相棒 season 14 #6 2015.11.25


(衝撃音)
(杉下右京)米沢さん。
(米沢守)あっ杉下警部。
わざわざお呼び立てしてすみません。
実は昨夜芝浦の倉庫で遺体が発見されまして。
(冠城亘)右京さん置いてかないでくださいよ…。
君捜したんですよ。
本当ですか?あなたは呼んでませんけど?冠城くん…。
お願いします。
はい。
死因は倉庫ビルから落ちた転落死ですが他殺だと思われます。
腹部に何者かに刃物で刺された跡がありました。
被害者はジャンクアーティストの山本将人さん。
これ先日杉下警部がお話しになっていた御仁ではと…。
そのようですねぇ。
ジャンクアーティスト?ジャンクアートとは廃品やガラクタで作った芸術品の事です。
山本将人。
1カ月前にパリの歴史ある美術賞を日本人で初めて獲りました。
僕も注目していたのですが…残念ですねぇ。
何階?3階です。
(咳)へえ〜これがジャンクアートですか。
これって価値あるんですか?中には数千万するものもあるようですよ。
す…数千万!?こんなガラクタが?芸術家が亡くなってさらに価値が増す場合もありますねぇ。
君…。
あっいや…。
これなんでしょうかねぇ?作品の材料かなんかじゃないですか?作った作品を壊したのでしょうかねぇ?まあ出来が気に入らなくて壊したんでしょう。
芸術家なんだし。
しかし妙ですねぇ。
山本将人の作品は金属だけで作る事が特徴ですよ。
壊されている材料は金属ではありませんねぇ。
ああ冠城くん白手出してください。
えっ?これ持ち帰りますよ。
マ…マジっすか?マジっすよ。
これ全部ですか?全部ですよ。
(伊丹憲一)星野玲奈さんあなた山本将人さんと一緒に暮らしてたんですね?
(星野玲奈)はい。
(伊丹)山本さんとはどれくらい?もう15年になります。
(芹沢慶二)でも結婚はされてない?ええ。
事件当日山本さんに何か変わった様子はありませんでしたか?わかりません。
ここ数日アトリエに寝泊まりしてたので。
芸術家といえば自由気ままな方が多いと聞きます。
特に山本さんは一気に注目された存在だった…。
何かトラブルめいた事はありませんでしたか?いえ…特に。
昨夜の7時頃あなたどちらにいらっしゃいました?残業していました。
上司と一緒です。
お勤めは?新川の坂上税理士事務所で事務員をしています。
すみません…。
星野さんあなたもしかして山本さんに暴力を振るわれたりはしていませんでしたか?えっ?正直にお答えください。
ああ…!わからないなあ。
君もジャンクアートに興味が出てきたようですねぇ。
いや興味があるといえばう…右京さんにです。
いやいや…いや!変な誤解しないでください。
はいはい。
変な誤解はしませんよ。
(角田六郎)暇か?いや…。
(角田)何?何?なんだよ忙しそうじゃない。
何やってるの?被害者のアトリエにあった壊れた作品を復元するそうです。
まあ自由な人です。
(角田)今に始まった事じゃないけどね…。
ああその事件さっき小耳に挟んだんだけどねどうやら男女のトラブルがあったらしい。
トラブル?ああ。
女のほうは被害者から暴力を振るわれたりよそで女作られたり動機は十分みたいでね。
ただアリバイがあるらしいんだな。
そうですか。
ああ。
でこちらは何を?いやジャンクアートの勉強です。
興味が出てきちゃって。
お客様も大概自由だね。
いやいや…ガラクタが数千万円になるんですよ。
数千万!?シーッ!いやちょっと…。
ええっ!?いやこんなのうちのガキが昔作ってたよ?なかなか難しいものですねぇ。
彼女ならその破片の事も知ってるんじゃないですか?アートディレクターの白石由紀。
山本将人のプロデュースもしてて一緒に個展の準備もしてたそうです。
君いいところに目をつけますねぇ。
