(神戸尊)うん。
これは悪くない味ですね。
(杉下右京)ええ。
こんな店があるとは知りませんでしたね。
杉下さん。
そのチーズ一口頂いてもいいですか?構いませんよ。
生ハム一切れ頂けるなら。
交換条件か…。
いややめときます。
おやおや。
君自分だけもらおうとしたのですか?残念な事を言いますねえ。
いや別にそういうつもりでは…。
(大木長十郎)特命係に任せて大丈夫ですかね?
(角田六郎)いや…大丈夫だよ。
あいつら俺たちと違って刑事っぽくねえだろ?バレないバレない。
神戸くん。
はい。
ちょっと失礼。
お手洗いはどちらでしょう?あちらになります。
はい警察。
ちょっと失礼。
はい。
確認しました。
よし!急げ急げ!警察だサツ!!
(角田)はいはい警察!動かないよ。
うりゃあーっ!離せコラァ!ふざけんじゃねえぞ!
(大木)灰谷さん。
なんであんな小洒落た店から拳銃が何十丁も出てくるんだ?
(小松真琴)おたくんとこの元構成員がやってた店だよな?
(灰谷耕二)ですからうちの組は関係ありませんって。
でもなんでこんなものまで…。
堂島組が拳銃の密輸に関与してるのは間違いないんだ。
押収した拳銃から指紋が出ない以上手当たり次第調べるしかないだろ。
物証が欲しいところですねえ。
(米沢守)すいませんねどうも。
これどうしましょう?奥に持っていきます。
またずいぶん大量ですねこれね。
おやこれは?
(米沢)ああそれはすでに所轄で自殺と判断された案件ですね。
そのようにたくさん事件が入ってしまってなかなか整理できなくてですね…。
パソコンに遺書ですか。
これが捜査資料ですね。
ちょっと失礼。
キーボードから検出された指紋が亡くなったご本人のものと一致しましてまず間違いないかと思われますが。
妙ですねえ…。
何かご不審な点でも?
(角田)そんな事よりこっち先に頼むよ。
スペースキーの指紋です。
キーボードを打つ際普通なら親指は外側半分しか使いませんがなぜか親指全面の指紋が付着してますねえ。
そういうふうに打つ奴だっているだろ。
私もそう解釈しましたが何か問題でも?これを見る限り真壁さんはパソコンに精通している人物のようです。
それがこんなふうに母印を押すような打ち方をするでしょうか?確かに。
つまり私の見解が間違えてるとおっしゃりたいのですか?とんでもない。
ちょっと気になっただけですから。
いいからこっちを先に…。
ホントに…ホントにちょっと気になっただけですから。
そこまでおっしゃるんだったらもう一度徹底的に詳しく調べてみます。
そうですか?すみませんねえ。
いい加減にしてくれよ!公務執行妨害でしょっぴくよ。
なんで私がそんな!
