(沢嶋)
戦国時代。
村に危険が迫っていた。
厳しい年貢。
武士による略奪。
村を守るため農民たちは立ち上がる。
だが彼らは武器がなく軍隊もなかった。
誰にも頼る事ができない。
村がとった方法とは?そこには独特の精神性と知恵が秘められていた。
果たして村の運命は?農民たちの生存をかけた戦いをスクープした!
え〜アブソリュートポジションN940W108E504S300。
ポジション確認。
アブソリュートタイムB4518215年49時58分43秒。
西暦変換しますと1576年9月4日6時39分11秒。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー431597これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて名もなき人々を記録していくタイムスクープハンターである。
祠の前に集まり祈りを捧げる人々がいる。
戦国時代の農民たちである。
今村はとんでもない困難に直面している。
その危機に立ち向かうため神様に祈祷をしているのだ。
今回の取材対象は戦う農民たち。
村に襲いかかる大問題を独特の方法で切り抜けようとする彼らに密着する
この時代の人々にとって私は時空を超えた存在となります。
彼らにとって私は宇宙人のような存在です。
彼らに接触するには細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼らに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっておりお見せする事はできませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
16世紀後半貴族や寺社が守ってきた荘園制が崩れていく。
それに代わり村や町といった自治組織が各地に出現する。
自分たちで掟を作り独自の方法で集団を守っていた
すいませんちょっとよろしいでしょうか。
おうなんじゃ?
(伍作)あんたには…そしたら連中…うん。
といいますと?しばらく前に…とてもじゃねえがそんなもんいちいち…行くぞ。
大幡村の農民たちは厳しい年貢に苦しめられていた。
それに抗議するためある行動に出た。
篠の枝を用意し村の入り口に向かう
枝を道に立ててバリケードのように封鎖していく。
「篠を引く」とはこの行為の事を言う
ああ。
こうする事で年貢の取り立てに来る領主は村の内側に入る事ができなくなる。
村の入り口や家の周りを木々で囲む事で疑似的に村を山林に見立てる。
昔から日本では山林には神が宿ると考えられてきた。
篠を引くとそこは聖なる場となり俗世界の権力が介入する余地はなくなる。
いかなる領主であっても神のたたりをおそれ中には入ってこなかったという。
篠を引いたあと農民たちは領主への抗議行動として村に立て籠もる事になる。
そんなやさきだった
(又吉)お〜い!お〜い!お〜い!
年貢の取り立てか。
予想していたよりも早い
急な知らせに村人たちが慌てて家に戻っていく。
村の入り口に一番近い与平の家。
村の幹部はそこから監視する事にした
やがて遠くから人影が現れた。
篠のバリケードを前に侵入をためらっている
年貢の取り立てにしては様子がおかしい
(又吉)何言ってんじゃ。
どうやら領主の使いではなさそうだ。
一体何者なのか?
男は僧侶であった
荷車にはもう一人意識を失った僧侶がいた
どうするんだ?
何やらただならぬ雰囲気。
気の毒に思ったのか村人たちは僧侶に救いの手を差し伸べる事にした。
急ぎ与平の家へと向かう。
彼らの身に何が起きたのか?
こりゃあひでえ。
水じゃ。
ああ…。
そうじゃ。
先ほども申したが…ひでえ野郎じゃな。
僧侶たちは織田兵に追われていた
時の権力者織田信長の命による寺社から物を取る徴用行為だ。
その強引なやり方は略奪と言っても過言ではなかった
意識が戻った僧侶
ここは?宇治…。
次第に記憶がよみがえる。
そして…
なんじゃ?傷が痛むか?さはあらじ。
慈海様!いや…
(慈海)何を申しておるのだ?
(慈海)なんと…。
織田軍による略奪は寺社だけではなくこの辺りの農村にも及んでいるという。
村人たちの間に緊張が走る
とその時だった
(慈海)来たか?
