「GAIA」…それは息づく大きな生命体。
混沌の時代にも希望を見いだし再生を果たして未来へ向かう。
そこにきっと夜明けがやってくる。
伝統文化を今に残す京都。
なかでも着物はその代表格です。
幕末創業の自慢の反物を見せてくれました。
緻密で美しい柄はある特別な職人が染めたものだといいます。
その職人の工房を訪ねました。
摺り友禅は明治時代に発達した技法。
色ごとに彫られた型紙を置き染めていきます。
使うのは鹿の毛を束ねた特殊なハケ。
まず花の内側から色を入れます。
この作品で使う型紙は25枚。
色を重ねるごとに花の内側から色づいていきます。
こちらの花びらには外側から色を入れます。
どちらの花も咲いていますが右の花は内側からぼかしを入れることで浮き立った印象に。
一方左の花は外側からぼかし絶妙なバランスとなっています。
そのあと別の職人が地の部分を染めて完成。
余座さんのぼかしがそれぞれの花を美しく浮き上がらせています。
摺り友禅は10以上の工程による分業制ですがどこも同じ悩みを抱えています。
もう10年前まで…。
京都が誇る伝統文化。
それが今職人の後継者不足で危機にさらされているのです。
そうしたなか京都にある制度が誕生。
全国から若者が殺到していました。
みんな伝統工芸の職人を目指しています。
ですからそこをどうしても…。
未来を担う若き職人を育てる。
その新たな取り組みを追いました。
曲げる。
打つ。
穴をあける。
鉄の町を襲う廃業の波。
爪で織る。
伝統の技に飛び込んだひとりの女性。
しかし大きな壁が立ちはだかった。
埋もれていた職人の技を売り込め。
町工場の力が結集した。
伝統産業が今も残る京都。
その一方で最先端の製造業が集まる土地でもあります。
例えば京都市下京区に本社を構える大手電子機器メーカーオムロン。
1933年に創業しいくつかの世界初の商品を世に出しました。
こちらが大阪の私鉄で最初に使われたそうです。
続いてこちらは現金を引き出すキャッシュディスペンサー。
日本だけではなくアメリカにも輸出されました。
今では電子体温計や血圧計などの医療機器を製造。
特に家庭用の血圧計は世界トップシェアを誇っています。
続いて京都伏見区に本社がある京セラ。
電子機器通信機器などのメーカーで1959年に創業しました。
産業用セラミックの加工技術を活かして半導体などを保護するまた身近なところでは携帯電話やスマートフォン。
そして太陽光発電のパネルなども製造しています。
更に京都市中京区に本社がある島津製作所。
計測機器や医療機器などのメーカーです。
広く知られるようになりその技術も一部で活かされています。
その歴史は古く明治8年に創業。
明治10年にはなんと気球を作って日本初の有人飛行に成功しました。
更に明治29年にはエックス線写真の撮影に成功。
これが国産初のレントゲン装置の開発につながったそうです。
そんなものづくりの歴史がある京都の企業は今伝統産業を守るために動き出しています。
『ガイアの夜明け』今回は後継者不足に悩む中小企業を地域で救おうという新たな取り組みを追いました。
このオフィスビルの中にある京都試作センター。
その責任者その京都試作センターが今伝統工芸の支援にも乗り出しました。
7月坂口さんが向かった先は織物の街京都西陣。
お世話になっております。
出迎えたのは西陣織は室町時代から続く織物で12種類の技法があります。
なかでも綴織は最も歴史があり最高級品とされています。
こちらは平野さんが織った綴織の帯。
綴織は多彩な色合いの模様が特徴です。
何百色もの横糸を使いすべて手作業で織り込まれています。
その細かい作業を可能にするのが…。
この爪。
櫛のように削る作業。
平野さんこの爪で織り込んでいきます。
柄に合わせて横糸を細かく変え爪でかき寄せます。
一日に数センチしか織れないことも。
平野さんはこの道60年以上の名人です。
坂口さんが工房を訪ねたのはこの人に会うためでした。
京都試作センターのある制度によってこの春平野さんのもとに弟子入りしました。
その制度とは伝統工芸の職人を目指す若者を京都試作センターが全国から募集。
あと継ぎのいない職人とマッチングさせて後継者を育成するものです。
期間は半年から1年で…。
小川さんはその3期生です。
小川さんはまだ基本の無地を織る練習中。
突然鏡を取り出して裏側を見始めました。
かすかに黒い線が入っています。