一度会ってみましょう。
これなんですがね。
(白石由紀)いえ心当たりありませんね。
さすがに将人が何を壊したかまでは…。
そうですか。
わざわざこれを聞きに?すみませんねぇ細かい事を。
ところでアートディレクターとはどんな仕事なんですか?アーティストのプロデュースやサポートを公私にわたって行います。
まあ私の場合スタッフというよりもファミリーの感覚に近いですね。
ゴッホに弟のテオ。
ピカソに恋人のドラ。
芸術家にはよき理解者が欠かせませんからねぇ。
白石さんは亡くなった山本将人さんの他にも何人も有名なアーティストを手掛けているそうですねぇ。
才能あるアーティストたちと仕事が出来て光栄に思ってます。
ところで将人さんとは長かったんですか?初めて会ったのは…3年前です。
面白いねこれ。
どうしたの?作ったの?あのおじちゃんからもらったの。

(由紀の声)粗削りだけど光るものを感じました。
だから一緒にやろうってなんべんも誘ってやっと1年前から本腰入れてくれてこれからって時だったのに…。
知り合ってから2年ですか。
なぜそんなに時間がかかったのでしょう?将人は人と関わるのが極端に苦手なところがありました。
自分の殻に閉じこもるというか…。
まあ芸術家らしいといえばらしい。
でもそのせいで才能も無駄にしてきたんですよ。
小学校の時には彫刻で文部大臣賞を獲ってるんです。
文部大臣賞ですか。
それなのにぱったりやめてしまったらしくて。
今回の海外の賞だって私が強引に出したんですから。
まさに宝の持ち腐れか…。
そんな感じだったんで玲奈さんにも相当苦労させてたみたいですよ。
ろくに働かないで生活費なんかも全部出してもらってたみたいだし。
彼女よく許しましたね。
長い付き合いでつい甘やかしたのかもしれませんね。
初恋同士だって言ってましたから。
そうですか。
捜査のほうはどうですか?申し訳ない。
我々担当ではありませんので。
ご本人は亡くなってしまいましたが個展は予定どおり行われるのですか?はい。
本人もそのつもりで頑張ってたんで追悼のためにもなんとか成功させたいと思ってます。
だからみんな飛び回ってます。
私も事件のあった時作品を取りに行ってました。
知り合いのギャラリーに作品を貸し出してたんで。
おい!なんで脚立ないんだよ?おいちゃんと探したのかよ脚立。
皆さんお忙しそうですねぇ。
ああ…!これは?芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を表現した作品です。
素晴らしいですねぇ。
はあ…そうですか。
すみませんお忙しいところを。
個展の成功お祈りしております。
ありがとうございます。
ありがとうございました。
冠城くん。
こちらのようですねぇ。
(チャイム)
(玲奈)見た事ありませんね。
作品は家に持ち帰らなかったので。
そうですか。
立ち入った事をお聞きするようですが将人さんはいつ頃から暴力を?ひと月くらい前からです。
1カ月前…。
賞をもらって注目を浴びた頃ですね。
きっとイライラしてたんだと思います。
繊細な人だったので…急に環境も変わって。
だからって暴力は…。
人と関わるのが苦手なところはありましたけど元々は優しい人でした。
彼を理解してらっしゃったんですね。
長い付き合いでしたから。
将人さんの小学生の頃はご存じですか?小学生?彫刻で文部大臣賞を獲ったそうですねぇ。
素晴らしい才能です。
本格的に彫刻をやっている子供は決して多くはないと思いますがよほど興味があったのでしょうねぇ。
そんな彫刻もぱったりとやめてしまったとか。
さあ?小学校の頃の話は…。
住んでたところも全然違いましたし。
どちらに暮らしてたんですか?彼は佐賀で私は東京です。