(角田)あ?皆さん虫の居所が悪いようですね。
そんな日もありますよ。
亡くなったのは真壁義雄さん50歳。
独身ですね。
3年前までは千葉県にある産業廃棄物工場の社員でした…。
その後独立して西青梅市に産廃工場を設立。
社長として社員10名を抱えています。
(住民たち)西青梅の自然を守れー!産廃反対!稼働前から周辺住民の激しい反対運動に遭い工場の資金繰りにも苦心していたようですねえ。
(住民たち)お願いします!ん?真壁さん足をケガしてますよね?1週間ほど前に工場に押しかけてきた反対運動のメンバーと激しく揉み合って捻挫したようですねえ。
その一件で相手は腕を折り真壁さんを告訴する準備を進めていたようですね。
自殺だと判断されてもおかしくないくらい追い詰められてはいたんですね。
確かに。
死亡推定時刻は1月20日。
つまり2日前の午前9時頃から11時頃。
第一発見者は真壁さんの部下瀬野太一さん。
当日真壁さんから遺言めいたメールが届き慌てて真壁さんの自宅を訪ねたところ真壁さんの遺体を発見。
「すまない。
工場を頼む。
真壁義雄」
(瀬野太一)その日はロッカーに携帯を入れっぱなしのまま働いてまして気づいたのが夜の7時でした。
もっと早く気づいていればこんな事には…!真壁さんが工場に出勤していなかった事をおかしいとは思わなかったんですか?社長は普段外回りの方が多かったもので。
「縁」…。
風呂敷のようですね。
これは真壁さんのものですか?さあ…。
見た事ありません。
それが何か?いえ…。
ん?同じものでしょうか…?おや?3枚ありますね。
杉下さん。
これはどこの写真でしょうね?さあ…。
1つお願いがあるのですが。
はい。
こちらの風呂敷とこの写真お借りしてもよろしいですか?ええどうぞ。
どうもありがとう。
今から刑事さんたちが向かうと工場の人間には伝えておきましたので。
ありがとうございます。
失礼します。
この写真に見覚えはありませんか?いえ…。
知りません。
ではこちらのこの風呂敷はいかがでしょう?ああ縁の風呂敷ですね。
縁といいますと?草木染め工房ですこの町の。
女職人が1人でやってるんです。
お知り合いですか?いえその人はうちの工場の反対運動で毎月陳情書をしつこく持ってきてたので。
反対運動ですか。
そうですか…。
お忙しいところありがとうございました。
あれ?でもさっき瀬野さんはそれ見た事ないって…。
ええ。
言ってましたね。
「縁」…。
あれ?あ…。
失礼します。
ああいい香りですね。
ヨモギですね?表に干してある布素晴らしい染め物ですね。
あっ!手伝いましょうか?こちらに移せばいいんですね?
(葛巻彩乃)…ええ。
…悪いわね。
いえ。
(彩乃)お客さまには見えないようですけど…。
申し遅れました。
警視庁特命係の杉下と申します。
同じく神戸です。
真壁義雄さんが亡くなった件でお話を伺いたいと思いまして。
…亡くなったんですか!?おやご存じありませんでしたか?2日前に…。
そう…。
うちはこの山で自家栽培した草木で染めてるの。
え?お一人で山を管理されてるんですか?ええ。
5年前に夫を亡くしてからは一人でね。
それは大変ですね。
この風呂敷ですがあなたがお作りになったものですよね?ええ私が作ったものよ。
実はこれ真壁さんのお宅で発見されたんですよ。
でしょうね。
真壁さんから注文受けたんだから。
真壁さんがどうして…?どうして引き受けたんですか?お客さんだもの。
当然でしょ。
葛巻さん工場の反対運動に参加されてますよね?真壁さんとは穏やかじゃない関係だったはずでは?反対してるのは工場であって別に私はあの人に恨みがあるわけじゃないのよ。
これ真壁さんが注文したものに間違いありませんか?この色は間違いないわね。
草木染めは1つとして同じ色はないから。
「同じ色はない」?こうしてこの子たちに命を頂いてこの命をつないでこの世にたった1つしかない色に出会う。
草木染めは一期一会なのよ。
なるほど。
まさに縁というわけですね。
こんなところで話してる暇があったら早く犯人を見つけてください。