道具の汚れがついてしまったようです。
ほどいてやり直し。
あらまぁ…。
そんな小川さんを一人前の後継者にすることが75歳を過ぎた平野さんは最後の使命だと考えていました。
小川さんは大学を中退して平野さんのもとに弟子入りしました。
子供の頃日本舞踊を習っていて着物は好きでしたがイギリスに留学したことがきっかけで職人になることを決意したといいます。
一方師匠の平野さんはあることで悩んでいました。
育成期間が終わったあと小川さんを雇い続けるほどの余裕はないのです。
そのことは京都試作センターの坂口さんにとっても大きな課題でした。
西陣にはもう1人坂口さんが気になっている人がいます。
西陣絣の縦糸を加工する職人です。
葛西さんは京都試作センターによる育成制度の1期生。
今年職人としてひとり立ちしたばかりです。
絣は西陣に伝わる12種類の技法の一つ。
縦方向に伸びた幾何学模様が特徴です。
これは西陣絣の伝統的な柄のひとつ。
矢の羽のように見えることから矢絣と呼ばれています。
かつて大人の女性の必需品でした。
こちらは御召と呼ばれる西陣絣。
高級なオシャレ着とされています。
葛西さんこの日大事な作業に取りかかっていました。
まずは染め上がった数千本もの縦糸を細かく分けて揃えクシの歯にかけていきます。
次に梯子という道具に通して糸に高低差をつけていきます。
そしていよいよ絣の模様を作り上げる工程。
この段階では糸は横一列同じ模様です。
それが梯子に差しかかると…。
糸が上下にずれてこのような模様に。
葛西さんは絣の柄を作り上げる重要なパートを担っているのです。
そのあと織りの職人にわたり完成したのがこちら。
もともと葛西さんは大学の非常勤講師として染織を教えていました。
京都試作センターの育成制度で西陣絣の現役最年長徳永弘さんのもとで修業。
今年独立し師匠から仕事をまわしてもらっていますが生活は楽ではありません。
京都試作センターの坂口さん。
葛西さんにある提案をするためにやって来ました。
すると葛西さん1冊の本を取り出しました。
葛西さんの思いを聞いた坂口さん。
なんとか支援したいと考えていました。
坂口さんが早速動き出しました。
訪ねたのは京都の高級ホテルに入っているセレクトショップ京というお店。
ここは伝統工芸のよさを活かしながら今の暮らしに使える商品を扱っています。
坂口さんマネージャーの石村さんに葛西さんの西陣絣を使った商品を提案します。
そういうのを今模索されてるんですよ。
私はちょっと不安では…。
懸命に売り込む坂口さん果たして…。
絣職人として独立したばかりの葛西郁子さん。
そこにあのセレクトショップ京の石村さんが訪ねて来ました。
葛西さんの商品作りに対する覚悟を確かめに来たのです。
まずは葛西さん模型を使って西陣絣の製造工程を説明します。
次に師匠が貸してくれた絣の見本を見せます。
すると…。
わかりました。
このひと言で石村さん葛西さんに商品作りを依頼することにしました。
1か月後。
石村さんから依頼された商品のため葛西さんは絣の縦糸作りに取りかかっていました。
果たしてどんな商品になるのか。
京都試作センターの坂口さん葛西さんの絣を使った商品ができたと聞いて石村さんの店を訪ねます。
これですね。
商品を手にした坂口さん。
西陣絣がお酒の瓶などを持ち運ぶバッグになっていました。
こちらは絣の生地を活かしたのれん。
日本らしい。
京都らしい。
そこにやってきたのは…。
こんばんは。
ありがとうございます。
葛西さんです。
新たな商品作りで西陣伝統の絣職人として生き続ける。
そのきっかけをつかみました。
一方綴織の修業をしていたあの師匠と同じように爪を研いでいました。
修業を積んで6か月。
爪で織れるまでに成長していました。
織り上がったのがこちらの帯。
厳しいながらも京都の伝統産業の後継者となる覚悟の証しです。
一方こちらはこの一帯は金属加工の町工場が軒を連ねる鉄の町です。
はいはい。
あ〜なるほど。
ええええ。
あっ今ファックス届きました。
ちょっと見てみますね。
なるほどこれですか。
う〜ん。
で納期はいつ?えっ週末!?ちょっと短いですね。
わかりましたやらせてもらいますはい失礼します。
週末かまいったな。
それにしてもこれはいったい何の部品なんだ。
時間ないけどとにかくやってみるか。
おい。
何?あなた。
いやなこれちょっと注文来たんだけどもまず鉄を切るとこまではうちでやるから穴あけは隣のアオキさん。