村の入り口に2人の男。
織田方の兵士か
篠のバリケードに侵入を躊躇しているようだが…。
私は高感度集音マイクを作動させ音声をキャッチする事にした
(織田兵)どけ!
なんと彼らは神聖なる篠を無視して入り込んできた
いかがする?
こちらに向かって近づいてくる
与平が外に出てその場を取り繕う事にした
・
(織田兵)誰かおらぬのか?
2人はまさしく織田方の武士であった
目的は何か?
それは新しい城安土城の建築のための資材の徴収だった
(与平)ちょっと待って下せえ。
(与平)それだけは勘弁してくれ。
更に彼らが欲していたのはこの村の守り神である石御石様であった。
信長は地蔵や仏像などを数多く略奪したという。
その目的は信仰の対象物を収集する事で御利益を得る事と自らの権威を高めようとしたためとも言われている
すると…表に止めていた僧侶の荷車から仏像が落ちた。
怪しまれた
そして…
(与平)待ってくれ。
貴様ら…。
へえ。
おかしなまねをするなよ。
兵士は強引に家に押し入る。
村人たちに疑惑の目を向ける
その目は部屋の隅のむしろに注がれた。
まずい。
が次の瞬間!
農民たちの火がつく
ああさようじゃ!おい何言ってんだよ。
もう後戻りはできない。
そして村の農民たちは決断する
(与平)ああ。
そうは申すが…
それはただの石だった。
だが石は戦国時代の戦場において主力な武器でもあった。
投石による兵士の負傷は弓矢による傷に並ぶほど多かったという。
村人たちが宣戦布告。
彼らは権力者による理不尽な要求に黙って従うのではなく戦って村を守る道を選択したのだ。
村は戦闘態勢に入る
米などの食料や家財道具など村の財産を略奪されないように丘の上にある番頭の甚兵衛の家に隠しておく事にした。
戦国時代の紛争では略奪行為や人身売買は日常茶飯事だった。
そのため村人たちは略奪に備えて山などにシェルターを設け財産を避難させたり裏山を要塞化したりして立て籠もる「城」を持つ村まであった。
この大幡村もそんなたくましい村の一つのようだ。
その時だった
伍作が血相を変えて走り込んでくる
織田兵たちによる略奪行為は既に隣の村にまで及んでいた
そいつから聞いた。
おう。
承知!おう。
与平と又吉が村を出て偵察に出かける。
村から2kmの地点。
広い道に出た2人はここで見張りをする事に
見張りの開始からおよそ30分
織田兵たちが現れた。
その数僅かに3人。
荷車を引いている。
何をしようというのか
織田兵たちが入っていったのは神社
その中から仏像や供物などを次々と持ち出す。
完全に略奪行為である
更にあろう事か地蔵を弄ぶように破壊していく。
まるで神や仏に自分たちの力を見せつけようとしている。
その許されない行為に与平と又吉の怒りが爆発する
石を武器に織田兵へ向かっていく
村一番の腕力を誇る与平と又吉の前に織田兵はなすすべもなかった
だが次の瞬間!
逃げるぞ。
走れ!
不覚にも私はカメラを落とした。
拾い上げる暇はない。
カメラの回収を諦め緊急用のゴーグルカメラを立ち上げた
本部本部こちら沢嶋応答願います。
はいこちら本部古橋です。
すいません追加カメラ1台お願いします。
どうしたんですか?緊急事態です。
訳は後で説明します。
説明は頂かないと。
お願いします!これから戦が行われそうなんです。
スクープ映像です。
お願いします。
分かりました。
すぐにカメラをアップします。
ありがとうございます。
新たなカメラで取材を続行する
おう!皆持ち場につけ!わしも戦うぞ!わしもじゃ!
村は緊急警戒態勢に入った。
番頭の甚兵衛が援軍を呼ぶため鐘のある丘を目指す
村の人たちが臨戦態勢に入ってます。
非常に緊迫してます。
息を殺し織田兵がやって来るのを待ち伏せする。
鐘がある丘の上に甚兵衛がたどりついた。
しかし…
(織田兵)ええい!
