生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
きょうは図書館の役割って何?というテーマです。
担当は名越章浩解説委員です。
名越⇒きょうは図書館について考えてみたいと思うんですが、岩渕さんは図書館をよく利用しますか?最近はちょっと行けていないですが、好きですね。
図書館はその地域の知識の泉ともいわれている貴重な存在です。
私たちの身近な存在でもあるわけです。
この問題をよく考えてみたいと思います。
ところがこの図書館の役割はいったい何なのか深く考えさせられるようなニュースが相次いでいます。
きっかけとなったのが、佐賀県武雄市の図書館です。
大手レンタルビデオ店TSUTAYAを展開する会社が武雄市から運営を任されています。
広い空間におよそ20万冊の蔵書年中無休の図書館なんです。
全国チェーンのコーヒーショップや書店、それにCDなどのレンタル店も併設しています。
ずいぶんおしゃれな空間ですね。
武雄市は人口が5万人足らずの地方都市なんですが斬新な図書館として全国から注目を集め年間の来館者数はリニューアル前の3倍以上の80万人から90万人と人気の施設に生まれ変わりました。
町の活性化にもなったわけですね。
特徴的なのが本の分類のしかたなんです。
分類のしかたというと、どういうことですか。
日本の図書館の多くは哲学、心理学とか芸術社会科学など大きな10のテーマで分類されましてそれがさらに細かく10のテーマで分類されるという方法がとられています。
それが武雄市の図書館の場合はちょっと変わっていまして独特のライフスタイル分類となっています。
初めて聞きました。
どんな分け方なんですか?例えば料理という分類のコーナーがあります。
料理本がずらりと並んでいるわけなんですが、この中に料理を題材にした漫画コミックも入っているんですね。
既存の分類のしかたでは出会えなかったような本にも出会える、また新たな発見を楽しんでほしいという思いが込められた分類のしかただと、会社側は言っています。
探すのが楽しそうですね。
おもしろい方法だと思います。
最初は私も慣れませんでしたが慣れるのに実はそれほど時間はかからなかったんですね。
一方で図書館の専門家の中からは利用者が探したい本がどこにあるのか分からなくなる可能性があるとまるで個人の本棚を見ているようだという厳しい意見もあります。
よく思わない見方もあるんですね。
図書館が買った本の選び方に問題がありましてそれは同じ会社が運営をしています神奈川県海老名市中央図書館でも同じような問題がありました。
全国的に問題が関心を集めるようになったということがあります。
本の選び方といいますと?オープンを前に、武雄市の場合市の費用でおよそ1万冊新しい本を購入したんですがその中身に問題があることがことしの夏、分かりました。
騒がれましたね。
例えば2001年の公認会計士の二次試験の対策本など古くなって読まれる見込みのない実用書であったり武雄市から遠く離れた埼玉県のラーメン店の紹介本などが数多く含まれていることが分かったわけです。
佐賀の人にとっては必要性は低いかもしれませんね。
通常、図書館では新刊を購入するのが常識と言われているんですけれどもこれが古本だったことや購入先がグループ企業だったため在庫処分だったのではないかとネット上を中心に疑念の声が広がりました。
会社側は、在庫処分ではないと否定したうえでこのように説明しています。
税金が使われていますからね。
議論が活発になったのは根底には、公共の図書館とは本来どうあるべきか本質的な問いかけが根底にあるからなんだと思います。
そもそも図書館の本来の役割って何なんでしょうね。
日本には、図書館法という法律があります。
かみ砕いて言いますとこの3つが大きな役割といえると思います。
必要な資料ですか。
これは、選書と呼ばれる非常に図書館にとっては大切な作業でしてその地域にとって本当に買うべき本は何なのか、長期的な視点で考える専門性が問われる専門家の司書の大事な仕事なんですね。
蔵書の数よりも中身が大事だということですね。
例えばその地域にしかないような歴史資料であったり、1冊1万円もするような高価な書籍を購入しようとすると市民、個人ではなかなかできませんよね。
個人だと見る機会も限られます。
図書館であればそれを可能にするその役割を担えます。
武雄市の図書館をきっかけにした問題は図書を選ぶ、選書の重要性を改めて考えるきっかけになったのではないかと思います。
図書館にはどういう本が必要にされるのかといいますと利用者としては話題の本はなかなかすぐに借りられないですのでもうちょっと増やしてほしいなと個人的に思ってしまいます。
半年待ち、1年待ちというのもありますよね。
それについても議論があります。
先月、東京都内で開かれました全国図書館大会の会場での新潮社の社長の発言です。
つまり本が売れない時代なので図書館で本を貸し出すのを一定期間待ってくださいという主旨の問題提起があったわけです。
利用者としては図書館で自由に本を読みたいと思うんですが何か事情があるわけですか?背景には深刻な出版不況があります。
これは、国内の雑誌を含めた出版物の売り上げの推移です。
1990年代には2兆円を超えていましたが売り上げがどんどん下がっています。
去年は1兆6000億円にまで下がりました。
背景には若者の活字離れや、インターネットの普及などはもちろんあります。
一方でこんなデータもあります。
全国の図書館の本の貸し出し冊数です。
増加傾向なんですね。
このほかに図書館の数自体も全国に増えていましてこういう事情で出版社として何とかしたいという思いが一石を投じる意見につながったのではないかと思います。
今後、図書館で新刊本が見られなくなる可能性もあるんでしょうか。
今のところ、そこまでの話にはなっていません。
意見に賛同するほかの一部の出版社、そして著者とともに近く日本図書館協会に申し入れを行う予定なんですけれども実はすべての出版社が同じ考えかというとそうではないんです。
例えば別の大手出版社はこのように言っています。
基本的人権を守るうえでも必要な存在なんだという考え方です。
収入が上がらない中で話題の本が読めるというのはありがたいところですよね。
どちらの意見も理解できるんですがなかなか難しくてどうすればいいでしょうか。
日本図書館協会と出版業界がともに議論を深める必要性は言うまでもありませんが、大事なのは私たち自身も図書館の役割について真剣に考えることだと思います。
今、図書館は地域の人たちの交流の場であったり文化活動の発表の場であったり求められる役割は多様化しています。
地方の自治体にとっては町の再開発計画の、それこそ中心施設に図書館を位置づけているところもあります。
自分の町の図書館はどういう機能を持った図書館なのか。
市民は何を望むのか、図書館の役割を問うニュースをきっかけに10年先20年先を見据えた議論が各地で深まることを期待したいと思います。
次回は西川龍一解説委員です。
ぜひ、ご覧ください。
2015/11/26(木) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「図書館の役割って何?」[字]
NHK解説委員…名越章浩,【司会】岩渕梢
詳細情報
出演者
【出演】NHK解説委員…名越章浩,【司会】岩渕梢
ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:11636(0x2D74)