ではお二人が知り合ったのは東京ですか?はい。
お互い21の時に。
あの…将人がちょっと前に言ってました。
最近知らない人につけられてなんだか不気味だって…。
知らない人?顔はよくわからないって。
ただアトリエをのぞき込んでた時もあったそうで。
坂上さんちゃんと思い出してください。
星野玲奈さんは昨夜9時までずっとここで残業してたんですか?気づかないうちに外出していたとか…。
(坂上武雄)何度も言ったじゃないですか。
私はここで彼女と一緒に残業していました。
じゃあ彼女から聞いた事ありませんか?彼氏の…山本将人さんへの不満とか恨みみたいな事。
ありません。
彼女言ってました。
早くに母親を亡くして寂しい環境に育ったから彼の存在が大事だって。
しかし彼女は実際暴力を受けてるんですがね。
申し訳ありません。
時間です。
クライアントのところに参りますのでお引き取りください。
じゃあ…。
どうも。
また伺います。
やっぱりわからん!どうしてこれが数千万もするんだ?いや…まあまあ。
角田くんもだんだん良さがわかってきますよ。
廃品に元々使われてた用途とはまた別の生命が宿るというか。
冠城くん手も動かしてください。
はい…。
ほら怒られた。
でもこれを復元する事が事件解決につながるとは僕には思えないんですけどねぇ。
君初恋はいつでしたか?はい〜?なんですか?いきなり。
初恋です。
答えてください。
幼稚園の時隣の席の子で…。
角田課長の初恋はいつでしたか?俺!?いや俺はお前…。
純朴な少年だったからねぇ。
小4の時に漁師の娘にな。
漁師!右京さんは?21歳。
遅っ!奥手?遅…遅すぎません?遅すぎますよねぇ。
(2人)うん。
将人さんは玲奈さんとは初恋同士だと言ったそうです。
しかしながら玲奈さんは2人が出会ったのは21歳の時だと。
21歳で初恋。
そんな事ってあると思いますか?まあ中には超奥手な奴がいたかもしらんけどね。
失礼します。
杉下警部頼まれていた捜査資料をお持ちしました。
どうもありがとう。
はい。
あの…くれぐれも伊丹さんたちにはご内密に。
もちろんそのつもりですよ。
で少しは進んでるんですか?ほっといてくださいよ!もう…。
なんですと!?おいおいコラコラおい…。
冠城くんちょっと面白い事がわかりました。
ここそしてここ。
あっ!いや…ああ…。
(子供たちのはしゃぐ声)
(小松典子)玲奈ちゃんは明るい子でした。
いつも笑顔で。
そう小さい子の面倒もよく見てくれて。
そうですか。
山本将人という名前に聞き覚えはないですか?
(典子)山本将人?玲奈さんの初恋の相手らしいんですが。
初恋?あっ…彫刻の子の事かしら?彫刻の子?
(典子)ええ。
この近くの公園で会ったそうです。
(セミの鳴き声)
(典子の声)何かすごい賞をもらうとかで授賞式のためにこの近くのおじいちゃんのうちに滞在してたらしくて。
(典子の声)玲奈ちゃんそれから毎日公園に通って。
ある日その子にもらったんですって。
うわ〜きれい!大事にするね。
本当に!?うん!ずっと…。
青い鳥…ですか。
(典子の声)ええ。
ガラクタを集めて作った鳥の人形でした。
玲奈ちゃんそれからずっとその人形を離さないで寝る時も枕元に置いて。
その男の子がおじいちゃんのうちにいたのは1週間ぐらいでしたけどね。
やっぱり2人は知り合ってたんですね。
でもなんで玲奈さんその事を隠そうとするんですかね?来た頃は体中アザだらけでした。
どういう事ですか?玲奈ちゃんはお父さんの暴力がひどくてここに来ましたから。
ろくに仕事もしないでいつも借金取りに追われて逃げてるって話でした。
ここにもめったに顔を出さないで。
玲奈ちゃんが中学を卒業してここを出て行くまでたまにいちごを送ってくるぐらいでしたね。