(甚兵衛)うわぁ!
(与平)甚兵衛どん!
隙をついて数人の織田兵たちが裏山から侵入してきていた。
完全に裏をかかれた。
更に…
おい!
バリケードを破り織田兵が突入してきた
農民たちは石つぶてを武器に全力で反撃する
ここは任せたぞ!頼んだぞ!
与平が鐘を鳴らすため丘の上を目指した
鐘は家の横にある。
慎重に近づいていく。
だが…不意打ちを食らった!与平が必死に応戦
そして…
しかし次の瞬間!丘の上の敵兵に見つかった。
次々と矢を放ってくる。
これ以上鐘に近づく事は難しい。
その時与平はある行動に出た
石を投げて鐘を鳴らす作戦。
果たして…
やあ〜っ!
(鐘の音)
(鐘の音)うわあ〜っ!ああ。
鐘の音は隣村の者たちに届いたのだろうか?急ぎ前線に戻っていく
おい!おい!与平!
村人たちに疲れが出始め防御が崩れ始める。
そこへ一気に織田兵たちが攻め上ってきた。
だがその時!
山に隠れていた隣村の農民たちだ。
織田兵を挟み撃ち。
後ろからの急襲に兵士たちはパニックに陥る。
形勢が逆転!次々と織田兵が倒れていく
まだ敵は残っている。
略奪を阻止するため丘の上を目指す
やった…。
ああ。
(伍作)なんとか守りきったな。
おうみんな。
全ての敵兵は村人たちの石つぶてに倒れ伏した。
しかし…
御石様がねえ。
どこ行った?しっかり捜せ!どこじゃ?
どさくさに紛れ織田兵の一人が御石様を奪い逃走してしまった
何がだよ。
俺たちの御石様じゃぞ!
村の道には2人の僧侶の姿があった
(与平)ああ。
なあみんな!
(村人たち)おう!では。
僧侶たちは織田兵の迫害から逃れるため人里離れた山の中へと旅立っていく。
相次ぐ戦で混迷を深めた戦国時代。
村人にとってこの先も厳しい時代が続く事だろう。
しかしどんな困難があろうとも彼らは乗り越えていくに違いない。
生き抜くために誰にも頼らず行動を起こしたその姿はタイムスクープハンターとして記録に値する人間の営みである
それでは私はこの辺で失礼します。
そうかい。
あんたも達者でな。
あんたとはまたどこかで会いそうな気がするぜ。
そうですね…。
では。
え〜以上コードナンバー…。
はいこちら沢嶋。
沢嶋さん忘れ物です。
忘れ物?途中で落としたカメラ置き去りになったままですよね。
あっすいません。
すぐに回収に行きます。
大丈夫です。
あのタイプならこちらで遠隔操作できますから。
自動消去しておきますね。
ありがとうございます。
以後気をつけて下さいね。
分かりました。
以上コードナンバー431597アウトします。
2015/11/25(水) 01:30〜02:00
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター セレクション「村を守れ!投石バトル」[字]
「タイムスクープハンター」のアンコール放送。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は戦国時代へ。織田軍から村を守るため、投石で立ち向かう村人の姿を密着ドキュメント
詳細情報
番組内容
今回の取材対象は戦国時代、『御石様』を守り神として奉っていた農民たちと村を守るための戦い。古来から万物に神が宿るとしてきた日本では、道端にある石も理由があれば、神としてあがめてきた。1576年山城国の甚兵衛を長とする村は危機に陥っていた。織田軍が霊験ある御石様を奪いに来るという。圧倒的な武力を前に、屈服するのかどうかが話し合われた。村は「自分たちの力で守る」と決断、投石での戦いを沢嶋雄一がリポート
出演者
【出演】要潤,杏
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:10942(0x2ABE)