おや?どうして事件だと?えっ?今「犯人を見つけてください」とおっしゃいました。
真壁さん自殺体で発見されたんですよ。
ああそう。
刑事さんたちいらしたからてっきり…。
話は終わりかしら。
最後にもう1つだけ。
亡くなった真壁さんの部屋にあったものですがこの写真入ったところの右側にある小屋ですよね。
…そうみたいね。
真壁さんはどうしてその写真を持ってたんですかね?さあ…写真が趣味なんじゃない?この小屋はどんな用途で使われているのでしょう?悪いけどそれは企業秘密よ。
なんでこんなアングルから撮影したんですかね?ええ…。
(郷田節子)自殺って聞いた時は驚きましたよ。
まさか私のせいって思ったら夢見悪くて。
(早坂圭一)郷田さんのせいではありませんよ。
揉み合いになった原因はなんだったのでしょう?あの男私が持ってった陳情書見ようともしなかったんですよ。
だから頭にきちゃって…。
あっでも手を出したのはあっちですよ。
だから訴えて反対運動も盛り上げようと思ったら自殺でしょ?我々は正当な手順で活動してたんです。
こんな事になるなんて…。
(節子)先生優し過ぎ!告訴もやめた方がいいだなんて。
相手が相手ですから面倒な事になると思って…。
「私一人が矢面に立つ」なんて市議会議員の先生なのにそうまで言ってくれて。
まあ反対運動がここまで盛り上がったのは先生がリーダーでいてくれたおかげなんですけどね。
結局工場建設は止められなかったんですが諦めずに今は工場の運営に違法性がないかどうかみんなで調べたり署名を集めて工場に陳情書を持っていったりしています。
特に深刻なのは大清川の汚染ですよ。
きっとあの工場が廃液を垂れ流してるに決まってます。
この問題を警察はいつまで放っておくんです!?すみません。
その件は警察の管轄ではないので…。
ところで工場の話では草木染め職人の葛巻彩乃さんが毎月陳情書を持っていっていたそうですが…。
ええ。
葛巻さんは誰よりも精力的に活動していたメンバーでした。
「でした」という事は今はもう…?3か月くらい前急に反対運動をやめちゃったんです。
なぜやめたのでしょう?さあ?どうせ後継ぎの問題があったからでしょ。
何があったんですか?一人息子の修一さんが家を出ちゃったんです。
厳しく当たりすぎたんでしょ。
縁の伝統だかなんだか知らないけど何考えてるんだか。
(米沢)遺体の爪や鼻腔からごくわずかですが染色された繊維が見つかりましてその繊維からウコンやミョウバンの成分が検出されました。
気になったものですからもう一度詳しく遺体の頚部の索条痕を調べましたところ…。
うっ…。
こうやってみるとわかりませんが…。
2つの索条痕が重なっている事がわかりました。
つまり真壁さんは2度頚部を絞められたと考えられます。
つまり首を吊って死んだわけではない。
という事になりますね。
おそらくウコンで染められた布で絞めたあとにタオルで首を吊ったと思われます。
つまり凶器は草木染め。
例の風呂敷3枚も調べましたがウコンの成分は検出されませんでした。
現場にそのようなものはありませんでしたねえ。
犯人が持ち去ったと考えるのが妥当でしょうね。
ちなみに現場に杖のようなものはありませんでしたか?杖?いやそのようなものはありませんでした。
そうですか。
そう。
やっぱり自殺じゃなかったのね。
葛巻さん。
3か月前反対運動を突然おやめになりましたよね。
ええ。
熱心に続けてこられたのになぜ?真壁さんが悪い人じゃないってわかったからよ。
草木染めを理解する人に悪い人はいないわ。
ご自身のお仕事に誇りを持ってらっしゃるんですね。
この工房はね明治から続いてるの。
だとしたらなおさら不思議に思えてならないのですが。
外の小屋に川の水をくむポンプがありました。
工場による川の汚染はこの工房にとってもゆゆしき問題のはずです。
しかしあなたは反対運動をおやめになった。
半年前に息子さんの修一さんが家を出られていますね。
その事と何か関係があるのでしょうか?草木染めは根気のいる仕事でね。
わざわざ面倒で手のかかる伝統を受け継ぎたい人間なんていないの。
息子が出てってこの工房も私の代で終わり。
