大津市:いじめ加害者名を被害者に 調査結果の公表基準
毎日新聞 2015年11月26日 23時28分
大津市は26日、いじめで子供の心身に重大な被害が出た場合などに学校が児童生徒に行うアンケートについて、結果を被害者側に伝える基準を発表した。いじめの概要などに加えて加害者の氏名も知らせる踏み込んだ内容にした。国の指針は被害者側への情報提供の範囲を定めておらず、文部科学省は「独自に情報提供の基準を定め、加害者の氏名まで伝えるよう明記したケースは他の自治体では聞いたことがない」としている。【竹下理子】
大津市では2011年、いじめを受けていた市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺。遺族の求めに対して市はアンケート結果の大半を黒塗りにして公開した。このため、遺族は精神的苦痛に対する慰謝料を求めて市を提訴。大津地裁が14年に違法性を認める判決を出したため、市が独自の公表基準を検討していた。
文科省の指針は、いじめを理由に子供の自殺や自殺が疑われる事案が起きた場合、学校や学校の設置者がアンケートなどを含む詳細な調査をするよう求めている。
大津市の基準では、自殺や自殺が疑われる場合に限らず、いじめや体罰、学校生活での事故などで子供の心身への重大な被害が生じたとみられる場合も、アンケートをするよう対象事案を拡大。保護者からの希望があれば、いじめなどの具体的行為や加害者の氏名、学校の対応などについて市の外部委員会が認定した内容を情報提供することにした。
一方、事実確認ができなかった伝聞情報などは黒塗りとし、回答者や行為を傍観していた子供の氏名は原則非開示とする。いじめ行為を止めようとした子供の氏名は「被害を受けた子供の立ち直りにプラスに働く」として知らせる。
提供された資料は弁護士などを除く第三者に見せないよう、被害者側に求める。被害者と同じ学校の児童生徒や保護者、市議会、報道関係者に公表する場合は、加害者名などを非公開にした別の資料を作成する。
学校が行うアンケートを巡っては、自治体が個人情報などを理由に大部分を非公開とし、被害者側が抗議するケースが相次いでいる。越直美市長は「大津市の事件では十分な開示ができなかった。遺族や被害者の意向に沿った対応をし、被害者側の知る権利をしっかりと確立したい」と話している。