ただあの男の子との出会いは確かにいい思い出でしょう。
でもここにいた事を玲奈ちゃんは人には言いたくない。
それほど心の傷が深いんだと思います。
本当にそうですかね?いくら忘れたいからって警察にまで過去を隠すなんて。
隠したって消す事なんて出来ないのに。
完成です。
ええ。
うまいもんですね。
12歳の子が作ったにしては。
幸せの青い鳥。
将人さんはどんな思いを込めてこれを贈ったのでしょうねぇ?きっと玲奈さんに幸せになってもらいたかったのでしょうねぇ。
玲奈さんもそれをわかったからこれを大切な宝物にした。
それがどうしてアトリエで壊れていたのか?例えば彼女がアトリエに持って行った。
なんのために?施設の人が言ってましたよね。
父親の暴力は玲奈さんに深い傷跡を残したって。
将人さんだってそれを知ってたはずです。
それなのに玲奈さんに暴力を振るうようになった。
まるであの頃とは別人。
玲奈さんはそれをとがめ人形を壊しそのあと争いになった。
あるいは第三者がこれをアトリエに持って行った可能性もありますねぇ。
(由紀)やっぱり思い当たりませんねぇ。
思い当たりませんか?本当にこれ将人に関係あるんですか?将人さんが子供の頃玲奈さんにあげたものらしいんです。
でも彼女知らないって言うんです。
あの…。
なんでしょう?玲奈さんについて少し気になる事が…。
(由紀の声)ひと目でわかりました。
玲奈さんが相手の男性に好意を持ってる事は。
その事を将人に話したんです。
その相手の男性の事は何か覚えていませんか?特徴とか…ああ服装でも構わないんですが。
封筒を持ってました。
どんな封筒でしょう?確か…「坂上税理士事務所」って書いてありました。
(ノック)失礼します。
(芹沢)失礼します。
坂上さんお聞きしたい事があります。
署までご同行願えますか?あなたと星野玲奈さんが個人的に親しくしているという情報があったんですよ。
仕事が終わったあと2人だけで食事とか行ってますよね?まるで恋人同士に見えたという情報も得ています。
(伊丹)どういう事かわかりますか?あなたと彼女が特別な関係ならあなたが彼女をかばって嘘のアリバイ証言をしたという可能性も出てくるんですよ。
あるいは共犯っていう事も。
馬鹿な事言わないでください。
誓ってもいい。
私と彼女はあくまで仕事上の付き合いです。
(ノック)ちょっと失礼。
お邪魔します。
はい出ました〜!お客様まで…。
忠告したはずですよ特命係に関わるとろくな事がないと。
反対されると燃えるタイプです!坂上さん右手どうされました?事務員の方に聞きました。
あなたが手を怪我したのが2日前。
くしくも山本将人さんが亡くなった日です。
包丁で怪我したんです。
料理をしてて…。
怪我は手のひらだと聞きましたよ。
料理をしていて手のひらを怪我するとは珍しい。
どのような状況だったかお聞かせ願えますか?確かにあの日私は山本さんに会いました。
それはあなたたちの浮気が関係してるんですよね?私は玲奈さんの事を思っています。
ほらやっぱり!
(坂上)誤解しないでください。
私の片思いという意味です。
私は玲奈さんに思いを伝えた時言われたんです。
玲奈さん僕があなたを幸せにします。
駄目なんです。
将人さんの事なら僕がなんとかしますから。
違うんです。
私は…幸せになっちゃいけないんです。
それなのにあの日…。
(山本将人)あんた玲奈にちょっかい出してるんだってな。
どういうつもりだ?
(坂上)あなたですか…。
すまないと思っています。
しかしあなたには玲奈さんを幸せには出来ない。
何言ってるんだ!玲奈と俺は一緒に生活してるんだよ。
俺たちは離れられないんだ!ふざけるな!
(山本)ああっ…!あんたには玲奈さんの気持ちがわからないのか?