だからもう自然を守ろうなんて気も失せたってわけ。
だから反対運動もやめた。
それが本当の理由よ。
でしたらあの小屋の企業秘密教えてもらえませんか?廃業するつもりなら構いませんよね?アハハ…。
それとこれとは話は別よ。
(伊丹憲一)そこのところぜひお教え願いたいですね。
(三浦信輔)警部殿…。
(芹沢慶二)僕らに任せてくださいよ。
警視庁捜査一課の伊丹です。
三浦です。
芹沢です。
これは亡くなった真壁さんの自宅にあった写真です。
なぜ真壁さんはこんな写真を撮ったんでしょう?念のためこの小屋を拝見できますか?真壁さん殺害事件の重要な手がかりがあるかもしれませんので。
女の私に真壁さんが殺せるわけないじゃないですか。
真壁さんは小柄だったうえに片足を負傷していました。
多少非力な人間でも犯行は可能だったと考えています。
小屋の側を流れてるあの小川。
大清川とつながっているそうですね。
大清川は真壁さんの工場が原因で汚染されたといわれてますが本当のところどうなんでしょう?何がおっしゃりたいの?染め物でもクロムや錫などかなりの量の染色廃液が出るそうですね。
そのあたりも含めて一度あの小屋を見せて頂けませんか?言ったでしょう。
企業秘密だって。
こちらも殺人事件の捜査なんです。
それ強制?もちろん任意ですが。
だったらお引き取りください。
拒否すれば心証が悪くなりますよ。
今さら心証も何もないでしょ!ありがとうございました。
またお願いします。
はいどうも。
さっき刑事さんたちが言ってたんですけど社長誰かに殺されたんですか?いやそれはまだなんとも…。
1つお伺いしたいのですが真壁社長は杖を使っていらっしゃいませんでしたか?は?ケガをされていました。
おそらく杖を使っていたのではないかと。
いや使ってなかったと思いますよ。
そうですか。
実は真壁社長のご自宅の玄関に杖の先のゴムの跡らしいものが残っていたのですがね…。
それは知りませんでした。
工場では使ってなかったので。
工場では使っていませんでしたか。
しかしご自宅からも杖は発見されませんでした。
あ…もう1つだけ。
犯人はなぜわざわざ真壁社長を語って瀬野さんにメールをする必要があったのでしょうね?犯人が僕に気づかせたかったのでしょう。
おやなぜでしょう?犯人にとってみれば遺体の発見は遅れた方が都合がいいはずですよね。
だってその間逃げる時間稼げますから。
そんな専門的な事わかりませんよ。
申し訳ない。
あ…弁当屋だ。
ちょっと失礼します。
これが我々の調査したあの工場に関する資料です。
主に従業員10名の労働環境や工場に搬送されてくる産業廃棄物それから川の汚染に関するデータです。
これ全部私たちが調べたんですよ。
貴重な資料をありがとうございます。
捜査が終わり次第お返し致しますので。
それよりさっき捜査一課の刑事さんたちが来て葛巻彩乃の事色々聞いてきたんですけど真壁って首吊りだったんでしょ?…って事はあの女が首絞めたって事?いやまだそれはなんとも…。
きっとそうよ!あの女草木染めのスカーフいつも愛用してたから。
落ち着いてください郷田さん。
まだあの人が犯人って決まったわけじゃないんですから。
(大木)お疲れ様です。
あ…課長堂島組の一件解決したようですね。
おう。
ワインの木箱から指紋が出てそれが灰谷のと一致してよそれを突きつけたら奴ぐうの音も出ねえ。
ヘヘッ組員も逮捕できたよ。
そうですか。
あとは組のフロント企業で密輸にかかわってた連中をしょっぴければ百点満点なんだけどね。
あっ!ん?杉下さんこれ…。
おやこんなところにこんな人が。
何?何?何よ…。
瀬野さんこの工場では2つの業者から毎日10個ずつ仕出し弁当を配達させているようですね。
つまり全部で20個。
しかし従業員は全員で10人。
この工場では従業員1人が2つずつ弁当を食べている。
…なんて事はありませんよね。
この工場では従業員10名の労働力を明らかに超える量の廃棄物を処理しています。
そしてあなたは以前堂島組の構成員でしたよね?ここでおとなしくしてろ!絶対声出すなよ!
(角田)はいそこまで!
