文/安田浩一(ジャーナリスト)
結局、ネトウヨと呼ばれる人たちは何をしたいのでしょうか――。
単行本刊行から3年半が経過したいまも、私と同じくマスメディアに属する者たちから、こうした質問を受ける機会は多い。もちろん、できる限り誠実に答えたいとは思っている。
騒ぎたいだけ。目立ちたいだけ。仲間を見つけたいだけ。差別が娯楽になっている。歪んだ正義に酔っている。攻撃的になることで自我を支えている。不安や不満をぶちまけているだけ。
取材経験をもとに個別の事例を用いて、それなりの"解説"を試みても、しかし、膝をぽんと叩くような答えが私の口から飛び出てくるわけではない。当事者でもないのに、そもそも歩幅も速度もバラバラなネトウヨの"目的地"を明確化できるわけがないのだ。
すると少なくない記者は少しばかり不満げな表情を浮かべ、小さなため息を漏らし、こう言うのだ。
「まあ、いずれ淘汰されていくのでしょうけれどね」
私が取材を重ねてきた在特会に限定すれば、おそらくはそうだろう。そうであることを私も願っている。だが、在特会が存在感を失えば、それでよいのだとでもいうような物言いに、私もまた軽く舌打ちしたくなる気持ちにもなるのだ。
在特会が結成された直後、全国各地で"差別デモ"が繰り返されるようになったとき、メディアの多くはこれを無視した。
編集者も、知り合いの記者たちも「いつの時代にもバカなヤツはいるのだから」と取り合おうとはしなかった。そしてそのときもまた、お定まりの言葉が私に向けられた。
「淘汰されるから、いつかは」「そのうち消えてなくなるよ」
このような声を聞かされていく中で、情けないことに私もまた、彼らの側に傾いていった。消えてなくなるなら、それでいい。一時的な現象であるならば、継続して取材を続けても仕方ない。
だが「消えてなくなる」どころか、デモの隊列は増え続けた。「一部のヤツ」どころか、あらゆる層にシンパシーを広げていった。
後出しジャンケンであることを自覚しつつ、私はいま、はっきりとかつての仲間たちを、そして自分自身を批判することができる。私は、私たちは、肝心なものを見ていなかった。
在特会の姿は視界に捉えていたし、醜悪な言葉を耳奥に記録してもいた。
だが、見ていなかったこともある。
それは――被害者の姿だ。
-
G2レポート・安田浩一 「ヘイトな馬鹿に鉄槌を」【前編】 大阪・日本城タクシー社長を突き動かした2つの「差別」風景(2015.05.18)
-
ネットでヘイトスピーチを垂れ流し続ける 中年ネトウヨ「ヨーゲン」(57歳)の哀しすぎる正体【前編】(2014.11.17)
-
ごく普通の若者がなぜ「レイシスト」に豹変するのか? ~東大院卒エリートや20代OLまでもが激情する理由(2015.11.24)
-
テロリストが「iMessage」を使う理由〜アップル社の暗号強化が裏目に?(2015.11.26)
-
世界はなぜ「暴力の時代」に逆戻りしたのか? ターニングポイントは中・露の「無法行為」だった!(2015.11.20)
- 福生顔面皮はぎ事件・被害者の「妻」が決意の告白! 「疑われているが私は無実。早く旦那のあとを追いたい・・・」(2015.11.27)
- 「差別」「排斥」はニッポンの娯楽になってしまったのか? ~そしてヘイトスピーチがこの国を侵食する (2015.11.27)
- 在特会は時代を映す鏡である 〜根深いマスコミ不信。真実はネットのなかにある!?(2015.11.26)
- 在特会の会員はこうして生まれる!〜「誰とも怒りを共有できない寂しさ」を埋めるために団結した若者たち(2015.11.25)
- ごく普通の若者がなぜ「レイシスト」に豹変するのか? ~東大院卒エリートや20代OLまでもが激情する理由(2015.11.24)
- 平松邦夫 前大阪市長が緊急寄稿 「私はなぜ、橋下徹市長を訴え、動画削除を求めるのか」(2015.03.25)