で溶接は裏のイトウさんに。
それからこの曲げの部分は向かいのウエノさんのとこに頼んどいてくれ。
あのねあなた実は向かいのウエノさん病気になっちゃって昨日入院したみたいなのよ。
えっそうなのか。
まいったな。
大丈夫か?ウエノさん。
もう歳みたいよ。
工場続けるのきついってもらしてるみたい。
そっか。
ウエノさんとこも後継者がいないからな。
そうね。
まいったぞ。
今からよそ当たっても時間ないぞこれ。
う〜ん困った。
昔ながらの町工場では横の繋がりで仕事を分担するということがよくありました。
そのため1つの町工場の廃業は周囲の工場にとっても切実な問題となるようです。
こうした状況を解決しようと立ち上がった若き後継者たちがいました。
鉄の町従業員11人。
九条では中規模の町工場です。
今日もよろしくお願いします。
お願いします。
溝西鐵鋼ではメーカーなどからくる注文に応じて鋼材を切断加工しています。
工場を切り盛りするのは2代目の息子の櫻井さんの工場は典型的な家族経営。
注文は大抵ファックスで来ます。
設計図は手書き。
急ぎの仕事がほとんどです。
無理な注文は日常茶飯事。
切断した鋼材をのせてトラックが出発。
到着したのは近くの別の町工場です。
ここは穴あけや曲げ加工が専門。
運ばれた鋼材に穴をあけていきます。
なんとか納期に間に合わせ発注元に届けられました。
九条の町工場の多くは切断や穴あけなどそれぞれ得意の加工があります。
一社が受けた仕事をお互いに回して納期に間に合わす。
この連携プレーが九条の強みです。
しかし櫻井さん親子は九条の将来に危機感を抱いていました。
実は九条界隈の金属加工工場はこの40年で4分の1に激減。
櫻井さん自身厳しい現実を日々感じています。
向かったのは路地裏にある町工場。
おはようございます溝西鐵鋼です。
R30曲げ10本口取りにきました。
お願いしていたのは鉄の棒の曲げ加工。
こちらの工場は曲げの他火で柔らかくした鉄を叩いて加工するのが専門です。
火造りと呼ばれ今や九条ではここ一軒とも。
子供は女の子だけ。
後を継いでもらうのは難しいといいます。
でもそうなったら本当に…。
櫻井さんの工場に仕事を終えた男たちが集まってきました。
(一同)お疲れさまです。
町工場の後継者たち。
現状をなんとかしたいと櫻井さんが声をかけたのです。
九条の町工場の技術を受け継ぎ鉄の町を復活させようとメンバーの1人黄山さんの工場は櫻井さんの工場から歩いて5分ほどのところにあります。
大阪有数の曲げ加工の工場です。
最大7メートルの鉄板を曲げることができます。
鉄を知り尽くした黄山さん。
分厚い鉄板にまるい金型を当てて足元のペダルで調整しながら慎重に曲げていきます。
すると…。
注文どおりの角度に次々と鉄を曲げていきます。
作業中の黄山さんときどきタブレット端末を取り出します。
見ているのは以前にやった加工の写真。
新たな注文が来たときに役に立つといいます。
この日黄山さんは櫻井さんを呼び出しあることを提案しました。
どうでしたか?僕自身がずっと媒体で今いるベテラン職人が引退する前にその技をてづくり工場組合で記録しようというのです。
早速メンバーが動き出しました。
(3人)こんにちは。
お世話になります。
そこで目の当たりにしたのは鉄の町のベテラン職人のスゴ技でした。
鉄の町ベテランの技術を画像に残していこうと町工場の後継者たちが動き出していました。
この日メンバーが向かったのはある町工場。
(3人)こんにちは。
お世話になります。
よろしくお願いします。
金属プレス加工のベテランです。
橋川さんは40年以上にわたってこの工場を営んできました。
最盛期には5人を雇っていましたが今は橋川さん一人。
娘も嫁ぎ後継者はいません。
この日記録するのは機械を固定するための金具作り。
橋川さんの仕事はまず部材の穴の横をカットし2つの穴をあけ角を落とす。
そのあと3か所を曲げる。
全部で8つの工程が必要です。
大量生産の場合通常何十万円もする金型を特注して作業します。
部材を凹凸のある金型に挟んで一気に穴をあけます。
そのあと別の金型で曲げれば簡単にできあがり。
しかし町工場への発注は少量多品種のものが多くその都度金型を作っていられません。
そこで橋川さんありあわせの金属を集め何かを組み立てていきます。
メンバーがその手順を撮影していきます。
およそ20分で完成。