(角田)はい。
(伊丹)あの工場は人身売買で買い取ったカンボジア人を不法就労させていた堂島組のフロント企業ってわけだな。
不法就労者を巡るトラブルでお前が真壁を殺したのか?俺は殺してない!だったら誰がやったんだ!知らねえよ。
俺が見つけた時にはすでに社長は死んでたんだ。
灰谷さんどうしたらいいんですか?工場に捜査の手が入らないよう処理しろ。
(瀬野の声)それで仕方なく自殺に見せかけるために…。
(携帯電話の振動音)だったら誰が真壁をやったんだよ!だから知らねえって言ってんだろ!1つよろしいですか?本当に1つだけ。
神戸くん。
現場に草木染めの布はなかった?たとえばスカーフのような。
見てねえな。
そういう事か…。
(瀬野の声)3か月ぐらい前葛巻が真壁社長に金を渡してるとこを見たんだ。
あれはかなり訳ありって感じだった。
(伊丹)以上が瀬野の証言です。
それからあなたのご要望にお応えして今度はこちらも…。
(芹沢)ありました!これですね。
(伊丹)葛巻さん。
あなたこの染色廃液を不正に廃棄していた事を真壁義雄につかまれ脅されていたんじゃないですか?どうしても縁を潰したくなかったんです。
でも私1人で山の草木の手入れをして1人でこの工房を続けていくには体力的にも限界で廃液の処理まで手が回らなくて…。
つまり川の汚染を工場のせいにされていた真壁がこの小屋から廃液が垂れ流されていた事を突き止めあなたに金を要求した。
はい。
約束のお金よ。
(真壁義雄)確かに。
ああ…。
これが最初だよな?
(彩乃の声)このままでは一生あの男に脅され続ける。
そう思って…。
あの日身に着けていたこのスカーフで真壁の首を絞めて殺しました。
よし連れていこう。
(三浦)さあ行きましょう。
最後に1つだけ。
凶器のスカーフウコン染めとお見受けしました。
あなたがお作りになったものですか?ええ。
こちらのこのウコンで…?そうよ。
そうですか。
(三浦)さあ行きましょう。
杉下さん何か?押収された凶器のスカーフですが犯行に使われたものと見てほぼ間違いなさそうですね。
「ほぼ」…つまり完全に一致したわけではない?染色成分の濃度に若干の違いはありましたがまあ誤差の範囲だと思われます。
杉下さん。
ええ。
それから警部。
瀬野が現場から持ち去った物なんですけども…。
杖ですね。
こちらです。
殺害現場に争った跡があったようでそれを隠すために瀬野はこの杖を持ち去ったそうです。
米沢さん。
はい。
1つ調べて頂きたいのですが。
(米沢)なんでしょう?
(芹沢)あ…。
少しよろしいですか?どうもありがとう。
葛巻さんあなたおっしゃってましたね。
草木染めには1つとして同じ色はないと。
ええ。
あなたから押収したスカーフの染色成分を調べた結果真壁さんの遺体から検出された繊維の染色成分と若干の違いがありました。
(伊丹)ちょっとどういう事です?草木染めには同じものは存在しない。
つまりあれは実際に犯行に使われた凶器ではなく凶器に似せて作られた偽物という事になります。
私が殺したのよ。
あなたは一体何を守ろうとしているのでしょう?本当の事を話してもらえませんかね?私が真壁を殺したのよ。
盗難騒ぎ?はい。
彼が所持していたクロマーが数日前になくなってしまい盗んだ犯人を捜してほしいと言っています。
クロマーというのは?カンボジア製の草木染めのスカーフで彼らが愛用する日常品です。
神戸くん。
貴重な資料をありがとうございました。
お役に立てたようで何よりです。
しかしまさか不法就労者を雇っていたとは驚きました。
ええまったくですねえ。
それはそうと早坂さん1つよろしいですか?はい?それだけのデータを調べ上げておきながらあなたは工場の秘密に全く気づかなかったのでしょうか?確かに…。
情けない限りです。
本当はご存じだったんじゃないですか?あの工場に不法就労者がいた事。
そんなわけないじゃないですか。
私は反対運動のリーダーですよ。
そりゃ知っていればすぐにでも…。
あなたには工場を潰せない理由があった。
確か郷田さんは真壁さんを告訴しようとしてあなたに止められたと言ってましたよね。
もしかして早坂さん真壁義雄に告訴を取り下げるよう依頼されたんじゃありませんか?そして不都合が生じたあなたは工場で不法就労者のスカーフを盗み真壁義雄さんを殺害。
その罪を不法就労者になすりつけようとした。
何を根拠にそんな事を…。
資料をお借りした時郷田さんはこうおっしゃいました。
あの女草木染めのスカーフいつも愛用してたから。
草木染めには様々なものがあります。
ハンカチ風呂敷洋服着物帯。
その中で郷田さんはなぜスカーフが凶器だとお思いになったのでしょう?その理由を郷田さんに確認しました。
早坂先生が言ってたんですよ。
草木染めのスカーフを持ってる人は限られるだろう。
あなたはなぜ凶器がスカーフだとお思いになったのでしょう?それは…。
それは…。
ちなみに現場にあった真壁さんの杖から皮膚片が検出されました。
おそらく犯人と揉み合った際に付着したものです。
DNA鑑定のご協力をお願いできますか?悪いのはあいつなんですよ。
何…?告訴は取り下げないだと?勘弁してくれ。
これ以上はどうにもならない。
いいのか?
