猫のしっぽ カエルの手「深まる秋」 2015.11.25


幾重にも連なる山並みが鮮やかに染まった。
大原の紅葉はいにしえの昔から人々の心を癒やしてきた。
カエデはカエルの手を連想させる形から万葉集で「蛙手」と詠まれ名付けられたという。
築100年の古民家に暮らすベニシアさんは冬の厳しい冷え込みを前にせっせと庭仕事に励む。
薪ストーブ。
きれいにします。
枯れてしまったハーブを根元から切って新しい苗を植えることにした。
冬に咲くヘザーは特別な思い入れのある花。
イギリスでよく原野があるんですね。
特に北のほうとスコットランドの原野が特別有名ですけど。
多分イギリス人にとってヘザーの美しさはなんかブワ〜ッとなる。
咲く時いっぺんに咲きますから。
なんか私にとって懐かしい。
故郷イギリスの花と日本の植物がバランスよく並ぶ庭。
ベニシアさんの庭はベニシアさんの生き方そのもの。
あ〜おはよう。
どうぞあそこ。
やって来たのはベニシアさんの10年来の友人で造園家の椿野晋平さん。
通称バッキー。
今日は?今日ちょっと難しい。
私できなかったね。
これを出したいなと思って。
はいはい。
バッキーにあげたい。
今日はこの家にもともとあったビヨウヤナギを抜く。
そこのローズマリーちょっと元気ないから。
それでそのコンテナも壊れてるから。
ホントやね。
ビヨウヤナギを抜いた後へ鉢で支えきれないほど大きくなったローズマリーを植えたいのだという。
2人の交流は椿野さんが建築を学んでいた大学時代に始まった。
知人からベニシアさんの暮らしぶりを聞いて大原を訪ねたのがきっかけ。
その後椿野さんは造園のプロとなった。
根っこまで行かずに石に当たって。
もっと中のほうの根っこ切りたいんですけどなかなかそこまで。
ごめんね。
でももうちょっとだと思います。
根切りをすること10分。
ようやく根が顔を出した。
うわ取った。
イエ〜!そしたらどっち?こっち持っていこう。
うわ〜すごい。
根っこが崩れないように根っこを持ちます。
そうか。
これやっぱり日本のやり方でしょ?そうですね。
昔から。
根から土が落ちないように麻布で巻く。
1年もすれば自然に土に返ってくれる。
これ誰か欲しい人がいたらあげて下さい。
あそうですか。
そうしたらありがたく使わせて頂きます。
ここ切らしてもらいますね。
壊れかけた木の鉢からローズマリーを救い出す。
なんか崩れそうで…すごい。
根と土が崩れないように慎重に。
うわ〜すごいわ。
よくもってましたねこの状態で。
ローズマリーの向きはどこが正面に?太陽に。
太陽こっちから来てる。
そうしたらこの辺にいるみたいに。
あ〜分かりました。
寒い冬が来る前に窮屈な鉢から庭へ引っ越すローズマリー。
多分ほっとしてるんじゃない?ローズマリーが。
そうでしょうね。
「自由になりました!」って。
うれしいでしょうね。
ローズマリーの植える位置を定めたら自家製の肥料で囲いたっぷり水を与える。
それで根の周りにしっかり土が活着するようにこういうふうに揺すってやって水がグッと入っていくように。
あそうなん?すると土が根っこの周りにピタッピタッとくっついて空気の層が無くなって根っこが張りやすい。
あそうか。
そうなんですよ。
これがもう一つの知恵ですね。
それ今日早速書かないと。
メモして。
かつてベニシアさんから庭仕事を教わっていた椿野さん。
今では逆の立場になることもしばしば。
大原を囲む山に雲がかかると間もなく雨がやって来る。
大原から車で20分。
ここに椿野さんが暮らす家がある。
椿野さんは5年前家族と共にこの古民家に移り住んだ。
うわすごい!ベニシアさんの家に度々通っているうちに古民家暮らしに憧れるようになったという。
ここは台所でご飯を作る。
これ隙間風大丈夫?あ隙間風すごいですよ。
今ほら隙間から外が見えてる。
冬寒いですよ。
屋根の壁際かなどこか分からないんですけど吹雪になると雪がパーッと入ってくるんです。
それ見ると風情があっていいんですけどやっぱり寒いなぁって。
みんな半天着てるの?うんそう。
もういっぱい着て。
四季を本当に感じられる家です。
この家は築200年。
椿野さんが越してくる前は空き家だったためにほとんど全ての部屋に修復が必要だった。
腐った畳は剥がして板の間に。
むき出しの壁は家族みんなで塗った。
傷みが目立つ低い天井は抜いて美しい梁を見せる吹き抜けに。
ただ直すだけじゃない。
自分たちらしい家にしたいと椿野さんは思った。
えっ何!?これは2階は子供部屋で。
2階にはなんとブランコ。
200年前の大工さんもびっくりしているに違いない。
家の中のブランコがすごい。
家が壊れへんかな。