(山本)なんだと!?玲奈さんは自分が幸せになっちゃいけないとまで言ってるんだ。
何…?そこまで彼女は追い詰められてるんだ!あんたのせいで!玲奈さんは自分が幸せになっちゃいけないって思い込んでる。
そこまで彼女を追い詰めるなんて私にはあの男が許せません。
本当にごめんなさい。
私のせいで…。
坂上さんにはなんて謝ったらいいか…。
(坂上)そんな顔しないで。
玲奈さん僕ならきっとあなたを幸せに出来る。
時間は必要だろうけど僕は待ってるから。
ありがとうございます。
おうっ…。
将人さんが暴力を振るったりうちに帰ってこなくなったのが1カ月前。
坂上さんの存在を知った頃と一致しますねぇ。
坂上さんの事でイラついた。
だからって手を上げるのはやっぱりまともじゃないですね。
失礼します。
分析終わりました。
こちらです。
拝見します。
鑑定頼んだんですか?ええ。
かなり古いもののようですなあ。
調べたところ使われていた材料の中には20年以上前のジュースの空き瓶の欠片もありました。
やはりそうでしたか。
それから気になる事が…。
表面からはちょっとわかりづらいんですけども翼の付け根の部分にわずかですが血痕が付着してました。
血痕?AB型の男性のものと思われます。
将人さんの血液型は?A型です。
坂上税理士はO型…。
AB型といえば星野玲奈さんがそうですが彼女は女性ですしね。
米沢さんどうもありがとう。
どこ行くんですか?もう一度あの場所に。
追いかけなくてよろし…あっ…ちょっ…ちょっ…。
玲奈さんのお父さんが彼女がここにいる間いちごを送ってきていたとおっしゃってましたね。
最初に送ってきたのがいつ頃だったかおわかりになりますか?はい。
ちょっとお待ちください。
どうぞ。
ええと…ちょっと待って…。
ああありました。
1991年ですね。
ちょっと拝見出来ますか?はいどうぞ。
1991年…24年前ですね。
ちょうど玲奈さんが将人さんと出会った頃ですね。
玲奈さんのお父さんが最後にこちらに来たのはいつ頃だったのでしょう?あっ…彼女の誕生日の日でした。
(典子の声)あの日玲奈ちゃん門限が過ぎても帰ってこなかったんです。
それでみんなで心配して捜し回って…。
(典子)玲奈ちゃん!いたいた!いたわ!玲奈大丈夫?怪我ない?
(典子)一体どうしてたの?迷子になっちゃって…。
(典子)迷子?
(典子の声)方角的に裏山で迷子になったんだと思いました。
裏山ですか…。
あそこは人気がなくて危ないので行くのを禁止してるんです。
でもやんちゃな男の子たちは隠れてよく行ってました。
山小屋があってそこを秘密基地だなんて言って…。
その山小屋ですが今でもありますか?さあ…。
右京さんないみたいですよ。
冠城くん!はい。
あれじゃありませんかね?え?あっ…。

(床がきしむ音)
(床がきしむ音)おっ…。
何やってるんですか?冠城くんちょっと。
ああ…。
あなたが育った児童施設その裏山にある山小屋から白骨死体が発見されました。
現在鑑定してます。
時間はかかりますがやがて全てが明らかになるでしょう。
玲奈さん白骨死体はあなたのお父さんではありませんか?私が父を殺しました。
あの日突然施設に現れた父は私を裏山に連れ出して…。

(星野浩史)玲奈お父さんもう駄目なんだ。
一緒に死んでくれ。
あなたと無理心中を図ろうとしたという事ですか?あなたが出るまで施設にはいちごが送られてきていました。
すでに死んでいたお父さんの名前で。
あれは将人さんが送っていたんですね?お父さんが生きているように偽装するために。
私が頼んだんです。
父を殺したあとで。
でも白骨と一緒に埋まっていたものがあります。
彫刻刀です。
それも特別な。
彫刻刀にはAB型の男性の血液が付着していました。
お父さんの血液です。
そこで考えられる事は一つ。
お父さんを殺したのは将人さんだったのではないかという事です。
彼はあなたとお父さんのただならぬ様子が心配になってあとをつけてきた。
死にたくない…。
お父さん…死にたくない。
(戸が開く音)
(星野)なんだ?お前。
将人くん!
(星野)なんだよお前は!やめろーっ!