橋川さん金型にかわるものを自分で組み立てたのです。
次に穴あけの作業に入った橋川さん。
ここにも町工場ならではの技がありました。
まず左端の目印に材料を当てて穴をあけます。
次にひっくり返して右の目印に。
わずか5秒で2つの穴をあけることができました。
一見無造作にあけているようですが2つの穴は端から18.5ミリと39.5ミリの位置にピタリ。
驚くメンバーたち。
ムダのない橋川さんの手の動きを動画で記録します。
町工場にくる仕事の多くは単価が安いため効率をよくしどれだけ多く仕事をこなすかが重要なのです。
8工程が必要な製品500個。
橋川さんはたった一人わずか2日で作り上げました。
鉄の町には隠れた匠の技がまだまだありそうです。
10月櫻井さんの工場に続々と人が集まってきました。
いったい何が始まるのでしょうか?人々が集まってきました。
鉄のまち九条をめぐる町工場見学ツアーにご参加いただきましてまことにありがとうございます。
参加者は鉄道や船の部品メーカーの関係者など。
それぞれに1枚の鉄板が渡されました。
この鉄板を持ちながら九条の技術を体験してもらおうというツアーです。
参加者が覗き込んでいるのは職人の作業。
1本の金属棒を機械にかけると…。
ボルトができあがりました。
普段当たり前のように見る部品ですが興味津々。
そのボルトを持って次の工場へ。
参加者が持っている鉄板に穴をあけます。
鉄板を受け取ると…。
先ほどのボルトがピタリ。
見学ツアーの最後に訪れたのはあの巨大なプレス機で小さな鉄板を曲げていきます。
いったい何ができたのでしょう?大阪九条で開かれた参加者たちはそのスピードと技術力を目の当たりにしました。
見学ツアーのあの鉄板は塗装されてタブレットホルダーとなり参加者に送られました。
ツアーから1か月後。
てづくり工場組合に嬉しい知らせが。
マジっすか?ホンマっすよ。
メンバーたちの試みがささやかな実を結んだのです。
町工場の連携で技術を受け継ぐ。
鉄の町の取り組みはこれからが正念場です。
日本を支えてきたものづくり。
しかし後継者不足などによる廃業で一度失われてしまった技術を復活させることは簡単ではありません。
個人で受け継いでいくのが難しいのであれば今回見てきたように地域が一体となって受け継いでいく。
若い後継者を育てるにはそんな仕組み作りも必要となってくるのかもしれません。
2015/11/24(火) 22:00〜22:54
テレビ大阪1
ガイアの夜明け【“町工場”を継ぐ!若き挑戦者たち】[字]
全国初の試み!京都で生み出された“技の継承”▽“鉄の町”の職人技が危機!地域の技術を地域で引き継ぐ!若手後継者たちの挑戦に密着。
詳細情報
番組内容
日本で廃業する会社は年間約2万9千社にのぼる。その中で京都の伝統産業の関連企業は深刻な状況に陥っている。廃業の最大原因は後継者不足。危機感を抱いた地元有力企業と自治体が新たな仕組みを作った。全国から職人希望者を公募し、後継者を求める中小工房とマッチングさせるという“全国初”の試みだ。
番組内容続き
一方、大阪市西区の九条は、“鉄の町”と呼ばれ、これまで町工場同士が仕事を分け合い共存してきた。しかし後継者不足で廃業にいたる工場が増加し、地域自体の技術力が落ちてしまう…。そこで町工場の若手後継者たちが技術伝承を掲げて立ち上がった。今この時代に、ものづくりの原点である町工場を継ぐ若き挑戦者たちを追う。
出演者
【案内人】江口洋介
【ナレーター】杉本哲太
音楽
【音楽】
新井誠志
【テーマ曲】
◆オープニング曲
「鼓動〜ガイアの夜明け」(作曲/岸利至)
◆エンディング曲
「夜空の花」(作曲/新井誠志)
「ガイア」とは
ギリシャ神話に登場する「大地の女神」を意味し、後にノーベル賞作家のウイリアム・ゴールディングが「地球」を指して“ガイア”と呼んだことから「ガイア=地球」という解釈が定着している。「ガイアの夜明け」という番組タイトルには、地球規模で経済事象を捉えることで21世紀の新たな日本像を模索すること、そして低迷する経済状況からの再生=「夜明け」を目指す現在の日本を描くという意味合いが込められている。
関連情報
◆ホームページ
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◆公式Twitter
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