大丈夫。
あ帰ってきた。
子供たち帰ってきた。
お帰り。
ただいま!ベニシアさんが遊びに来てくれてるよ。
お帰り。
すごいいい家だね。
今いくつになった?5歳。
5歳。
前会ったの4歳だったね。
子供たちはお父さん手作りのブランコが大好き。
ベニシアさんもこの家がとても好きになった。
いいな。
でもこれ若い人が見たらなんか夢のような生活だ。
なんかうれしいな。
ベニシアさんが楽しみにしていた庭へ。
これはすごいいいアイデアと思った。
これねもともと池だったんですよねこれ。
何か利用できへんかなと思ってみんなでここでご飯食べられたりとかパーティーができるような感じのスペースとしてもともと池だった空間をそういうテーブルを置いて。
ここしかないでしょ池の中にテーブルが入ってるのは。
そうですね。
ここだけと思う。
この庭は「子供たちが楽しく走り回れるように」という思いを込めて造った。
椿野さんが目指している庭造り。
美しいだけでなくそこに暮らす人が幸せな気持ちになる庭。
これベニーロイヤルミント?そう。
これベニシアさんがくれた。
こんなに増えた?増えましたよ。
ちょこっとだけ植えたら。
これすごいいい香りしますよね。
掃除しててちょっとほうきでサッと掃いただけでもうこの辺がすごいいい香りがして。
でもなんか私がここのリサイクルになってるみたいな感じでしょ。
そう本当に。
でも庭造ってる時あふれる時あるでしょ。
どうしらたらいいの?やっぱり人にあげたいのよね。
そう僕もそれでベニシアさんから頂いてうちの家でもいっぱいやからお客さんのところにもどうぞって持っていってます。
あげるのね。
それはガーデニングのいいところよね。
そうですね。
どんどん広がる。
ベニシアさんは言う。
「庭を見ればその人がどんな人か分かる」と。
古民家の2階ブランコの横に椿野さんの仕事机がある。
大学で建築を学んだ椿野さんはベニシアさんと出会って庭の面白さに目覚めた。
5年前に造園家として独立し設計から施工までを1人でこなす。
お客さんと相談して決めた庭のイメージを図面に起こしていく。
建築を学んだことを生かし模型も作るのが椿野流。
材料はダンボールと爪ようじ。
身近にある物をリサイクルして手作りしている。
椿野さんは言う。
「庭は成長し変化していくもの。
だから少しでも想像の幅を広げてほしい」と。
いつもこの模型を持って行くと「かわいい」って言われます。
評判いいですね。
まずびっくりしはります。
模型が出てくるということに対してすごいびっくりされますね。
今年の5月に椿野さんが手がけた庭の模型と設計図。
小高い丘にある傾斜地。
椿野さんが造る庭の特徴の一つは人がほっとできる場所を造ること。
もともとあった木や石を再利用。
泥壁はこの庭から出た土を固めて造った。
住む人はここから琵琶湖を眺める喜びを日々味わっている。
かつて造った庭の手入れに出向くことも多い椿野さん。
おはようございます。
おはようございます。
今日はよろしくお願いします。
こちらこそ。
京都市西京区に住む…庭の片隅にやはりあるくつろぎスペース。
少しくたびれてきた木の椅子に柿渋を塗ってメンテナンスする。

(2人)せ〜の。
今日の仕事は山科さんと共に。
これで全部ですか?これで全部ですね。
(椿野)すごいいい味が出ましたね。
それでまたこうやって新しく柿渋を塗ってやると。
(山科)柿渋ってやっぱり今の塗料に比べるとそんな強いもんじゃないと思うんですけどでもなんかこういう味が出てくるというのはいいなと思いますね。
これも風格が出てきたよね。
そうですね。
できるだけ庭の持ち主と一緒に作業を行うこと。
そこには椿野さんなりの考え方がある。
お客さんと一緒に庭造りを進めていきたいという思いがありましてプランを考えていく中でも山科さんに設計図を書いて頂いたり模型作りをして頂いたり。
そういうのも一緒に考えて下さりました。
庭造りも一緒に参加して頂くことによってその後もお庭に対する愛着が湧くんじゃないかなと思って。
だから本当になんか最初から決まってたわけじゃなくて一つやって次を考えるっていうかそんな感じでしたね。
今もそういうつながりがあるので本当晋平さんと知り合ってこういう空間が出来てなんか大満足ですね。
ありがとうございます。
やっぱり塗ると引き締まりますね。
そうですね。
おばっちし。
いけました。
ばっちりですね。
自分自身が手をかけた庭に対する愛着はより深くなっていく。
そうするかしないかは大きな違いだ。
山科さんと一緒に育ててきたこの庭。
今日はお土産を置いていくことにした。
椿野さんがベニシアさんにもらったビヨウヤナギだ。