(刺す音)あなたを守りたい。
ただその一心だったのでしょうね。
でもどうして彫刻刀が?万が一の時にあなたに疑いが向かないようにお父さんの死体の横に将人さんが埋めたのでしょう。
彼は心からあなたの事を思っていたのでしょう。
しかし彼は変わっていきました。
その後彫刻もやめた。
無理もありません。
その手で人を殺めてしまったのですから。
そんな彼をあなたは必死で支えようとした。
しかしあなたにも変わる時が訪れた。
坂上さんとの出会いです。
彼は真面目でごく普通の人です。
でも彼は私に「あなたは幸せになっていいんだ」って言ってくれました。
それが何より嬉しくて…。
でも私は将人を殺してなんかいません。
お父さんの事警察で話してもらえますね?はい。
最後にもう一つだけ。
あなたの青い鳥を持ち出したのは将人さんですか?わかりません。
いつの間にかなくなってたんです。
翌日ですね?ええ。
なるほど。
失礼します。
(由紀)お待たせしました。
ごめんなさい。
明日からいよいよ個展なもので。
すみませんねお忙しいところを。
実は最近なんですが何度かとある児童施設に伺いましてね。
児童施設?ええ。
そこの職員の方がとても親切な方でなおかつ記憶力のとてもいい方でした。
20年前の事を鮮明に覚えているぐらいに。
で最近ある人物が昔の事を聞きにその施設を訪ねてきたそうです。
その人物というのがこちら。
「佐々本調査事務所」。
調べたら認可も受けてない業者でした。
丁寧に色々教えてくれました。
捜査協力頼んだら。
脅したって事ね。
あなたのやり方はいつも決まっているそうですねぇ。
才能のある前途洋々のアーティストを見つけるとその相手の全てを調べ上げる。
生い立ち家庭環境金銭問題異性関係…。
そして力になるふりをしながら脅し自分の意のままに操る。
まったく…ファミリー感覚ですか。
ハッ…聞いて呆れますね。
私は以前何度も芸術家に煮え湯を飲まされたんです。
連中の多くはモラルも道徳観も欠落してる。
放蕩を美徳と取り違え才能を他者を傷つける権利だと錯覚してる。
だからそんなやり方を?私はビジネスをしてるんですよ。
損害を被るのはこっちなんです。
いわばこれはリスクマネジメントですよ。
あなたが本来やるべき事は芸術家の才能を花開かせるためのサポートでしょ?あなたの誤算は将人さんから他のアーティストと違って何もやましい事が出てこなかった事です。
そこであなたは同居人の玲奈さんの事も調べさせていた。
坂上さんの事を突き止めたのもそこからだったそうですね。
そんなある日調べられている事を知った将人さんは事務所に乗り込んだ。
誰に依頼された?言えよ!
(佐々本徹)白石由紀だよ。
ギャラリーの。
お前玲奈の事何調べてるんだ!?言えよ!全部言えよ!過去を探られる事は彼にとって何よりも恐れていた事です。
それは深く暗い土の底に埋めた過去の罪へとつながるから。
一体何を言ってるんです?個展のあと作品集を出されるそうですね。
それに載せるために撮られた写真がああ…ここにありますね。
その中のですねそう…これ。
見てください。
いいですか?この写真は事件の翌日に撮られたものです。
現在と見比べてみてください。
明らかに形が違いますね。
事件の翌日は三角今は丸みを帯びている。
なぜこんな現象が起きるのでしょう?作品が勝手に形を変えるとは思えません。
答えは一つ。
シーツの中身があの日は違っていたんです。
さっきスタッフの方に確認しました。
昨日ここでなくなっていた脚立。
(スタッフ)おい!なんで脚立ないんだよ?おいちゃんと探したのかよ脚立。
その後ギャラリーの隅から見つかったそうです。
あの時シーツの下にあったのは脚立だった。
確かあなたは事件のあった日友人のギャラリーに作品を取りに行ったとおっしゃっていましたねぇ。
本当はそんな時間なかったんじゃありませんか?だから脚立を使って作品のふりをした。
知り合いの方も追及したら話してくれました。
あなたに脅されて嘘の証言をしたって。
山本将人さんを殺したのはあなたですね?あなたはあの夜彼に呼び出されてアトリエに行ったんです。
もう言いなりにはならない。
あんたの汚いやり方にはうんざりだ!全部マスコミに公表する。
この世界にいられなくしてやるよ。
冗談じゃないわ。
あんたこそ私なしでこの世界でやっていけると思ってるの?この手で潰してやるわ。
だったらその前に殺してやるよ。
あんた…何?何よ…。
(山本)うわああっ…!
(由紀)ああっ…嫌っ…!
