音)
(みつ)もしもし?あ…母さん?私…あの…今スーパーに来てるんだけど何か欲しいものないかなぁ?さち子ママは殺される前に瞳ママに私からお金を脅し取るって言ってたの。
だから瞳ママは私が犯人だって気づいて脅してきた。
さち子ママに渡すはずだったお金私にちょうだい。
そうすればあなたがしたこと内緒にしてあげる。
私は別にさち子ママの仇をとろうなんて気持これっぽっちもないのよ。
私と取り引きするのがあなたにとっても私にとってもいちばんよね?ほんとに内緒にしてくれるのね?約束は守るわ。
そのかわりあなた一生私に逆らっちゃ駄目よ。
はい…
(悲鳴)〜殺すしかなかった。
でもどうして赤いバラを置いたりして田所さんの関係者の犯行に見せかけようとしたの?奈緒美さんに罪を着せようとしたの?違う!あの女たちのせいで命を絶たれた田所さんの恨みも晴らすつもりだったの!銀座のママの名を汚したあの女たちのやったこと何もかもが許せなかっただけ。
それだけなの…。
まさか奈緒美ちゃんが疑われるなんて思ってもいなかった。
こんな男に狙われるなんて思ってもいなかったの。
奈緒美ちゃんには悪いことをした…。
だからこの男を殺して私も死ぬ!お母さんを一人にするつもり!?大好きなお母さんを悲しませるつもり?お母さん何度も言ってたわよ。
あなたのことを優しい子だって。
お母さんと一緒に暮らすんじゃなかったの?そのことお母さんがどんなに楽しみにしてるかあなたわからないの?私お母さんに頼まれたのよ。
あなたと末永く友達でいてくれって。
私お母さんとの約束守るからね。
何があっても守るからね。
〜
(嗚咽)〜
(奥村)貴様!この銀座の恥さらしが!さっき病院から連絡がありました。
奈歩ちゃんが意識を回復したと。
よかった…よかった…。
〜いろいろとご迷惑をおかけしました。
いいえ。
でもよかったわねお母さんに会えて。
はい。
私もどうかしてました。
この子の気持もっとわかってやるべきでした。
このママさんね勝沼まで来てくださったの。
私なんかに頭下げてくださったの。
あなたの気持をわかってあげてくれって。
私ずっと銀座を憎んでました。
でもみゆきママと会ってその憎しみが消えていったんです。
ママこれからも…。
お前はクビだ。
お前にはこの街は似合わない。
田舎に帰ってお母さんと暮らせ。
ほうとう…もっと上手に作れるようになれ。
はい。
〜はいじゃあ乾杯!乾杯。
でもよかったの?奈緒美さんクビにしちゃって。
えぇあれでいいんです。
ほんと?ほんとは好きだったんじゃないの?何言ってるんですか!いいかげんなこと言わないでくださいよ。
あ図星指されて怒ってる。
怒ってるでしょ?いや違いますよ。
この二人どういう関係かね?あんたに説明したってわからないよ。
俺たちと同じ?はぁ?ラブラブ。
バカ言ってんじゃないよ!怒った怒った!どうもごちそうさまでした!ごちそうさまでした!あぁきれいな月!
(甲斐)あぁほんとだ。
奈緒美さん本気であなたのことが好きだったのよ。
まったく甲斐達也って女心が全然わかってないのよね。
ほんと銀座で働くんだったらねもっと女心を勉強しないと駄目!その言葉まんま返しますよ。
え?あなたこそもう少し男心を勉強してくださいよ。
ちょっと!やだもう!〜2015/11/23(月) 13:00〜14:59
テレビ大阪1
午後のサスペンス「銀座高級クラブママ青山みゆき3赤いバラの殺人予告」[字]
夜の銀座で生きるみゆきママが難事件を解決する!
詳細情報
番組内容
銀座高級クラブ『霞』のさち子ママが絞殺され、遺体の傍らにバラの花が残された状態で発見される。事件前日さち子と大喧嘩した『ロワール』の泉ママに容疑が向けられるがアリバイがあった。ところが『霞』の元黒服でさち子と深い関係にあったジュエリーデザイナーの水谷は、事件当日のアリバイが曖昧なことから容疑をかけられる…。
出演者
青山みゆき…名取裕子
甲斐達也…風間トオル
泉ママ…野村真美
大垣貫太郎…六平直政
和泉みつ…淡路恵子
奥村吾一…西田健
水谷俊作…金山一彦
昌子…松金よね子
小松崎一郎…仲本工事
宮川信一郎…横内正 ほか
原作脚本
【脚本】深沢正樹
監督・演出
【監督】長尾啓司
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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