ベニシアさんのところからここへ来てまた元気に育ってくれたらベニシアさんも喜ばれるでしょうね。
新しい住みかを見つけたビヨウヤナギの木。
ベニシアさんの庭から山科さんの庭へと植物の命がつながっていく。
椿野さんは家の前に小さな畑を借りている。
これも何だかベニシアさんと同じ。
すごい!なんかいろんな葉っぱがある。
よいしょ。
ここは嫁さんが作ってる畑です。
コンポストの土とうちのお風呂の薪の灰だけで全部お野菜できてるんです。
いい土になってるね。
妻の可奈さんが世話する畑には白菜大根水菜春菊など旬の野菜が並ぶ。
(椿野)ベニシアさんから頂いたコンフリー。
あ〜増えてるのね。
そのうちこれ多分全部コンフリーになるよ。
(椿野)そうちょっとずつ株分けして増やしていってるんです。
ベニシアさんからもらったコンフリーは教わったとおりコンポストの箱に入れ栄養満点の肥料にする。
(椿野)これまだ1か月前に移したやつやからまだ出来てないんですけど。
あ結構なってるね。
(椿野)1回出来たやつ使いましたよ畑で。
でもいいですね。
これ生ゴミね毎日出来たのをここに持ってくる。
結構楽しいなコンポストに入れるのが。
ベニシアさんと出会って椿野さんは自分の生き方を見つめ直したと言う。
人との出会いという奇跡をベニシアさんも大切にしている。
クリスマスにはまだ間があるけど準備を始めるベニシアさん。
今日はクリスマスケーキを作りたいと思って。
ちょっと早い。
まだクリスマスじゃないけど今日作るケーキは1か月ぐらい寝かせないといけないから。
いろんなフルーツが入ってるからその味がなじむためにちょっと早めに作って。
ベニシアさんのクリスマスレシピ。
最初はフルーツケーキ作り。
今から作りましょう。
最初はこの辺のドライの物を入れますから。
イギリスのクリスマスケーキはスポンジケーキではなくドライフルーツのパウンドケーキ。
スパイスを2つ入れる。
小麦粉ブラウンシュガーナツメグシナモンベーキングパウダー塩を加えてよく混ぜる。
大原の卵ですけど色がすごい。
大原の新鮮な卵を溶いて加える。
でケーキに入れます。
このケーキはあまり膨らまないケーキですから。
どっちかと言ったら紅白まんじゅうみたいなもので長くもつケーキ。
ほんでこういう物を入れます。
油。
サラダ油オレンジジュースブランデーを加える。
ブランデー。
ブランデー入れたらもつようになるのね。
あとこのシロップ。
モラセスシュガーという焦がし砂糖のシロップが深みのある味と色を加える。
くるみなどのドライフルーツは適当な大きさに刻む。
オッケー。
くるみを入れます。
次はクランベリーとチェリーね。
チェリーはちょっと切るほうがいいね。
くるみチェリーアーモンドナツメヤシレーズンなどお好みのドライフルーツを加え更に混ぜる。
ちょっと油塗ります。
焦げ付かないよう型にサラダ油を塗る。
そしたらこれ入れます。
毎年友達へのプレゼントも含め20個以上のケーキを作るベニシアさん。
最後ちょっとアクセントのために…オッケーはい。
今からオーブンに入れます。
飾りにくるみを添えて180℃のオーブンでおよそ1時間焼く。
おいしそうに焼き上がったクリスマスフルーツケーキ。
ここからもう一手間かけるのがイギリス流。
数時間冷ましてから最後の仕上げをする。
空き缶に木綿の布を敷くベニシアさん。
そこへ冷ましたケーキを入れる。
その上からブランデーをたっぷりと。
ひとつき寝かせれば完成。
クリスマスの日が待ち遠しい。
2015/11/25(水) 12:25〜12:55
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「深まる秋」[字][再]

晩秋の京都大原。庭の冬支度で大忙し。手伝いにやって来た造園家の椿野晋平さんはベニシアに憧れ築200年の古民家に暮らしている。クリスマス用のパウンドケーキを作る。

詳細情報
番組内容
晩秋の京都・大原。厳しい冷え込みを前に、庭仕事に大忙し。力仕事は造園家・椿野晋平さんが手伝う。椿野さんは大学で建築を学んでいたが、知人の紹介でベニシアさんの庭を訪れて以来、庭造りにみせられ、建築家ではなく造園家になった。ベニシアさんの暮らしにあこがれ、築200年の古民家に移り住んだ。少し早いがクリスマス用のパウンドケーキを作る。お友達へのプレゼントも含め、20個以上。楽しいケーキ作りに表情も緩む。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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