(早坂の声)「大丈夫だよ。
郷田は俺の事を信用してるから説得して告訴は取り下げさせる」いつの間にそんなものを…。
(早坂の声)だから工場で不法就労者のスカーフを盗んで…。
(真壁)ああ…あ…!ああ…うう…う…。
ああ…あ…あ…。
そもそもどうして真壁に協力してたんですか?浮気の現場を撮られて仕方なく…。
え…?でもそれも全部真壁が仕組んだものだってあとになってわかって…。
工場を誘致する前からあなたは真壁義雄に利用され反対運動のリーダーとなる事で反対運動が大きくならないようコントロールする役目を担っていたわけですか。
あいつから逃れるにはもう殺すしか…。
殺すしかなかったんだ…。
たとえあなたがどんなに追い詰められていようとあなたに人を殺す理由なんてありませんよ!ああ…!!どうもありがとう。
真壁義雄を殺害した犯人が捕まりました。
真壁社長を殺害したのは市議会議員の早坂圭一です。
え…!?安心しましたか犯人が早坂だと知って。
あなたはどうしてやってもいない罪を被ろうとしていたのでしょう?あなたはどうして小屋への立ち入りを拒んでいたのでしょう?真壁義雄がつかんでいたあなたの弱みとは本当に染色廃液の不正廃棄だったのでしょうか?その答えがあの小屋にありました。
(杉下の声)彼は3か月ほど前産廃工場から脱走した不法就労者です。
あなたが守ろうとしていたのは彼だった。
あなたは事件当日真壁義雄殺害現場で凶器のクロマーを発見しカンボジア人の彼が犯人だと思った。
だからその凶器のクロマーを隠した。
そうですね?おっしゃるとおりよ。
1つ教えて頂けませんか?なぜあなたはそうまでして彼をかばおうとしていたのでしょう?体が言う事を利かなくなって私は草木染めを続けていく事を諦めかけてた。
そんな時突然工房に彼が現れて…。
ちょっと…あなた誰?何してるの?勝手に入って。
こんなとこで。
(彩乃)え…?クロマー…?
(ソパート)クロマー。
クロマー!
(カンボジア語)これあなたが染め…。
クロマー!あなた職人なの?
(彩乃の声)悪い事だとはわかってた。
でも私の代で途絶えてしまう縁の技術と伝統を誰かに伝えたかった…。
この世に残したかったんです。
これはアカネ。
(彩乃)アカネ。
(ソパート)アカネ。
少しずつ入れてそれでこれを煮出して…。
そうそうそうそうそう…。
(彩乃)そう。
ゆっくりね。
こう。
やってみて。
(彩乃の声)彼はとても熱心に私の技術を学んでくれたわ。
3か月前あなたが突然反対運動をおやめになったのは彼の存在が明らかになるのを恐れたからですね?ええ。
そして人目につかないようにあなたは彼を小屋に隠しました。
(彩乃)でも脱走したソパートを捜していた真壁の部下に写真を撮られて…。
(カメラのシャッター音)まさかあんたのとこにいたとはねえ…。
彼を弟子にしたいの。
工場の事は絶対秘密にさせますから。
わかった。
ただし…。
約束のお金よ。
(彩乃の声)真壁はソパートの代わりにお金を要求してきた。
確かに。
真壁ってひどい男ね。
ま…ま…真壁さん…!