(刺す音)
(由紀の声)あれは…正当防衛だったのよ!私は将人を突き落としてなんかいない。
他の誰かが将人を突き落としたのよ!どうも。
どうも。
警視庁捜査一課です。
私は殺してない。
殺してないの!お話伺えますか?ああっ…殺してない!驚きました。
将人を殺したのが白石さんだったなんて。
いいえ。
彼女は将人さんを殺してはいないようです。
他にも色々わかった事があります。
あなたの青い鳥を持ち出したのは将人さんでした。
おそらく1カ月前坂上さんの存在を知った時からずっと不安に苛まれていたのでしょうね。
(殴る音)あなたに暴力を振るうようになったのもそんな不安からだったのではありませんかね?愛する将人さんからの暴力それはあなたにかつての父親を思い出させるものだったのではありませんか?また同じ事が…と思いました。
これは私が犯した事への罰なんだと。
私は幸せになっちゃいけないんだって。
そして将人さんは坂上さんに会いに行った。
ところがそこで坂上さんから思いもかけないあなたの言葉を聞かされました。
玲奈さんは自分が幸せになっちゃいけないとまで言ってるんだ。
何…?そこまで彼女は追い詰められてるんだ!あんたのせいで!24年前罪を犯した者と犯させた者。
そんな幼い2人が結ばれるのはごく自然な事だったでしょう。
それからも将人さんはずっとあなたの幸せを願ってきたはずです。
自分と一緒にいる限りあなたはずっと過去の罪に縛られ続ける。
あなたの前から姿を消そうと将人さんが思ったとしてもなんの不思議もありません。
その将人さんですが白石由紀にあえて自分を刺させ彼女に罪を負わせました。
なぜそんな事をしたのでしょう?あなたにはもうおわかりですよね。
あなたの幸せを誰にも邪魔させたくなかったからですよ。
そして…。
将人さんは自ら身を投じました。
24年前にお二人が犯した罪それは決して消えるものではありません。
でもたった一つ言える事は彼にとってあなたは最後まで初恋の相手のままだった。
同感です。
今となっては全てを知る由もありませんがね…。

(月本幸子)初恋…忘れてました。
まあ普通の人にとってはそんなもんですかね。
でも思い出しました。
好きなのにそっけない態度をとってふられちゃいました。
ハハッ。
確かに初恋は実らないって言いますね。
実らないほうが幸せなのかもしれないな。
どうしてですか?所詮幼い時の恋。
心変わりしないほうが奇跡なんじゃないですか?『新約聖書』にこんな言葉がありましたねぇ。
「Itismoreblessedtogivethantoreceive」与えられるより与えるほうが幸せである。
おお〜!ブラボー!僕の事ですか?君は面白いですねぇ。
(2人の笑い声)
(幸子)なんか不気味でしょ?幸子?まるで幸子さんは死んでしまっているようじゃありませんか。
あなたのお姉さんですね?それも双子の。
昨日我々が会ったのは幸子さんではなく愛さんだったんですか?まだ調べてみる必要がありそうですね。
2015/11/25(水) 21:00〜21:54
ABCテレビ1
相棒 season 14 #6[字]

第6話「はつ恋」水谷豊×反町隆史
気鋭の芸術家の不可解な死と美しい恋人に向けられた疑惑…。
初恋をめぐる儚い真実が、時を越えて解き明かされる!

詳細情報
◇番組内容
第6話「はつ恋」
ジャンクアーティストの山本(内浦純一)がビルから謎の転落死を遂げる。腹部には刺された跡が残っていた。山本のアトリエを調べた右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は不自然に壊された作品を見つけ、破片を持ち帰り復元を試みる。そんな中、被害者のDV疑惑が浮上し、内縁の妻・玲奈(笛木優子)に容疑の目が向けられる。二人は初恋同士と聞いていたが、そのことを隠している玲奈に右京は疑問を抱く…。
◇出演者
水谷豊、反町隆史、鈴木杏樹
川原和久、山中崇史、山西惇、六角精児
【ゲスト】笛木優子、内浦純一
◇スタッフ
【脚本】谷口純一郎
【監督】和泉聖治
◇音楽
池頼広
◇おしらせ
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【ツイッター】https://twitter.com/AibouNow
【フェイスブック】http://www.facebook.com/AibouNow
【ウェブ】http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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