(彩乃の声)真壁の名前を聞いておびえるソパートを見た時彼が工場でどれほどひどい目に遭わされてきたのかわかった。
(彩乃の声)それであの日最後のお金を渡しに真壁の家に行って…。
(彩乃の声)クロマーを見た時とっさに彼のだと思いました。
彼を守るためにその事しか考えられなくて…。
捜査一課の人たちが来た時このままじゃ彼をかばいきれないと思った。
それで…。
ソパートこれ持って逃げなさい。
これ持って逃げなさい。
いいから早く!早く!
(彩乃)アウト!アウト!
(彩乃)早くしなさい!あっち!あっち行きなさい!あっち行きなさい!早く!そして偽物のクロマーを作り染色廃液を小屋に残し自らが犯人だと名乗った。
全ては彼を逃がし先代から受け継いだ縁の技術をこの世に残すために。
私が罪を受けてもどこかで縁の技術が残ってくれれば…。
そう思って…。
それなのに…。
(ドアが開く音)ソパート…。
彼自分のせいであなたの身に何かあったんじゃないかと心配になって逃げる事ができなかったそうです。
彼にとってあなたの草木染めは希望だったんです。
工場でひどい扱いを受けて耐えられなかった彼は…。
工場を脱走し行くあてもなく山をさまよい寒さと飢えに生きる気力を奪われこれで最後だと思った時…。
かすかにふるさとで親しんだウコンの香りがした。
それは彼にとって遠く離れた懐かしいふるさとの匂いだった。
そしてあなたの草木染めを一目見て心を奪われもう一度生きてみようと思ったそうです。
彼は母国に強制送還されます。
そこであなたに1つお願いがあるそうです。
え?あなたから技術を受け継いだ証しに「縁」の名を使わせてほしいそうです。
ソーム。
ソーム。
お願いします。
ソパート。
私はあなたにまだ伝え残したい事がたくさんあるの。
この続きは私があなたの国に行った時…ね!
(ソパート)オークン!オークン!ありがとう!ありがとう!ありがとう…。
ありがとう!ありがとう!
(月本幸子)自分を犠牲にしてでも守りたい伝統か…。
その思いの深さは僕たちには計り知れませんね。
草木染めが国を越えて心を通わせたわけですねえ。
素晴らしいですね。
僕は思うのですが草木染めのすばらしい技術を学びたい若者はきっと日本にもいると思いますよ。
そうですね。
うん。
私も先代から受け継いだこの「花の里」をしっかり守っていかないと。
どうぞ。
はいこちらもどうぞ。
おやこれは…?この間お二人が美味しいイタリアンに行くっておっしゃってたからお好きなのかなと思って。
もしかしてこれ生ハムをゆでちゃいました?
(幸子)新しいでしょ?さあ召し上がれ。
ゆでちゃったんだ。
案外美味しいかもしれませんよ。
ですよねえ。
どうぞ杉下さん。
いやいや神戸くん君からどうぞ。
お二人とも遠慮なさらないで。
まだまだたくさんありますから。
あ…そんなにあるんですか。
あるんだ…。
(3人の笑い声)2015/11/25(水) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒season10[再][解][字]
『藍よりも青し』ゲストにあの梶芽衣子を迎えた本格派推理サスペンス!杉下右京(水谷豊)と神戸尊(及川光博)の名コンビが草木染職人の彩乃(梶芽衣子)と対峙!
詳細情報
◇出演者
水谷豊、及川光博、鈴木杏樹
川原和久、大谷亮介、山中崇史、山西惇、六角精児
小野了、片桐竜次
【ゲスト】
梶芽衣子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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